救済を
name change
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
海賊が無人島に現れてから半年が経ったある日。
普段この無人島にある物のみを口にしていたジョーであったが家族も同然の動物達を狩る事はなく、海で釣りをして主食は魚類ばかりを食べていた。そのため流石に肉も食べたくなった今日この頃、久方ぶりに岩に固定した船を海へと戻しどこかの島へと調達に行こうとジョーは考えたのである。
海にはジョーについてきたウマヘビがここ数年でかなり大きく成長を果たして大型海王類へと変貌し門番の役割を担っている。どうやら半年前に来た海賊達は運よくウマヘビが反対側の海中を泳いでいる時に着いていたようだ。まぁそれもウマヘビが悪いわけではないため彼も何も言わずにいつも通り過ごしていた。
因みにジョーに懐いてこの場に留まっているウマヘビは
半年前と言えばジョーが「悪魔の実」を口にしてからもそれだけの月日が経っている。その間にジョーは己の身体に宿った能力のことをある程度理解し既に使いこなしている。とは言え早々にその能力を使う場面など訪れないのだが。
そんなこんなでジョーは船に乗り込み久しぶりに故郷の酒も飲みたいなと思い
『それじゃあウマヘビ頼むよ』
「ブヒヒンッ!!」
こうしてジョーとウマヘビは東の海へ向かうために進んでいくのだった。
*
**
***
生まれ育った島であるローグタウンへと食料調達する為に無人島を出て幾許も経たずに到着した。ウマヘビのお陰でカームベルトもなんの問題もなく横断でき眼前には懐かしき故郷が広がっている。随分と長い事離れていたような感覚であるジョーなのだが何十年も離れていた訳ではない。それでも懐かしく感じるのは無人島での暮らしが充実しているからだろう。
一応大型海王類であるウマヘビが港に近づいたら間違いなく騒ぎになる。そのため港の反対岸に周りそこでウマヘビには待機してもらう事に。
『それじゃあ食料と酒を買って来るから少し待っていてね』
「ブルルッ!」
『ん? 何か欲しい物でもあるのかい?』
「ブヒヒン!」
『うーん…まぁ分かったよ。待っていてね』
相変わらず会話は成り立っていないのだが取り敢えず話を切り上げ街へ向かうジョーの対応に不満気なウマヘビであったが行ってしまった為、大人しく海底で丸くなる。もちろん船が海の中に入ってしまわない程度にだ。
ジョーは数年ぶりの故郷に口元が緩み見慣れていた筈の街並みを楽しむ。ジョーを知る人はずっと姿を見なかった事からもうこの島にはいないものだと思っていた。しかし多少歳を重ねてはいるものの物腰柔らかい雰囲気は全く変わっていない。むしろ歳を重ねた事で更にその感じが増していて目を引くようになった。
「ゴール家の兄ちゃん! 俺ァてっきり弟みてェに島を出たのかと思ってたぞ!」
『オジサン間違ってませんよ。一人静かに暮らす為に此処を出たんです』
「なんだ! やっぱりそうだったのか! どうりで見ない訳だ!! 今回は里帰りか?」
『食料調達ついでに少し見て回ろうかと思ってます。と言う事でお肉10kg程お願いしても?』
「がはははっ! お安い御用だ! 用意しといてやるからまた後で来な! 街を見て回るんだろう?」
『お心遣いありがとうございます。では後ほど伺いますね』
「良いってことよ! あぁそういやお宅の弟もここ出てから何回か戻って来てるんだ。なんでもローグタウンを拠点に色々な島を見て回ってるんだってよ」
『 ! ロジャーが…では運が良ければあの子に会えるかも知れませんね』
「一月ほど前には南の海の方にいるらしいって聞いたぞ!」
『そうなんですか…それだと会えそうにないですね…残念です』
「にしてもなんだ…会ってねェのかい?」
『ここを出てからは一度も』
そう淡々と言うジョーに対して肉屋のオジサンは驚いたような意外そうな顔をする。二人の兄弟仲は決して悪くない…むしろ良過ぎるほどだったのだから無理もない。そんな二人が島を出てから一度も会ってないと言えば彼ら兄弟を知る人からすれば驚く事だろう。
しばらく話し込み肉屋を後にしたジョーだったが行くところ行くところで声を掛けられる。青果屋のオバさんに鮮魚屋のオジさんなど店をやっている店主は大体ジョーを知ってる。勿論それはロジャーにも言えた事なのだがジョーは家事全般を担っていたため買い物も然り。顔を覚えられ話の中でロジャーの事を話したこともあり皆の知るところとになったのだ。
歩くたび声をかけられ久しぶり見たジョーに何かを待たせようとする人達にジョーは笑顔で丁重に断る。ありがたい事なのだがたくさん物を貰っても彼は一人で無人島にいる為そんなに必要としていないのだ。
山菜などの食料は無人島で充分取れるし必要となるのは衣類やジョー的には暇潰しの本くらいであろう。その為適当に衣類と髪紐そして本を何冊か購入して実家がある郊外の方へ足を向けた。久しぶりの道のりを楽しみつつ実家に着くも当たり前だが全く生活感ない家。ギッと軋むような音を立てながら中へ入れば数年も空けていた事で埃まみれで蜘蛛の巣も張っている。
『これは…流石に見過ごせないね』
現状を理解したジョーは顎に手を置いて「ふむふむ」と辺りを見渡して頷く。そして買って来た物をササッと埃を払った場所にガサリと置いて腕まくりをする。そしてジョーは家の窓を全て開け放って口元に布巾を当て掃除に勤しむのだった。
*
**
***
『ふぅ…こんなものかな?』
ジョーが掃除を始めてから数時間…徹底的に綺麗にしていた事もありようやく家全体の掃除を終えたのである。時間も忘れてひたすらに掃除していた為ジョーの腹がぐぅ…と空腹を知らせる。彼は腹を摩りながら「何か食べに行こうか」と独りごち買った物を船に置きに行ってから再び街へ。
スタスタと足早に向かい一件のカフェへと入り迷わずカウンター席に座った。その店の店主も入って来た人物に見覚えがあり一瞬目を丸めるも直ぐ笑顔で迎えた。
「いらっしゃいジョーさん」
『久しぶりだねマスター』
「この島を出たのだと聞いてましたが…」
『事実だよ。今日一時的に帰って来たんだ』
「そうでしたか。ではまた直ぐ出られるのですね」
『うん そのつもりだよ。ところでマスターいつものお願い出来るかな?』
「はい、ただいま」
店に入るなり店主を「マスター」と呼びその店主は彼を「ジョーさん」と呼ぶ。親し気な二人は歳も近く互いに物静かな性格である事から話が合い仲が良いのである
ジョーは店主が若くして立ち上げたこのカフェをいたく気に入っており外食の時は決まってここである。その理由の一つとして店主の人柄がそうさせるのか来店する殆どの人が彼ら同様物静かな人達なのだ。そんな雰囲気をジョーはとても心地よく思い気に入っているのである。
ジョーが「いつもの」と頼んだのは新鮮な野菜をふんだんに使ったサンドウィッチと熱々のブラックコーヒー。目の前に出されたそれを見てジョーの顔には笑みが浮かび手を合わせて「いただきます」をしてから手を付けた。ふわふわのパンに挟まれるシャキシャキの野菜が絶妙なバランスを取っている。一口飲み込んでから熱々のコーヒーを手に取りそれを飲めば「ほぅ…」と息を吐いた。
『相変わらず美味しいよマスター』
「それはよかった」
『これを食べると帰って来たと思えるね』
「そう言って頂けると嬉しいです」
などなどジョーは食事をしながら店主との会話も楽しみのほのぼのとした時間を過ごしている。
その頃…
ローグタウンの港に一隻の海賊船が入って来ているところだった。ここ数年は南の海をメインに回っていた為ロジャーはとても懐かしく感じていた。
今か今かと着港するのを待っているロジャーを見たレイリーは「全く落ち着きがない」と内心思う。好奇心旺盛でどんな島に着いても我先にと船を降りて行く我らが船長に慣れはした。だからと言って何があるか分からない島にさっさと上陸するのもいかがなものかと思うのも事実だ。まぁ何を言ったところで「大丈夫だろ!」と笑顔で言うロジャーに何を言っても無駄なのだが。
港に着きロジャーを始めとした船員達も続々と船から降りて行く。降りた瞬間にそそくさと歩いて行く船長を見る船員もロジャーの故郷である事から何かを言う事はない。言ったところで聞く耳を持たないのも何も言わなくなった要因でもある。
街中を歩いていると肉屋の店主と目が合えば驚いた顔をされるロジャーは知る肉屋の店主にそんな顔をされた事に違和感を覚えたロジャーは声を掛けた。
「なんだよオッちゃん! 今更そんな驚くこたァねェだろ!」
「いやいや驚くさ! まさかゴール兄弟が同じ日に戻って来るんだもんよ!」
「なにっ?! 兄貴ここに戻ってんのか!?」
「つい数時間前にな! まだ買ったもんを取りに来てないからいると思うぞ」
「分かった! ありがとなオッちゃん!」
店主の言葉を聞いてロジャーは一目散に駆けて行くその背に「兄ちゃんによろしくな!」と言う声。それを聞いたロジャーは後ろ手に手を挙げるだけでそのまま駆けて行った。その姿を見ていた船員達は一様に首を傾げその様を見ておりレイリーは色々察し見送った。
一先ずロジャーはジョーが居そうな実家を見てこようと街中を抜け実家のある郊外へ。数年振りに会えると思うと自然と顔に笑みが浮かび走る速さも増した。ようやく実家へと辿り着き「ジョー!!」と玄関を開け放つも返ってこない言葉。完全にデジャヴを感じているロジャーだがあの時と違い溜まっていた筈の埃がない。たったそれだけの事なのだがこの家に兄が一度帰っていた事が窺えた。「ここに居ないのならあそこだな!」と前向きに考え玄関を閉めてまた走る。
ジョーが懇意にしているカフェを知っているロジャーはそこに向かって真っしぐら。実家からそう遠くないカフェには直ぐに着きガランッと普段鳴らないような音をたてるドアベル。
「ジョー!!」
そう大きい声+満面の笑顔で兄の名を呼びながら入って来たロジャーに店内の全員の目が向く。
カウンター席にはこの島を出る前に見た兄よりも歳を重ねたジョーがいるのだがそんなに変わった気がしないロジャー。ただ今までも随分と落ち着いていたのだが座っている姿だけでもそれが増したような気がするのだ。何より「俺の方が年上に見えないか?」と思える程ジョーの見た目はあまり変化がないのだ。
一方そう思われている当事者のジョーは久方ぶりに会えた弟に嬉しさはあるもののそれ以上に今の状況がいただけなかった。その為ジョーの顔は笑顔なのだが目の奥が笑っておらず、それに気付いたロジャーは「しまった…」と内心思うのだった。
ロジャーは兄の顔を見て今すぐこの店を出て行きたい気持ちにさせられるがジョーの顔がそうはさせない。笑顔を貼り付けて「こいこい」と手招きされてしまえば行かざる負えないし行かなければ後が怖い。普段温厚な人が怒ると怖いとはよく言ったものでジョーにもその言葉は当てはまるとロジャーは思っている。しかも彼は怒鳴るわけではなくただ淡々と笑顔のまま正論をぶつけてくるため堪ったものではないのだ。
だからと言って「逃げる」という選択肢は失われているため大人しくジョーの席の隣に腰掛けた。
『久しぶりだねロジャー』
「お、おう」
『私が何を言いたいか…分かるね?』
「……この店では絶対に煩くするな…だろ?」
『そう 分かってるじゃないか。なのに何故あんなにも勢いよくドアを開けて入ってきたんだい?』
「…兄貴がここにいると思って…居ても立っても居られなくってよ…そしたらつい…」
『そんなに私に会えるのを楽しみにしていてくれたのは嬉しいけれどここは公共の場だ…節度は弁えなさい』
「ハイ…」
「ふふふ…そう怒らないであげて下さいジョーさん。彼は貴方に会えるの本当に楽しみにしていたんですよ」
『え…どう言うこと?』
「彼がこの島に戻ってきた時は必ずこの店を覗いて貴方が居ないか確認していたのです」
「おいおいマスター…それは言わない約束だぜ?」
「いいではありませんか。それに海賊である彼に節度を説くのも些か難しいのでは?」
「それ俺を貶してねェか…?」
『………そうか。ロジャーは海賊だったね…忘れていたよ』
「いやいや…忘れるって…」
『私にとってロジャーはロジャーだからね』
そう言いながら少し冷めてしまったコーヒーを一口飲みテーブルに置く。
ロジャーは自分が海賊である事を「忘れていた」と言う兄に初めこそ呆れた顔をした。しかしジョーは海賊団の船長としての己ではなく弟としての己を見てくれているのだと嬉しくもあった。海賊となった今ではただの「ゴール・D・ロジャー」として見てくれる人などまずいない。それに後悔など微塵もないがふとした時どこか物寂しい気持ちにさせられるのも事実だった。
そんなロジャーの心境を知っているかのように言ったジョーの言葉はロジャーの心に染み渡ったのだ。ともあれ店主のお陰で大目玉をくらう事なく終わったことに心底ホッとしたロジャーである。
「つーか兄貴も海に出てるとか驚いたぜ! 俺の誘い断ったくせによ」
『ここに来ていたと言う事は私からの手紙読んだのだろう? あの言葉の通りだよ』
「静かに暮らしたい、ねェ…一体どこに住んでんだ? 全然見つからなかったし」
『あぁ…グランドラインにある無人島に住んでいるよ』
「は…?」
「ジョーさん貴方…グランドラインにいたんですか…」
『うん。入るつもりはなかったのだけど知らぬ間に入っていてね。仕方なくその辺にあった無人島に』
「いやいやいや! グランドラインに知らねェ間に入ったとかあり得ねェだろ!?」
『そうは言っても実際入っているのだけれど…』
「入る時はリバース・マウンテンを通るんだぞ? 流石に分かるー…まさかカームベルト通ったとか言わねェよな…?」
『あー…カームベルトは通ってないよ。恐らくそのリバース・マウンテンを通ったのだろうね』
「それなら気づくだろ普通! グランドラインに入るための入り口だぞ?!」
『頂上に向かって水が昇るからおかしいとは思っていたけれど…まさかそれがお前の言う入り口なんだね』
そうのほほんと顎に手を当てて首を傾げながら言う兄にロジャーは頭を抱える他なかった。まさか
少々気が抜けたこともあり「酒を飲みてェな…」と思うも今いる場はカフェのためそうもいかない。もちろん酒類がないとは言わないが先ほど怒らせるようなことをした手前「酒が飲みたい」などロジャーは言えないのだ。
そのため店主にコーヒーを淹れてもらいそれでロジャーも一服することに。
「そういや兄貴をアイツらに紹介するからな!」
『え、いいよそんなの…』
「いや絶対紹介するぞ!」
『紹介するほどのものじゃないだろう?』
「いーや紹介する! アイツらも気になってんだからな!」
『気になるって…一体何を言ったんだ…』
「別に兄貴を探してるって言ってただけだぞ?」
『探してるって…手紙を置いて行ってたのだから探すも何もないだろう?』
「俺の旅の話を酒を飲みながら聞きてェって書いてあったし丁度いいだろ!」
そう良い笑顔で言うロジャーに今度はジョーが頭を抱える番である。
探されているのは百歩譲って良いとしてもまさか紹介するだなんて言い出すとは思っていなかった。ジョーは海賊団の船長として頑張っているロジャーを応援こそすれ船員に紹介して欲しいなど微塵も思っていない。そのためロジャーの言葉に本気で困った顔をしているのである。ただそう言い出した弟が何を言っても無駄だと言うのは長年で知っているためジョーが諦めるしかないのだ。
*
**
***
カフェでのんびりと食事をとっていたジョーであったが偶々同じタイミングで戻って来たロジャーによってそれも終わる。ジョーはロジャーに連れられ港の方へと向かって歩いているのだが本気で気が進まないようで足取りが重い。そんなジョーとは対照にロジャーはとても上機嫌に歩いていて少々憎たらしく思う兄である。
港に並んでいる商店で色々買い揃えている海賊風情の者達が視界に入り「本当に会うのか…」と思う。もうここまで来ているのだから何を言っても後の祭りなのだが…どうしても現実逃避をしたくなってしまうのだ。商店で買い出しをしているのは下っ端の船員達のようでロジャーと共にいるジョーを見て不思議そうである。ロジャーはロジャーで誰かを探しているようであるが目当ての人がいないのか「向こう行ってみようぜ」と言う。
『ロジャー、一体誰を探しているんだ?』
「俺の右腕のレイリーと左腕のギャバンだ!」
『あぁ…彼らなら知っているよ。副船長のシルバーズ・レイリーくんと航海士のギャバンくんだろう?』
「そうだ! でもなんで知ってんだ?」
『そりゃあお前達の手配書が出れば嫌でも目に入る』
「イヤなのか?」
『いいや。どんな船員がいるのか知りたいと思うのは自然なことだろう?』
「そう言うもんか?」
『兄貴って言うのはそう言うものなんだよ』
ジョーの言葉によく分かっていないのか「ふーん?」と不思議そうにしているロジャー。兄としては弟がこの広大な海で何をしているのか、どんな所に行っているのかなど…。そう言うことを考えるのは当然だとジョーは思っている。何よりロジャーはジョーにとって唯一の家族と言ってもいいのだからとても大事なのだ。それはもちろんロジャーにも言えたことなのだがもしかしたらジョーの方が強く想っているかもしれない。
暫くレイリーとギャバンを探していたのだが久しぶりの陸であることから皆好き好きに動いているようだ。そのため気配を探って動いたとしてもすれ違ってしまうことが多々あった。これ以上歩き回っても意味がないと思ったロジャーは立ち止まりジョーに振り返った。
「探しても見つからねェから先に飲みに行こうぜ!」
『私はいいって…仲間内で飲んだらいいさ』
「よっしゃあー! 行こうぜ!!」
『人の話は聞きなさいって…』
ジョーの言葉をガン無視したロジャーは立ち止まった足を再び動かし路地の方に入り地下にある酒屋へ。その酒屋はロジャー海賊団がローグタウンへ来た時必ず使っている店なのである。ジョーは「こんな所があったのか」と初めて見た酒屋に少なからず興味を持っているようだ。
ドクロの絵が描いてある扉を開いて中に入ればロジャーと同年代だろう男性が一人。カウンター内でグラスを磨きながら入ってきた二人に視線を向けた。
「いらっしゃい。今日は二人だけなのか」
「後から皆来ると思うぜ!」
「そっちの旦那は初めて来るな」
「俺の兄貴のジョーだ! 兄貴はこう言うとこ来ねェから知らないのも無理はねェ!」
「へぇ…アンタに兄弟がいる事は知ってたが…あまり似てないな」
『ハハハ。似てないって言われ慣れているよ』
「そうなのか? あんま気にした事ねェから分かんねーわ」
『私的には目元とか似ていると思っているのだが…他者から見るとそうでもないのだろうね』
「そう言うもんか!」
『多分ね』
店主の言葉にロジャーは首を傾げるがジョーは久しぶりに言われた言葉に可笑しそうに笑う。その姿にロジャーと店主は互いに顔を見合わせたが特別意を唱えるような事は言わない。
取り敢えず二人並んでカウンター席に腰を下ろして酒を提供してもらう事に。ロジャーは瓶を丸ごと受け取ってそれをラッパ飲みしジョーはしっかりグラスに入れて飲む。それだけでも「性格もだいぶ違う兄弟だな」と店主に思われていたなど知る由もない。
暫く他愛のない話をしていれば時間が過ぎるのもあっという間でロジャーは既に一瓶飲み終えている。ジョーはロジャーの飲むペースを「早いな」と思いながらも何かを言うはなくグラスを傾け一口飲む。そんな時ガヤガヤと賑やかな声とギィっと入口を開く鈍い音にロジャーは「来たな!」と言う。ロジャーの反応に彼の船員達が来たのだろうと察したジョーはチラリと入口を見てから視線を手元に戻した。
「来たかお前ら!」
「あっロジャー船長もう飲んでる!」
「ずるいっすよ船長!」
「俺たちも早く来たかったのに買い出し終わんなくて!」
「わははははっ! そりゃ災難だったな!」
( フフ…随分と慕われているのだね )
船員達との会話を聞いていれば分かることでとても楽しそうに話している。そんな中ガタッとロジャーの隣に腰掛ける眼鏡をかけた知的そうな男性。その姿を見たジョーは「あぁ、彼がロジャーの右腕か」と思った。
その人レイリーもまたロジャーの隣で静かに飲んでいる男性が我らが船長の探し人なのだと直感で分かった。わざわざ確認する必要もないだろうが船員達はロジャーの隣に座るジョーを気にしている。その為レイリーが代表するように「彼がそうか?」とロジャーへと問いかけた。
その問いにニンマリと更に笑顔を覗かせたロジャーはジョーを船員達に紹介した。
「おめェら聞いてくれ! 俺の兄貴のジョーだ!!」
『紹介にあずかったジョーです。どうぞ宜しく』
「ロジャー船長に兄貴…?!」
「マジかよ…知らなかったな」
「あんま似てないくね…?」
『ふむ…ロジャーの言い方からしててっきり私の存在は知られていると思っていたのだけれど…』
「ロジャーに兄弟がいると知っていたのは私を含む数人だけで若い連中は知らない」
『そうなのか…ところで君の名前を教えてもらってもいいかな?』
「あぁこれは失礼。私はシルバーズ・レイリー…この船の副船長をさせてもらっている」
「別に今更レイリーの名前聞かなくても知ってたんだろ?」
『知っていたとしても本人から聞くのが礼儀と言うものだよ』
「ふーん…そう言うもんか」
『フフフ、先程もこんな会話があったね』
「わははははっ! 確かにそうだな!!」
海賊としてはまだ新参者だとしても勢いを付けているロジャー海賊団の副船長を知らぬ者はそういない。それはジョーにも言えた事でありレイリーの名前はもちろん顔も手配書で知っていた。だからと言って名前を直接聞かなくていい理由にはならない。何よりジョーがレイリーの顔と名前を知っていてもレイリーはそうではなく初対面だ。
必要最低限の礼儀だと言う彼に対してレイリーはとても好感がもてた。そうレイリーがしげしげと思っている間にロジャーは離れた席に座って酒を飲んでいる航海士であるギャバンもジョーに紹介している。紹介されたギャバンは「よろしくな!」と酒瓶を持った手を挙げて挨拶し、それにジョーも応えるようにグラスを掲げ「よろしく」と言った。
それを満足気に見ていたロジャーは何かを思い出したように唐突にレイリーの方を向いた。
「そういや聞いてくれよレイリー! ジョーの奴グランドラインに入ってたんだぜ?! 何処探しても見つからねェ訳だよな!」
「それは…驚いたな」
「だろ?! まさか俺より先に入ってるなんて思いもしなかったぜ!しかもよグランドラインに入ってた事に気づいたなかったとか言うんだぞ?あり得ないだろ?!」
「流石にリバース・マウンテンを通るんだ。分かる筈だが…」
『あははは…それが知らなくてね。逆流して登ってくな程度にしか思っていなかったよ』
「これだぜ? だから心配だったんだ!普段はしっかりしてんのに抜けてる所もあるからよォ」
「それはもう抜けていると言う次元ではない気がするのだが…リバース・マウンテンを通るのも命懸けだと言うのに」
「だよな! ……つーか今思ったんだが兄貴どうやってイーストブルーに…?」
『ん?』
「言われてみればそうだな。グランドラインに一度入っているのなら出る時は…カームベルトしかないのではないか?」
「どうなんだよ兄貴!」
『どうって…その通りだよ』
そうあっけらかんに言うジョーに話しを聞いてたレイリーとその他の船員達も驚いた顔をする。ロジャーに至っては何故かすごく輝かしい笑顔でジョーの話を聞いていて興味津々のようだ。
そのためどうやって大型海王類の巣窟である
そんな姿を見せられたレイリーを含む船員達は「互いにブラコンだな」と思うのだった。
( ちょっと色々あって海王類と友達になってね。その子に連れて来てもらったんだ )
( 海王類と友達?! なんだそれスゲェな! )
( 一体どうすればそう言う事になるのか不思議だな )
( 私の進行方向に突然出て来たから少し脅したんだが…そうしたら何故か懐かれてね )
( わっはっはっは! 海王類に懐かれるなんて兄貴だけだろうな!! )
( そうかな? )
((((( 船長が船長なら兄貴も兄貴だなァ… )))))
6/35ページ