矮小猫のおまじない
一頻り笑い終えたブギーは怒り狂うジャックを軽々と片手でつまみ上げテーブルの上に座らせた
その扱いに苛立つも話をすすめようとジャックも怒りをおさえブギーと向き合う
ジャック「で、この箱…どうする?」
ブギー「どうするもなにも…鍵なんてないんだろ?なら今はこのままにしとくしかねぇだろ」
ブギーの言う通り、箱を開錠するための鍵は見つけていない
ではこの箱を何処に保管するべきか
ジャック「元あった場所にでも戻す…あー…でも他の誰かが見つけないとも限らないか」
迷いの森は普段住人が近付く事は滅多にない
しかし誰も入れないというわけではない
住人以外の誰かがこの箱を見つけてしまう、という可能性もないわけではないのだ
ブギー「てか宝探しで見つけたって言ってたか?その地図誰が持ってたんだ?」
ジャック「それはコープスメンが……でも何で彼がそんな地図を持っていたんだろう」
最初はコープスチャイルドを喜ばせようと彼が地図を作ったと思っていたが、埋められていたこの箱からして彼が地図を作製したとは考えにくい事だった
ブギー「コープスメンねぇ…あいつがこの箱に関わっているとは思えねぇが」
ジャック「まぁ、今度会ったら一度聞いてみようとは思うけど…とりあえずこの箱をどうするかが問題だろ」
ブギー「本当ならお前が持ってるべきだろうが…」
ジャックを見てブギーは言葉を止める
このような魔力が込められている物ならば本来なら王である彼が管理するのが妥当だろう
しかし今の彼は魔力感知すらままならない状況
ただでさえ怪しいこの小さな箱を預け、もしも何か問題が起きても対処できるのか怪しいものだった
そう考えブギーは箱を取り上げた
ブギー「暫く俺が預かってやる、ありがたく思えよ~」
ジャック「あ、おい!何で勝手に決めるんだ!」
ブギー「今この箱を持つにふさわしいのはこのブギー様だって事だ、お前はさっさとその身体を元に戻すんだな!そうすればお前に渡してやるさ」
ジャックは軽く胡坐をかき納得いかない表情を浮かべる
しかし箱をしまいこむブギーの後ろ姿を見ながら、諦めた様子で頭をかいた
ジャックもブギー同様の考えに至っていたからだ
もしもの事がある上に今はサリーと共に住んでいる
家に持ち帰って何かが起きたとしても、今の自分に彼女を守り切れる保証はなかった
ブギー「なんだ?随分大人しいじゃねぇか」
ジャック「君と同じ考えだからだ…身体が戻るまでは君に預けておくよ」
そう言うとジャックはテーブルから飛び降り腰に手を当てブギーにきつい口調で語り掛ける
ジャック「それと、子分達に少しくらい注意でもしておいたらどうだ?人の物を盗るんじゃないって」
ブギー「あいつらが素直に聞くと思うか?」
ジャック「僕が言ったところで聞かないから君に言ってるんだ、それとも子分のしでかした事の責任…君が取るか?」
そう言われブギーはわかりやすく嫌そうな表情を浮かべた
ジャックが怖いわけではなく、ただ単に責任を取らされる事が面倒だと思ったのだ
ブギー「わかったわかった、言うだけ言っておいてやるよ」
ジャック「しっかり言い聞かせておくんだぞ!」
そう告げながらジャックは侵入した際に割った窓へと向かう
窓枠に軽々と飛び乗り、再度ブギーに振り返る
ジャック「必ずだからな!」
ブギー「わかったって言ってんだろ…ってお前結局そこから出ていくのかよ」
ジャック「ここから出る方が近い!」
その言葉と同時にジャックは窓枠を強く蹴り外へと飛んだ
身体が軽い分跳躍力はあり、軽々と向かい側へと飛び移る
そのまま走り去っていくジャックの後ろ姿を見ていたブギーだったが、ふと足元から視線を感じた
見下ろすとそこにはいつからいたのだろう、小鬼達の姿があった
ロック「親分、ジャックは帰った?」
ブギー「あー今帰ったところだ」
ショック「まさか追いかけてくるなんて思わなかった!まぁ今のジャックならアタシ達3人でやっつけて追い返してるところだけど!」
バレル「そうそう!オレ達なら楽勝で勝てるよ!」
何やら自身の足元で盛り上がっている小鬼達を無言で見下ろす
こいつらを言い聞かせるのか…
ブギーは暫しの間をあけ一番近くにいたバレルの頭に手を置く
そしてその髪を少し乱暴ではあるがわしゃわしゃとかき混ぜるように頭を撫でた
最初は驚いていたバレルだったがその手がブギーの物だとわかると途端に笑顔になった
それを見ていたロックとショックは羨ましいと言わんばかりの視線をバレルへと向ける
ブギー「よく聞けお前ら、ジャックが元に戻るまではとりあえず大人しくしてろ」
ロック「え、でも今ならジャックに勝てるかもしれないのに!」
ショック「そうよ!滅多にないチャンスなのに!」
ブギー「いいから聞け、アイツはちっと面倒な事に巻き込まれてやがる…そんな奴に今手を出してみろ?」
どうなるの?
3人が此方を見上げるとブギーは目を細める
ブギー「アイツの厄介な呪いをもらっちまって最悪お前らが死ぬ」
その言葉に3人は顔を合わせて身震いした
適当な事を言ってみたが予想外な事に効果があったようだ
「「「死んだら親分のシチューが食べられなくなっちゃう!!!」」」
…どうやら彼らは死よりもシチューを食べられない事を恐れたらしい
当初の狙いとは違ったが結果彼らはジャックに余計な事はしないだろう
ブギーはまぁこれでもいいかと納得しロックとショックの頭も撫でてやる
2人は嬉しそうな表情を浮かべ3人はお腹が空いたとせがむ
ブギーは彼らに連れられキッチンへと向かう事となった