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「――は?何してんだ?」
洗面所の密度が一気に上がり、低い声が背後から聞こえた。
鏡越しに声の主をチラッと見れば、仏頂面で私を見ている人物…凛くんと視線がかち合った。
「もう風呂湧いてんじゃねーのかよ」
「んー?…うん」
ほとんど空返事で凛くんの問いかけに答えれば、彼はすかさず'なんで入んねーの?'と続けた。
「今、その入る準備をしてるんだよ〜」
「もう準備できてんならさっさと入れ………」
「あっ!?み、見ちゃダメ!!」
ブツブツ言う凛くんの視線が、私からパジャマの下に隠していた真新しい下着へと移動したことに気付き、慌てて下着を覆い隠した。
もぉ〜……。変なところで目敏いんだから……。
どことなく不満げな表情を浮かべる凛くんを余所に、私は話を再開した。
「ま、まあコレはひとまず置いといて…。あのね、これで悩んでるの」
目の前にずいっと出した2つの可愛らしいパッケージの袋を交互に見て、凛くんはパチパチと瞬きを数回した。
「……あ?入浴剤?」
「うん。どっちにしよっかな〜って」
「…………」
眉間に皺を寄せたまま黙り込む凛くん。
あ、この顔はもしや……。
「…凛くん、'どっちも一緒だろ'って思ってるでしょ」
「事実そうだろ」
「も〜、全然一緒じゃないよ!」
「…まさかお前、いつもこんなもんで延々悩んでんのか?」
呆れた表情で改めて2つの入浴剤を見比べる凛くんに苦笑を浮かべた。
まあ凛くんはきっとお風呂にそんなにこだわりないだろうし、入浴剤なんて全部同じに見えるかぁ。
対して私はお風呂が大好きで、入浴剤にも色々自分なりのこだわりがあった。(青い監獄 で過ごすようになってからは、より一層お風呂好きに拍車がかかった気がする)
その日の気分によって香りを変えたり、疲れている日には疲労回復に効果のある物や、ちょーっと太ってきたかな?という時は本当に足掻き程度にしかならないが、発汗作用のある物をというようにその都度変えていた。
入浴剤だけでなく、浴室にキャンドルを灯し視覚的にもリラックス出来る空間にしてみたりなど、私にとってお風呂は心も体も全てをリセットさせる為の大切な時間なのだ。
「お肌乾燥気味だからこっちの濃厚バスミルクで保湿するか…。いや、でも最近ちょっとプニッてきたから、この最強発汗!鬼マグマ!で汗流した方がいいかなぁ…?」
「ネーミング的に発汗どころかドロドロに溶けそうだけどな」
凛くんはボソリとそう呟くと、あろうことか'確かに、ここらへんに肉は付いてきてるな'と脇腹を摘んできた。
その生意気で憎たらしい手を叩こうとするも、ヒラリと躱されてしまい空振りに終わった。
空を切った手をプラプラしながら再びうんうん唸り始める。
「う〜ん……どうしよぉ〜……」
「ハァ…こんなん埒が明かねェ。俺が選んでやる」
「へ…?」
聞き間違いだろうか?今、彼は ‘俺が選んでやる’と言わなかったか?
「凛くんが…?入浴剤を…?」
「…なんか文句あんのか?」
「う、ううん!!全然!!」
ギロリと睨みながら訊ねてきた凛くんに私はおもいっきり首を左右にブンブン振った。
嫌なわけがない。‘あの’凛くんに選んでもらえるなんて、寧ろ光栄なくらいだ。ただ、まさか凛くんからそんな提案してくるとは全く予想もしていなかったから、驚いたというのが本音だった。
本人は単に早く入りたいからだろうが、入浴剤に興味の無い凛くんが自らこう言ってきてくれたのだから、せっかくなのでその提案に乗らせてもらうことにした。
「じゃあ、お願いしよっかな!ハイ、どーぞ!」
満面の笑みで2つの入浴剤を凛くんの前にズイッ!!と出した。
失礼だが正直適当に選ぶだろうと思っていた。しかし意外にも凛くんは真剣に考えてくれているようで、目を細め品定めするように2つを見た後、'こっち'と指差した。
「おー、濃厚バスミルクかぁ」
凛くんが選んだのは保湿力の方だった。
「決めてやったんだから、さっさと入れ」
「あっ、ねえっ!凛くん、どうしてこっちを選んだの?」
やれやれといった態度で洗面所を出て行こうとする凛くんを慌てて呼び止め、早口でそう聞いてみた。
凛くんはピタッと足を止めると、振り返らずに小さな声で答えた。
「…その入浴剤の時の紬、触り心地いーから」
入浴剤、暫くこればっかり使おっかなぁ…。
一人になった私はそんな事を考えながら、トロリ…とした乳白色のバスミルクをお湯へと注いだ――。
洗面所の密度が一気に上がり、低い声が背後から聞こえた。
鏡越しに声の主をチラッと見れば、仏頂面で私を見ている人物…凛くんと視線がかち合った。
「もう風呂湧いてんじゃねーのかよ」
「んー?…うん」
ほとんど空返事で凛くんの問いかけに答えれば、彼はすかさず'なんで入んねーの?'と続けた。
「今、その入る準備をしてるんだよ〜」
「もう準備できてんならさっさと入れ………」
「あっ!?み、見ちゃダメ!!」
ブツブツ言う凛くんの視線が、私からパジャマの下に隠していた真新しい下着へと移動したことに気付き、慌てて下着を覆い隠した。
もぉ〜……。変なところで目敏いんだから……。
どことなく不満げな表情を浮かべる凛くんを余所に、私は話を再開した。
「ま、まあコレはひとまず置いといて…。あのね、これで悩んでるの」
目の前にずいっと出した2つの可愛らしいパッケージの袋を交互に見て、凛くんはパチパチと瞬きを数回した。
「……あ?入浴剤?」
「うん。どっちにしよっかな〜って」
「…………」
眉間に皺を寄せたまま黙り込む凛くん。
あ、この顔はもしや……。
「…凛くん、'どっちも一緒だろ'って思ってるでしょ」
「事実そうだろ」
「も〜、全然一緒じゃないよ!」
「…まさかお前、いつもこんなもんで延々悩んでんのか?」
呆れた表情で改めて2つの入浴剤を見比べる凛くんに苦笑を浮かべた。
まあ凛くんはきっとお風呂にそんなにこだわりないだろうし、入浴剤なんて全部同じに見えるかぁ。
対して私はお風呂が大好きで、入浴剤にも色々自分なりのこだわりがあった。(
その日の気分によって香りを変えたり、疲れている日には疲労回復に効果のある物や、ちょーっと太ってきたかな?という時は本当に足掻き程度にしかならないが、発汗作用のある物をというようにその都度変えていた。
入浴剤だけでなく、浴室にキャンドルを灯し視覚的にもリラックス出来る空間にしてみたりなど、私にとってお風呂は心も体も全てをリセットさせる為の大切な時間なのだ。
「お肌乾燥気味だからこっちの濃厚バスミルクで保湿するか…。いや、でも最近ちょっとプニッてきたから、この最強発汗!鬼マグマ!で汗流した方がいいかなぁ…?」
「ネーミング的に発汗どころかドロドロに溶けそうだけどな」
凛くんはボソリとそう呟くと、あろうことか'確かに、ここらへんに肉は付いてきてるな'と脇腹を摘んできた。
その生意気で憎たらしい手を叩こうとするも、ヒラリと躱されてしまい空振りに終わった。
空を切った手をプラプラしながら再びうんうん唸り始める。
「う〜ん……どうしよぉ〜……」
「ハァ…こんなん埒が明かねェ。俺が選んでやる」
「へ…?」
聞き間違いだろうか?今、彼は ‘俺が選んでやる’と言わなかったか?
「凛くんが…?入浴剤を…?」
「…なんか文句あんのか?」
「う、ううん!!全然!!」
ギロリと睨みながら訊ねてきた凛くんに私はおもいっきり首を左右にブンブン振った。
嫌なわけがない。‘あの’凛くんに選んでもらえるなんて、寧ろ光栄なくらいだ。ただ、まさか凛くんからそんな提案してくるとは全く予想もしていなかったから、驚いたというのが本音だった。
本人は単に早く入りたいからだろうが、入浴剤に興味の無い凛くんが自らこう言ってきてくれたのだから、せっかくなのでその提案に乗らせてもらうことにした。
「じゃあ、お願いしよっかな!ハイ、どーぞ!」
満面の笑みで2つの入浴剤を凛くんの前にズイッ!!と出した。
失礼だが正直適当に選ぶだろうと思っていた。しかし意外にも凛くんは真剣に考えてくれているようで、目を細め品定めするように2つを見た後、'こっち'と指差した。
「おー、濃厚バスミルクかぁ」
凛くんが選んだのは保湿力の方だった。
「決めてやったんだから、さっさと入れ」
「あっ、ねえっ!凛くん、どうしてこっちを選んだの?」
やれやれといった態度で洗面所を出て行こうとする凛くんを慌てて呼び止め、早口でそう聞いてみた。
凛くんはピタッと足を止めると、振り返らずに小さな声で答えた。
「…その入浴剤の時の紬、触り心地いーから」
入浴剤、暫くこればっかり使おっかなぁ…。
一人になった私はそんな事を考えながら、トロリ…とした乳白色のバスミルクをお湯へと注いだ――。
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