Act 7
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ロジャーと偶然にも故郷であるローグタウンで再会を果たし、彼の仲間達とも会い見えた
会う気はなかったのだが、結果的にロジャーの仲間と会えてよかったかもしれないと思うジョー
1番世話になっているであろう副船長であるレイリーと顔見知りになれたのはこれからきっと役に立つだろうと
そんなこんなで、ロジャー希望で兄弟二人で彼に懐いたウマヘビに会いに行った後…
すぐに別れて帰るはずだったのだが、残念ながらロジャーが大層ウマヘビを気に入ってしまった
そしてそれはウマヘビも同じで、ジョーに懐いたように弟のロジャーにも懐いたのである
想定していなかったわけではないがそれにしても「この海王類大丈夫か」と思ってしまうのは仕方ないだろう
本来であれば人間と海王類は敵対しておかしくなく、特に海王類からすれば人間なんて捕食対象でしかないのだから
ロジャー達の出航も直ぐだったようで、待てども待てども戻って来ない船長に痺れを切らしたレイリーが探しに来たのだ
その後のことは想像に難しくないだろう…お察しの通り、こっ酷くレイリーに叱れたのである
引き摺られるように連れて行かれていく弟を少々複雑な想いで見送った
見送ったのだが、色々と心配になってしまったジョーはウマヘビにもう少し待ってもらい港へ
その際、土産に肉を追加で買ってくることを約束して
港にはロジャー海賊団の船が泊まっており、出港の準備は既に出来てた様で船長のロジャーを待つのみだったらしい
ジョーが「本当にロジャーが船長で大丈夫だろうか…」と思っていると、心配の種と目が合う
「おっ! ジョー! 見送りに来てくれたのか!!」
『あんな所を見せられてはちょっと心配になってね…』
「わはははっ! いつもの事だぜ!」
『…すまないレイリーくん…うちのロジャーが世話を…』
「いや あなたが気にすことではない、ロジャーに船長としての意識が足りんのだ
それにロジャーがそう言う奴だと言うのはこの数年で嫌と言うほど思い知った」
『益々申し訳ないね…何かやらかしたら先程みたいに容赦なく叱ってくれて構わないから』
「無論、そのつもりだ」
「お前らな、俺をガキ扱いするんじゃねェよ!」
『それなら叱られないよう心掛ける事だ』
「全くだな」
「ぐぬぬぅ…!」
ロジャーは二人にダブルパンチの如く色々言われ、納得いかないような表情だ
しかし、知的な二人に口で勝てるかと言われると残念ながら否である
そんな様子を見ていた船員達は「兄貴も乗ればもっと良さそう」と思ったりしたとかなんとか
ともあれ、ロジャー率いる海賊団はローグタウンを出て魔の海と呼ばれるグランドラインへと向かった
それを見えなくなるまで見送ったジョーもまた、肉屋で追加で購入してからウマヘビの元へ戻るのだった
*******
そんな事があってから何十年もの月日が流れ、ジョーは随分と歳をとりまさに中年男性である
悪魔の実を食べてしまった当時はその実の能力がどう言ったものかよく分からず使えるから使っていた
しかし時が流れた事でその能力の真価もハッキリと分かり、ジョーは無闇に使わないようにしている
とは言え、歳をとれば足腰にガタが来たりするわけで…そう言う時には能力を使ったりしているのだ
ここでジョーの食べてしまった能力を紹介しておこう
ジョーが食べてしまった実は「フェノフェノの実」と言い、彼が戻したいと思う事象を戻す事ができる
また彼の匙加減で戻したいところまで戻すこともできそれは生命体にのみ効果を及ぼす
人の手が加わった人工物…例えば船の老朽を戻すなどはジョーの能力では戻せないが使い方によってはある意味最強であり最凶でもあると言えるかもしれない
そんな能力を身につけてしまった彼は有効活用しようと実験も兼ねて己の体で能力を使ったのである
その結果、見た目はまぁ…年取っていっているのだが体は全盛期のままというチグハグ加減の体が出来上がった
簡単に言えば超元気な中年男性とでも言えよう
因みにジョーが誤って小虎にしてしまった大虎は数十年も経てば大きさは元に戻っている
ただそうなると彼の膝に乗れなくなった事に大虎は少々不満だったのはここだけの話だ
そんなジョーは今日も今日とて平和(巨大猛獣はそう思っていない)な生活を送っている
数週間ぶりに届いた新聞をニュースクーから買い取り、大虎を背に読むのが定位置
『ロジャー達も随分と派手に回っているね』
そう笑みを見せながら呟き読んでいる記事はもちろんロジャーが載るもの
グランドラインに入ったかと思えばあっという間に進んで行った
そして後半の海…「新世界」にも進出して更にその名を世界へ広めた
ロジャーと同時期に新聞に載っていたのは「ロックス海賊団」の「エドワード・ニューゲード」や「ビッグ・マム」に「カイドウ」
そして「金獅子のシキ」などの人物であり、その対抗勢力として「ゲンコツのガープ」や「知将センゴク」などなど…
海賊海軍含め様々な人の名が記事に載り賑わせている
ただ…
『一度でいいから私の元を訪れてくれても良いと思うのだけど…そう思わないか?』
「グルルル?」
『まぁあの子の人生はあの子のものだと言ったのは私だけれど、顔を見せてくれても良いだろうに』
とまぁ…一度も己に会いに来てくれない事に少々不満を持っているのである
ロジャーからすればグランドラインにいると知ったジョーを探さなかった訳ではない
ただどこを探しても見つけ出すことが出来ずに月日が経ってしまったのだ
それもそうだろうジョーの住む無人島……否、実は無人島と言うのも少し違う
彼が居座っている無人島だと思っていた場所は巨大亀の甲羅だったのだ
それに気付いたのも彼が四十になってからで、亀だと気付けたのも偶々だった
前後か左右かその人の見方で変わるが、島から突出している部分が元々あったのである
今までそこに需要を感じなかったジョーは確認しに行く事もせず放置していた
そんな中途轍もなく暇を持て余したジョーが偶々足を向けた先が亀の頭部の部分だった
彼もここが島ではなく生き物の上だった事に大層驚いたが、長年住んでいて何の苦情(?)もない為今も住み続けているのだ
ただ、亀がまだ生きているのか死んでいるのか彼に判断は出来ていないのだが
この場所が島でないとなると磁場がなくログポース頼りで進むこの海で見つけ出すのはかなり困難を極める
ここまで来るのにログポースを使っていないジョーにはその困難さを全く理解出来ていないのだが…
『まぁでも、元気でいてくれればそれで良いのだけどね』
彼は知らない
ロジャーが数年前から不治の病に侵され多量の薬を服用している事を
そしてジョーがその事実を知った時、深い後悔に苛まれてしまう事を…
*******
「悪ぃんだが最後の旅に出る前に会っておきたい奴がいる!」
そう言い出したのは新世界の最後の島…と思われていた場所を見て回ったロジャーその人である
ただそこから更に先に己が探し求めているモノがあるのだとロジャーは確信していた
最後の旅には偶々無人島で目見えた白ひげの船に乗っていた「光月おでん」を一年借り受けたのだ
おでんと共にいた彼の妻であるトキとその子供達のモモの助と日和も共にロジャーの船に乗っている
そして「さぁ行こう!」と言う矢先、ロジャーの上記の言葉で船員達の頭上には「?」が飛んでいる
レイリーの様な古参であればその言葉に察しは付くが、ジョーの存在を知らなければ分かりはしない
ただ今までも探していたにも関わらず見つかってないのに見つけられるのかと言う不安はある
今はグランドライン前半の海に戻って来ており、折角だからとロジャーは思ったのだ
それ以外にも己の命の灯火があと僅かだと言うのもあり、最期に会っておきたいと思うのは当たり前だろう
疑問符を飛ばす船員の中「ハイッ」と手を挙げたのは見習いとして乗っている赤毛の少年
ロジャーから譲り受けた麦わら帽子がやけに似合っている
「ロジャー船長が会いたい人って誰ですか!」
「おい野暮な事聞くなよシャンクス…!」
「そうだぜ! 船長にだって会いたい女の一人や二人…!」
などなど…全くの見当違いな話でワイのワイの賑わっている
「美人な姉ちゃん」やら「意外に可愛い系かも…」など妄想が膨らむ船員たち
まだ少年であるシャンクスと同年代で同じ見習いのバギーは「そう言うもん?」的な表情である
今回乗ったばかりのおでんに関しては、己にも最愛の妻と子供がいる事で「お前にもいるのか!」的な感じだ
三者三様、十人十色のような会話の嵐を黙って聞いていたロジャーが「一つ言っておく!」と言った
「そいつに会った時、俺の体の事は絶対に言うな!」
そう言う彼に船員達は相手の女に心配をかけさせたくないのだと思った
しかしその中でロジャーが会いたがっている相手が分かっているレイリーは怪訝な表情を見せた
互いが唯一の肉親であり、互いが互いを大事に思っているのは一目瞭然だった
だからこそ心配をさせたくないと言う事が理由だろうと理解出来ても納得は出来ないのだ
それ以上特に何も言う気のないらしいロジャーが輪の中から抜けたのを見てレイリーが近づく
「ロジャー本気か?」
「何がだ?」
「彼にお前の体のことを話さないと言うのは」
「まぁな」
「何故だ? 唯一の肉親だろう、私は話すべきだと思うが」
「……俺が海に出る時兄貴も誘ってたんだがよ、即答で断られた!」
「そんな経緯があったのか」
「そん時に言われたんだ、俺には俺の兄貴には兄貴の人生があるんだと」
「 ! 」
「俺が病を患ってるなんて知ったら兄貴は俺が死ぬまで傍に居続けてくれんだろうなァ…
けどよそれは俺の本意じゃねェ…そうなったら兄貴の自由を俺が奪う事になっちまうだろ」
「……だから黙っているとでも言うのか」
「あぁ、俺はこの人生に悔いはねェからな!」
そう笑いながら言うロジャーにレイリーもこれ以上何かを言う事は出来なかった
船長と副船長が何を話していたのか聞こえはしなかった船員達
ただ、二人の表情が対照的である事から互いの意見が違ったのだろう事は察した
普段なら直ぐに二人の周りに人が集まるのだが、今回はなんだか近寄り難い空気が流れている
しかしそんなモノ知った事かと言いたげに二人の元へ向かったのはおでんだった
「二人して辛気臭い顔して何を話しているんだ!?」
「先程のロジャーの言葉についてだ」
「そうか! 最愛の人には心配はかけたくねェものよ!」
「………所でロジャー、散々探して見つからなかった相手をどう見つけるつもりだ?」
「あぁその事なんだがよ、俺ァ見当違いなとこをずっと探してたのかもしれねェ」
「……と言うと?」
「恐らくジョーは航路通りの島にはいねェんだ」
「 ! …なるほど、それならば見つからないのも納得出来るな」
「だろ? そもそもログポース自体持ってねェ可能性もある」
「海王類に乗っていると言っていたしな」
「∑海王類?! どう言う事だそりゃあ!!」
「なんでも海王類と喧嘩して懐かれたんだとよ! 俺も思わず笑っちまったぜ!」
「そりゃスゲェ!! おれも早く会ってみたいのう!!」
そう目を輝かせるおでんに悪い気がしないロジャーは「だろ?!」と自慢気である
そんな二人を呆れた表情で見るレイリーであるが、溜め息を溢すだけに留めた
ともあれ、先程のロジャーの言葉でログポース頼りで探すのは得策ではないかも知れない可能性がでた
そうと決まれば取り敢えず航路から外れている島々を探す事で方針が決まる
まぁ、すでにロジャーとおでんは二人でワイのワイのしている為レイリーが勝手に決めたのだが
そんなこんなで、ロジャー海賊団はジョーを見つけ出すべく動き出した
*******
ロジャーが夢の最果てに行く前に「会いたい人がいる」と言い出し、その人を探して海を進む事一ヶ月
ログポースを完全無視して探すにしても、何処をどう探せばいいのか分からずかなり難航していた
航海士も初めレイリーに「ログポースは無視しろ」と言われた時は言葉を失った
この海でログポースを無視する事がどう言うことか嫌と言うほど身に沁みて知っている
だが我等が副船長のレイリーがそう言い、ロジャーもその事について何も言わないとなると従わざる得ない
とまぁ…探しているひと月の間に何個かの島に上陸して探すも全てハズレ
そうなってくると船員達も「またか…」と言う気持ちが出て来てしまうのも無理はない
ここまで探しても見つからないとなると、前半の海にはもういないのではと言う気持ちにもなる
流石にこれ以上私用で仲間達を巻き込むわけにはいかないと思ったロジャーは次で最後にしようと決めた
そこで見つからなければ、最果てを見に行ってこの命がまだ繋がっていればまた探せばいいと
今ちょうど前方に見えている島に向かっている最中そんな事を考えていると航海士がバタバタと慌てた様にロジャーの元に
「船長! 突然前方に大渦潮が発生してこのままだと飲み込まれちまう!」
「なにィ?! なんとかならねェのか?」
「規模がデカすぎて無理だ!」
「んー…なら直進するしかねェな!!」
「えぇ?! 流石にそれは自殺行為!!」
「避けられねェなら仕方ないだろ!」
「馬鹿者、あんな規模の渦潮にそんな事したら船も木っ端微塵だぞ」
「おぉレイリー! じゃあなんとかしてくれ!」
「航海士が言ってただろう…このまま進めば回避は不可能だ、旋回するしかない」
「次の島まであと少しなのにか?!」
「あの島に行かないと言っている訳ではない、少し迂回するべきだと言っているんだ」
迂回を促すレイリーであったが、ロジャーは少しでも早く行きたい為少々渋る
しかし、船が木っ端微塵になってしまってはこれからが困る為旋回し迂回する事を決めた
そんな時
ザッパァンと水飛沫の音がしたかと思うと、大渦潮の直ぐそばに現れた超大型海王類
その海王類がとても見覚えのある姿形をしている事に、ロジャーの顔に笑みがのった
大渦潮の次は超大型海王類が現れたことにロジャーやレイリー、古参以外はギョッと目を剥いた
急いで船を旋回させようと船員達が慌ただしく動き出そうとした時、ロジャーは一人笑顔で船首へ
「おいお前ウマヘビだろ!! 俺だロジャーだ! 覚えてねェか?!」
「ブルヒヒン…」
「ロジャー船長が海王類と喋ってる…!?」
「しかもなんか知り合いっぽいぞ?!」
「ロジャー船長スゲェ!!」
「カッケェ!!」
「おれも喋りたいぞロジャー!」
「「「「 お前は自重しろ!! 」」」」
「俺だって! ローグタウンで会ったろう!?」
…………………
…………………………
「ブルル! ヒヒン!!」
「おぉ! 思い出してくれたか!!」
ロジャーが必死にウマヘビに己のことを思い出させようと言葉をかければ、思い出したように鳴いた
ウマヘビも嬉しそうに船へ近づきロジャーへと顔を近づけて更に確認しているようだ
その様を見た船員達は驚き、シャンクスとおでんは目を輝かせ、レイリーは呆れた表情を見せた
だが忘れていはいけない…今は悠長に話しをしている場合ではないのだ
なんたって大渦潮が出来ていて、船はすでに抜け出せないところまで来てしまっている事に
ズルズルと渦の中に引き摺り込まれていきそうになっているのに再び慌ただしく動き出す船員達
そんな中でもロジャーは可笑しそうに「わはははっ!」と笑っていて「笑っている場合か!!」と船員達は思う
だがそう突っ込んでいるのも勿体無いくらい切迫した状況であるのだ
そんな何かを感じ取ったのか、ウマヘビが島の方を向いたかと思えば突如船がグラつく
それには流石のロジャーも驚き倒れないよう手摺りに捕まり、他の者たちも皆捕まっている
グラグラと揺れていた船がピタリと動きを止めたかと思うと、ザパァっと浮かび上がった
なんと船がウマヘビの胴体の辺りに乗っかることで渦潮から逃れられているのだ
船上は何が起きたか理解できていなかったが、それが分かると「うおぉぉぉおぉぉぉ」と言う喝采が沸き起こる
「助かったァ!!」
「スゲェぞこの海王類!!」
「助けてくれたのか?!」
「わっはっはっはっはっ!! 助かったぜウマヘビ!!」
「ブルヒヒヒン!」
「本当に感謝だな…流石に舵が効かなくなった時はどうなる事かと…」
「ジョーに懐いてて感謝だな!!」
「あぁ、その通りだな」
「おいシャンクス今の聞いたか!?」
「何をだよ?」
「名前だよ名前!! ロジャー船長が言ってた名前!!」
「なんか言ってたか?」
「ジョーって言ってただろ?! きっとその人がロジャー船長の探してる女だぜ!!」
「ふーん、そうか!」
「興味ねェのかよ!!」
ワーワー騒いでいる中、聞こえた「ジョー」と言う名前を敏感に聞き取ったバギーは興奮気味である
それを同年のシャンクスに聞くも全く関心がないようで、聞いてすらいなかった
むしろシャンクスの興味関心を引いているのは助けてくれたウマヘビにだ
キラキラとした目を背に乗せてくれているウマヘビへと注いでいる事から一目瞭然だろう
それに気づいたバギーも「コイツもスゲェよな!」と直ぐに同調するように言った
それには直ぐに「あぁ!!」と返ってくるあたり本当にウマヘビにしか今のところ関心はないらしい
そんな事がジョーのいる島(?)の近海で起きている時、彼はいつも通り大虎を背に読書中だ
ただ、彼のいるところまで「わぁー!!」やら「ぎゃー!?」やら色々な声が聞こえて来ていた
人がこの島に近づくなど何十年ぶりだろうかと思いながらも、どうせ直ぐに静かになると気にしない事に
しかし時間が経ってもまだ騒がしく、しまいには「うぉぉぉぉおぉぉぉ!!」と言う雄叫びまで響いてくる
流石のジョーも「一体何事?」と疑問が生じ始めたのと同時に、多くの人の気配を探る
その中には大きな気配を放つ者もいてこの島に近づけるのはそういった猛者だけであるのは確かだろう
なんたって超大型海王類のウマヘビが門番の如く島の周りを泳いで船を近づけないようにしているのだから
彼はずっと昔に海賊が上陸して母鹿を傷つけた経緯を経て「船は近づけべからず」とウマヘビに言付けたのだ
そんな彼の言葉をしっかり理解したウマヘビは言葉の通り、あれ以来一度も船を近づけさせなかった
しかし…この感じはウマヘビが通る事を許可した感が否めないジョー
その為「一体どこの誰だろうね?」と独り言をごちたのだが、寝ていた大虎が「グルル…」と返事のように返した
ともあれ…
『客人ならもてなしを…害あるものなら排除しないとね』
そう呟いた後パタンと栞を挟んで本を閉じ、ゆっくりと立ち上がったかと思えば彼は気配を消して姿を隠した
彼が隠れて誰が来るのか待っている時、ロジャー達はウマヘビのお陰で島に上陸する事ができた
しかしそこは随分と足場の悪い大きくゴツゴツした岩が立ち並んでおり、歩くのも一苦労である
まぁそれは岩ではなく亀の甲羅なのだがそれを知らない者達は「すげぇ岩だな…」やら「足場悪すぎるぜ?!」など言っている
ロジャーはこの先に彼がいるのだと会うのにワクワクしており、好奇心旺盛なおでんも走り出しそうな勢いである
否…既におでんは我先にと奥へと走り出してしまい、それを見た船員達が「早まるなァー!!」と叫んでいる
そんなこと言ったところでおでんという男は止まることを知らない為そのまま直進していく
雑木林の中を走っている間、サイズのおかしい色々な動物達が彼の様子を伺っていた
それに気づいたおでんであったが気にせず真っ直ぐ走り続けること数分、開けた場所に出る
そしてそこにはかなり大きな虎が横になって寝ていた
「お…おぉお?! こりゃデカい!!」
と、思わず叫んでしまったのだが虎は無関心らしく耳をピクリと動かしはしたものの目を開く気はないらしい
おでんが驚いている間に他の大ゴリラと大熊も姿を現し更に目をひん剥いて驚きを示すおでん
戦いたいと体が疼いたおでんが刀に手を伸ばし柄を掴んだ瞬間、どこからか斬撃が飛んできた
咄嗟に抜き取った二本の刀をクロスさせ斬撃を受け止めるも止めきれずそのまま後方へと吹き飛ばされる
それが以前ロジャーと初めて会い目見えた時のような感覚であり、おでんに衝撃を与えさえた
ドカンドカンと木々にぶつかりながら吹き飛び、漸く止まったのはおでんを追うように来ていたロジャー達の元だった
「おぉ? 何してんだおでん?」
「ゲフッ…それがこの島の中央と思われる場所に巨大な生物がいてなァ!! 戦いてェと思ったら斬撃が飛んできた!!」
「えっ!? おでんさんが吹っ飛ばされたのか?!」
「恥ずかしながらその通りだ赤太郎!! だが次はそうはいかん!!」
「まぁ落ち着けっておでん! 相手が悪ィ!」
「はっ! ここに居るのはまさかロジャーの探し人なのか?!」
「あぁ間違いなくな! 俺が顔出せばきっと攻撃してこねェよ!」
「おでんさん吹っ飛ばせる女ってなんだ…おっかねぇ~…」
「何言ってんだよバギー、強さに男も女もないだろ?」
「おいくっちゃべってないで早く行くぞ」
「あぁそうだな!!」
おでんが飛ばされて来たことで足を止め話しをしていたのだが、レイリーの言葉で再び歩き出す
吹き飛ばされて来たおでんも大人しく皆と行くようで、ロジャーやレイリーと共に歩いている
ガサガサと木の枝やらをどかしながら進めば、おでんの言っていた通り開けた場所に出た
そしてそこには三頭の超巨大な生物…大虎、大ゴリラ、大熊がその場に留まりロジャー達を見ている
確かにかなりデカいその生き物達に前半の海では珍しいと誰もが思った
巨大猛獣達に気を取られていたが、この場に生活感が全くないとロジャーは思った
がそうではなく、どうやらツリーハウスが立っているようで広い空間に無駄な物を置かないようにしているのが窺えた
それを見ただけで「なんとも兄貴らしい」とロジャーが思っているなど船員は勿論ジョーも知る由はない
そんな事よりもいるだろう兄に声を掛けようと口を開いたロジャーだったが、その前に「おや?」と言う聴き慣れた声
声の主を探すようにあたりを見渡すと、大虎の背の上からひょっこり顔を覗かせた
「そんな所にいたのか!」
『なんだロジャーじゃないか』
「わははははっ! なんだとはなんだよ! せっかく会いに来たのによ!」
『いやァ…先程随分と物騒な人物が…ってお前の後ろにいるね? 仲間かな?』
「そうだ! つっても期限付きだけどな! だが仲間である事に変わりはねェ」
『そうか、それは失礼したね…えーと…』
「おでんに候! 此方こそ先程は失礼した! だが見事な斬撃だった!! 是非一戦お相手願いたい!!」
『おでんくんだね、お互い様という事にしよう…それと余計な戦いはしない主義なんだ、すまないね』
「えぇー!!」
「わははははっ!! 諦めろおでん! 兄貴があー言い出したら絶対ェ聞かねェよ!」
……………………
…………………………………
「「「「「 兄貴ィ!!?!?!?! 」」」」」
「ロジャーの兄者!! なるほど強い筈だ!!」
「わっはっはっはっはっ! そんな驚くことか?」
「知らなければ驚きもする、当時は私も驚いたさ」
「確かにそうだったな!」
ロジャーと親しげに話し出した目の前の男に彼を知らぬ者たちは「誰だ?」と言う空気を出していた
だが聞きたくても二人の会話に割って入れる雰囲気でもなかったのだが、おでんのお陰で誰か判明
ロジャーが言った「兄貴」と言う言葉に一瞬場が静まり返ったかと思ったら知らぬ者全員が驚愕
それは我らが船長に兄弟がいたこともそうだが、完全に会いに来た相手が女だと思っていた船員達は驚いたのだ
そもそも、こんなところ女性が一人でいるわけ無いと察せそうなところだが…
彼はそんな驚きを他所に「よっこらせ」と呟きながら大虎の背を伝いスルスルと地に降りる
かなりラフな格好…白のシャツに黒のパンツというシンプルな出立ちだ
そもそもジョー以外の人がいないこの場所で着飾る意味もないのだが
船員達はそれ以上に「本当にロジャー船長の兄貴か?!」と少々困惑していた
それは随分ぶりに会ったロジャーはもちろん、レイリーも彼の姿を見て訝しげな表情を見せたのだ
「なんか兄貴…全く変わってねェな…?」
『そうかな? ここは水も空気も何もかも綺麗だからそのせいじゃないか?』
「そう言うもんか?」
『さぁ…分からないけど』
「「「「「 分からないんかい!! 」」」」」
『これはまた随分と賑やかな一団になったね』
「まぁな!」
「にしても本当に不思議だな…正直あなたがロジャーの兄には見えん」
「そ、そうだ! 副船長の言う通りだ!」
「うんうん! オレもそう思う!」
レイリーの言葉に同調するように頷く年若い少年の二人、バギーとシャンクス
そう言われてもジョー的には特別変わった事…をしてはいるが外見が変わる様な事はしていない
ただ体の状態を二十代後半から三十代半ばくらいに保っているだけなのだ
そもそもそれ自体があり得ない事なのだが、それが日常化しているジョーは感覚が麻痺していた
その為別段おかしな事をしている気ではないのである
まぁそれこそがジョーの若さをある程度保てている要因なのだが、彼は気づいていない
『別に特別な事はしていないよ?』
「そうなのか…? やはりこの環境が良い影響を及ぼしていると?」
『さっきも言ったけれど良くは分からないんだレイリーくん、すまないね』
「そうか」
( 今副船長の事「くん」呼びしなかったか? )
( してた! スゲェ人なんじゃないか?! )
( ロジャー船長の兄貴ってだけでスゲェ気がする…! )
( 確かに! )
『それにしても…随分と若い船員もいるのだね?』
「あぁ アイツらか、見習いとして乗ってんだぜ」
『見習い…成る程ね、その子にあの麦わら帽子をあげてるとは余程気に入ったのかな?』
「アイツはいずれデカくなるぜ! 兄貴も目を掛けてやってくれ」
『それは構わないけれど…必要か?』
「いつか必ずな」
そう意味あり気に言うロジャーに終始笑顔だったジョーの表情が訝しげに歪む
ロジャーの船に乗っているのだから己が目を掛ける必要はない様に感じられる
しかしロジャーは「いつか」必要になると言うのだから、そうなるのも仕方ない
そんな事を話されている張本人は「えっ」と言う顔をしていて、二人を交互に見ていた
ロジャーにそう思われていた事もそうだが、そんな彼の兄にそう伝える事にも驚いていた
横にいたバギーは「なんでシャンクスだけ!」と騒いでいるのだが
その会話を聞いていたレイリーはその真意を分かっている為、複雑な心境であった
ジョーに会いに行くにあたって「己の体の事は言うな」と言われ、その理由も聞いている
しかしやはりいざジョーと会うと話さない…否、話せない事に心苦しさを感じだ
随分と前に一度会ったきりであったが、その一度だけで彼の人となりは良く分かった
だからこそ尚の事、しっかりとロジャーの口から話すべきだとレイリーは思うのだ
そんなレイリーと同意見なのはこの数年主治医として船に乗っているクロッカスもだった
ジョーに会うのは初めてだが、ロジャーが普段自分達に見せる顔とは少し違う顔を見せている
あまり違う様には見えないが、それでもやはり何処か違う表情に唯一無二の兄弟なのだと伝わる
医者となるとどうしても守秘義務やらなんやらが付いて回る為、ロジャーが言わないと言えば伝える事は出来ないのだ
そんなふうに思われているなんてつゆにも思っていないロジャーは楽しげにジョーと話す
彼も先程の訝しむ表情は消えており優しげな目をしながらロジャーの話を聞いている
そんな二人を見てレイリーとクロッカスは同じ心境へと達し、同時に溜め息をつくのだった
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