美麗なる舞姫




町長「えっと、まずフールさんは男女問わず相手を自らの魅力で引きつけ操るというその…なんとも困った力の持ち主という事ですよね?」
フール「ええ、そうよ」


タウンホール内の椅子に腰掛けたフールは長い足を組むと得意げに自らの金髪を軽く指先で靡かせた
ジャックとサリーはそのすぐ傍に腰掛けメイヤーの言葉に耳を傾ける


町長「ですがジャックには効かなかった、それは何故か」


メイヤーの言葉の続きを聞くためにジャック達3人は真剣な表情で彼を見つめる


町長「ジャックが愛や恋といった事柄にとにかくあり得ないくらい鈍いからですよ!!!!」


どうですか!と自慢げに語ってみせたメイヤー

しかしそんな彼の反応とは違い、ジャックとサリーは頭に?をいくつも浮かべている
またフールは全く意味がわからないといった表情
皆の様子を見て予想とは違う反応だと理解するとメイヤーは慌てて言葉を続けた


町長「だ、だからですね!ジャックはとにかくそれはもう本当に信じられないほどそういった事には鈍感なんですよ!そんな人をいくら魅了しようとしても無理じゃないですか!!」


なんだか僕、酷い言われようなんだけど…


メイヤーの連ねる言葉になんとも言えない表情を浮かべる
しかしサリーは真剣な表情を浮かべ呟いた


サリー「…確かにそうかもしれないわ!」


サリー!?


メイヤーの考えにいまいち納得いかなかったジャックだったが、まさかのサリーの賛同の声に驚いてしまう


サリー「町長さんの言う事は間違っていない気がするの、だってジャックがそういう事になかなか気付かないのは私が一番よく理解しているもの!」
町長「でしょう!?」


2人は意見が一致しすっかり意気投合してしまっている

いやいやまさか流石にそれで助かっただなんて事は…

するとフールは両手で顔を覆って声を震わせ呟いた


フール「まさかそんな…誤算だったわ…っ」
ジャック「君もかい!!?」


まさかのフールまでもがその考えに納得してしまい流石のジャックも思わず心の声を口に出してしまう


ジャック「まさかそんな事で僕は助かってたの!?本当に!!?!?」
フール「…た、確かにあり得ないだろうと思うのも無理はないけど…彼の言う事はきっと正しいわ」


フールは立ち上がると一度その場で身を翻した
揺れる金の髪や衣装が美しい


フール「確かにワタシの能力は他者を魅了し性欲を駆り立て支配するもの、でも対象がそもそもそういった事に鈍いのならその影響下に置かれたとしても何も変わらない」


そう告げるとフールはジャックの眼前に顔を近付け指先をその鼻先に軽く押し当てた


フール「鈍感すぎてワタシに魅了されている事自体に気付いていなかったんでしょうね、貴方」


あまりにも鈍い、鈍感などと言われるものだからジャックは少々苛立ち流石に反論の声をあげた


ジャック「そんな事ないと思うけどね」
フール「あら、じゃあ質問よ…今のワタシを見てどう思う?」


言葉と共にフールがその場で華麗に舞った
その動きは繊細なものでサリーとメイヤーは思わず恍惚の表情を浮かべる

ジャック「どうって…素晴らしいなと思うけど」
フール「ほら、それよ」


動きを止めるとその場で軽く手を叩く
すると先程までうっとりとしていたサリーとメイヤーは突然我にかえり何が起こったのかと驚きを露にする


フール「他の二人は今ワタシの虜になっていたわ、けれど貴方は全く違う反応をしていたでしょう?つまりはそういう事なのよ」
ジャック「む…」


ジャックは開きかけた口をそっと閉じた
言われてみればそうなのかもしれない…

散々鈍いと言われ妙に納得しがたいものではあったが、先程の二人との違いを指摘されてはそれ以上何も反論できる余地などなかった


フール「あーあ…まさかこんな結末を迎えるだなんて、残念だわ………さて、それで?ワタシはこれからどうなるのかしら」


監禁?
それとも何かしらの処罰かしら?


そこでサリーはようやく気付いた
彼女は住人達を操り街を支配しようとしたのだ
何かしらの罰は与えられてしまうだろう

静かに視線を上げると、ジャックが難しい表情を浮かべている


ジャック「そうだね、君がやった事はただ謝れば許されるというものではないのは事実だし…」
フール「そうでしょうね、まぁ仕方ないわ…今更抵抗しようにもワタシは能力は優れていても貴方には通じないしそもそも力自体は然程ないもの」


貴方の好きにしてちょうだい


彼女は一切逆らう事なくその場でただジャックの告げる言葉を待った


ジャック「…よし、決めたよ…君への処罰は」


ジャックの口が開かれ彼女へ言葉が告げられる
しかしその言葉は即座に遮られることとなった
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