美麗なる舞姫




ジャック「始まったな」


小鬼達の元気な声が耳に届く
タウンホールへ更に距離を詰めたジャックは地上の様子を覗き込む

集う住人達の中にブギー達が飛び降りたのが見えた
突然の乱入に一座連中が戸惑っているのがわかる
1人の男がブギー目掛け指差すと周囲の住人達が襲い掛かり始めた


町長「だ、大丈夫ですかね…」
ジャック「そう簡単にやられるような軟な奴じゃないですよ」


不安そうに眼をやるとジャックの言葉通りブギー達が盛大に暴れまわっているのが見て取れた

お願いですから街をあまり壊さないように暴れて下さい

メイヤーは内心呟くがすぐにそれは無理かもしれないと考えた
見ていると既に小鬼達が暴れた際に噴水が損壊しなんとも妙な方向に水飛沫をあげてしまっている

…もう見なかった事にしましょう





皆が暴れる光景を眺めていたジャックは続けてタウンホールの入り口に視線を向ける

扉前に構えていた一座連中が住人達だけではどうにもならないと判断したのかブギー達に向け駆け出していく

今ならば誰の眼にも止まらず侵入できるかもしれない


ジャック「町長、準備はいいですか?」
町長「え、は、はい!ですがどうやって中に…」
ジャック「まぁとにかくつかまっていてください」


一体どうやって侵入するのだろう
ジャックの考えがわからず、しかし言われるままにその背にしがみつく

それを確認するとジャックはその場に立ち上がり再度腕を振るう
ソウルラバーが素早くタウンホールへ向け伸び、入り口上の装飾を掴んだ

まさか…

それを見たメイヤーは嫌な予感がしたのかジャックに声をかけようと口を開く

しかしそれ以上喋る事は出来なかった


ジャック「行きますよ!」


メイヤーの言葉より先にジャックが動いた

屋根を蹴るとそのまま飛び降りたのだ
高所から飛び降りたジャックの身体はソウルラバーに引かれそのままタウンホールの入り口へと向かう
素早く勢いのあるその動きに巻き起こった強い風を受け思わずジャックの背から落ちそうになるが、決して離してなるものかと必死に燕尾服を握りしめた





















ジャックが行動を起こすより少し前

屋根から身を投げたブギー達は集う住人達の真っただ中へと飛び降りた
ブギーの巨体が着地すると同時に強い振動と音がする
続けて小鬼達がくるりと一回転すると共に傍にいた住人達の真上へと飛び乗る形となった

小鬼達を受け止める形となった住人達はバランスを崩しその場に倒れ込んでしまう


「な、なんだあいつら…」


突然現れたブギー達に一座連中は驚き狼狽える
反抗していたブラムを捕らえこれ以上逆らうものはいないだろうと油断していたのだ


ブギー「邪魔するぜ~」


ニヤニヤと此方を見ながら軽く手をふるなんとも小馬鹿にした行為
男達はその仕草に思わず苛立つ


「どうするんだ…?」
「明らかに邪魔する気だろ…」
「なぁに、さっさと潰せばいいだけだ」


1人の男が前へと出ると腕を組み立ったままのブギーを指差した


「そいつらもさっさと捕まえてしまえ!」


その言葉と共に住人達の眼が怪しい光を帯びる
すると男の指示の通りに住人達が一斉に襲い掛かった

















騒がしい声が聞こえる
一体何が起こっていんだ

ブラムが微かに目を開く
ぼやけた視界に何かが映る


何とかそれを確認しようと必死に見つめる
そこに見えたのは忙しなく動く住人達

そして続けて素早い何かが視界に飛び込んだ


小鬼達だった

各々が武器を片手に素早く動き住人達を翻弄して回っていた
視界の中央で足を止め振り返った住人の頭に箒を振り下ろすショックの姿が見える


そんな光景をぼんやりと眺めていたブラムはようやく意識がはっきりしたのかしっかりとその目を開いた

ここは一体
よく見るとそこは街の広場

どうやらあの後、足止めに失敗し囚われてしまったようだ

続けてふと見えたのは弟であるクドラクの身体
彼が気絶した自身を抱えているのだとわかった


どうにかその手から逃れなければ

その方法を模索し始めたブラムだったが、次の瞬間凄まじい速度で此方に何かが飛んでくる事に気付く

それは住人の一人だった

しかしそれをどうにか出来るはずもなく、住人の身体がぶつかった
クドラクがその衝撃で足をふらつかせブラムの身体を地に落としてしまう


地面へ落ちたブラムはその痛みに小さく唸りなんとかその身を起こす
すると頭上から聞き覚えのある声が聞こえてきた


ブギー「ん~?お前は他とは違うみてぇだな」


見上げるとそこには此方を見下ろす巨体


ブラム「ブギー…何故ここに?」
ブギー「あーまぁ長い話になっちまうから説明はしねぇ、とにかくさっさとお前も手を貸しとけ」
ブラム「いきなり手を貸せとはいったい」


ブラムと言葉を交わすブギーに背後からクドラクが飛び掛かった
即座に羽交い絞めにしようとするがそれよりも先にブギーが動く
拘束される瞬間、クドラクの身体へ肘打ちをくらわしたのだ
重い一撃を受け思わずよろめいたその隙に素早く振り返ると顔面へと拳を打ち込んだ

防ぐ間もなくまともにその一撃を受けたクドラクの大柄な体は宙を飛び地へと倒れ込んだ


ブラム「そうだ…ジャックは無事なのでしょうか、一体どこに」
ブギー「アイツはあの女の所に行っちまったぞ、で俺達は仕方なく手伝ってやってるってわけだ」


その言葉だけでブラムはようやく今の状況を何とか把握する事が出来た


ブラム「つまりは陽動…ならば」


ブラムは一呼吸置くとその表情を豹変させた
牙を剥き出しにしその指先からは鋭い爪をぎらつかせた


ブラム「ジャックの助けとなるべく私も加勢しなければ」

ブギー「急にやる気になったな、まぁ足手まといにだけはなるんじゃねぇぞ~」


楽し気に笑いながらブギーは再び襲い掛かる住人を軽々と殴り倒す
皆が戦うその場にブラムも勢いをつけ飛び込んでいった
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