矮小猫のおまじない
道中ではやはり住人達と出会う事があった
しかし今の彼は皆にその正体を明かした身
わざわざ皆の視線を気にし隠し逃げる必要はない
顔を合わせた住人達もコート姿の子供がジャックであると知っている為、怪しむ事もなければ執拗に絡む事も無かった
もっと早くこうしていればよかった
そう考えながらジャックが歩みを進めていると、頭上から声が聞こえた
誰だろうと見上げるとそこには箒に跨ったウィッチズの姿
2人はジャックの目の前に降り立つ
リトルウィッチ「あら~やっぱりジャック!こんな所でどうしたの?」
トールウィッチ「もしかして迷子…なわけないわねぇ」
ジャック「やぁ二人とも、ちょっと食事に来ていたんだよ……??」
気が付くとジャックの前に立っていた2人はまるで彼を挟むかのように両側へと移動していた
なんだろうと不思議に思っていると2人は黙ってジャックの姿を穴があく程見つめてくる
なんだろうと様子を伺っていると2人が揃えて口を開いた
トールウィッチ「見れば見るほどすっかり子供ねぇ…いい男がすっかり可愛くなっちゃって」
リトルウィッチ「私は可愛い男も好きよ!だから安心してちょうだい!」
何をどう安心すればいいのだろうか
ジャックはあえて口にはせず心の中でぼそりと呟いた
もしかして2人なりに気遣ってくれているのかな
そう考えもしたのだがそんなジャックをよそに、2人はその小さな身体をベタベタと触り始めた
トールウィッチ「まぁ~どこもこんなにほっそりしちゃって!」
リトルウィッチ「見てこの手!小さくてかわいい!」
前言撤回…別に気遣ってるわけじゃないなこれは
いくら相手が女性とはいえ、やたらと触られるのはあまり好きとはいえない
トールウィッチに頭を撫でられながらジャックはどうにかしてこの場を切り抜けようと考える
ジャック「えっと、二人とも…とりあえず一旦落ち着いて手を離してもらえないかな」
ジャックのその言葉に2人は一瞬きょとんとし触れていた手を離す
そして互いに顔を合わせ楽しそうに笑い声をあげた
リトルウィッチ「あら、もしかして恥ずかしかった?」
トールウィッチ「こぉんな美女2人が相手なんですもんねぇ~」
ジャックは苦笑いをし2人から少し距離を取る
とりあえず2人の手からは解放された
あとはいかにしてこの場を無事に離れるかだった
今ここから走って逃げても相手は箒に跨り追いかける事が出来る
そうなればあっという間に追いつかれてしまうだろう
そしてその場には他の者の姿は一切なく、助けを求める事も出来ない
こんな事ならのんびりせずすぐさま家へ戻っていればよかった
ジャックは後悔の念にかられた
リトルウィッチ「あ、そうだジャック!よかったら今から私達の店に来ない?」
トールウィッチ「いいわねぇ~そんな身体になった呪いもじっくりと調べてみたいしねぇ」
ジャックは2人の提案を聞き慌てて首を左右に振った
もしもこのまま二人に連れていかれてしまっては何をされるかわかったものではない
ジャック「その、申し訳ないけど僕は家に戻らないといけないんだ…二人の店には今度伺わせてもらうよ」
トールウィッチ「家に戻るのかい?」
リトルウィッチ「何か用事でもあるのかしら」
どんな用事?
今すぐでないといけないの?
2人がジャックへと詰め寄る
そんな二人からとにかくある程度の距離を取らなければと後退る
町長「おや?ジャックじゃないですか」
そこで聞こえてきたのはメイヤーの声だった
ウィッチズがその声につられ振り返る
その隙をついてジャックは2人の横を走り抜けメイヤーの元へと駆け寄った
ジャック「町長いいところに!さぁ行きましょう!」
町長「え、ジャック一体何が…ああ!そんなに引っ張らないでください~!」
ウィッチズが止める間もなく、ジャックは町長の腕を掴むとその姿にはそぐわぬ力で彼を引きずりその場から離れた
残されたウィッチズは呆然としていたが2人の姿が見えなくなると顔を合わせる
トールウィッチ「用事って町長かしらね?」
リトルウィッチ「さぁ?」
2人は仕方ないと箒に跨って再び宙へと浮き上がり、彼女らの店へと飛び去って行った