蠱惑の糸



一方、迷いの森

ブギーとシャドー達は未だに乱闘を続けていた
互いに殴り蹴り時には投げ飛ばしと繰り返すものの一向に勝負がつくことはなく、ただただ時間だけが過ぎていく

そんな乱闘風景をサリーが木の影から見つめ戸惑っていた


サリー「ど、どうしましょう…あの中に入っていっても私が止められるとは思えないし」


このまま彼らがここで争っていてはいつまでたってもジャックの所には向かえない
どうするべきか悩んだサリーはふとある事を思いついた
同時にスカートを少したくし上げ、自らの足に手を伸ばす



ブギー「てめえらいい加減にしやがれ!これ以上反抗するってんなら二度と呼ばねぇからな!!」


二体のシャドーに前後を塞がれた状態
前方のシャドーに殴りかかろうとしたブギーだったが背後から羽交い絞めにされその動きが遮られる
それに合わせるかのように前方にいたシャドーが飛び掛かり、全員そろってその場に転がる形となる


ブギー「いってえ!おいまじでふざけんな!」


怒声をあげ一体のシャドーの上に伸し掛かり、拳を振ろうとするがもう一体のシャドーに腕を掴まれ
下敷きにされたシャドーもそこから何とか抜け出そうと必死にもがく

3つの巨体がその場で土煙を上げドタバタと暴れる中、後方からガサリと草が揺れる音が聞こえた

その音に全員が気付き視線を向ける

騒いでいたから敵にでも見つかってしまったのだろうか
揃ってそう考え身構えた、が


揺れる草の隙間からゆっくりと現れた一本の足
それはそれは素晴らしいほどの美脚だった
まるで3人を誘うかのように艶めかしく揺れる

ブギー達はその足に見惚れてしまい、先程までの乱闘などまるでなかったかのように動きを止めてしまった

そこでブギーのみがふとそれに見覚えがある事に気付く
つぎはぎだらけの見事な美脚
すっかり見惚れていたシャドー達を乱暴に押しのけその場に立ち上がる


ブギー「おいおいまじかよ……いるんだろ!さっさと出てこい」


ブギーが声をあげると暫くして大きな枯れ木の後ろからサリーが顔を覗かせた
片足を取り去ってしまっているため、バランスを保つために木に手をついている


ブギー「お前、俺の話を聞いてなかったってのか?…来るなって言っただろうが!」
サリー「ご、ごめんなさい…」


何を言われても構わない
そう決めてここまでついては来たものの、やはり実際に目の前で怒鳴り上げるブギーには恐怖を感じる

けれどサリーは勇気を振り絞ってブギーを見つめた
ジャックを助ける為にここまで来たのだ
今更戻るなどあり得ない


サリー「確かに私は戦闘になれば足手まといかもしれないわ…けどジャックが危険な目にあってるのにただ帰りを待つだけだなんて出来ないの!」


危険な事に巻き込まれてはジャックに助けられてきた
だから今度は私があの人を助けたい



怯える事なく真っ直ぐ見つめるサリーに、ブギーは何か言いかけるがその口を閉じ頭を軽く掻く
そしてその手を下ろすとドスドスとサリーに歩み寄り顔を近付ける
今までにないほど接近され睨まれてしまいその恐ろしさに身震いしてしまう
思わず目をそらしそうになるが拳を握りしめ真っ直ぐブギーの目を見返した


ブギー「何処まで頑固な女なんだよ……いいか?ついてくるならてめぇの身はてめぇでなんとか守れ。何かあっても知らねぇからな!」


どうせ帰れと言うのだろう
返す言葉を必死に考えていたサリーは耳に届いたその言葉に驚いた
一瞬聞き間違いではないかと思ったが、目の前のブギーはそれ以上怒鳴り声をあげる事はなくやれやれと諦めたように溜息をつく

ブギー「…とっとと行くぞ」

サリー「っ…ありがとう!」
ブギー「余計な荷物が増えちまった…」


ブツブツと文句を言いつつ歩き出す

しかしサリーは何故かついて来なかった
その場に立ったまま進む先とは違う方向を見ている


ブギー「おい、どうした?」
サリー「あの…彼らが」


なんだろうとサリーの視線の先を見ると




そこにはサリーの足を掲げ、その美脚をうっとりと眺めるシャドー達の姿があった


ブギー「てめえらいい加減にしやがれ!!!!」











その後、サリーの足は何とか奪還された
シャドー達は非常に残念がっていたが、今は大人しく立ち尽くしている

サリーはその場に座り込み、取り戻された足を常備していた針と糸で器用に縫い合わせていく

それを傍に座り込んだブギーがまじまじと眺める

ブギー「しっかしまぁ…見事な足だよなぁ、俺好みのいい足だ、まじで」
サリー「あ、あまり見ないでくれないかしら」


糸をしっかりととめ、スカートを引っ張り出来るだけ足を隠す


ブギー「その割にはクリスマスの時と言い足で俺を誘ってやがるよな」
サリー「別に好きでやってるわけじゃないわ」


針と残った糸をしまいこみ、ゆっくりと立ち上がる
縫い合わせたばかりの足に最初はよろけるが、何とか体勢を保つ

ブギー「もういいか?お前ら行くぞ!」

先程までブギーに対し反旗を翻していたシャドー達だったが、サリーの美脚との接触に期限を良くしたのだろうか
やる気に満ち溢れた様子で勢いよく立ち上がる
そんなシャドー達にサリーは思わず苦笑をもらした

4人はそのまま森の更に奥へと向かい歩き出した
29/47ページ