蛭魔妖一が幼馴染になった
名前
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両親が離婚した。離婚の理由は明確には分からないけれど俺は母さんについて行くことになり小学二年生で引越した。
俺はアルビノという体質で髪は白銀、瞳も水色に近い色をしていて日本人ではかなり目立つ見た目なので少し浮いているけれど、みんな親切に話しかけてくれる良いクラスメイト達だ。別に一人でもそんなに寂しくはないし、むしろ人見知りの傾向があるので囲まれるほうが居心地悪くなる。いや友達がいらないとは言っていないよ。ゆっくり優しくシャボン玉に触れるみたいに接してほしいって言ってるだけ。つまるところ俺は人見知りだ。
こんなことを思いながら未だどこか地に足着かない学校生活を送っているときに、ガチャガチャと色々な装備をしている黒髪三白眼の同級生を見掛けて、俺は思わずブラブラと揺らしていた体操着を落とした。
「…ねぇ、」
「ど、どうしたの!?なまえくん!!」
適当に誰かに呼び掛け、反応してくれたのはクラスのモテ女である三森さんだった。ピンク色の唇にいつも丁寧に結ばれたツインテール。ふりふりの女の子らしいスカートところころとした声。いつも愛想良くコミュニケーション能力に問題がある俺にも声を掛けてくれるクラスリーダーだ。
いつもは声掛けてもらっても俺が上手く返答できないんだけど、今日はそんなことよりもあのツンツン頭の黒髪少年のことで頭がいっぱいだった。
「あの子、なんて名前?」
「隣のクラスのヒル魔くんだよ。蛭魔妖一くん!」
三森さんは俺の腕に掴みながら上目遣いで彼のことを説明してくれているけれど、全く内容が耳に入ってきていなかった。
知っている。蛭魔妖一くんを俺は知っていた。彼は数年後に泥門高校に入学してアメフト部をつくる。そして2年生で見事優勝を果たすのだ。そう、目の前をスタスタ歩くのは蛭魔、
「よう……、」
「なまえくんーーーー!!!??」
そしてその名前を聞いた瞬間俺は倒れた。
*
保健室で目を覚ましたとき、俺は汗だくで最悪の目覚めだった。これは熱いからでも若いからでもない。冷や汗だ。
蛭魔妖一。彼の名前で俺は脳みそを直接揺らされたような衝撃が走り、思い出さなくてもいいようなことを思い出した。いや思い出したというのは正しいのだろうか? そこら辺はどうでもいいけど記憶があるのだ。
昔というのも正しいのか分からない記憶。ネクタイを緩めながら満員電車に揺られて帰宅し、後輩に押し付けられた漫画を読みながら酒を飲んでいた。その漫画はなかなか面白く印象に残っている。
だけど、だ。そのくらい。あの漫画はふわっとした記憶で、もっと好きだった漫画はたくさんある。だけど蛭魔妖一というのは後輩に借りたアイシールド21という漫画のメインキャラクターだ。
うわぁまじかぁ。さっきまでただのド陰キャキッズだったのに急に精神年齢が20歳くらいプラスされた。人生二週目の精神おじさんキッズになってしまった。なるほど、だから俺は同学年よりも母さんのお仕事仲間のお姉様や保険医の保子先生が好きなのか。精神はおじさんだもんな。
いやそんなことはいい。それよりも、だ。これはなんだ。前に流行ってた転生というやつなのだろうか。っていうか転生とかそういうのってどういう仕組みなんだろう。別世界に魂だけが流れ着いて、母体の中に紛れ込むとか? 記憶を持ったまま? そんな馬鹿な。そもそもアイシールド21の知識はどう説明する。いっそ超特殊能力で未来を見通せる力、とかいう方が近いのだろうか。それともこれは超現実的な夢。俺は寝ていて夢の中だけで起こっているだけ…とか??
「なまえくん起きた?」
「……保子先生、俺は頭がおかしくなりました。」
「うん。元気そうね!」
俺の発言を冗談かなんかだと思い込んだ保子先生は俺の首や口の中や目の下やらを確認しながら「やっぱり貧血ね。」と呟く。めっちゃいい匂いするな、この香水ディオールですか?
保険医が香水つけていることにもはや疑問なんて抱かなかった。テキパキと仕事をする保子先生に忘れてたけど蛭魔小学生はどうしようかと考える。いやどうもこうも関わる理由もないし、もしかしたら他人の空似というやつで蛭魔妖一という同姓同名かもしれない。
「親御さん出ないから、今日は私の車でお家まで送ってくわね!」
親指を立ててめっちゃいい笑顔で言い放った保子先生に俺は内心小躍りしながら頷いた。美人保険医の助手席ひゃっほう!
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