蛭魔妖一が幼馴染になった
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蛭魔妖一というのはよく喋る元気な子だった。なんとなく警戒心が強い子だと思っていたのでこんなにも喋るとは思っていなかった。いや作中ではめっちゃ喋ったランキングで一位だった気がするけど。ペラペラと話す蛭魔くんの話を根気強く聞いてから黙ったのでほっぺに絆創膏貼り付けて帰った。会話?してませんよ。声でバレたら嫌じゃん。一応同じ学年だし。
だけど当然次の日、絆創膏を貼っている蛭魔小学生がいた。
「お前だろ。昨日のクソお面。」
突然俺のクラスまで来たかと思えば心底不機嫌で言い放った一言である。三森さんが「え、ヒル魔くん喋った!」と驚いたあと俺の後ろに隠れた。
あーぁ、バレたら嫌だから声出さないようにしたのって無駄だったんだなぁ。まぁ隠し通せるとは思ってないけど。目立つ髪を隠したら普通の子供のように見た目はなれるだろうと思っていたけれど、蛭魔少年は思ったよりも人のことを見ていて思った通り記憶力が良かった。
これなにか言わないといけないやつだよな、でもなに言えって? しかも腕に三森さんベッタリくっついてるし、なんか蛭魔少年と口論始めるてる。
とりあえず場所を変えようと教室を出たら蛭魔少年がやいのやいの言いながらも着いてきた。こういうときに大人しく待っててくれる(ほかの女の子たちに止められてた)三森さんは素敵な女性になると思うよ。
「クソお面!!」
「…クソとか言わないの。」
「じゃあ
わぁああああああ!!!!!
突然の蛭魔妖一にその場で悲鳴をあげそうになった。ああ言えばこう言うクソガキ精神と、糞と書いてファッキンと読む独特なセンス。これ同姓同名なわけがない。蛭魔妖一その人だ。これ元祖
「なんで助けたんだよ。」
「助けたってなんの話?」
「しらばっくれても無駄だぞ。昨日のお面野郎はテメーだろ。体格とおめんで分かった! ありゃ一昨日の美術の授業のヤツだろ。あんな手抜きな作品テメーぐらいだからな!」
にやりと笑いながら俺の顔を見上げる蛭魔少年の頬の絆創膏を見つめる。子供の頃からなんて賢い子なんだ。それに引き換え俺は人生2周目なのになんでなんの言い訳もしないで尋問にあっているのだろう。でもどう考えたって蛭魔少年に勝てる未来がなくて「…助けてない。」と苦し紛れに呟く。
「あ?」
「嫌だっただけ、君が怪我するの。」
本当に正直な回答だった。助けたいなんて大それたことをしたかったんじゃない。何か大志があるわけでもないし、彼と仲良くしたいとかそういうのもない。ただ健やかに育ってほしいだけだ。そしていつか風の強い日を選びながら自分の力で自分の夢を叶えてほしい。
いつか俺は泥中に賭けて大金持ちになるんだ。
「それを助けたっていうんだろーが。」
「…お節介みたいなもんだよ。俺がなにもしなくても君は勝手にどうにかする。」
「はー?あれからどうしろってんだ。」
「分かんないけど、銃とか持ってないの?」
「持ってるわけねーだろ! 犯罪だぞ。」
うわ今の録音したい。そして何年後かの君に聞かせてあげたい。『ほら、小学生のお前はよくわかってるぞ?』って。
こいつなんなんだみたいな目で睨んでくる蛭魔少年が可愛い。いつからそこら辺のモラルが欠落していくのだろうかと思案していればチャイム。パッと蛭魔少年が顔を上げたので「今回は何とかなったけど、あんまり悪戯するなよ。」と頭をポンポンと撫でて教室に向かった。
*
蛭魔少年との出会いはほぼ一方的なものだったけど、それからというもの彼からチラチラとした視線を感じるようになった。目が合うと向こうがプイッと勢いよく逸らしてどっかに行ってしまうので話すことはなかったけれど。
「……また殴られたの?」
「ちげーよ。転んだだけだ。」
「君も転ぶんだね。」
「転ぶことくらい誰にだってあるだろ。」
「まぁ、そうなんだけど。手当て、しに行こ。痕になるよ。」
蛭魔少年は活発なのか、たまに怪我してるのでその時ばっかりは声掛けて保健室に二人で行くことにしてる。だってそのままにして傷痕残ったらあまりにももったいない。せっかく男前なのに。
まぁ蛭魔妖一という男ならば傷痕も威圧の道具に使いそうだけど。
「つまり手出してくるやつはその時点で負けてんだ。感情的になったら負けっつーやつだな。」
「まず口論にならないよ、普通。」
「あっちがふっかけてくるんだっつーの。俺が読んでる本が分かんねーからってガキはあっち行けだとか絵本読んでろとか。マジでうぜぇ。」
「何読んでたの?」
「ジェームズ・アレン。良い結果と悪い結果にどんな差があるのかってやつで、結果が変わることには原因があるだろ? それに法則があって、」
ツンケンしてるけど彼は意外とお喋りだ。うちのクラスの子はあんまり彼と話したりはしないけど、俺には懐いてくれてるのかずっと喋ってる。楽しそうだったり怒ってたり、嬉しそうだったり、ときどき悲しそうだったりする蛭魔少年の横顔を見ながら俺は話に耳を傾けるのが日課になった。
あ、ちなみに三森さんとはたまに口論しているを見るけれど、あれは喧嘩するほどなんとやらってやつだと思う。今のうちに女の子と仲良くする方法を少しは覚えておいてほしいな。