王子様のキスはまだ先
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自主練終わり――。
フィールド内にハッ…!ハッ…!という自分の荒い呼吸音が響き渡る。全身から噴き出す汗をグイッと手で乱暴に拭いながら、目当ての人物がいる方向へと視線を向けた。
「…やっぱり寝てる。だから無理に付き合わなくていいって言ったのに。おーい、紬ちゃーん」
フィールドの隅っこで穏やかな寝息を立てて眠りこけている彼女にそう声をかけるも、まだ夢の中を旅しているらしく戻って来そうにない。
「紬ちゃーん。おーい……駄目だ。全然起きないわ」
―私もマネージャーとして、少しでも潔くんの役に立ちたい―
そう言って聞かなかった紬ちゃん。
普段あまり主張をすることがない彼女なだけに、これには自分も少しばかり驚いた。
個人的には紬ちゃんに風邪を引かせたくないから、自分の練習に遅くまで付き合う必要はないと言ったのに、それでもこうして付き合うことを許してしまったのは、やはり彼女の思いが単純に嬉しかったからで…。
惚れた弱みなのか結局紬ちゃんに甘い自分に対してやれやれといった表情でため息をつき、視線を再び紬ちゃんからフィールドへと移した。
伽藍とした無機質な空間。彼女にとってはこの青い監獄 自体が‘怪物’そのものだろう。
そんな怪物の中で女の子1人っきり……。きっと、俺たち以上に神経擦り減らしてんだろうな……。
糸が切れた玩具ならぬ緊張の糸が切れたように眠りこける紬ちゃんを見つめ、グッと背伸びを一つした。
体を動かす度に色んな関節が音を立て、無心で練習してきた疲れが今になって波のようにどっと押し寄せてきた。
最後に首をコキコキと鳴らし肩を回せば、幾分かは楽になった気がする。
そのまま脱力するかの如くその場に仰向けで寝転び、顔を左横に向け彼女の顔をジッと見つめる。
「それにしても……気持ち良さそうな顔して寝てんな〜」
あまりにも気持ち良さそうに眠る紬ちゃんに、いつの間にか無意識に手を伸ばしていた。
そのまま頬に指を滑らせれば、その柔らかさと滑らかさに驚いた。
自分とは全然違う、女の子特有の柔らかさ。
「……」
'愛しい'
その感情は泉のように湧き出てきては止まらなかった。
初めて出来た大切な存在。
家族以外でそう思えた唯一の人。
仰向けの体勢のまま体を移動させ、さらに彼女との距離を縮めると、鼻先が触れそうなほど顔を近づけた。
そのまま視線を下へと向け、桜色のそれに落とした。
―ドクン……ドクン……―
まるで鼓膜のすぐ近くに心臓があるのではないかと錯覚しそうなくらい、自分の心音が五月蝿い。
今、俺は何を考えている……?
その問いかけに対する答えはとっくに出ているくせに、見まいとしてあえてそれから目を背けている自分がいた。
俺は……今……紬ちゃんに……。
瞬間、閉じられていた瞳がゆっくりと開き、おとぎ話のお姫様のように紬ちゃんが目を覚ました。
開かれた大きな瞳。その瞳の中の自分は今まで見たこともない表情をしていた。
「いさぎ、くん……?」
「お…はよ……紬ちゃん……」
数回パチパチと瞬きをしてから、もう明らかにおはようではないと分かってはいるが、何食わぬ顔で目覚めの挨拶をした。
焦点が合わないまま寝ぼけた表情でボーッと自分を見る紬ちゃんだったが、次第にいつものふにゃりとした笑顔へと変わっていく。
「潔くん……練習お疲れ様ぁ…」
「うん」
寝起き特有のふにゃふにゃとした喋り方で労いの言葉を口にする紬ちゃんに、努めて穏やかな笑顔を浮かべた。
「…練習、終わったから。もう部屋戻ろ?俺、紬ちゃんの自室まで送るよ」
「そっか……。ごめんね…いつの間にか寝ちゃって…。ハアァァ……自分で言い出したくせに駄目だね……。あぁ〜……ほんっと私って駄目だぁ〜……」
起き上がるなり頭を抱え込む紬ちゃん。
‘バカバカバカ…’と自分を叱責する責任感の強い彼女に思わず苦笑した。
「いーって。紬ちゃんがいてくれるだけで、俺はモチベ上がるから」
「いてくれるだけでって……な、なんで…?」
「なんでって……」
それは……それは……。
「――内緒!」
……今はまだこの想いも、眠る君にしようとしていたことも、全て――。
フィールド内にハッ…!ハッ…!という自分の荒い呼吸音が響き渡る。全身から噴き出す汗をグイッと手で乱暴に拭いながら、目当ての人物がいる方向へと視線を向けた。
「…やっぱり寝てる。だから無理に付き合わなくていいって言ったのに。おーい、紬ちゃーん」
フィールドの隅っこで穏やかな寝息を立てて眠りこけている彼女にそう声をかけるも、まだ夢の中を旅しているらしく戻って来そうにない。
「紬ちゃーん。おーい……駄目だ。全然起きないわ」
―私もマネージャーとして、少しでも潔くんの役に立ちたい―
そう言って聞かなかった紬ちゃん。
普段あまり主張をすることがない彼女なだけに、これには自分も少しばかり驚いた。
個人的には紬ちゃんに風邪を引かせたくないから、自分の練習に遅くまで付き合う必要はないと言ったのに、それでもこうして付き合うことを許してしまったのは、やはり彼女の思いが単純に嬉しかったからで…。
惚れた弱みなのか結局紬ちゃんに甘い自分に対してやれやれといった表情でため息をつき、視線を再び紬ちゃんからフィールドへと移した。
伽藍とした無機質な空間。彼女にとってはこの
そんな怪物の中で女の子1人っきり……。きっと、俺たち以上に神経擦り減らしてんだろうな……。
糸が切れた玩具ならぬ緊張の糸が切れたように眠りこける紬ちゃんを見つめ、グッと背伸びを一つした。
体を動かす度に色んな関節が音を立て、無心で練習してきた疲れが今になって波のようにどっと押し寄せてきた。
最後に首をコキコキと鳴らし肩を回せば、幾分かは楽になった気がする。
そのまま脱力するかの如くその場に仰向けで寝転び、顔を左横に向け彼女の顔をジッと見つめる。
「それにしても……気持ち良さそうな顔して寝てんな〜」
あまりにも気持ち良さそうに眠る紬ちゃんに、いつの間にか無意識に手を伸ばしていた。
そのまま頬に指を滑らせれば、その柔らかさと滑らかさに驚いた。
自分とは全然違う、女の子特有の柔らかさ。
「……」
'愛しい'
その感情は泉のように湧き出てきては止まらなかった。
初めて出来た大切な存在。
家族以外でそう思えた唯一の人。
仰向けの体勢のまま体を移動させ、さらに彼女との距離を縮めると、鼻先が触れそうなほど顔を近づけた。
そのまま視線を下へと向け、桜色のそれに落とした。
―ドクン……ドクン……―
まるで鼓膜のすぐ近くに心臓があるのではないかと錯覚しそうなくらい、自分の心音が五月蝿い。
今、俺は何を考えている……?
その問いかけに対する答えはとっくに出ているくせに、見まいとしてあえてそれから目を背けている自分がいた。
俺は……今……紬ちゃんに……。
瞬間、閉じられていた瞳がゆっくりと開き、おとぎ話のお姫様のように紬ちゃんが目を覚ました。
開かれた大きな瞳。その瞳の中の自分は今まで見たこともない表情をしていた。
「いさぎ、くん……?」
「お…はよ……紬ちゃん……」
数回パチパチと瞬きをしてから、もう明らかにおはようではないと分かってはいるが、何食わぬ顔で目覚めの挨拶をした。
焦点が合わないまま寝ぼけた表情でボーッと自分を見る紬ちゃんだったが、次第にいつものふにゃりとした笑顔へと変わっていく。
「潔くん……練習お疲れ様ぁ…」
「うん」
寝起き特有のふにゃふにゃとした喋り方で労いの言葉を口にする紬ちゃんに、努めて穏やかな笑顔を浮かべた。
「…練習、終わったから。もう部屋戻ろ?俺、紬ちゃんの自室まで送るよ」
「そっか……。ごめんね…いつの間にか寝ちゃって…。ハアァァ……自分で言い出したくせに駄目だね……。あぁ〜……ほんっと私って駄目だぁ〜……」
起き上がるなり頭を抱え込む紬ちゃん。
‘バカバカバカ…’と自分を叱責する責任感の強い彼女に思わず苦笑した。
「いーって。紬ちゃんがいてくれるだけで、俺はモチベ上がるから」
「いてくれるだけでって……な、なんで…?」
「なんでって……」
それは……それは……。
「――内緒!」
……今はまだこの想いも、眠る君にしようとしていたことも、全て――。
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