ティル・ナ・ノーグにて待つ
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自室へと続く長い廊下を一歩、また一歩と足を踏み出す度に体に疲労感がのし掛かってくるようだった。
青い監獄 に来てからどれくらい時が経ったのだろう。
外部とは完全に隔離された世界。生活感の一切を排除された空間で日々を過ごす。
最初は正直気が可笑しくなりそうだった。
絵心さんの独断と偏見でもう一人のマネージャーに選ばれ、言われるがままにマネージャー業務という名の雑務を熟す。
泣き言を言っている暇すらないほど毎日が目まぐるしく過ぎ去っていく。
この青い監獄 ではサッカーが全てだ。
サッカーに己の全てを捧げひたすらサッカーに心血を注ぐ。
此処ではサッカー以外の物など足枷でしかない。
「え……?」
「やっほー紬」
鉛のように重くなる体を半ば引きずるようにして廊下を歩き、やっと自室が見えてきたところで口から間の抜けた声が出た。
自室の前、壁に体を預け此方に緩く手を振る人物がいた。
「誠士郎くん!!どうしてここにいるの!?」
努めて小声で問い詰める。
仄暗い廊下。就寝時刻はとっくに過ぎている。
闇に支配されようとしている青い監獄 には場違いも場違いな存在の彼。
…最も、凪誠士郎にとってそんな事はどうでもいい事らしいが。
「んー、紬に会いたくなったから」
能天気なその発言に疲労で重かった体はさらに重さを増した気がした。
「と、とにかく部屋の中入って!!」
「いえっさー」
どこまでも能天気な誠士郎くんに呆れつつ、彼を自室へと押し込んだ。
「こんなところ見られたら大問題だよ……」
この監獄ではサッカーが全て。
サッカーの為に生きる。それが青い監獄 という場所だ。
サッカーに必要の無い雑念などは排除せねばならない。
それなのに……
「仕方ないじゃん。どうしても寝る前に紬の顔が見たかったし」
'アサガエリなんてことはしないから'と、とんでも発言をし大型犬の如く後ろから抱きついてきた誠士郎くん。
'朝帰り'なんて言葉一体どこで覚えたのか…。
肩口に顔を埋めて鼻をスンスンとさせて匂いを嗅ぐ彼にため息が零れた。
せめてもの抵抗と擽ったさから逃れようという思いで身を捩るも、さらに強い力で抱きしめられる。
「あのね、もし自分達の関係が誰かに勘付かれでもしたら…」
「俺ら、ココ追放されっかもね」
「……」
自分がどうなろうがそれは一向に構わない。
しかし誠士郎くんは違う。
彼には素晴らしいサッカーの才能がある。
自分との事が知れ渡れば、彼のサッカーはそこで終わってしまう。
やっと彼がサッカーに興味を持ち始めたのに。やっとサッカーの面白さに気付いたのに…。
……自分の存在が彼の未来を潰してしまう。
こんな事でダイヤの原石を唯の石ころにする訳にはいかないのだ。
「でもさ、紬が好きすぎて自分で自分が制御出来ないんだよね」
「っ……」
吐息混じりに呟かれた言葉に心臓が大きく脈打った。
そのままくるりと体を反転させられ、今度は正面から抱きしめられた。
「せめてこの部屋でだけは許してよ」
「誠士郎…くん…」
「好きだよ紬」
そう耳元で囁かれてはもう何も言えなかった。
募りに募った彼への想いはやがて、彼の大きな背中に手を回すという行動に変わっていた。
…二人だけ。此処には私と誠士郎くんの二人だけ。
'此処'で起きていることは私達二人だけしか知らない。
呪文のようにひたすら心の中でそう唱え、私はさらに強く彼に抱きつくのだった――。
外部とは完全に隔離された世界。生活感の一切を排除された空間で日々を過ごす。
最初は正直気が可笑しくなりそうだった。
絵心さんの独断と偏見でもう一人のマネージャーに選ばれ、言われるがままにマネージャー業務という名の雑務を熟す。
泣き言を言っている暇すらないほど毎日が目まぐるしく過ぎ去っていく。
この
サッカーに己の全てを捧げひたすらサッカーに心血を注ぐ。
此処ではサッカー以外の物など足枷でしかない。
「え……?」
「やっほー紬」
鉛のように重くなる体を半ば引きずるようにして廊下を歩き、やっと自室が見えてきたところで口から間の抜けた声が出た。
自室の前、壁に体を預け此方に緩く手を振る人物がいた。
「誠士郎くん!!どうしてここにいるの!?」
努めて小声で問い詰める。
仄暗い廊下。就寝時刻はとっくに過ぎている。
闇に支配されようとしている
…最も、凪誠士郎にとってそんな事はどうでもいい事らしいが。
「んー、紬に会いたくなったから」
能天気なその発言に疲労で重かった体はさらに重さを増した気がした。
「と、とにかく部屋の中入って!!」
「いえっさー」
どこまでも能天気な誠士郎くんに呆れつつ、彼を自室へと押し込んだ。
「こんなところ見られたら大問題だよ……」
この監獄ではサッカーが全て。
サッカーの為に生きる。それが
サッカーに必要の無い雑念などは排除せねばならない。
それなのに……
「仕方ないじゃん。どうしても寝る前に紬の顔が見たかったし」
'アサガエリなんてことはしないから'と、とんでも発言をし大型犬の如く後ろから抱きついてきた誠士郎くん。
'朝帰り'なんて言葉一体どこで覚えたのか…。
肩口に顔を埋めて鼻をスンスンとさせて匂いを嗅ぐ彼にため息が零れた。
せめてもの抵抗と擽ったさから逃れようという思いで身を捩るも、さらに強い力で抱きしめられる。
「あのね、もし自分達の関係が誰かに勘付かれでもしたら…」
「俺ら、ココ追放されっかもね」
「……」
自分がどうなろうがそれは一向に構わない。
しかし誠士郎くんは違う。
彼には素晴らしいサッカーの才能がある。
自分との事が知れ渡れば、彼のサッカーはそこで終わってしまう。
やっと彼がサッカーに興味を持ち始めたのに。やっとサッカーの面白さに気付いたのに…。
……自分の存在が彼の未来を潰してしまう。
こんな事でダイヤの原石を唯の石ころにする訳にはいかないのだ。
「でもさ、紬が好きすぎて自分で自分が制御出来ないんだよね」
「っ……」
吐息混じりに呟かれた言葉に心臓が大きく脈打った。
そのままくるりと体を反転させられ、今度は正面から抱きしめられた。
「せめてこの部屋でだけは許してよ」
「誠士郎…くん…」
「好きだよ紬」
そう耳元で囁かれてはもう何も言えなかった。
募りに募った彼への想いはやがて、彼の大きな背中に手を回すという行動に変わっていた。
…二人だけ。此処には私と誠士郎くんの二人だけ。
'此処'で起きていることは私達二人だけしか知らない。
呪文のようにひたすら心の中でそう唱え、私はさらに強く彼に抱きつくのだった――。
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