欺瞞の薔薇




エボニータウンへと到着したブギーとウェーレン
二人は家の中へと入るとソファに腰を下ろし一息つく


そこで早速と言わんばかりにウェーレンが声をかけた


ウェーレン「さぁ家に着いたんだ、そろそろ話を聞かせてくれないか?」
ブギー「おま…少しはゆっくりさせろっての」
ウェーレン「あのなぁ、こうしている間にもジャックが大変な目に合ってるかもしれないんだぞ!?」
ブギー「だから安心しろって、そうはならねぇよ」


ブギーはそう告げると腹が減ったのか食料を探そうと立ち上がる
ウェーレンは彼の言葉の意味が理解できず慌ててその後を追う

戸棚を開き何か食料はないかと漁りだす
ウェーレンはその勝手な行動を咎める事はなかった
その代わりに再度ブギーへと問いかける


ウェーレン「なんでそうならないと言えるんだ?」
ブギー「はぁ~…しょうがねぇなぁ……お前、俺の得意な事ってなんだか知ってるか?」


ブギーの得意な事
ウェーレンは暫し考え込む
今まで噂でしか聞いていなかったブギーはギャンブル好きの悪党
しかし実際に会ってそれは確かに間違いではないがそれ以上に多くの面を見る事となった


ウェーレン「…料理??」
ブギー「間違っちゃいねぇがそれでどうやって安心しろってんだよ…」
ウェーレン「…意外と世話好き」
ブギー「得意な事って言えんのか?それ…そうじゃなくてだなぁ、俺が得意としている戦闘スタイルってやつだ」


そこでウェーレンはある事を思い出した
それは最初に自身の工房に訪れたジャック達と会話を交わすようになった際の事


ウェーレン『それにしてもあのジャック・スケリントンとウギー・ブギーが一緒に並んでるだなんて…よく考えたら凄い光景だなぁ』
ジャック『そうかい?ハロウィンタウンでは割と普通だけど』
ウェーレン『すまない、其方ではそうかもしれないが他の街の連中はそんな光景を見る機会なんてないからな』
ブギー『そう言われてみりゃ確かにそうかもなぁ…ちなみに実際に会うまで俺達の事をどう思ってたんだ?お前』
ウェーレン『え、そりゃぁあのジャック・スケリントンだぞ?想像より細身でちょっと強そうには見えないというか正直怖いとは思わなかったけど……あ、悪い』
ジャック『うーん、まぁ普段はあまり怖いとは
言われないからなぁ』
ブギー『こんな丸っこい顔だしなぁ~!』


そして二人は工房内であろう事か争いを始めてしまったのだ
原因は明らかにブギーのあの一言
その後二人が互いを見合って笑顔で立ち上がったかと思えばこのありさま
ウェーレンには二人を止める事など出来るわけもなくせめて巻き込まれないようにと距離を置いてその争いを眺めた

ジャックはその身軽さを最大の武器とし相手の攻撃を軽やかに交わしては素早い一撃を繰り出す
それと同時に少々魔法も使用しているようだが一応加減はしているようだ

片やブギーはジャックの素早い攻撃を必死に交わしながらも時折隙をついては重い一撃を繰り出す
素早さはジャックほどはないもののそれを補う程の力がある
そして魔法に対しては影を操り…

そこでウェーレンはようやく気付いた


ウェーレン「…影?」
ブギー「おう!まさにその通り、俺はまぁ所謂影使いみてぇなもんだ」
ウェーレン「けど…それがどういう」


ブギーはしょうがねぇとウェーレンへ語りだした
山頂へ訪れる前、森の中での出来事
獣の手から逃れたブギーは自らが生み出したシャドーである事
そのシャドーが姿を眩ました際、グリアスの影へと入り込んだ事


ウェーレン「つまり…その影、シャドーは公爵の影に入り込んでるのか?」
ブギー「そういう事だ…シャドーは俺の一部みてぇなもんだからな、いつでも内情把握が可能なうえにもしも何かあった場合はシャドーが盾になる」


ウェーレンは呆然としていた
まさか既にそこまで手を打ってあるとは思いもよらなかったのだ


ウェーレン「そんなに前から手を回していたのか…凄いな」
ブギー「褒めても何も出ねぇぞー?さてと…とりあえず今の状況でも確認してみるかねぇ」


ブギーはある物を取り出した
それは一枚のカード
ただのトランプのように見えるそれは何の絵柄もないただの白
ブギーはそれをじっと見つめる

すると何も描かれていないカードに何かが浮かび上がった
まるで水面のように緩やかに波打つと、そこに映し出されたのはジャックの姿
そしてその傍へと歩み寄るグリアス


ウェーレン「これは…」
ブギー「なんだありゃぁ…黒薔薇?相変わらず変わった趣味してやがんなコイツ」
ウェーレン「大変だ…助けに行かないと!」


そう言うと同時にウェーレンは慌てて家から飛び出していった


ブギー「は?…………っておいおいおい!ちょっと待ちやがれ!」


突然のその行動に一瞬呆気に取られていたブギーは数秒程遅れたところでようやくその後を追いかけた

テーブルの上に舞い落ちたのは一枚のカード
それは先程ブギー達が見つめていたもの
そのカードには未だにジャック達の姿が映し出されていた
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