矮小猫のおまじない
その後ホールタウン内にて、魔女探索の為の話し合いが行われた
そこでまず重要となるのはやはり現在の魔女の所在地となった
住人達の話によればこの周辺ではそれらしい魔女は見かけなかったという
つまり捜索範囲が大幅に増えたという事だった
念の為に街周辺の各箇所の捜索
そして遠方へ赴く、また遠方に知人のいる者等の協力を得ての捜索の同時進行で話はまとまった
集会を終えると住人達は次々とタウンホールを後にした
その場に残ったジャックは無人となったホール内をぼんやりと見つめていた
住人達の協力も無事に得る事が出来、魔女の捜索がいよいよ始まる
これで魔女を見つけ自身にかけられた呪いを解く
もう少しで元の姿に戻る事が出来るのだ
サリー「ジャック」
振り返るとそこにはサリーが立っていた
ジャックの傍に歩み寄り、身を屈め語り掛けてくる
サリー「これで魔女さんを見つけられるわね…よかったわ」
ジャック「そうだね、僕も一安心だよ」
そう告げるジャックの表情はすっかりいつもの彼のもの
それを見て安心したサリーはある事を思いつく
サリー「魔女さんが見つかるまでどれくらいかかるかわからないけれど…その間、何か必要な事があればいつでも私に言ってちょうだい」
必要な事
なんだろうとジャックは考え込む
そこで気付いたのは自身が今身に着けているコート
今の自分は通常より遥かに背丈が低い
そしてその体に合う服など持ち合わせてはいなかった
サリーの言う通り魔女がいつ見つかるかはわからない
捜索が長引けば数日は経過してしまうのかもしれない
その間の衣服が必要だと考えたのだ
ジャック「じゃあ、服が欲しいな!今まで着ていた服はサイズが合わなくて」
サリー「確かにそうね…じゃあ早速今の貴方に合う服を用意しなきゃ!」
そういってサリーは足早にタウンホールを出て研究所へと向かっていった
そんな彼女の後ろ姿を見つめていたジャックはサリーはどんな服を用意してくれるのかと想像した
彼女は裁縫が得意だ
クリスマスの際には素晴らしい出来のサンタ服を作ってくれた
今回も大いに期待できるだろう
完成を楽しみにしつつ、とにかく一旦タウンホールを出ようと舞台から軽やかに飛びおりた
広場へと出たジャックは、これからどうしようかと1人考え込んだ
今自分が出来る事は何かあるだろうか
そう考えていると突然背後から何者かに背を突かれた
何事かと慌てて振り返る
するとそこには
ロック「やっぱりあの時の奴だ!」
そこにはロックが立っていた
そのすぐ後ろにショック、バレルの姿も見える
ショック「今サリーはいないわよね?」
バレル「いないいない!」
2人は周囲を見渡し、サリーの姿が見えない事を確認する
そしてジャックに向き直ると3人はニヤニヤと何やら怪しい笑みを浮かべた
ショック「さぁ…アンタの正体はもうわかってるんだからね!」
それを聞きジャックはほとほと困り果てていた
またこの子達か
自分がジャック本人であると気付いてはいない
ロック「お前ジャックの子供だったりするんだろ!」
今日だけでどれだけその言葉を聞いたことか
ジャックはいい加減うんざりだと言った風に顔を顰めた
ショック「何も言ってこないって事は大当たりってところかしら!」
バレル「すごいや!ジャックに子供がいただなんて!」
ジャック「君達…」
ああ、もう面倒だ
ジャックは目の前で的外れな事を言いながらはしゃぐ3人を見つめ両腕を軽く組む
ジャック「君達のその考えは盛大に間違っているよ?ロック、ショック、バレル」
ショック「間違い?じゃあ何でそんなにジャックそっくりなのよ!」
バレル「子供じゃないなら何なんだよ!」
尚も食って掛かる小鬼達
そんな3人を見据えジャックは静かに笑い声をあげた
その声は子供のものであるため甲高く、しかし不気味で3人は背筋が凍る程の恐怖を覚えた
小鬼達は目の前の子供から数歩、無意識のうちに後退していた
そんな3人に向けジャックは自ら歩を進め近付いていく
ジャック「どうしたんだい?何を怖がっているんだ」
ロック「こ、怖くなんかないからな!」
ジャック「へぇ…じゃあ何で後ろに下がるんだい?怖くないのならそのまま立っていればいいじゃないか………ねぇ、ショック?」
突然名を呼ばれショックは思わず驚く
そして薄笑いを浮かべるジャックを見て咄嗟にバレルの後ろへと身を隠した
バレル「え、え……えへへ」
ショックの盾となりジャックと対峙する形となったバレルは戸惑い頭を掻いた
それぞれの反応を見たジャックは笑う事を止め、体を小刻みに震わせる
次は何をしでかすつもりかと3人が警戒していると、次の瞬間ジャックは再び声をあげ笑った
しかしそれは先程までのものとは違う、明るく無邪気なものだった
3人はそれを見てきょとんとする
ジャックは一頻り笑うとそんな3人に笑みを浮かべ語り掛けた
ジャック「あぁ、すまない…君達の反応が面白かったものだからついね」
ショック「な、なんなのよ…馬鹿にしてるわね!」
ジャック「そろそろ君達にも教えておこうかな……僕はジャック・スケリントン本人だよ」
ジャックのその言葉に今度は3人が暫しの間をあけ笑い声をあげた
どうやら信じていないようだ
ロック「お前がジャック!?そんな事あるわけないじゃないか!」
ショック「そうよ!いくらそっくりだからってそれを信じられると思う!?」
バレル「それにジャックは子供じゃないし!」
確かに彼らの言う事も最もだと思えた
普通子供になりました、そう告げた所でにわかには信じられないだろう
しかしこれが現実なのだ
ジャック「じゃあ家に戻ってブギーに聞いてみるといい、それで僕が本当にジャックかどうかはっきりするよ」
彼らはブギーの子分だ
ブギーの事が大好きで彼らなりに信頼している
そんな彼らが信じるブギー本人に目の前の子供がジャック本人であると確認すれば流石に納得するだろう
ロック「…どうする?」
ショック「…わかったわよ!親分に聞いてみようじゃないのさ!」
どうせ嘘だろうけどね!
そう言い残しロックとショックはブギーの待つ家へと走り出した
1人残されたバレルは2人が自分を置いていった事に気付き慌てて後を追う
ジャック「全く…困った子達だ」
ようやく小鬼達から解放されたジャック
とにかく一度家にでも戻ろう
そう考え歩き始める
が、そこで今度は何者かに肩を掴まれた
今度はなんだと振り返る
ウェアウルフ「よ、よう!」
そこにはウェアウルフが立っていた
一体なんだろうと要件を確認する為にウェアウルフに語り掛ける
ジャック「やぁウェアウルフ、どうしたんだい?」
ウェアウルフ「あー…今ちょっといいか?話があるんだが」
一体何の話だろうか
見ればウェアウルフはどうにも落ち着きなくそわそわしている
こんな彼は見た事がない
ジャックは彼の話を聞こうと快く頷いた