蠱惑の糸
昼を迎え、住人達各々が食事を始める時間
街中にある店へハーレクインが姿を見せた
立ち止まりキョロキョロと辺りを見るが待ち人であるウェアウルフの姿はない
ハーレクイン「アイツまだ来てないか…少し待ってみるかな」
もう少し待って来なかったら迎えにいってやろう
そう考えていると此方へ向かってくる見慣れた姿
ジャック「やぁ、ハーレクインじゃないか」
ハーレクイン「ジャック!それに町長じゃないか!」
自分と同じく店に食事に来たのであろう二人
ジャックが不思議そうに首を傾げハーレクインを見る
ジャック「こんなところでどうしたんだい?」
ハーレクイン「ウェアウルフと昼の約束してるんだが、まだ来ないんだよなぁ」
町長「そうでしたか。ちょっと心配していたんですが、その様子だと大丈夫みたいですね!」
ハーレクイン「今朝家にいったけど元気にしてたな」
それを聞いてジャックはよかった!と笑顔をこぼす
昨日の件からウェアウルフの心配をしていたのだが、ハーレクインの話を聞き元気である事を嬉しく思っていた
ジャック「そうだ!せっかくだし僕達も彼らと一緒に食事しましょう!ハーレクイン、いいかな?」
ハーレクイン「勿論!ウェアウルフも喜ぶと思うぞ!」
ジャックの申し出を快く受け入れたハーレクイン
3人はその場でウェアウルフが来るのを待つこととなった
町長「来ませんねぇ…」
あれからどれだけ経っただろうか
一向にウェアウルフは姿を見せない
ハーレクイン「遅れるなって言ってあったんだけどなぁ」
町長「遅れるにしろこれだけ待たせるのはどうなんでしょうねぇ…」
ジャック「何かあったんでしょうか…此方から迎えに行ってみましょうか」
ジャックの提案に2人は賛同し、ウェアウルフの家へと向かった
ハーレクイン「おーい!ウェアウルフー!」
今朝と同じように扉をドンドンと叩く
しかし扉が開く様子はなく、中からは物音一つ聞こえない
ハーレクイン「まさか留守か?けどそれなら待ち合わせ場所に来るだろうし…」
町長「もしかしてまた寝ちゃってるんじゃないですか?」
そういってメイヤーが何気なくドアノブに手をかける
すると鍵がかかっておらず、扉は簡単に開いた
ジャック「開いてますね…どうしましょうか」
ジャックがそう考えているとハーレクインが前に出る
もしも寝ていたら叩き起こしてやる!
そういって我先にと家の中へと入っていった
ハーレクイン「おいウェアウルフ!寝てるのか?それなら起きろー!もう昼だぞー!」
大きな声をあげながら室内へ入ったハーレクインだったが、そこに彼の姿はなかった
おかしいと思いつつ足を進めるとそこは今朝自分が招かれた場所
質素な家具に自分が腰かけていたソファ
何気なくそのソファを見ていると違和感を覚えた
このソファ…今朝より痛んでる?
確認する為に近づくとやはり今朝みたときより痛んでいる
背もたれにいくつもの鋭い切り傷
ハーレクイン「なんだよこれ…」
その傷に触れようと一歩足を踏み出すと、足に何かがくっついた
何だろうと足の裏を見てみると
毛だった
それは見覚えのある色
ウェアウルフの毛色だった
ハーレクインの全身が強張った
床をよく見ると
そこには大量の毛が落ち、微かではあるが血痕があった
町長「ハーレクイン!ウェアウルフはいましたかー?」
遅れて中へと入ってきたメイヤーは立ち尽くすハーレクインを見て不思議そうに歩み寄る
町長「どうしたんです?」
ジャック「ウェアウルフはいないのかい?」
続いて入ってきたジャックの声を聞きハーレクインがようやく声を出す
ハーレクイン「なんだこれ…何があったんだ?」
その言葉に2人は異変に気付いた
ソファや毛、血痕
それは誰が見ても異変があったと思えるものだった
町長「こ、これは…」
ジャックがその場に膝をつき、床に落ちた毛をつまみ上げる
よく見るとそれ自体にも血がうっすらとだがこびりついていた
ジャック「………これは彼の毛ですね。それにこの血もたぶん」
ハーレクイン「あ、アイツに何があったんだ?…今朝会った時はいつもみたいに笑ってたのに!」
町長「まさか…また例の蜘蛛が」
メイヤーの言葉にハーレクインが息をのむ
ジャック「…それはないでしょう。もしも襲われたのなら彼だって抵抗するでしょうし…見たところ争った形跡はありませんから」
ジャックの言う通りだった
ソファは傷付いているものの、それ以外は壊れたり傷をおっている様子はない
ジャック「ここで何があったのかはわからない、まず彼を探さないと…手分けして街中を探しましょう!それに誰か彼を見ている者がるかもしれません」
町長「わ、わかりました!!」
ジャックの言葉にいち早く反応したメイヤーは慌てて家から飛び出し、続くようにジャックも走り出す
ハーレクインは呆然とその場に立ち尽くしていた