太宰さんは参謀になりました。
森の中にある洋館。
来る途中までにも夥しい死体があった。
進んだ先は広大で天井の高い舞踏室。
其の中心にはミミックの首領と思われるアンドレ・ジイドの死体と、其の正面に倒れる私の友人が見えた。
「織田作…!」
「太宰…」
織田作を起き上がらせると、手にヌメっとした感触に違和感を感じた。
自分の手を確認すれば、案の定其れは血だった。
織田作は胸に弾丸を貫かれ、血を流していたのだ。
「莫迦だよ織田作。君は大莫迦だ」
「ああ」
「こんな奴に付き合って死ぬなんて莫迦だよ」
「太宰…お前に云っておきたい事がある」
「駄目だ、止めてくれ。まだ助かるかもしれない、いや、きっと助かる!だからそんな風に」
「聞け」
織田作は優しく私の頭を掴み軽く引き寄せた。
「…!」
「お前は云ったな。”暴力と流血の世界にいれば、生きる理由が見つかるかもしれない”と…」
「ああ、云った…云ったがそんな事今は」
「見つからないよ」
「…ぇ」
「自分で判っている筈だ、人を殺す側だろうと、人を救う側だろうと、お前の頭脳の予測を超えるものは現れない。お前の孤独を埋めるものはこの世のどこにもない。お前は永遠に闇の中をさまよう。」
その時私は、初めて気がついた。
私自身が思っているよりもずっと織田作は私について理解していた。
私は生まれて初めて知りたいと思ったことを質問した。
「織田作…私は、どうすればいい…?」
「───”人を救う側になれ”」
織田作は云った。
「どちらも同じなら、佳い人間になれ。弱者を救い、この江戸を…かぶき町を守れ。正義も悪も、どちらもお前には大差ないだろうが……そのほうが、幾分かは素敵だ」
「何故判る…」
「判るさ。誰よりも判る。
俺はお前の友達だからな」
「…!」
織田作の目には確信の光があった。
かつて──自分が通った道を、私に示そうとしている。
「…判った。そうしよう」
「『人は自分を救済する為に存在する』か…確かに…その通り…だ……な」
頭に添えられていた手は重力に従い、ゆっくりと床へ落ちていった。
来る途中までにも夥しい死体があった。
進んだ先は広大で天井の高い舞踏室。
其の中心にはミミックの首領と思われるアンドレ・ジイドの死体と、其の正面に倒れる私の友人が見えた。
「織田作…!」
「太宰…」
織田作を起き上がらせると、手にヌメっとした感触に違和感を感じた。
自分の手を確認すれば、案の定其れは血だった。
織田作は胸に弾丸を貫かれ、血を流していたのだ。
「莫迦だよ織田作。君は大莫迦だ」
「ああ」
「こんな奴に付き合って死ぬなんて莫迦だよ」
「太宰…お前に云っておきたい事がある」
「駄目だ、止めてくれ。まだ助かるかもしれない、いや、きっと助かる!だからそんな風に」
「聞け」
織田作は優しく私の頭を掴み軽く引き寄せた。
「…!」
「お前は云ったな。”暴力と流血の世界にいれば、生きる理由が見つかるかもしれない”と…」
「ああ、云った…云ったがそんな事今は」
「見つからないよ」
「…ぇ」
「自分で判っている筈だ、人を殺す側だろうと、人を救う側だろうと、お前の頭脳の予測を超えるものは現れない。お前の孤独を埋めるものはこの世のどこにもない。お前は永遠に闇の中をさまよう。」
その時私は、初めて気がついた。
私自身が思っているよりもずっと織田作は私について理解していた。
私は生まれて初めて知りたいと思ったことを質問した。
「織田作…私は、どうすればいい…?」
「───”人を救う側になれ”」
織田作は云った。
「どちらも同じなら、佳い人間になれ。弱者を救い、この江戸を…かぶき町を守れ。正義も悪も、どちらもお前には大差ないだろうが……そのほうが、幾分かは素敵だ」
「何故判る…」
「判るさ。誰よりも判る。
俺はお前の友達だからな」
「…!」
織田作の目には確信の光があった。
かつて──自分が通った道を、私に示そうとしている。
「…判った。そうしよう」
「『人は自分を救済する為に存在する』か…確かに…その通り…だ……な」
頭に添えられていた手は重力に従い、ゆっくりと床へ落ちていった。
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