蠱惑の糸



研究所を出たジャックとブギーだったが、二人して考え込んでしまう

博士には此方から探すと言ったものの
一体どこから手をつければいいのか

ジャック「はい、ブギー何かいい案は?」
ブギー「は?お前何か考えがあったんじゃないのか?」
ジャック「ないよ!」

腰に手を添えそう言ってのけるジャックにブギーは項垂れる


するとそこへ此方へ駆けてくる者が1人


町長「ジャーック!ここにいたんですねー!」

それはメイヤーだった
大きく手を振り駆け寄ってくると同時に躓いて二人の目の前に派手に倒れ込んでしまう


ブギー「…何やってんだお前」
ジャック「大丈夫ですか?」
町長「す、すみません…ちょっと慌てすぎました」

体を起こしながら照れくさそうな笑みを浮かべ
服についた汚れを叩き落とす

ジャック「ところでどうしたんですか?まさかまた何かあったんじゃ…」
町長「あ!そうです、その報告なんですが…」

メイヤーの話を聞き現在の状況を把握する

住人に注意を促したところ皆して蜘蛛への警戒心をより一層高めた

同時にその場で住人全ての身体検査を行ったのだという

住人の中に特に異常のある者はいなかった


そして検査を終えた者は帰宅と共に家に引きこもってしまったのだという

家中にも蜘蛛はいるだろうが外よりは安全と判断したのだろう


ジャック「そうですか…とりあえず一安心ですね」
ブギー「今のところは、だがな。この後いつ誰が取りつかれるかわからねぇぞ?」

嫌な事を言うなよ、と言いながらその横腹を素早く殴る
苦痛の声をあげ蹲るブギーを無視してメイヤーに向き直る


町長「…あ、そういえばそちらはどうでした?何か情報は得られましたか??」
ジャック「その事なんですが…ちょっと困った事になっていまして」

ジャックの話を聞きメイヤーはその場で考えこむ

町長「こ、困りましたね…何処にいるかもわからない相手ですか」
ジャック「街中は全て見回ったんですよね?」
町長「勿論ですよ!皆も異常はなかったと言っていますし」

すると街の外に潜んでいるのだろうか
そうなれば益々厄介だ
隠れる場所などいくらでもあるのだから


ブギー「はぁ…しょうがねぇな」

無事立ち上がったブギーが右腕を前に出し、自ら縫い目に手をかける
糸を引っ張ると布がわずかに裂け、そこから様々な虫が這い出てくる

地面に落ちたその虫達はそれぞれが何処かへと這っていく

ブギー「これでいいだろ」
町長「あの虫は?」
ブギー「偵察だ。これで少しはましになるんじゃねぇか?」
町長「便利ですねぇ…」

それ以上虫達が出ないよう避けた腕を押さえる

ジャック「どれくらいで結果が出ると思う?」
ブギー「さあな。こればかりはわからねぇ…まぁ待つしかねぇだろ」

そう言いながらブギーは押さえていた腕をジャックに差し出す
その行動の意図が読めずジャックは首を傾げる

ブギー「なに?って顔やめろ。片腕が使えねぇんだからどうにかしろよ」
ジャック「ああ、縫えってこと…って僕が縫うの?」
ブギー「メイヤーよりお前の方が器用だろ」

確かに僕は器用だけど、とジャックは困惑した表情を浮かべる

ジャック「縫ってもいいけど裁縫なんて普段やらないからどうなるかわからないけど?」
ブギー「他に誰が縫えるってんだよ」

そこで会話を止めて暫しの沈黙

すると二人同時にとある事に気付く



ジャック・ブギー「「裁縫といえばサリーじゃないか」」



その場にいない為だろうか
そんな分かりきった事をすっかり忘れていた


町長「では偵察はあの虫達に任せて…引き続き街の警戒はしておきましょうか」
ジャック「そうですね、お願いします」
ブギー「解れてきやがった…虫が溢れちまう!」

押さえていた腕から顔を覗かせる虫にブギーは大げさに騒ぎ立てる

ジャック「そんなに騒がなくてもいいだろ?すぐに死ぬわけじゃないんだし」

先に歩き出すジャックにブギーは文句を垂らし
二人は再び研究所内に舞い戻る事となった
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