蛭魔妖一が幼馴染になった
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早朝。扉の開く音が聞こえて目が覚めた。ほんの少しだけ部屋はグレーになっていて、夜明けが来るのだと気がついた。さっきの音は母さんだ。足音が聞こえてこないから玄関で寝ているのだろう。たまにある。今日は相当お疲れらしい。そのまま寝かすには可哀想で、仕方ないと重い身体を起こせば布団の下に蛭魔が転がっているのが見えた。眠る姿は年相応に見えて、昨日の素直でいじらしい様子を思い出すと頬が少し緩んだ。蛭魔の布団をかけ直して部屋から出ると音がしない。少し呆れながら玄関に行けば、長髪を廊下に散らばらせて母さんが寝ていた。だと思ったよ。
むしろそんな状態で家まではたどり着けていることを褒めたくなる。しょうがなく母さんを抱き上げて寝室に運ぼうとすると小さな唸り声がしてきた。それから長いまつ毛が押し上げられてブラックダイアモンドの瞳が覗いて俺を捉えた。
「なまえおはよ〜。」
無邪気な子供のように頬を緩めて俺の首後ろに腕を回してチュッチュッとキスを頬や首や身体に落としていく。これが息子じゃなかったら一瞬で好きになってただろう。「世界一かっこいい私のなまえ〜。」なんて頬擦りまでしている始末だ。昨晩はかなり盛り上がったのだろう。
このような顔面偏差値爆高お母様の過度なスキンシップのおかげか、母さんのお仕事場のお美しいお姉様達にも耐性が出来ている。ちなみにうちの母さんが世界一美人だと思っているよ。
「おはよう。母さんちょっとタバコ臭いな。」
酒の匂いはお仕事で頑張ってくれている証拠なので我慢するがタバコはきつい。しかもそれが移るとなるの辛い。俺が顔を顰めたからか「お風呂〜。」と足を少しばたつかせた。
果たして先程まで玄関で眠っていた酔っぱらいはすぐに風呂に入れるのだろうか。少し疑問に思ったけれど風呂場の前で音を聞いていればいいだろう。倒れた音したらかけつければいい。
床に降ろしたら案外普通に歩き出す。白く柔らかい足は少女のように柔らかそうで軽い足取りだ。背中に流れるミルクティー色の髪がふわふわと揺れている。こちらを振り返った母さんはとてもじゃないけど子持ちには見えない。こりゃ魔性の女ですな。これで40歳近いんだから恐ろしい。
「ただいま、なまえ。」
「……おかえり。母さん。」
やたらはっきりと母さんが言うから、母親って強いんだなって素直に思う。俺に近寄って頭を少し掻き回してから風呂場に消えていくから、俺が人の頭をやたら触りたくなるのは母さんの影響なんだろうと気がつく。母さんなりの愛情表現が俺には心地よくて、細い指が俺の頭を掻き回しな感覚が残るうちに朝の支度を済ませようと自室に戻った。
ベッドに置いてある携帯を手に取ろうとしたところで蛭魔の目が開いてることに気がつく。起きたのだろうかと思ったが、ショボショボしてるので意識があるのかどうか怪しい。
「まだ寝てていいよ。」
俺の言葉にも反応することなく数回ゆっくりと瞬きをしたあと「わるくねぇな。」と呟いて蛭魔のまぶたが降りた。