蠱惑の糸


狼の強い脚力を生かし、床を蹴って一気に距離を詰める
同時に鋭く尖った爪をブギーの顔面目掛けて素早く突き出す

その動作に気付き、その場で身を屈ませ腕を交差させウェアウルフの伸ばした腕を下から押し上げるように受け止め軌道をそらす
続けざまにそのまま力任せに弾いた

軌道を上へそらされウェアウルフはその勢いに後方にわずかによろめく

その隙をついて今度はブギー自ら相手の両腕を掴む
両腕を封じられ引き離そうともがくも怪力なだけありその腕は解放される事はなく

「あぶねぇだろうがっ!!」

その怒声と共にウェアウルフの腕を力任せに引っ張り、そのまま勢いよく投げる

宙に投げ出され受け身を取る事無く壁に叩きつけられる

その衝撃に壁には亀裂が走り、ウェアウルフの身体は床に倒れ込んだ

そのまま動く事はないだろう
そう思っていたがウェアウルフは再び唸り声をあげながら必死に起き上がろうともがく

両腕を痙攣させながらなんとか上体を起こす





次の瞬間、その身体はすぐに床に強く押し付けられる事となった

近付いたブギーがウェアウルフの背を踏みつけていたのだ

自分より大きな相手に体重をかけられては流石に思うように起き上がれない


ブギー「ジャックほど素早くはねぇが厄介な野郎だ…大人しくしやがれ」


さて、どうしてやろうか
そう考えていたブギーの視界に何かが映る


踏みつけた背中
毛が毟られ傷付き血が滲む背中が

隆起している



踏みつけたまま身を屈ませその隆起した部分に手を伸ばす
軽く触れるとその隆起は蠢いた


なんだこれは


その蠢く隆起を掴み、そのままゆっくりと引っ張り上げる

するとその隆起した部位の色が徐々に変わっていき

現れたのは小さな蜘蛛だった




その蜘蛛には見覚えがあった

間違いない
あの夜、街中で大蜘蛛の中から出てきた

子蜘蛛だ




そのまま子蜘蛛を力任せに引っ張る
ウェアウルフの背の皮膚を蜘蛛の足が引っ張るとウェアウルフが悲鳴をあげる

皮膚に糸で癒着しているらしく痛みにもがく
床をガリガリと引っ掻き暴れるウェアウルフに構わずそれを引き剥がした


引き剥がされた子蜘蛛はブギーの手の中で小さな体を揺らす

そして次第に動きは弱まっていき
子蜘蛛の命は尽きた

ブギー「……まじかよ」

背から足を離し、蜘蛛を剥がしたと同時に気絶したウェアウルフを見下ろす

その背にはくっきりと子蜘蛛の形の火傷が浮かんでいた
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