モルペウス
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―うっ……ふ、ひっく……っ―
…紬ちゃん?
―ひっく…ふぇ…ひっ…―
紬ちゃん、なんで泣いてるの?
―うぅっ……ひっ……くっ…―
…ねえ、紬ちゃん。紬ちゃんってば!俺の声聞こえないの!?
―ふぇ…っ、ひっく…うっ―
紬ちゃん返事してよ!!紬ちゃんってば!!ねえっ!!
「――紬ちゃんっ!!!!」
泣きじゃくる彼女の名前を叫び、勢いよく飛び起きた。
寝ぼけ眼で辺りを見渡せば徐々に目が闇に慣れてきて、部屋の中の様子が見えてきた。
綺麗に並べ敷かれた布団には寝食を共にするルームメイト達が、穏やかな寝息や豪快な鼾を立てながら未だ夢の中を旅していた。
皆一様に熟睡しているようでさっき自分が上げた声で起きた者はおらず、その事に一先ず安心した。
未だバクバクと忙しなく動く心臓。落ち着かせるように深く息を吐き、額にじっとりと浮かんだ汗を拭った。
嫌な、夢だった……。
彼女が……紬ちゃんが泣いている夢だった。
いつも笑顔な彼女が、小さな子供のように目を赤くし嗚咽を上げて泣いていた。
彼女の元へ行こうと必死に足を動かすのに、その足はまるで鉛のように重く、一向に辿り着けなかった。
そして辿り着けないまま、目が覚めた。
「……っ」
もしかして……本当に泣いてるんじゃ……。
相変わらず忙しなく動いたままの心臓を押さえ、そっと布団から抜け出し静かに部屋の外へと出た。
「――あれ?蜂楽くん?」
「……紬ちゃん」
夢の中で泣きじゃくっていた人物、紬ちゃんと通路で鉢合わせた。
今まさに彼女の部屋へ向かうところだっただけに、その紬ちゃんが突然目の前に現れて驚いた。
「どうしたの?まだ起床時間には少し早いけど…」
'お寝坊さんな蜂楽くんにしては珍しいね'、そう言ってクスクス笑う紬ちゃんの目はあの夢のように赤くもなければ、涙一滴すら流れていなかった。
っ……良かった。いつもの紬ちゃんだぁ…。
「ちょ、ちょっと蜂楽くん!?」
紬ちゃんの存在を確かめるように、彼女の体を引き寄せて抱きしめた。
「本当に、良かったぁ…」
夢の中では触れることすら出来なかった彼女。
でも今はちゃんと、自分の腕の中にいる。
抱きしめる腕にどんどん力が入っていく。
「ば、蜂楽くん…っ。痛いよ…」
「ごめん……。でもお願い……。今だけ我慢して……」
「…どうしたの?何か怖い夢でも見た?」
さっき見た夢の映像が脳内で再生される。
「っ……紬ちゃんが」
「え?私?」
「紬ちゃんが…泣いてる夢、見た…」
「えぇっ?」
まさか自分が泣いている夢とは思っていなかったのか、腕の中に収まる紬ちゃんは驚きの声を上げた。
「なんで泣いてるのかは、分かんないんだけど…紬ちゃんがずっと泣いてて……」
「うん」
「俺が'紬ちゃん!'って呼びかけても、全然紬ちゃんに届かなくて…」
「うん」
「紬ちゃんのこと捕まえようとしても全然追いつかなくて……」
話している間、紬ちゃんはずっと'うん、うん'と相槌を打ってくれていた。
それがなんだか母親のようで、とても心地良かった。
今自分は抱きしめている側なのに、紬ちゃんに抱きしめられているような感覚になった。
「俺、紬ちゃんが本当に泣いてるんじゃないかと思って…」
「それで心配して来てくれたの?」
顔を上げた紬ちゃんにコクッと頷けば…
「ありがとう、蜂楽くん」
瞬きを数回した後、彼女はふわりと笑顔を浮かべお礼を言ってきた。
「…もしかしたら私、本当に蜂楽くんの夢みたいに泣いてたかもしれない」
「紬ちゃん…?」
「時々ね、どうしようもなく心細くなる時があるんだ」
「え……?」
「なんだか私一人だけが、どんどん取り残されていくような気がするから……」
瞬間、泣きじゃくる紬ちゃんの顔が過ぎった。
あんな風に泣いてる紬ちゃんなんて……見たくない。
「っ…俺がすぐ駆けつけるから!」
「え?」
「紬ちゃんが泣いてたら、すぐに駆けつけるから!」
「蜂楽くん…」
辛い時は俺がすぐに駆けつけるから。
辛い時は俺が抱きしめてあげるから。
君が何処にいようとも、必ず俺が君の元へ飛んでいくから。
だからお願い、泣かないで。
ずっとずっと、俺の側で笑っていてよ。
「夢の中へだって何処へだって、すぐに駆けつけるから」
そして俺が、幸せな夢に変えてあげるから。
「…ふふっ。夢の中に蜂楽くんが来てくれたら、幸せな夢が見れそう」
君の為なら俺は、夢さえも操りたい――。
…紬ちゃん?
―ひっく…ふぇ…ひっ…―
紬ちゃん、なんで泣いてるの?
―うぅっ……ひっ……くっ…―
…ねえ、紬ちゃん。紬ちゃんってば!俺の声聞こえないの!?
―ふぇ…っ、ひっく…うっ―
紬ちゃん返事してよ!!紬ちゃんってば!!ねえっ!!
「――紬ちゃんっ!!!!」
泣きじゃくる彼女の名前を叫び、勢いよく飛び起きた。
寝ぼけ眼で辺りを見渡せば徐々に目が闇に慣れてきて、部屋の中の様子が見えてきた。
綺麗に並べ敷かれた布団には寝食を共にするルームメイト達が、穏やかな寝息や豪快な鼾を立てながら未だ夢の中を旅していた。
皆一様に熟睡しているようでさっき自分が上げた声で起きた者はおらず、その事に一先ず安心した。
未だバクバクと忙しなく動く心臓。落ち着かせるように深く息を吐き、額にじっとりと浮かんだ汗を拭った。
嫌な、夢だった……。
彼女が……紬ちゃんが泣いている夢だった。
いつも笑顔な彼女が、小さな子供のように目を赤くし嗚咽を上げて泣いていた。
彼女の元へ行こうと必死に足を動かすのに、その足はまるで鉛のように重く、一向に辿り着けなかった。
そして辿り着けないまま、目が覚めた。
「……っ」
もしかして……本当に泣いてるんじゃ……。
相変わらず忙しなく動いたままの心臓を押さえ、そっと布団から抜け出し静かに部屋の外へと出た。
「――あれ?蜂楽くん?」
「……紬ちゃん」
夢の中で泣きじゃくっていた人物、紬ちゃんと通路で鉢合わせた。
今まさに彼女の部屋へ向かうところだっただけに、その紬ちゃんが突然目の前に現れて驚いた。
「どうしたの?まだ起床時間には少し早いけど…」
'お寝坊さんな蜂楽くんにしては珍しいね'、そう言ってクスクス笑う紬ちゃんの目はあの夢のように赤くもなければ、涙一滴すら流れていなかった。
っ……良かった。いつもの紬ちゃんだぁ…。
「ちょ、ちょっと蜂楽くん!?」
紬ちゃんの存在を確かめるように、彼女の体を引き寄せて抱きしめた。
「本当に、良かったぁ…」
夢の中では触れることすら出来なかった彼女。
でも今はちゃんと、自分の腕の中にいる。
抱きしめる腕にどんどん力が入っていく。
「ば、蜂楽くん…っ。痛いよ…」
「ごめん……。でもお願い……。今だけ我慢して……」
「…どうしたの?何か怖い夢でも見た?」
さっき見た夢の映像が脳内で再生される。
「っ……紬ちゃんが」
「え?私?」
「紬ちゃんが…泣いてる夢、見た…」
「えぇっ?」
まさか自分が泣いている夢とは思っていなかったのか、腕の中に収まる紬ちゃんは驚きの声を上げた。
「なんで泣いてるのかは、分かんないんだけど…紬ちゃんがずっと泣いてて……」
「うん」
「俺が'紬ちゃん!'って呼びかけても、全然紬ちゃんに届かなくて…」
「うん」
「紬ちゃんのこと捕まえようとしても全然追いつかなくて……」
話している間、紬ちゃんはずっと'うん、うん'と相槌を打ってくれていた。
それがなんだか母親のようで、とても心地良かった。
今自分は抱きしめている側なのに、紬ちゃんに抱きしめられているような感覚になった。
「俺、紬ちゃんが本当に泣いてるんじゃないかと思って…」
「それで心配して来てくれたの?」
顔を上げた紬ちゃんにコクッと頷けば…
「ありがとう、蜂楽くん」
瞬きを数回した後、彼女はふわりと笑顔を浮かべお礼を言ってきた。
「…もしかしたら私、本当に蜂楽くんの夢みたいに泣いてたかもしれない」
「紬ちゃん…?」
「時々ね、どうしようもなく心細くなる時があるんだ」
「え……?」
「なんだか私一人だけが、どんどん取り残されていくような気がするから……」
瞬間、泣きじゃくる紬ちゃんの顔が過ぎった。
あんな風に泣いてる紬ちゃんなんて……見たくない。
「っ…俺がすぐ駆けつけるから!」
「え?」
「紬ちゃんが泣いてたら、すぐに駆けつけるから!」
「蜂楽くん…」
辛い時は俺がすぐに駆けつけるから。
辛い時は俺が抱きしめてあげるから。
君が何処にいようとも、必ず俺が君の元へ飛んでいくから。
だからお願い、泣かないで。
ずっとずっと、俺の側で笑っていてよ。
「夢の中へだって何処へだって、すぐに駆けつけるから」
そして俺が、幸せな夢に変えてあげるから。
「…ふふっ。夢の中に蜂楽くんが来てくれたら、幸せな夢が見れそう」
君の為なら俺は、夢さえも操りたい――。
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