赤の刺青
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「――触れたら指に棘が刺さるぞ」
刺さるわけがない――。
脅かすような声色で言われた冗談にそう心の中で返し、私は彼の首筋に伸ばしていた手を大人しく引っ込めた。
白く陶器のような美しい肌に彫られた青い薔薇は我が物顔でそこに鎮座し、どうしたものかと視線を彷徨わせたままの私を見つめ返す。
「気になるか?この刺青 が」
「……ほんの少し、だけ」
白い肌と青い薔薇とのコントラストは不気味なくらい美しかった。ただでさえ存在感の塊だというのに、彼の現実離れした美貌も相まってさらにこちらの目を引いた。
ベッドに寝そべっていたカイザーさんは私の言葉に喉の奥で笑うと、鍛えられた腹筋を使い上体を起こし、私にズイッとその美貌を近づけてきた。
「何なら紬も入れてみるか?俺と同じ刺青 を」
口元に弧を描きスルリ…と私の首筋をなぞるカイザーさん。その手つきが妙に艶めかしくて背筋がゾクゾクとした。
「お前なら特別に許してやる」
「っ…丁重にお断りします」
顎をクイッと持ち上げられ、青い双眸が意味深に細められた瞬間に心臓が大きく跳ねて、慌てて言葉を口にする。
その言葉にカイザーさんは、芝居がかった動作でやれやれと肩を竦めた。
「ま、気が変わったらいつでも言え。腕の良い彫り師 を紹介してやるよ」
「だ、だから入れませんっ…!」
大体、そんなもの入れたら確実に私は学校へ行けなくなってしまう…。
「お前の美しい白い肌には、刺青 が映えると思ったんだけどな」
外人だからなのかどうなのか分からないが、彼は何の躊躇いも恥じらいもなく歯の浮くような台詞を口にする。
文化の違いか、はたまた単に私が慣れていないだけか、どちらにせよ恥ずかしいことこの上ない。
「とにかく、本当に入れないですからねっ」
未だ顎にかけられていた手をやんわりと外し、彼の青い目から逃げるように背を向けた。
あの青い双眸に見つめられたら、自分が自分じゃなくなりそうだ。
初めて彼に会ったあの時から、初めて彼に見つめられたあの瞬間から、私を捕らえて離そうとしない……。
「……ああ。そういえば、紬には刺青 なんかよりもずっと似合うモノがあったな」
「?……っ――!?」
突然、自分の左耳に生温かい息が吹きかけられ、私は肩を大きく震わせた。
「Ein Knutschfleck steht dir besser als ein Tattoo 」
低く、色気を孕んだ声で彼はそう囁き、ヌルリ…と私の耳を厭らしく舐めてみせた。
「青 より赤 の方が紬をより美しくさせる」
「カイザー…っ、さん……」
白く細長い指で再び顎を掬われ、私はあの青い目に捕らえられた。
「次は身体のどこに付けようか?なあ、紬――?」
そう言ってカイザーさんは、私の身体に散りばめられた無数の鬱血痕の一つをなぞった――。
刺さるわけがない――。
脅かすような声色で言われた冗談にそう心の中で返し、私は彼の首筋に伸ばしていた手を大人しく引っ込めた。
白く陶器のような美しい肌に彫られた青い薔薇は我が物顔でそこに鎮座し、どうしたものかと視線を彷徨わせたままの私を見つめ返す。
「気になるか?この
「……ほんの少し、だけ」
白い肌と青い薔薇とのコントラストは不気味なくらい美しかった。ただでさえ存在感の塊だというのに、彼の現実離れした美貌も相まってさらにこちらの目を引いた。
ベッドに寝そべっていたカイザーさんは私の言葉に喉の奥で笑うと、鍛えられた腹筋を使い上体を起こし、私にズイッとその美貌を近づけてきた。
「何なら紬も入れてみるか?俺と同じ
口元に弧を描きスルリ…と私の首筋をなぞるカイザーさん。その手つきが妙に艶めかしくて背筋がゾクゾクとした。
「お前なら特別に許してやる」
「っ…丁重にお断りします」
顎をクイッと持ち上げられ、青い双眸が意味深に細められた瞬間に心臓が大きく跳ねて、慌てて言葉を口にする。
その言葉にカイザーさんは、芝居がかった動作でやれやれと肩を竦めた。
「ま、気が変わったらいつでも言え。腕の良い
「だ、だから入れませんっ…!」
大体、そんなもの入れたら確実に私は学校へ行けなくなってしまう…。
「お前の美しい白い肌には、
外人だからなのかどうなのか分からないが、彼は何の躊躇いも恥じらいもなく歯の浮くような台詞を口にする。
文化の違いか、はたまた単に私が慣れていないだけか、どちらにせよ恥ずかしいことこの上ない。
「とにかく、本当に入れないですからねっ」
未だ顎にかけられていた手をやんわりと外し、彼の青い目から逃げるように背を向けた。
あの青い双眸に見つめられたら、自分が自分じゃなくなりそうだ。
初めて彼に会ったあの時から、初めて彼に見つめられたあの瞬間から、私を捕らえて離そうとしない……。
「……ああ。そういえば、紬には
「?……っ――!?」
突然、自分の左耳に生温かい息が吹きかけられ、私は肩を大きく震わせた。
「
低く、色気を孕んだ声で彼はそう囁き、ヌルリ…と私の耳を厭らしく舐めてみせた。
「
「カイザー…っ、さん……」
白く細長い指で再び顎を掬われ、私はあの青い目に捕らえられた。
「次は身体のどこに付けようか?なあ、紬――?」
そう言ってカイザーさんは、私の身体に散りばめられた無数の鬱血痕の一つをなぞった――。
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