美麗なる舞姫




ジャック「うーん…まぁ一応信用してみてもいいかな」
ブギー「とか言いながらジロジロ見てくるんじゃねぇよ」


仏頂面で睨みつけるブギーだったがそんな彼を構う事なくジャックは再び地上に眼をやった

フールは未だにタウンホール内に戻ったままらしく、一座の男連中が住人達に指示をしている姿が見て取れる


さて、どう行動するべきか


考え込みながらジャックは後方に眼をやった
そこに見えたのはメイヤーをからかう小鬼達とその様子を見てニヤニヤと憎たらしい笑みを浮かべているブギー


ブギーは勿論実践経験があり、彼と戦った事もある為その強さは把握している
また影を操る能力は非常に役に立つだろう

小鬼達もブギーほどの強さはないものの各々があの手この手で相手を翻弄する事が可能だろう


これならばいけるかもしれない


ジャック「よし、このメンバーで挑むとしようか」
ブギー「は?おいおい待てよ、俺はやるとは言ってねぇぞ」
ジャック「何だかんだ言って街の事が気になって様子を見に来たんだろう?なら早期解決の為に協力してもらうよ」
ブギー「嫌だっていったらどうするよ」


すると突然ジャックの長い腕が素早く伸ばされブギーの頭をひっつかんだ


ジャック「お前の口から嫌だという言葉がこれ以上出るなら嫌でも協力したくなるように僕なりに手を打たせてもらおうかな」


ジャックの裂けた口が笑みを浮かべる
その表情はまさに誰しもを恐怖に陥れる悪魔の顔
それを見てしまった小鬼達は身震いし思わずからかっていたメイヤーの後ろに身を隠す

あーコイツ本気だ

眼前にあるその骸骨の顔を見てブギーは早々に諦めたのか非常に面倒そうに溜息を洩らした


ブギー「わかった、わかったからとりあえずその顔やめろ、あとさっさと手を離しやがれ」
ジャック「うん、素直で大変よろしい」


求めていた答えを得られ満足したのか満面の笑みを浮かべ掴んでいた頭から手を離した







ジャック「とにかく僕はフールの元へ行かなければならない、ブギーと小鬼達は住人達の注意を引いてほしい」
町長「あ、あの…私はどうすれば…」


ただその場で待つだけなのはどうかと口を開く
しかしそれと同時に小馬鹿にしたような笑い声が返って来た
見るとブギーが腹を抱え笑い転げている


ブギー「お、お前が行ったところで何も出来ねぇだろ!笑わせるんじゃねぇよ腹がよじれちまう!」
町長「し、失礼な!私にも何か出来る事があるかもしれないじゃないですか!!…たぶん」


今度はブギーと共に小鬼達までもが愉快そうに笑いだした


ショック「アンタが来たところで足手まといじゃないの!」
ロック「あははは!無理無理!」


ジャック「うーん、そうだなぁ…ここから先は危険ですし…やはり町長はここで待っていてもらった方が」


ジャックまでもが皆と同じ意見を口にする

メイヤー自身も彼らが言う事は間違ってはいないとは理解していた
彼らと違い戦えるわけでもなくこういった場ではたいして役にたてる事はないかもしれない

しかし


町長「ジャック、お願いします!彼女の元へ私も連れていってください!」
ジャック「ですが…」
町長「なんとか彼女を説得しこのような事をやめてもらいたいのです!」


彼の身を案じていたジャックだったが、メイヤーは力強く告げると真っ直ぐ此方を見上げていた
その意志はかたく、これ以上何を言っても変わる事はないだろう

仕方ないか

ジャックは諦めわかりましたと頷いて見せた



どれほど危険でも好きな人の為に自ら行動する事をやめさせるなどジャックには出来なかったのだ

もしもフールのような状況にサリーが立ったとしたら

そう考えたらきっと僕も町長と同じ思いで行動するだろう






ジャック「じゃあ作戦をまとめるとしよう」


行動を起こす前にジャックは各自の役割を確認し始めた

まずタウンホール前に集う一座連中や住人達だ
ブギーと小鬼達に好き勝手に暴れ、とにかく注意を引いてもらうのだ

そして手薄となった隙に人目につかぬようタウンホール内にメイヤーと共に侵入する

至ってシンプルな作戦ではあるが、何かしらの準備などをする時間などはない



ブギー「本当に好き勝手にやっていいんだな?」
ジャック「構わない、あ…けど住人達にあまりひどい事はするなよ?」
ブギー「…好き勝手って一体なんだっけな」


少々不満そうに愚痴を漏らしながらブギーは重い腰をあげた
その横についた小鬼達もやる気十分なのか今にも飛び出しそうな勢いだ

ジャックはメイヤーに歩み寄ると骨の手を彼に差し出す


ジャック「僕達はもう少し距離を詰めて機会を伺う、町長…一先ず移動しましょう」
町長「は、はい!」


慌てて差し出された手を掴むとメイヤーの身体は軽々と宙に舞った
ジャックがその身体を引っ張り上げ自らの背に背負ったのだ
同時に大きく腕を振るうとソウルラバーを別の家の屋根へと引っ掻ける

屋根を強く蹴るとそのまま宙を飛びその場から離れていった



ブギ-「さぁて…」


その場に残されたブギーは腕を軽く回し軽く準備運動を一つ
拳同士を打ち付け地上を睨みつけた


ブギー「行くとするか…お前ら!さっさと終わらせちまうぞ!好きなだけ暴れろ!!」
小鬼「「「Wheeee!!」」」


元気よく聞こえたその掛け声に合わせ、ブギー達は屋根の上から住人達の中へと勢いよく飛び降りて行った
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