矮小猫のおまじない




時は少し遡り同日のブギー宅

ロック、ショック、バレルの3人は家に着くなりブギーを探し始めた
部屋の扉を一つ一つ乱暴に扉を開け家中を走り回る

その騒々しさに気付いたブギーは面倒そうに頭を掻きその音のする方へと向かった
勿論その音の出所、犯人はわかっている


ブギー「なんだお前ら!静かにしやがれ!」
ショック「いた!親分発見!!」
ロック「見つけた!!」
バレル「親分ーっ!」


ブギーの姿を見るや否や3人は一気にその足元に駆け寄る
そして3人揃って彼を見上げ、声を揃えて問いかけた


「「「ジャックが小さくなったって本当!?」」」
ブギー「マジだ」


ブギーはその問いかけにすんなりと答えた
即答された3人は互いに顔を見合わせ、何やら小声で話し合う


ロック「本当だったんだ…あれがジャック本人だって」
ショック「あのジャックが子供になっちゃったんだ…じゃあ、やる事は一つでしょ」
バレル「やるって何を???」
ロックショック「「今ならジャックに勝てるかもって事!!」」


3人は内緒話をしているつもりではあったがそれはブギーの目の前で行われている
おかげでブギーの耳にはその会話全てが綺麗に届いていた


ブギー「今のアイツになら勝てるって考えか」
ロック「親分どんだけ耳がいいの!?」
バレル「全部聞かれちゃった!!」


あれで聞かれていないと思っていたのか
ブギーは呆れた様子で3人を見下ろした
小さくなったとはいえジャックが簡単に負けるわけがない
無駄な勝負だと明らかにわかる事だ


ブギー「いっとくがガキになってもアイツはアイツだぞ?それとも何かいい作戦でもあるのか?」
バレル「ないよ!」


聞いた俺が馬鹿だった
ブギーは満面の笑顔で見上げてくるバレルの頭を軽く叩きまぁ頑張れとだけ声をかけその場から離れていった


残された3人はブギーがいなくなると早速作戦会議を開始した
まず決まった事
それは作戦名『ジャック討伐作戦』となった

3人は何やら会話を交わし余程面白い案が出てきたのかクスクスと笑い声を漏らした








そして現在
ジャックはサリーの用いた衣服に身を包み、颯爽と彼女の前に姿を現した
その身を包むのは勿論サンディの衣装
サイズもちょうどよくしっかりとした作りとなっていた


ジャック「どうかな?」
サリー「とてもよく似合うわ!」


ジャックはその場でクルリと回ってご機嫌な様子
そんなジャックを微笑ましく見つめ拍手を送った
その後次々と服を取り換えてはサリーに披露しまるでファッションショーのようだった
その様子を眺めていたサリーは今までジャックが纏っていた黒いコートを手に取る
それは引き摺っていた為か裾が汚れてしまっていた


サリー「ジャック、これは洗ってもいいかしら」
ジャック「あ、そうだね!是非頼むよ!」


コートを洗うために立ち上がったサリーはそういえばと思い立ち止まる
姿鏡を見つめ身に着けた衣服を満足そうに触るジャックにそっと声をかけた


サリー「そういえばジャック、一つ伝えたい事があるの」
ジャック「なんだい?」
サリー「実は貴方が元の身体に戻るまでの間、ここでの家事を任せてほしいんだけど…いいかしら」
ジャック「本当かい!?凄くありがたいよ!あ、でも…」


ジャックは博士の事を思い出した
果たして彼女がここに来ることを彼は快く許すのだろうか
昔の博士はジャックの目から見ても彼女を束縛しすぎていると感じる程だった
今は互いに理解し合えたのか少しは落ち着いて入るようだが、それでも完全にその束縛が終わりを告げたわけではない
ジャックがそんな事を考えているとサリーはその考えがわかったのか笑顔で答えた


サリー「実は博士から許可をもらえたの、貴方が苦労しないように支えるようにって」
ジャック「え、じゃあ…」
サリー「…だから貴方と一緒に過ごせるの」


サリーの言葉にジャックは数回瞬く
そして次の瞬間、その顔が一気に喜びに輝いた
余程嬉しかったのかサリーの手をぎゅっと握り大きな眼窩で見つめる


ジャック「じゃあ今日から君と一緒に過ごせるんだね!」
サリー「ええ、でもたまに博士のお世話もしないといけないから時々は研究所に顔を出すようにはするわ」


ジャックの様子を見てサリーは幸せだった
彼も私と共に過ごす事をこんなにも喜んでくれている

心の中で改めて博士にありがとうと囁いた


サリー「あ、じゃあ早速今夜何が食べたいか聞かせて?」
ジャック「サリーが作る物は何でも美味しいからなぁ…うーん」


ジャックは本気で迷っているらしく腕を組んで考え込む
するとジャックは何かを思いついたらしく顔を上げ笑顔で答えた


ジャック「じゃあ後で一緒に材料を買いに行こう!作る物はそこで決めるっていうのはどうかな?」
サリー「そうね、じゃあその時に決めましょう」
ジャック「…あ、これって一応デートなのかな?」


そう言われサリーは一瞬考えたがコクリと頷いて見せる
じゃあ僕がしっかりエスコートするよ!
ジャックはやる気満々な様子でサリーに告げるとどれを着ていこうかと早速衣服を選び始めた

姿は変わってもやはりジャックはジャック
小さな恋人の姿を見てサリーは嬉しそうな表情を浮かべ抱えたコートを運ぶ

下の階へ向かいこの街では見かけない何やら箱状の機械へとコートを入れる
それは博士が作り上げた作品だった
衣服を自動で洗うというものらしく、使用したジャック曰くとても便利な物らしい
いくつかのボタンが並んでおり指先で軽く押すと機械が音をたて作動した
どうやら使い方は合っているようだ

それを確認してサリーは1人考える
彼との久しぶりのデート
最後に2人で出掛けたのはいつだっただろうか
ジャックはその立場もあり忙しく、自分も博士の事があり随分とご無沙汰だったように思える


サリー「うんと美味しいものを作らないと」


すると上の階からジャックが呼ぶ声がする
どうやら今日の衣服が決まったようだ
サリーは今行くわ、と返事を返し階段を上っていく
一段一段、階段を踏むその足はとても軽やかなものだった
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