蠱惑の糸
ブギー「ったく…だがこれで問題解決か?」
ジャック「あの一匹だけならね」
ブギー「おいそんな事言ってると…」
そこでブギーの言葉は遮られた
再び音がする
先ほどとは違う多数の音
ありとあらゆる場所から先程の蜘蛛が姿を見せる
青い蜘蛛
そして赤い蜘蛛
ブギー「あー…」
ジャック「なんだよ、僕のせいだっていうのか?」
ブギー「お前のせいっていうか明らかなフラグ発言だっただろさっきの」
ジャック「フラグ?何それ」
ブギー「…わからねぇんならいい」
その会話の間も蜘蛛は数を増し、気付くと2人は囲まれてしまっていた
ゆっくりとではあるが蜘蛛の群れは2人を追いやるように迫りくる
蜘蛛から出来るだけ距離を置き、戦闘態勢を取りつつ2人は背を合わせる
ブギー「さて、どうする?」
ジャック「これだけの数か…さっきみたいに爆発されたら流石に痛いだろうなぁ」
ブギー「接近戦は命取りってな」
ジャック「じゃあ近づかれる前に潰すしかないかな?」
ブギー「おいあまり暴れすぎるなよ?やりすぎてここが崩壊でもしてみろ…」
ジャック「わかってるってば。そっちも派手に暴れすぎてヘマするなよ?」
ブギー「へっ上等だ」
暫しの静寂
そして次の瞬間、蜘蛛達が一斉に動き出した
ジャックは右手に炎を纏い、飛び掛かってくる蜘蛛達に目掛け大きく腕を振るった
腕の軌道に合わせて激しい炎が舞い、蜘蛛達の体はジュ、と音をたて空中で塵へと変わる
ブギーも同時に自らの影を操り、その影は床に大きく広がる
と、同時に影から無数の黒く鋭い槍が出現し蜘蛛達の体を貫通する。突き刺された蜘蛛達の体は黒く爛れ、ボロボロと床に零れ落ちた
その消滅に合わせるかのように残った蜘蛛達がありとあらゆる方向から先程と同じように飛び掛かる
ジャック「こいつら頭は良くないみたいだね!」
両手を広げ今度は冷気を纏い、飛び掛かる蜘蛛目掛けて一気に振り下ろす
空気中の水分が無数の氷槍を生み出し、床へと降り注ぐ
激しい音をたて突き刺さった氷槍がパキンと弾け、散った欠片が蜘蛛達を巻き込んで氷の山を生み出す
凍り付いた蜘蛛達を見つめ、ソウルラバーを装着した腕を横一直線へ払う
ソウルラバーがしなり氷を打ち、蜘蛛達は為す術もなく砕け散った
ブギー「単調すぎるんだよな!」
何処からか取り出したトランプを両手に持ち、蜘蛛達目掛け投げる
1匹の蜘蛛に一枚のトランプが触れると同時に空間が歪んで闇の球体が出現し、蜘蛛を取り込む
残りのトランプも触れると同時に球体を出現させ、続いて連鎖するように周囲の空間に数多くの球体が現れる
飛び掛かる蜘蛛達を吸収し球体は一つの大きな塊へと変化、そのまま掻き消えた
再び訪れた静寂
その場にはジャックとブギー以外、動きを見せるモノは存在しなかった
ブギー「これで終いか?」
ジャック「思ったより数が多かったな」
ブギー「しっかしこいつら一体なんなんだ?爆発する蜘蛛なんか見た事ねぇぞ」
軽く屈み床に散った蜘蛛の足の一部を拾い上げる
何処をどう見てもそれは普通の蜘蛛と変わらない
ジャック「…自然に生まれたのなら根絶やしにすればいいけど誰かが作ってるとなれば厄介だな…それならさっさと見つけて始末しないといけない」
ブギー「おい少し落ち着け。お前こうやって戦うの久しぶりだろ…殺気立ってんぞ」
ジャック「………」
ブギーに言われゆっくりと深呼吸する
こいつの言う通りだな
すっかり平和な時に慣れてしまって戦いは久しぶりだった
元々戦う事は嫌いではないし、先ほどまで楽しんでいたと自分でも感じる
ジャック「ふぅ…もう大丈夫だよ」
ブギー「たまには俺が相手してやろうか?」
ジャック「相手って…よく喧嘩してると思うけど?」
ブギー「そうじゃなくてたまには本気で殺り合ってみるかって話だ…楽しそうだろ?」
ジャック「あー…確かに楽しめそうだけどね」
遠慮しておくよ
そう告げ外へと向かおうとしたジャックの足元に何かがボトリと落ちた
そこには赤い蜘蛛
ジャック「え?」
ブギー「は?」
2人が視認した瞬間、蜘蛛はブルリと震え炎を纏い爆発した