蠱惑の糸
ブギーとサリーは揃って墓地で座り込んでしまっていた
やっと再会したジャックにあろう事か襲われ
その彼を一時的にではあるが捕らえたものの、何処からともなく現れた蜘蛛の妨害によりジャックは再び姿を消してしまった
サリーはひどく落胆した様子でただひたすら俯くのみ
震える手がスカートをきつく握りしめる
互いに何も語らずそのまま僅かな時間が流れ、そんな中ブギーがようやく口を開く
ブギー「行くしかねぇよなぁ」
腰を上げ焦がされた顔を擦る
虫が出てしまうような損害はないものの、やはり焦げから違和感があり気になるのか舌打ちする
あの野郎に会ったら焼く事は出来ないが同じように顔面に一発かましてやろう
そう考えうんうんと一人頷く
そのブギーを見てサリーは続くように慌てて立ち上がった
しかしそれに気付いたブギーにいきなり肩を掴まれ、力任せに押さえつけられる
たまらずその場に再度座り込む形となってしまった
何をするの、と見上げるとブギーが顔を近づけてきた
サリーの顔をまじまじと眺める
ブギー「…お前まさかとは思うが、私も行くわ!とか考えてねぇよな?」
サリー「その通りよ…私も一緒に」
ブギー「駄目だ」
サリーの言葉を遮るようにブギーがぴしゃりと言った
抗うために立ち上がろうとするが、上から押さえられていた為それは叶わない
サリーの肩を押さえたままブギーは一度項垂れ、向き直る
ブギー「お前が来ても足手まといにしかならねぇだろ」
サリー「でも、ただ待ってるだけだなんて」
ブギー「わかるように言ってやる。はっきり言って邪魔なんだよ」
遠慮のないその言葉にサリーは言葉を紡ごうとしていた口を閉じた
ブギー「さっきもお前がうまくやってりゃぁこんな面倒な事にならなかったんじゃねぇか?ん?」
違うか?
その言葉に一切反論できなかった
確かに自分が戸惑うことなくあの蜘蛛を取り払っていればジャックは今もこの場にいたはず
黙り込んでしまった彼女を見下ろし、肩を押さえていた手を静かに離す
ブギー「わかったか?足手まといなお嬢ちゃんはいい子にして骨野郎の帰りを待ってな」
それだけ告げるとサリーの返答を待たず、早速ジャックを探すべく行動を開始した
墓場に一人残されたサリーは座り込んだまま、ただ目の前の地面を見つめていた
先程のブギーの言葉が頭から離れない
邪魔
足手まとい
確かにその通りかもしれないと思った
自分はジャックやブギー達のように戦えるわけではない
敵地へ向かうブギーについていく事はおろかな行為かもしれない
このまま言われた通り、ハロウィンタウンへ戻ろう
そこでサリーはその考えを振り切るよう頭を左右に振った
戦えはしないけれど自分にも何か出来る事があるはず
街で大蜘蛛と遭遇した時もそうだった
確かに危険ではあったがウェアウルフを助けに戻り彼を救出した
そして何より
ジャックを助ける為にとにかく何かをしたかった
ただ待っているだけなのは嫌だ
サリー「…ブギーに何を言われても構わないわ!」
そう自分に活を入れるように声をあげ、立ち上がるとブギーが向かった方向に続くよう進みだした