矮小猫のおまじない
骸骨姿の鶏のけたたましい鳴き声が聞こえる
その鳴き声を耳にしサリーは薄らと目を開いた
ぼやけていた視界がはっきりとし始めると目の前には寝息を立てるジャックの顔が見える
サリーは驚き声を上げそうになるが慌てて口を塞いでその声を封じる
サリー「…そういえば一緒に寝てたんだわ」
昨夜の事を思い出したサリーは落ち着きを取り戻しふと手元を見る
眠りにつく際と変わらず二人の手は繋がれたまま
そっとジャックへと視線を移すと気持ちよさそうに熟睡している彼の寝顔が見える
その寝顔を可愛く思いつい笑みを浮かべる
するとジャックが微かに身を動かし、閉じられていた眼窩が露となった
ジャック「やぁサリー…もう朝かな」
サリー「ええ、でもまだ起きるには早い時間よ…もう少し眠っても大丈夫じゃないかしら」
ジャック「そぅ…」
それだけ答えるとジャックは余程眠いのだろうか、再び目を閉じ眠り始めた
そんなジャックを微笑ましく見つめるサリー
時刻はまだ6時前
サリーは繋いでいた手を見ると少し勿体ないと思いながらもその手をそっと離した
ジャックを起こさないようにとなるべく音を立てずにベッドからおりる
起こしていないことを確認するとそのまま下の階へと向かった
ジャックが目覚めたのはそれから暫くしてからの事だった
目覚めたジャックは隣にサリーがいない事に気付くと眠たげに目をこすりながらベッドからおりる
何処にいったんだろう
そう考えていると下の階から何やらいい香りがジャックの鼻を掠めた
下の階に降りるとテーブルの上には出来立てだろうか、湯気を立たせる料理が置かれていた
サリー「あら、おはよう」
そんなジャックの元へ現れたのは焼き立てのパンを持ったサリー
テーブルにパンを置くと並べられた朝食を眺め準備が出来た事を確認する
ジャック「おはようサリー、姿がなかったからどこに行ったのかと思ったよ」
サリー「朝食を作っていたの、着替えたら早速食べましょう」
ジャックは素直に頷き着替える為にクローゼットのある上の階へと戻る事となった
着替えたジャックはサリーの元へ戻ると早速椅子に腰掛ける
因みに本日の彼の服は蜘蛛をイメージしたケープ
サリー「そういえば今日は何をするか決めているの?」
朝食に手を付け始めたジャックは何かあったかなと考え込む
そこで昨日、子供達との約束事がある事を思い出した
ジャック「そういえば昨日子供達に遊びに誘われてね、今日行く事になってるんだ」
サリー「まぁそうなの、でも何をして遊ぶのかしら」
ジャック「さぁ…でもあの子達はいい子だから心配ないんじゃないかな」
そう告げながらパンを頬張りスープに口をつける
すると突然女性の甲高い悲鳴が聞こえた
呼び鈴の音
こんな朝から誰だろうか
席を立とうとしたジャックを止め、サリーが玄関へと向かった
扉を開くとそこには3人の子供達の姿
コープス「あれ?サリーだ!」
サリー「おはよう、皆こんなに朝早くどうしたの?」
マミー「ジャックを迎えに来たんだ!」
バッド「今日遊ぶ約束してた!」
朝から元気一杯な子供達
そんな彼らを見てサリーはジャックに声をかける
すると暫くしてバタバタと螺旋階段を落ちてくるジャックの姿
ジャック「やぁおはよう!君達随分と早いじゃないか」
コープス「おはようジャック!だって一緒に遊べるんだよ?それなら早い方がいっぱい時間あるもん!」
早く行こう!
そう急かす子供達に腕を引かれジャックは家から出る事となった
そんな4人を見て微笑み気を付けるよう声をかけサリーは見送った
子供達に連れられやってきたのは街を出てすぐの墓場
ここで何をするのだろうと思っていたジャックは声をかけてみた
ジャック「それで?何をして遊ぶんだい?」
コープス「今日はね…宝探しをするんだ!」
ジャック「宝探し?」
するとコープスチャイルドは一枚の紙を取り出す
そこには簡素な地図が描かれており、赤い×の印
マミー「コープスチャイルドのお父さんがくれたんだ!とーっても怖い素敵な物が隠されてるんだって!」
ジャック「とっても怖くて素敵な物、ね」
何があるんだろうと楽しそうに語り合う3人を見てジャックは苦笑する
これはコープスメンが息子の為にと描いた地図だろう
そして彼らの言う宝とはコープスメンが何かしら埋めているのだろう
ジャック「よし、じゃあ早速そこへ向かおうか!」
バッド「えっとーここが街の入り口だから…」
マミー「とりあえず墓場を抜けないと!」
そう言うと3人は一気に走り出した
子供は元気だな
そう思いながらジャックもその後を追う為に走り出した
墓石の後ろに何やら動く影
6つの目が走っていくジャック達の後ろ姿を見つめていた