矮小猫のおまじない
その後無事に自宅へとたどり着いたジャック達
ブラムの手も借り荷物を上の階へと持ち運ぶ
無事に全ての荷物を仕舞いこみ、礼として茶をすすめたがブラムは兄弟が待っていると告げその場を後にした
そんな彼に手を振り別れを告げたジャックとサリーは早速キッチンへと向かう
サリー「早速作るわね」
ジャック「あ、僕も手伝うよ」
そう告げたジャックはやる気満々な様子でサリーを見上げる
サリーは少し戸惑った
彼の料理の腕前を知っているからだ
ジャックは器用で何でもそつなくこなす男なのだが、料理だけは苦手だった
レシピなどを見ても何故か上手くできないらしく、ある意味すごい才能だと皆から言われるほどだ
しかし先程から早く早くとやる気に満ち溢れた彼にやめておきましょうなど言えるわけもなく
サリーは頷くしかなかった
サリー「じゃあ手伝ってもらおうかしら、えっと…」
ジャック「まずは何をしたらいいんだい?」
何をしてもらおうかしら
そう考えたサリーの視界に映ったのはハーツトマト
サラダなら問題なく作れるのではないか
焼いたり煮たり揚げたりなどせずただ野菜を切って盛り付けるだけ
そう考えジャックの前にサラダに使用する野菜を並べた
サリー「ジャックはサラダをお願いね」
ジャック「サラダ??どうせならそっちの肉を焼いたりした方が面白そうなんだけど」
それは流石にさせられないわ
サリーは心の中で呟いた
、
サリー「でもジャック、今の貴方の身体だと色々大変でしょう?お肉は私に任せてくれないかしら」
ジャック「うーん…まぁサリーがそういうなら」
少し残念そうな表情を浮かべながらサリーの意見に頷く
それを確認するとサリーは近くに置かれていた椅子をジャックの前に運ぶ
今の彼の背丈では野菜を切ろうにも手が届かない
ジャックはありがとうと礼を言うと椅子に飛び乗り包丁を手に持った
サリーはそれを眺めながら材料を手に取った
ジャック「うん、完璧だ!」
サリー「どう?出来たかしら」
ジャックの声を聞きその手元を覗き込む
そこにあるのは少し深めの皿
その中には緑の葉の上に脈打つトマトが小さく切られ盛られている
サリー「まぁ、とても美味しそう!」
ジャック「僕もこれくらいなら出来るからね!」
サリーに褒められ嬉しそうに笑顔を見せる
ジャックは椅子から飛び降りるとサラダの盛られた皿を背伸びをして取る
ジャック「そっちはどうだい?」
サリー「あとスープを煮込めば完成よ」
ジャック「じゃあ先に夕食の準備をしておくよ」
そう告げるとジャックは皿をしっかりと抱えテーブルへと足早に向かった
そんな彼を見つめサリーは楽しそうにクスリと笑み、スープの入った鍋に視線を向ける
クツクツと煮込まれているスープからは食欲をそそるとても良い香り
軽く混ぜ具材の煮込み具合を確認する
サリー「あと数分煮込めばいいわね」
そう呟いたと共に突然背後からワンと鳴き声が聞こえた
振り返るとそこにはいつの間に帰ったのだろうか、ゼロの姿があった
サリー「あらゼロ、お帰りなさい」
ゼロ「ワン!」
ゼロはサリーの周囲をぐるりと回ると嬉しそうに彼女の腕に擦り寄る
きっと甘えているのだろう
そう考えサリーはゼロの頭をそっと撫でた
気持ちよさそうに目を閉じるゼロ
するとそこで鼻をひくつかせ鍋の方を見つめる
サリー「貴方もお腹がすいているのかしら」
ゼロ「ワン!」
サリーの言葉に答えるように鳴いたゼロはおねだりをするようにサリーの肩に乗って甘えた声をあげる
ジャック「ゼロ!帰ってきてたんだね!」
ゼロの鳴き声を聞きつけジャックが戻って来た
彼を見るなりゼロは嬉しそうにその胸の中に飛び込んでいく
サリー「ジャック、ゼロがお腹を空かせているの…彼のご飯はどこにあるのかしら」
ジャック「ゼロの分は僕が用意するから大丈夫だよ!あ、あとそのスープが完成したら僕達もすぐに食事が出来るよ!」
サリー「…もうスープは良さそう、じゃあ私が運ぶからゼロの食事の用意をしてあげて」
それに素直に頷いたジャックは棚の下段からゼロの好物の入った箱を取り出す
それを抱えゼロの名を呼んで走っていった
ゼロはそんな彼を嬉しそうに追いかけていく
1人になったサリーは器を取り出すとその中にスープを注ぐ
黄色がかったとろみのあるスープにはよく煮込まれた具材が顔を覗かせその上からお手製のハーブを散らす
2人分のスープをトレイに乗せ、ジャックとゼロがいるであろう部屋へと向かった