矮小猫のおまじない




ブギー「あーこれで平和な日常ってやつが戻ってきちまったわけか」


ブギーは何処かつまらなそうに呟く


ジャック「ダンタリアンが帰ったのに喜ばないんだな」
ブギー「あの野郎は嫌いだ…けどいざいなくなると刺激が足りなくてつまらねぇ」


腕を組みそっぽを向いて答える
素直に寂しいって言えばいいのに
そう思いジャックは苦笑した


ブギー「…さーて、小鬼共が待ってるだろうし帰るとするかねぇ」
ジャック「君がいなくてお腹すかせてるんじゃないかい?」
ブギー「今頃家で騒ぎまくってるだろうよ」


背を向けるとそう告げジャック達に向け右手を軽くひらつかせ歩き出す




ジャック「じゃあ、僕達も帰ろうか」
サリー「ええ、そうね…魔女さん、行きましょう」


魔女はコクリと頷くと先に歩き出したジャック達の後へと続いた










魔女「あ」


ジャックの家の前まで来たところで魔女が何かを思い出し声をあげる
どうしたんだろうと2人が振り返ると魔女は何やら一人オロオロしている


ジャック「どうしたんだい?」
魔女「あ、あの…呪いの解呪は無事済ませましたけど…レライエ様との約束が」


魔女はレライエと約束を交わしていた
呪いの解呪後、この街に在住し働く
その事を思い出したのだ


サリー「ジャック、これは貴方が決めるべきだわ」
ジャック「そうだね…………そうだ!」


何か思いついたらしくジャックが笑顔で魔女を見た
魔女は一体どんな仕事を任されるのかと少々不安な様子


ジャック「君に是非任せたい仕事があるんだ!」
魔女「わ、私どんな事でもやります!汚れたり力のいるような仕事でも断ったりしません!」


するとジャックは違うと首を振った


ジャック「君には是非この街で商売を始めてほしいんだ」
魔女「商売…ですか?」
ジャック「そう、君が作った物を以前見たけどどれも素晴らしい出来だった!それをこの街で作って皆に売ってほしいんだ!」


しかし魔女は浮かない顔
自分の商品はこの街の住人には受け入れられなかった
そして修行中の身である自身が作る物は時には変な魔力がかかる事がある
呪いを持ったものも生み出してしまう事があるのだ
そんな物を売ってしまっては住人達が困ってしまう


魔女「ですが…また呪いがかかった物ばかり出来てしまっては皆さんにご迷惑が」
ジャック「そこで、まずはウィッチズの元で修業を積んでみてはどうかなと思うんだ」


この街に在住し店を構える魔女達
彼女達は魔女の中では優秀な者達だ
ありとあらゆる魔法具などの知識を有しており、営業の為に手助けを求めているところだ


魔女「…私みたいな未熟な者でも大丈夫でしょうか」
サリー「魔女さん、大丈夫よ!貴方はジャックの魔力を取り戻した…私は未熟だなんて思わないわ」


サリーの言葉に不安な表情を浮かべていた魔女が笑顔を咲かせる


ジャック「でもまずは町長に話をしておかないといけないから今日は一日ゆっくりしてくれ、解呪の件もあって疲れただろうしね」
魔女「…はい、ありがとうございます!!」


魔女が元気を取り戻した事に安心したジャックは家の中へと足を踏み入れようとした
しかしそこでふと振り返る

サリーが何故かついて来ないのだ


ジャック「サリーどうしたんだい?」
サリー「…ジャック、私…研究所に戻らないと」
ジャック「そうか、博士に食事を作らないといけないよね」


するとサリーは悲し気な表情で首を横に振った


サリー「貴方は元の姿に戻った、つまり私が貴方を支える必要がなくなったという事なの」
ジャック「あ…」


サリーの言葉を聞いてジャックは思い出した
彼女は小さくなった自身の支えになるようにと博士に言われ来たのだ
短い時間ではあったが共に過ごすうちにそれが当たり前のように感じてしまっていた
今の自分は元のジャック・スケリントン
つまり彼女は博士の元へと戻らなければならない


ジャック「サリー…」


俯くサリーの手をそっと握る
何も遠く離れた場所にいく訳ではない
しかし二人にとって共に過ごせないという事実がとても悲しいものだった


魔女「あの…お二人は別々に住んでいるのですか?」
ジャック「そうなんだ…彼女は元の場所へと戻らなくてはならない」
魔女「私勘違いしてました…お二人は既にご結婚されているのかと」


魔女のその言葉に2人は驚き数度瞬く


魔女「だってお二人とも私が来た頃には一緒に住んでいらっしゃいましたし、寝床を共にしていらっしゃるんでしょう?…私ったら勘違いしちゃって…」


魔女は自分の勘違いを恥ずかしそうに語る


結婚

その言葉にサリーは溜息を吐いた
今すぐにでもそうなってくれれば
そうすれば彼と片時も離れる事無く済む


するとサリーの手を握るジャックの手に微かに力がこめられた


ジャック「そうか…そうだったんだ!」
サリー「ジャック、どうしたの?」
ジャック「サリー!今から僕と一緒に博士の元へ行こう!!」
サリー「え、一体どうしたの…きゃっ!」


サリーの問いかけに答えずジャックは突然彼女を軽々と抱き上げた
そしてそのまま博士が待つ研究所へと走り出した


残された魔女は1人呆然とそれを見つめていた


魔女「…私何か変な事を言ってしまったのかしら」


腕の中にいるカイヤにそう語り掛けるとカイヤはご機嫌な様子で彼女を見つめた
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