矮小猫のおまじない
自宅を飛び出したジャックは門の隙間から広場の様子を伺う
そこには楽し気に行き交う住人達の姿
ジャック「大丈夫、僕ならきっと出来るはず」
改めてフードを深めに被り直し、ジャックは門を開くと勢いをつけて飛び出した
目指すは博士のいる研究所
行き交う住人達から出来るだけ距離を取るよう気を付けながら駆け抜けていく
しかしそこでジャックの予想外の出来事が起きた
長いコートの裾が足に絡まる
まずいと思った瞬間、目の前に地面が迫ってきた
ウェアウルフ「あ?」
ハーレクイン「何かあったかー?」
ウェアウルフがある方を指差す
その先には何やら地面に転がる黒い小さな塊
なんだろうと不思議に思い二人が近付くとそれは黒いコートを着た子供、もといジャックだった
勿論2人はそれがジャックだとは気付いてはいない
ウェアウルフ「おい大丈夫かー?」
ハーレクイン「派手にこけたみたいだなぁ」
ウェアウルフがジャックの首元を掴んで軽々と持ち上げる
まずい
ジャックはそう考え慌ててフードを掴んで顔を覆い隠した
ウェアウルフはそれを不思議に思いながらも持ち上げていた体を地面にそっと下ろす
ウェアウルフ「はしゃいで派手にこけたみたいだなぁ」
ハーレクイン「怪我ないかー?」
外見に似合わず心配そうに子供に語り掛ける2人
ジャックは優しいなぁと思いながら大丈夫と頷いて見せる
ウェアウルフ「そうかそうか!まぁ元気なのはいい事だよなー!」
ウェアウルフの手がジャックの頭をポンと軽く叩いた
その掌は大きく幼くなったジャックの頭をすっぽりと包んでしまう
そのままグシャグシャと少し乱暴に撫でられジャックは戸惑ってしまう
誰かに頭を撫でられるなど今まで経験のない事だ
「あら、何してるの?」
そこに現れたのはウィッチズ
ウェアウルフとハーレクインの傍に見慣れない子供の姿がある事に気付き近付いてきた
トールウィッチ「あらあら、初めて見る子だねぇ」
リトルウィッチ「この街の子じゃないわねぇ、何処から来たのかしら」
やはり2人もその子供がジャックとは気付かず、興味津々な様子で声をかけてくる
なんでみんな集まってくるんだ!
4人にすっかり囲まれた状態のジャックはどうしようと困り果てていた
フードをしっかりと握り、必死に正体を隠す
トールウィッチ「あらまぁ、この子照れてるのかしら」
リトルウィッチ「照れ屋さんなのね~可愛い!」
2人はジャックが恥ずかしがっているものと勘違いし、執拗に接してくる
頼むからやめてくれ!
ジャックは必死にその手から逃れようともがく
ハイド「皆さん随分と楽しそうですね」
するとそこに更に現れたのはミスターハイド
もう僕を解放して、とジャックは項垂れてしまう
ハイド「初めて見る子ですね、私はミスターハイドと言います。どうぞよろしく」
そういってハイドは項垂れていたジャックの手を掴んだ
握手をしようとその手を優しく握る
するとそこでハイドは動きを止めた
それを眺めていた4人はどうしたと次々に覗き込む
ハイドの掌の上には小さな骨の手
ハイド「この子、骸骨なんですね」
その言葉にジャックは慌ててその手を引っ込める
そしてその場を一刻も早く離れようと咄嗟に走り出した
トールウィッチ「あ、そんなに走ると…」
トールウィッチのそんな心配と共にジャックは躓き、再び顔面から転げてしまう
それを見ていたウェアウルフとハーレクインが笑い声をあげた
ハイド「大丈夫ですか?」
ハイドが抱き起そうと近付いてくる
それに気付きジャックは打ち付けた顔も気にせず即座に立ち上がり、長いコートの裾を手繰り寄せ持ち上げた
ジャック「大丈夫だよ!」
だからこっちに来ないで!と声をあげ、とにかく離れようと再び駆け出した
ハーレクイン「こっちに来ないでだって!」
ウェアウルフ「嫌われたなぁハイド!」
ハイド「……嫌われるような事をした覚えはないんですけどね」