矮小猫のおまじない




街へと戻ったジャックは子供達にどう説明しようかと考え込んでいた
素直に箱は危険な物だからと言い聞かせる他ないだろうという考えに至り街の門をくぐる
すると早速ジャックの姿を見た子供達が彼の元へと駆け寄ってきた


コープス「ジャックお帰りっ!」
マミー「ねぇねぇどうだった?」
バッド「箱は取り返せた?」
ジャック「えっと…実は君達に伝えないといけない事があって」


ジャックは子供達が理解できるよう丁寧に事情を説明した
すると最初は落ち込んでいた子供達だったがすぐに笑顔を見せジャックに語り掛けた


コープス「それじゃぁしょうがないよね…でもジャックと一緒に遊べたからいいや!」
マミー「そうそう!すっごく楽しかったよ!」
バッド「大冒険だったよね~」


そんな子供達にジャックは笑みを見せ彼らの頭を撫でた
素直でいい子達だ
子供達は嬉しそうに微笑む
するとそこへ何かあったのか慌てた様子でメイヤーが駆け付ける
息も絶え絶えといった様子だ


町長「ああ、ジャック!戻りましたかっ」
ジャック「町長、どうしたんです?そんなに慌てて」
町長「い、いえ…その」


何か言いにくい事なのだろうか
メイヤーは悲観の表情のまま口ごもる


コープス「実はね、あの後町長とかくれんぼしてたんだ!」
マミー「でも全然みつけられなくて」
バッド「ずーっと町長が鬼なんだよね!」


どうやらブギーの元へ向かってから彼らは街中でかくれんぼをしていたらしい
そしてメイヤーは彼らを一度も見つけられずに今も尚鬼として街を走り回っていた
それで疲れ切っているのか
ジャックはメイヤーの背を軽く擦りながら声をかけた


ジャック「えっと、お、お疲れ様でした町長」
町長「か、彼らは何か特殊な能力でも持っているんですか…全く見つけられませんでした」


子供達が特殊というよりも貴方がこの遊びに不向きなのでは
そう思いはしたが勿論口にはしなかった




その後子供達は各自自宅へと戻る事となり、ジャックはメイヤーと彼らを見送った
残されたジャックも一度家へと戻ろうかと考える
するとメイヤーが声をかけてきた


町長「ああ、ジャック!そういえば魔女の件なんですが」
ジャック「え、もしかしてもう見つかったり」
町長「そ、それは流石に…」
ジャック「ですよね…」


こんなに早く見つかるはずもないか
そう考えながらやはり少し残念そうな表情を浮かべる
そんなジャックを見てメイヤーは少し申し訳なさそうにしながらも声をかけた


町長「た、ただ目撃情報は入手しましたよ!例の魔女じゃないかと思うんですけど」
ジャック「何処で目撃されたんですか?」
町長「それが…」


メイヤーの言葉にジャックは驚いた
目撃された魔女の特徴はジャックの知るものと一致していた
不思議な猫のような生き物を連れた放浪する魔女
しかしその魔女が目撃された場所が厄介だった

それはこのハロウィンタウンから遥か遠く
この世界の大都市であるオクシエントだった
ありとあらゆる種族が行き交う広大な都市だ


ジャック「もうそんなところに…厄介だな」
町長「どうしましょう…オクシエントからは船も出ていますしそこから更に移動されると見つけ出すにはまた時間がかかりますし」
ジャック「……あー…しょうがない、あの手でいくしかないかな」


あの手とはなんだろう
メイヤーは不思議に思いジャックに問いかけようとした
しかしメイヤーの言葉を遮るかのようにジャックを呼ぶ別の声が聞こえた

それはサリーだった
彼女はジャック達の元へと駆け寄ってくると何やら嬉しそな表情で二人を見下ろす


ジャック「やぁサリー、どうしたんだい?なんだか嬉しそうだけど」
町長「いい事でもありましたか?」
サリー「実は…」


そう言うとサリーは何やら抱えていたカゴを二人の前に差し出す
その中にはとても美味しそうな果実がいくつも入れられていた
それはどれもこのハロウィンタウンにはない物だ


サリー「実はこれ、ウィッチズから頂いた物なの!何日か前に他の街を訪ねた時に仕入れた物らしいんだけど、多すぎるからって」
ジャック「へぇ…わ、これなんだか凄く柔らかい」
町長「こっちはものすごく硬いですね」


見た事のない果実に触れるとその形状からは予想できない感触に2人は驚いた


サリー「このまま食べるのが一番いいって教えてもらって、よかったら今から一緒にどうかしら」
ジャック「そうだね、僕もお腹が空いたし」


するとサリーは此方を見ていたメイヤーに声をかける


サリー「町長さんも良かったら一緒に頂きませんか?」
町長「え、でも…いいんですか?」
サリー「だってこんなにあるんですもの、ジャックと2人だけじゃ食べきれないわ」


するとジャックもそれは名案だと頷きサリーに続き声をかける


ジャック「そうですよ!僕の代わりに子供達を見ていてくれたお礼も兼ねて、ね?」
町長「…で、ではお言葉に甘えましょう!」


そう告げるメイヤーは余程嬉しかったのか満面の笑みを見せた
31/64ページ