蠱惑の糸





その後
メイヤーを中心に街の住人が救助に駆け付けた


穴の中を覗き込みメイヤーが声をかけると、暗い穴の底からジャック達3人の答える声


それを聞いて3人の無事を確認し、皆は盛大に喜び合った



長く丈夫なロープを穴の中へと放り投げ、早速3人の救助活動が始まった







最初に引き上げられたのはサリー
サリーはジャックの事を心配し、彼を優先しようとしたがその提案はすぐさま二人に却下されたのだった

深い穴の底から引き上げられ、何の問題もなく外へと抜け出すことが出来た




続いて引き上げられたのはブギー
しかしこれが問題だった

入った時もそうだったがサイズ的に難があり、やはり下半身が挟まってしまった
住人達が慌ててブギーの身体を引っ張る事となった


痛い痛いとブギーの声が遥か上の方から聞こえる





ジャック「…見事に挟まってるなぁ」


座り込んだままぼんやりと上を眺める

暫くかかりそうだなぁ…

自分の番を待つ間、ブギーの悲鳴を聞きながら視線を巡らす



灯りもなく深い闇に包まれた道











するとその闇の中に何か動くものが見えた






目を凝らすとそこに見えたのは





ジャック「………まだ、生きてたんだ」


そこにはバアルの姿があった
動かなくなった蜘蛛の身体を必死に引き摺り、此方へと少しずつ迫ってくる

ジャックはその場から動かずそれを黙って見つめた



伸ばされた腕がジャックの足に触れる
その足を掴んで重い蜘蛛の身体をズリズリと引きずり、その身を近づけてきた



バアル「おねがい…わたし、しにたくない」


バアルは弱々しい声でジャックに語り掛け縋りつく
ジャックは何も答えない



バアル「ごめんなさい…もうあんなことしない、だから…」



そこでジャックの顔がゆっくりと笑みへと変わった
彼女の頬に手を添えそのまま上向かせる



ジャック「助けて…そう言いたいんだろう?」

バアルは苦しそうに咳き込み、何度も頷いた
ひたすらお願い、お願いと呟く





ジャック「お断りだ」




そう言って彼女の顔を包む手に力がこもる
頭が強く圧迫されその痛みにバアルがもがく


そんな彼女を見つめ、ジャックは目を細めた



ジャック「僕は君を助けたりしない………ああ…その代わりに、君にはたっぷり苦痛を与えてやりたいんだけど」



受け取ってくれるよね?




その言葉にバアルは怯え逃れようとジャックの手を掴んだ
しかしどれほどの力をこめようともその手は彼女の顔からは離れない
バアルの指が骨の手を虚しく引っ掻く


離して触らないで誰か助けて


自分を助けてくれる者などいない
恐怖から彼女の歯がカチカチと音をたてる
そんな彼女の表情をまじまじと見つめるジャックの顔は笑顔のまま


大きく見開かれ涙に濡れる目にジャックの長い指が伸び








右目に深々と突き刺さった







バアル「ぎゃあああああああ!!!!!!」


悲痛な叫び声があがった
味わったことのないその激痛に弱々しく力の入らなかった身体が突如激しくのたうつ

ジャックはそれを見て首を傾げ優しい声色で語り掛ける


ジャック「痛かったかい?」
バアル「も、ぅ…やめて…はなしてぇ…っ」


彼女の制止も聞かず、続けてもう片方の目にも指を突き刺す

彼女の両目は潰され、そこにあるのはぽっかりとあいた二つの穴

もう抵抗する力もないのかバアルはそれ以上暴れる事はなく、小刻みに跳ねるのみ


指を引き抜いたジャックはその顔を眺めた

その行為に何の躊躇いもなかった

本来女性に対して、男性にもだがこんな事は勿論しない

しかしその時のジャックは後悔など一切していなかった



何故だろう
コイツの苦しむ姿を見ると嬉しくて仕方がない





そこで何かが落とされる音が聞こえた
視線を向けるとそこにはロープが垂れ下がっている
見上げるとブギーが無事救助されたのだろう
住人達が次々とジャックを呼ぶ声が聞こえる




ああ

行かなければ





ジャックはバアルへ向き直り、彼女の頭を両手でそっと包む
目を貫き体液に濡れた指先で彼女の流した涙のあとをそっと拭う



ジャック「残念だな、もっと時間があればよかったのに…………それじゃあ」








さようなら











ゴキ
何かが折れる音

ジャックの笑い声が微かに聞こえた








動かなくなった頭からゆっくりと手を離し、その身体を横たわらせる
バアルの両目は失われ、首が捻じれていた



ジャックは立ち上がって自身の手を見つめた
指を濡らす体液を払う
垂れ下がるロープに手を伸ばしそれを掴むと軽く引く

それを合図にジャックの身体が上へと引き上げられた
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