矮小猫のおまじない
その後メイヤーはジャックの手を借りて何とか書類の山から脱出する事に成功した
座り込んだ彼にジャックが心配そうに声をかける
ジャック「大丈夫ですか?」
町長「え、ええ…まさか積んでいた書類が倒れてくるとは…」
メイヤーに怪我などがない事を確認したジャックは先程かき分けた書類を見つめる
その量を見て苦笑するとメイヤーへと向き直った
ジャック「町長、こんなにため込んでたんですね」
町長「ええ、まぁ…少しでも処理できればと思って」
彼の気遣いをジャックは嬉しく思った
しかし今の自分はただ小さくなっただけで別に書類処理が出来ないわけではないのだ
ジャック「気持ちは嬉しいですけど流石にこれを一人で…とは無理な気がしますよ?」
町長「うぅ…面目ない事です」
するとジャックは落ちている書類を一枚一枚拾い集め始めた
それを抱えたままメイヤーに向き直る
ジャック「じゃあこうしましょう、町長が書類を読み上げ僕がそれをどう処理するか決める…二人で分担すればこれくらいすぐに終わりますし、どうです?」
そうしてもらえたら僕も助かりますし、同時に貴方も助かる
そう提案するとメイヤーは素晴らしいといわんばかりに明るい表情を見せた
町長「…そうですね!それならば私も手伝えますし正しい処理が出来ます!なんと素晴らしい!」
ジャック「よし、なら早速取り掛かる…前に一度書類まとめましょうか」
そう言われメイヤーは床に出来上がっている書類の山を見つめた
そして暫しの間をあけ、それらを慌ててかき集めはじめた
時刻は昼前
メイヤーの自室に散らばっていた大量の書類は綺麗にまとめられていた
そして机に向かうジャックと書類を読み上げるメイヤーの姿
町長「ふぅむ…ウィッチズの店でのマンドラゴラとトロールの指先の取扱及び販売許可…」
ジャック「マンドラゴラとトロールの指先ですか、まぁ彼女達なら扱い方を心得ているでしょうし問題ないでしょう」
町長「では採用ですね、えー次は……骨ビスケット増量版の取り寄せ?」
ジャック「それはイゴールか子供達のどちらかですね」
次々と書類を読み上げ処理を済ませていく
ふとジャックが壁にかけられている時計に目を向ける
時刻は昼前
処理済みの書類もかなり増え残りはあと半分といったところ
ジャック「ふぅ…今日は随分と数が多いなぁ」
町長「そうですねぇ…少ない時ならたった数枚で済むんですけど」
もう一人くらい手が欲しい所だ
ジャックがそう考えていると外から突然大きな声が聞こえた
何事だと2人が窓を開け外を見下ろす
するとそこにはブギーの姿があった
ブギー「おいジャック!お前に話がある!さっさと降りてこい今すぐにだ!」
ジャック「僕に話?何だろう…」
するとそこでジャックが何かを閃く
そんな彼の表情を見てメイヤーは何かいい案が浮かんだのだろうと確信した
ジャック「やぁブギー、僕に話だって?残念だけど今僕はこの場を離れられないんだ!」
ブギー「いいからおりてこい!」
ジャック「ああそうだ!なんなら君がこっちに上がってきたらどうだ?じゃあ待ってるよ!」
ブギー「は?おいだからお前がおりて…っ」
ブギーの話を遮るようジャックは窓を閉じた
そして何事もなかったかのように書類に向き直る
すると暫くしてドスドスと何かが勢いよく階段を上ってくる音
ブギー「お前が降りてこいっていっただろうが!!」
扉が蹴破られブギーが大声をあげて室内に乱入してきた
メイヤーは2度も蹴破られた扉が壊れないかと悲観の表情を浮かべる
ジャック「やぁブギー!」
ブギー「何いい笑顔してんだ!」
怒りを露にするブギー
そんな彼の怒りなど全く気にする事なくジャックが傍に歩み寄り
ジャック「はい」
書類を手渡した
ブギーは一瞬頭に?を浮かべ何となくその書類を受け取る
するとジャックは再び机へと戻りそんな彼に一言
ジャック「じゃあそっちの処理は任せたから」
ブギー「………はぁっ!!?」
書類を渡され処理を任せるという言葉
それで全てを理解したブギーは渡された書類を机へと叩きつける
その衝撃で机が揺れジャックは危ないなぁとペンを持つ手をとめる
ブギー「なんで俺がこんな事しなきゃならねぇんだ!!」
ジャック「だって僕に話があるんだろう?でも見ての通り今は忙しいんだ、なら君が手伝って早く済ませれば落ち着いて話を聞ける」
ブギー「ぐ……」
ブギーは言葉を詰まらせた
確かにジャックの言う通り忙しいのは理解できた
そして処理を全て済ませるまで彼は自分の話を聞くつもりはないだろう
このまま処理が終わるのを待つとなるとかなりの時間がかかる
ブギー「…今回だけだからな!!」
ジャック「なんなら今後も手伝ってくれて構わないけど」
ブギー「んな事誰がやるか!!」
ブギーは乱暴に机の上にあるペンを取ると床に座り込み渡された書類と睨み合いを始めた
その様子を見ていたメイヤーは大丈夫だろうかとジャックに視線を移す
目が合ったジャックは大成功と言わんばかりの笑顔を返した