蠱惑の糸
ジャック「なんですって?」
紅茶の入ったカップを手にしたまま、ジャックは向かいの席に腰かけるメイヤーに問いかけた
町長「ですから、最近この周辺で奇妙な出来事が多くてですね」
ジャック「奇妙な出来事と言われても…それって当たり前の事じゃないですか」
そう、彼らの住むハロウィンタウンでは恐怖や不気味など通常人間が恐れ怖がるようなものは日常茶飯事
寧ろ住人からしたらご褒美まである当たり前の出来事だ
何を言い出すのかと思えば、と手にしたままのカップにそっと口をつける
質のいい茶葉を使っているようでとても香りがよく、味も申し分ない
町長「そ、それはそうなんですけど…今回はいつもと違うといいますか」
ジャック「どう違うんですか?」
町長「町の外での被害なんですが、どうも変わった蜘蛛に襲われるらしく」
蜘蛛と言われても、とふと考える
この世界ではよくいる生物で勿論街中や家の中にも存在している
変わった色というのが少し引っ掛かりはするが
ジャック「変わった色の蜘蛛ですか…被害はどのようなものなんですか?」
町長「被害にあったものは凍傷や火傷など…各場所でも被害があるようで木々が燃え小規模ではありますが火事もあったようで」
ジャック「思ったより被害が出てるんですね…この町ではまだ何も起こってはいませんよね」
町長「はい…けれどいつこの町にも起こりうるか心配で」
メイヤーの話を聞いていたジャックはカップを置き、軽く頬杖を突く
蜘蛛の被害など大したものではないと思っていたが、メイヤーのいうような事が実際にこのハロウィンタウンで起これば住人を危険な目にあわせる事になる
流石に病気や怪我などは避けなければならない
王であるジャックとしてはそのような危険な状況から住人を守らなければならなかった
ジャック「わかりました。まずは集会を開き、皆にその事を知らせましょう」
町長「そ、そうですね!では早速今から集会の事を知らせてきます!」
言うが否やメイヤーは足早にその場を立ち去ってしまった
室内に一人残されたジャックは深くため息を吐いた
ジャック「最近すっかり平和だと思ってたのになぁ…」
1人ぼやくも重い腰をあげる
集会に行かなければいけないな
机に置かれたままの紅茶の残りを口にし、足早にタウンホールへと向かった
メイヤーの呼びかけによりタウンホールには住人達が集まり始めていた
ウェアウルフやビヒーマス、ハーレクインやミスターハイドなど
その中にはサリーや珍しく小鬼トリオを引き連れたブギーの姿もあった
その後、数分も経たずしてタウンホール内は多くの住人達であふれかえっていた
そろそろだろうか
ざわついていた住人達の様子を伺っていたジャックが颯爽と姿を見せると自然とホール内は静まり返った
ジャック「皆、緊急ではあるけれど集まってくれてありがとう!今日はちょっと重要な話があって」
ブギー「メイヤーもそう言ってたぜ。重要な話ってなんだよ」
聞き覚えのある声に視線をおろすと一番前の椅子に腰かけふんぞり返っているのはブギーだ
その両脇を小鬼トリオがかためている
ジャック「というか君が来るとは思わなかったよ」
ブギー「俺も別に来たくはなかったんだがなぁ…メイヤーの奴がどうしても来てくれって煩くてな」
あのブギーをそこまでして誘うとは
メイヤーはブギーを恐れている
悪さをしていた頃から皆に恐れられていたが改心した今では住人達も少しは慣れた様子で、ブギーと会話もできるようになっていた
しかしメイヤーだけは何故かブギーを未だに恐れ積極的に関わるような事はなかった
ブギー「あのメイヤーが俺をここまでして呼ぶって事はそれなりの理由がある、だろ?」
ジャック「まぁ、厄介な事が起きているのは事実だね」
気を取り直して一度咳払いをするとジャックは住人達に向き合う
ジャック「さて、話の続きをするが…皆は今この周辺で起こっている問題に気付いているだろうか」
ジャックの言葉に皆はざわつく
もしかしてあれの事か?
ほら、蜘蛛の…
その言葉を聞き知っている者もいる事を知る
ジャック「知っている者もいるようだね、どうやら蜘蛛が関わった問題らしい。けど通常の何処にでもいる蜘蛛とは違い厄介な被害が出ていて怪我人は勿論火事や事故なども起きている」
ウェア「よく知らねぇが蜘蛛?蜘蛛なんてそこら辺にいくらでもいるだろ」
ジャック「そうなんだが、その蜘蛛は特殊らしくてね。変わった体色を持っていてここら辺にいる蜘蛛とは違う種らしい」
その場にいる誰もその蜘蛛を目撃したわけではなかったがメイヤーの話を聞く限り、普段みかけている蜘蛛達の中に相手に凍傷や火傷を負わせるような類のものは見たことがない
新種なのだろうか
それとも誰かが作り出した?
ショック「蜘蛛っていえば…ロック。墓場に見かけない蜘蛛いなかった?」
バレル「そんなのいたっけ?」
ロック「……あ!バレルと面白がって追いかけまわしてたやつだ!」
3人の会話にホール内にいる全員が一気に視線を向ける
一番そばにいるブギーもその会話に驚きを隠せないでいた
ブギー「おいお前ら…それ本当か?普通の蜘蛛じゃねぇのか?」
ロック「どう見ても普通の蜘蛛なんかじゃなかったよ!」
バレル「そうだよ!すごーく青かった!」
それを聞いて住人達の間にどよめきが起こる
墓場だって?
すぐ近くじゃないか
被害が出てるっていってたけど…
ここも危ないのかもしれないのか?
皆が不安な気持ちを口にし始め、タウンホール内がどよめきが起きる
ジャック「皆、落ち着いてくれ!」
ジャックの一際大きな声がその場にいる全ての者の耳に突き刺さり、皆が思わず口を紡ぐ
その場が静まり返るとホール内にカツカツとジャックの靴音だけが響き、それは小鬼トリオ達の前につくと同時に止む
ジャック「君達、それはいつの事なんだい?」
ロック「いつだったっけ?」
ショック「昨日よ!アンタ達そんな事も忘れちゃったの?」
バレル「そういえば昨日だった!」
普段から嘘などを平気で口にするこの悪ガキトリオではあるが、ジャックは彼らの言葉を信じてみる事にした
彼らがここで嘘を口にしても何の利益にもならないし、見慣れない蜘蛛を追いかけまわすなど彼らなら間違いなくやっていそうだと考えたのだ
ジャック「そうか…皆!集会はこれでお開きだ。僕と彼らは今から墓地の様子を見てくる。皆は町中に何か異変がないか見回ってくれ!もしも例の蜘蛛を目撃した場合は手を出さず町長に報告をするように」
出来るだけ被害を出さないよう最善を尽くす為に皆へと強い言葉で釘をさす
住人達はジャックの言葉に逆らう事などはない為これで一応は安心できるだろう
ジャックの言葉と共に集会は終わり、住人達は不安そうに会話をしながらホールを後にした
サリー「ジャック…」
振り返るとそこには同じく集会に参加していたサリーの姿
不安そうな表情を浮かべジャックを見上げる
サリー「その蜘蛛はとても危険なのよね?…もっと誰かを連れて行った方が」
もしもジャックが怪我をしてしまったらどうしよう
そんな想像をしてしまいサリーの声が微かに震えている
ブギー「俺が行ってやるよ」
今度は背後から聞きなれた声
ジャックとサリーに大きな影がかかり、振り返ると此方を見下ろしているブギーの姿
ブギー「こいつらを連れて行くんだろ?こいつらがへましちまうとと俺様に余計な面倒事を持ってきそうだしな…しょうがねぇから俺も行ってやる」
後々面倒ごとに巻き込まれるくらいなら先手を取って早々に終わらせる
そう言ってはいたが要は子供達が心配なんだな、と思ったものの誰もその事を口にはしない
ジャック「あまり大人数で行っても相手に警戒されて逃げられたら困るんだけどなぁ」
ブギー「あのなぁ…つーかこいつら連れて相手に気付かれないように行動できるのか?お前」
言われてみるとこの小鬼達は僕のいう事を素直に聞いてくれるのだろうかと不安が募る
素直に聞いたとしても最初だけで騒がれては元も子もない
ジャック「わかったよ。その代わりしっかり責任もって面倒みてくれよ?」
ブギー「おう、お前らあまりはしゃぎすぎるなよ?」
「「「はーい!」」」
やる気満々な様子の小鬼達は我先にとホールを出ていき、それにブギーも続いていく
サリー「本当に大丈夫かしら…」
ジャック「大丈夫なんじゃないかな?3人の事はブギーに任せておけばいいだろうし、僕だけだと騒がれて苦労しそうだしね」
サリー「…ジャック。貴方も気を付けてね?私とても心配なの」
そう言いジャックの右手をそっと包み込む
不安なのかその手は微かではあるが震えているように感じる
ジャック「心配いらないよサリー。ちゃんと気を付けるから、ね」
笑顔を見せるジャックにコクリと頷き、そっと手を放す
ブギー達の後を追うようにホールの扉を出ていくジャックの背中を見つめ、無事を願うように静かに目を閉じた
紅茶の入ったカップを手にしたまま、ジャックは向かいの席に腰かけるメイヤーに問いかけた
町長「ですから、最近この周辺で奇妙な出来事が多くてですね」
ジャック「奇妙な出来事と言われても…それって当たり前の事じゃないですか」
そう、彼らの住むハロウィンタウンでは恐怖や不気味など通常人間が恐れ怖がるようなものは日常茶飯事
寧ろ住人からしたらご褒美まである当たり前の出来事だ
何を言い出すのかと思えば、と手にしたままのカップにそっと口をつける
質のいい茶葉を使っているようでとても香りがよく、味も申し分ない
町長「そ、それはそうなんですけど…今回はいつもと違うといいますか」
ジャック「どう違うんですか?」
町長「町の外での被害なんですが、どうも変わった蜘蛛に襲われるらしく」
蜘蛛と言われても、とふと考える
この世界ではよくいる生物で勿論街中や家の中にも存在している
変わった色というのが少し引っ掛かりはするが
ジャック「変わった色の蜘蛛ですか…被害はどのようなものなんですか?」
町長「被害にあったものは凍傷や火傷など…各場所でも被害があるようで木々が燃え小規模ではありますが火事もあったようで」
ジャック「思ったより被害が出てるんですね…この町ではまだ何も起こってはいませんよね」
町長「はい…けれどいつこの町にも起こりうるか心配で」
メイヤーの話を聞いていたジャックはカップを置き、軽く頬杖を突く
蜘蛛の被害など大したものではないと思っていたが、メイヤーのいうような事が実際にこのハロウィンタウンで起これば住人を危険な目にあわせる事になる
流石に病気や怪我などは避けなければならない
王であるジャックとしてはそのような危険な状況から住人を守らなければならなかった
ジャック「わかりました。まずは集会を開き、皆にその事を知らせましょう」
町長「そ、そうですね!では早速今から集会の事を知らせてきます!」
言うが否やメイヤーは足早にその場を立ち去ってしまった
室内に一人残されたジャックは深くため息を吐いた
ジャック「最近すっかり平和だと思ってたのになぁ…」
1人ぼやくも重い腰をあげる
集会に行かなければいけないな
机に置かれたままの紅茶の残りを口にし、足早にタウンホールへと向かった
メイヤーの呼びかけによりタウンホールには住人達が集まり始めていた
ウェアウルフやビヒーマス、ハーレクインやミスターハイドなど
その中にはサリーや珍しく小鬼トリオを引き連れたブギーの姿もあった
その後、数分も経たずしてタウンホール内は多くの住人達であふれかえっていた
そろそろだろうか
ざわついていた住人達の様子を伺っていたジャックが颯爽と姿を見せると自然とホール内は静まり返った
ジャック「皆、緊急ではあるけれど集まってくれてありがとう!今日はちょっと重要な話があって」
ブギー「メイヤーもそう言ってたぜ。重要な話ってなんだよ」
聞き覚えのある声に視線をおろすと一番前の椅子に腰かけふんぞり返っているのはブギーだ
その両脇を小鬼トリオがかためている
ジャック「というか君が来るとは思わなかったよ」
ブギー「俺も別に来たくはなかったんだがなぁ…メイヤーの奴がどうしても来てくれって煩くてな」
あのブギーをそこまでして誘うとは
メイヤーはブギーを恐れている
悪さをしていた頃から皆に恐れられていたが改心した今では住人達も少しは慣れた様子で、ブギーと会話もできるようになっていた
しかしメイヤーだけは何故かブギーを未だに恐れ積極的に関わるような事はなかった
ブギー「あのメイヤーが俺をここまでして呼ぶって事はそれなりの理由がある、だろ?」
ジャック「まぁ、厄介な事が起きているのは事実だね」
気を取り直して一度咳払いをするとジャックは住人達に向き合う
ジャック「さて、話の続きをするが…皆は今この周辺で起こっている問題に気付いているだろうか」
ジャックの言葉に皆はざわつく
もしかしてあれの事か?
ほら、蜘蛛の…
その言葉を聞き知っている者もいる事を知る
ジャック「知っている者もいるようだね、どうやら蜘蛛が関わった問題らしい。けど通常の何処にでもいる蜘蛛とは違い厄介な被害が出ていて怪我人は勿論火事や事故なども起きている」
ウェア「よく知らねぇが蜘蛛?蜘蛛なんてそこら辺にいくらでもいるだろ」
ジャック「そうなんだが、その蜘蛛は特殊らしくてね。変わった体色を持っていてここら辺にいる蜘蛛とは違う種らしい」
その場にいる誰もその蜘蛛を目撃したわけではなかったがメイヤーの話を聞く限り、普段みかけている蜘蛛達の中に相手に凍傷や火傷を負わせるような類のものは見たことがない
新種なのだろうか
それとも誰かが作り出した?
ショック「蜘蛛っていえば…ロック。墓場に見かけない蜘蛛いなかった?」
バレル「そんなのいたっけ?」
ロック「……あ!バレルと面白がって追いかけまわしてたやつだ!」
3人の会話にホール内にいる全員が一気に視線を向ける
一番そばにいるブギーもその会話に驚きを隠せないでいた
ブギー「おいお前ら…それ本当か?普通の蜘蛛じゃねぇのか?」
ロック「どう見ても普通の蜘蛛なんかじゃなかったよ!」
バレル「そうだよ!すごーく青かった!」
それを聞いて住人達の間にどよめきが起こる
墓場だって?
すぐ近くじゃないか
被害が出てるっていってたけど…
ここも危ないのかもしれないのか?
皆が不安な気持ちを口にし始め、タウンホール内がどよめきが起きる
ジャック「皆、落ち着いてくれ!」
ジャックの一際大きな声がその場にいる全ての者の耳に突き刺さり、皆が思わず口を紡ぐ
その場が静まり返るとホール内にカツカツとジャックの靴音だけが響き、それは小鬼トリオ達の前につくと同時に止む
ジャック「君達、それはいつの事なんだい?」
ロック「いつだったっけ?」
ショック「昨日よ!アンタ達そんな事も忘れちゃったの?」
バレル「そういえば昨日だった!」
普段から嘘などを平気で口にするこの悪ガキトリオではあるが、ジャックは彼らの言葉を信じてみる事にした
彼らがここで嘘を口にしても何の利益にもならないし、見慣れない蜘蛛を追いかけまわすなど彼らなら間違いなくやっていそうだと考えたのだ
ジャック「そうか…皆!集会はこれでお開きだ。僕と彼らは今から墓地の様子を見てくる。皆は町中に何か異変がないか見回ってくれ!もしも例の蜘蛛を目撃した場合は手を出さず町長に報告をするように」
出来るだけ被害を出さないよう最善を尽くす為に皆へと強い言葉で釘をさす
住人達はジャックの言葉に逆らう事などはない為これで一応は安心できるだろう
ジャックの言葉と共に集会は終わり、住人達は不安そうに会話をしながらホールを後にした
サリー「ジャック…」
振り返るとそこには同じく集会に参加していたサリーの姿
不安そうな表情を浮かべジャックを見上げる
サリー「その蜘蛛はとても危険なのよね?…もっと誰かを連れて行った方が」
もしもジャックが怪我をしてしまったらどうしよう
そんな想像をしてしまいサリーの声が微かに震えている
ブギー「俺が行ってやるよ」
今度は背後から聞きなれた声
ジャックとサリーに大きな影がかかり、振り返ると此方を見下ろしているブギーの姿
ブギー「こいつらを連れて行くんだろ?こいつらがへましちまうとと俺様に余計な面倒事を持ってきそうだしな…しょうがねぇから俺も行ってやる」
後々面倒ごとに巻き込まれるくらいなら先手を取って早々に終わらせる
そう言ってはいたが要は子供達が心配なんだな、と思ったものの誰もその事を口にはしない
ジャック「あまり大人数で行っても相手に警戒されて逃げられたら困るんだけどなぁ」
ブギー「あのなぁ…つーかこいつら連れて相手に気付かれないように行動できるのか?お前」
言われてみるとこの小鬼達は僕のいう事を素直に聞いてくれるのだろうかと不安が募る
素直に聞いたとしても最初だけで騒がれては元も子もない
ジャック「わかったよ。その代わりしっかり責任もって面倒みてくれよ?」
ブギー「おう、お前らあまりはしゃぎすぎるなよ?」
「「「はーい!」」」
やる気満々な様子の小鬼達は我先にとホールを出ていき、それにブギーも続いていく
サリー「本当に大丈夫かしら…」
ジャック「大丈夫なんじゃないかな?3人の事はブギーに任せておけばいいだろうし、僕だけだと騒がれて苦労しそうだしね」
サリー「…ジャック。貴方も気を付けてね?私とても心配なの」
そう言いジャックの右手をそっと包み込む
不安なのかその手は微かではあるが震えているように感じる
ジャック「心配いらないよサリー。ちゃんと気を付けるから、ね」
笑顔を見せるジャックにコクリと頷き、そっと手を放す
ブギー達の後を追うようにホールの扉を出ていくジャックの背中を見つめ、無事を願うように静かに目を閉じた