矮小猫のおまじない
珍しい訪問者も街を後にし、街は再び平和な日常を取り戻した
ブギーは小鬼達の迎えを受け街を去り、サリーは研究所へ
そしてジャックはゼロと共に自宅へと向かった
螺旋階段を上りジャックは大きく伸びをする
するとゼロが何故かジャックの周囲を執拗に回りだす
ジャック「ゼロ、どうしたんだい?」
ゼロはジャックの頭から足先まで回りながらにおいを嗅ぐ
そして手のにおいを嗅いだ瞬間、ゼロが大きな声で何度も吠え始めた
ジャック「ゼ、ゼロ!?」
一体どうしたんだろう
執拗に吠えるゼロを落ち着かせる為に声をかけるもゼロはまるでジャックに何かを訴えるよう吠え続ける
ジャックは自身の指を見つめる
そこはカイヤに噛まれた部分だった
ジャック「えっと、噛まれた指を心配しているのかい?それなら大丈夫だよ、もう痛くないからね」
そういってゼロの頭を撫でてやる
ゼロは悲しそうな顔で彼を見上げる
ジャック「ああそんな悲しい顔をしないでおくれ…一体どうしてしまったんだろう」
ゼロは知っての通り幽霊犬だ
ジャックと長年連れ添う相棒的存在
他の者はゼロの言葉を理解する事は出来ないがジャックは違う
それは強い絆で通じ合っているからこその事だろう
しかしそれでも完全に理解できるわけではない
ある程度の簡単な言葉ならば理解できるだけなのだ
この時のジャックはゼロが何を言いたいのかは理解出来ていなかった
ただわかるのは自分を心配しているという事だけ
ジャックはとにかくゼロを落ち着かせようとひたすら撫で優しく声をかけ続ける
するとゼロは吠えるのを止め、ジャックの手に自ら頭を擦り付ける
ジャック「いい子だねゼロ…そうだ!今日は仕事もないし久しぶりに一緒に遊ぼうか!」
ジャックのその提案にゼロは嬉しそうに一鳴きしその場でクルリと一回転
墓場でゼロのお気に入り『アバラ骨を投げる遊び』をする為に再び自宅を後にした
魔女「ハロウィンタウン…とてもいい街でした」
次の街を目指して歩を進める魔女は1人呟く
カイヤが小さな声で語り掛けるように鳴き、笑みを浮かべその美しい毛並みを撫でる
魔女「それにしてもカイヤ…もうあんな事は二度としないでくださいね」
その言葉の意味がよくわからずカイヤは可愛らしく首を傾げる
魔女「アナタは普通の猫ではないんですから…あの方、ジャックさんでしたか。彼が無事だったからよかったものの」
溜息を吐くとカイヤは反省したかのように耳を寝かせる
そんなカイヤの身体をそっと抱き、金色の瞳を見つめる
魔女「いいですか?アナタの力は使い方次第ではとても危険なモノ、あのように見境なく興奮しては私の施したまじないの効力だけでは抑えられないモノなのです。アナタは頭の良い子…私の言う事、わかりますね?」
カイヤはコクリと頷いて見せる
魔女はいい子とカイヤの額に口付ける
可愛らしく美しい
私の愛しい獣の子
アナタをこうしてしまったのは私だというのに
アナタはこうやって私を好いてくれる
本来なら私を恨んでもおかしくないのに
本当にごめんなさい
魔女「そうだわ…また今度、ハロウィンタウンを訪れてみましょうか。ね、カイヤ」
カイヤが気に入ったあの素敵な女性ともう一度会えますよ?
そう語り掛けるとカイヤは長い尾を立てニャン!と高い声で鳴いた