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ジョーたち一行がシャンクスが「四皇」となった祝いをしに新世界にいる彼の元へ向かった日から半年ほど経った。その半年の間にロジャーとルージュの息子であるエースが海に出たらしく新聞に手配書が挟まれている事があった。
それを見たジョーは驚いたのと同時にエースが元気でいる事を知れて嬉しく思い直ぐにロジャーとルージュに手配書を見せた。二人もまたジョーと同様にエースの近況を知れて喜び、その日が盛大な宴になったのは言わずもがなだ。
そんな事があってから暫く経ったある日。ジョーは新しい本が欲しいと思いタートル島からウマヘビで行けば一時間弱で着ける春島へと向かっていた。
出かける際にロジャーとおでんと一悶着あったのはお察しだが、ジョーが「本屋に行くだけだけど?」と言えば「本か…」と興味を失ったようで猛獣達と戯れにさっさと行ってしまった。ロシナンテも読書をするが今はジョーが所持している本を借りている事から特に新しく欲しいと言った事はない。
ルージュとトキに関しては女性として必要物資はそれなりにあるだろうと定期的にジョーが2人を連れて近場の島へと連れて行く事はあるのだ。
今回はジョー以外の皆特別何か欲しいモノがあるとかそう言う事はないためジョーは一人で島を出ている。ウマヘビは久しぶりに二人旅なことが嬉しいのかご機嫌でいつも以上にスイスイ進んでいてジョーは「今日はご機嫌だな?」としか思わないが早く移動できる分には何の問題もないため何も言わない。
一時間ほどかけて着いた春島の岬で島に上陸したジョーは何度か訪れた事のある島でもある事から慣れた様子で岬から街中の方へと歩いて行く。街中は昼時もあって賑わっており昼食もこの島で食べて行くつもりのジョーは先に本を買ってからにしようと本屋へ。
レストランからほど近い本屋に入ればカウンター奥に座る店主がチラリとジョーを見て「アンタか」と言ってから手元にある本へと視線を戻した。
「また新しい本を買いに来たのか?」
『えぇまぁ。以前買った物は全て読んでしまったので』
「結構な数買って行っていたと思うがもう読んだのか」
『基本的に読書をする事以外やる事がないのですよ』
「お前さんまだ若ェのに働いてないんか」
『働かなくても食うには困らないので。あと年齢的には貴方と同じくらいですよ』
「は…?四、五十の若造が何を言っとるんだ。ワシは七十いっとるんだぞ」
『ならやはり同世代ですね。私も七十いってるもんですから』
「冗談…ではなさそうだな…」
ジョーの「同世代」と言う言葉に店主は驚きに目を丸め冗談にしてはタチが悪いと思うがジョーからはそう言うのを感じはしない。まぁジョーも事実を言っているのだから冗談も何もないのだが店主からすればあり得ないと思うだろう。
なんたって見た目は全く七十代には見えないし、赤髪海賊団やサボなどジョーを知る人から言わせれば「見た目詐欺」であるのだから当然であろう。
しばし店主と会話をしてから本棚の方へ移動したジョーは上から下までじっくりと一つ一つ見ては本を手に取って中身を少し読んでは気になる物は手に持ちそうでないものは戻すのを繰り返す。何冊か手に持った状態で一冊を数ページ読んでしまったりと中々進まない買い物であるが本好きではそうなるのも仕方ない。
それなりの時間をかけて吟味した結果、ジョーは五冊の本を購入して行く事にし店主の元へ本を持っていく。五冊重なる本を見た店主は寧ろ「これだけで良いのか?」と言いたげな表情だ。ジョーとしてはもう少し買って帰りたい所だがついでに他の買い物もして帰ろうと考えているためあまり多く買っては行けないのだ。
「全部で3千400ベリーだ」
『はい』
「丁度だな。まいど」
『読み終わったらまた来ますね』
「好きにしな」
紙袋に入れられた本達を持ち店主に挨拶してから店を出てレストランへと向かうジョーの視界に入る海賊らしき人たち。この島に着いた時には見かけなかった事からジョーが本を吟味している間にこの島に到着したようだ。
そんな海賊達を横目にレストランに入れば何故か中は水を打ったように静かでその原因がカウンター席に座る大量の皿を積み上げたまだ少年の域を出ないだろう年頃の者が食事の中に顔を突っ込んで倒れているから。少々顔色を悪くしているマスターとテーブル席に座る他の客達。
ジョーは大量の皿を積み上がっている状況に「既視感があるな?」と思いながら特に気にする事なく突っ伏している少年から数個離れたカウンター席に座った。
『マスター注文いいかな?』
「えっ!?あっ!おう!」
『このお店のオススメを頼むよ』
「お、おう!」
『ところであの少年はどうしたんだい?』
「それが俺にも分からなくてよ…。食ってたら急に倒れちまって…!」
『えっ…まさか毒とか…』
「まさか!んな事する訳ねェだろ!?」
『すまない、冗談だよ。まぁ胸は上下してるし死んではなさそうだよね』
「ほ、ホントか?!死んでねぇんだな?!」
『え、うん。問題ないよ』
ジョーの指摘にマスターは「はぁ〜〜〜〜っ!」ととても深い息を吐き出して心底安堵している。その様子に少年が死んでしまったのだと勘違いしていたらしい事をジョーは把握し思わず苦笑いが漏れてしまった。
マスターは何の問題もないと分かり肩の力が抜けたのかチャチャっとジョーが注文した食事を作り彼の前へ置いた。出来立てのご飯を前にジョーは両手を合わせて「いただきます」をしてから食べ始めた。
黙々と時たまマスターと話をしながら半分ほど食べ終えた頃に「ぷほっ!」と唐突に顔を上げた少年にマスターも他の客も「うわぁ?!」と大袈裟な程驚き目を剥いている。起き上がった少年は少しボーッとしてから「寝てた」つ呟き、その言葉にジョー以外のこの店にいる者たち全員が「寝てたぁ?!」と声を揃えて叫んだ。
ジョーに至っては特に気にしていなかったのだが食事中に寝るとは中々に行儀悪いなと思いながらチラリと横を見てどこか見覚えのある横顔に暫し考え込んでいたら、少年が汚れた顔を拭いてから食べ途中の物を再び食べ始めたのを見て「衛生面は大丈夫だろうか…」とそちらに気を取られた。
そんな中レストランにいる人達から色んな意味で注目されている少年…エースは、いつの間にかカウンター席に数席開けて座っている事に気づいた。キャップを被り眼鏡をかけた中年男性をチラッと見ただけでエースもまた特に気にすることなく食事を続けた。
互いが互いに全く気付いていない二人が黙々と食べている中、慌てた様にやって来た一人の男…マスクド・デュースが「海軍が来た!すぐ出るぞ!」とエースに伝えに来た。デュースは焦っている様だがエースは「ふぅん?」と言う感じで来るなら来いと言う姿勢だ。ただ「またあの将校が来たんだよ!」との言葉に聞き流してたエースも「またアイツか」と言う様な顔をした。
「オレまだ食いたんねェ」
「そんなこと言ってる場合か!もう上陸してんだぞ?!」
「くっそー!アイツもしつけェな!そもそもログ溜まってんのか?」
「まだだがこの島の磁力がギリギリ察知できる距離で逃げるしかねェ!」
「そんならこの島で迎え撃った方が良いだろ」
「そりゃそうだが…」
「しゃーねェか。一先ず海岸に戻るぞ!」
「あっおい?!待てよエース!」
『 !! 』
海軍が来たと言う話をし出した少年たちの言葉に耳を傾けていたジョーは最後に少年の名前を聞いて驚きに目を丸めパッと少年…エースの方を向いたが既にその場を去っていた。ただ完全なる食い逃げであり突然の事にマスターも固まっていたが「食い逃げだァ!!」と声を荒げドタバタと扉から外を見たが既にどちらに行ったのかも分からないのかガックリと肩を落として戻ってきた。
大量に積み上げられた皿の量からして相当な金額分を食べていたのは想像に難しくないのだが如何せん先ほどの少年がエースである事実をジョーは否定したい気持ちだった。なんせ食事中に寝ると言う珍行動を起こすのだから常識的にも衛生的にも勘弁して欲しいと思うのだ。
大損失に嘆いているマスターを見たジョーは「甥が申し訳ない…」と内心思いながらも代わりに支払うと言う気は一切なく、己の食べた分だけの料金を支払ってからレストランを出た。
『さて。折角ならエースに一目会いたいけれど何方に行ったかな?海岸って言っていたしあっちか』
レストランを出て左右を確認してから海賊船が堂々と港に着港する事はないだろうと左側を確認してから右側へと駆け足で向かう。暫く走っていればワーワー声が聞こえて来て戦闘音もする事からエース達海賊と海軍が衝突しているらしい事をジョーは察した。
巻き添えを食うのはご免被る思いであるジョーは道沿いに走っていたのを逸れて林の中に身を隠しながら海岸へと来て様子を伺った。エースと対峙しているのは「正義」の上着を着ている女将校であるようだ。
ただジョーの目を引いているのは海軍の事よりもエースが身体を炎に変えて戦っていると言う事実である。少々驚きながらも悪魔の実の能力には「超人系」「動物系」「自然系」の三つに区分される事を流石に理解しているジョーはエースが旅の途中で悪魔の実を食し能力者になったのだと知る。
しかも能力者になってからそれなりの期間が経っているのか能力者としての戦い方に随分と慣れているようでジョーは感心した。新聞で「火拳のエース」と綴られていたのを知ってはいたがまさか能力者になっていようとはジョーも驚きである。
自然系の能力者であるエースに対して覇気の習得をしていないらしい女将校…イスカではどう頑張ってもエースに勝てる見込みはない。それはイスカ自身も薄々感じてはいるのだが正義感の強く「炎」に対して思う事のある彼女は何としても「火拳のエース」を捕まえようと躍起になっていた。
「お前いい加減諦めろよ!」
「黙れ!海賊を捕まえるのが我々海軍の責務だ!」
「んなこと言ったってオレは捕まらねェよ!」
「小癪な…!その余裕いつまで持つか見ものだな…!ハッ!!」
「おわっ!っと危ねェ!」
「大人しく投降しろ火拳!!」
「誰が投降なんかするかよっ!」
「ぐっ…!!」
会話をしながらもドンパチやっており、イスカは己の獲物である剣でエースに立ち向かうのだが物理攻撃を無効化する自然系の能力の前では無意味に等しい。本来エースも避ける必要はないのだが反射的に避けてしまうのは仕方ないだろう。
そんな様子を木の影からずっと見ているジョーなのだがそろそろ待つのも退屈になって来ており「早く終わらないかな…」と一人ボヤく。
エースと何人かのクルー達で海兵を抑えていたらしく船の準備が出来たと声が掛けられたエースは拳に炎を纏わせて強力な打撃をイスカに与えた。イスカは咄嗟に剣で受けるものの数人の海兵を巻き込みながら後方へと吹き飛ばされる。
「悪ィなイスカ!」とちっとも悪く思っていなそうなエースはニッと笑いながら船の方へ駆け出し少し海岸から離れていたもののジャンプするタイミングで足を炎に変えて勢いを付けて
その様子をずっと見ていたジョーなのだが「行っちゃったな…」と内心思いながらもまだログが溜まっていない様な事を話していたのを思い出しそう遠くへは行っていないだろうと踵を返し急ぎウマヘビを待たせている岬の方へと向かった。
*
**
***
早々に岬についたジョーであったがウマヘビに乗ってエースを追いかけるでもなく、その場に腰を下ろし腕を組んで「うーん…」と頭を悩ませていた。
ジョーが悩んでいるのはエースに接触するに当たり自分が伯父である事を話しても問題がないかどうかである。今の若い世代がジョー=ロジャーの兄と結び付く可能性は低いがゼロではない。エース自身がルージュの姓を名乗っている以上、ロジャーとの関係を知られるのは得策ではないだろうとジョーは思っているのだ。まぁ母方の兄だとすれば問題はないのだがジョーはそこまで考えが及んでいない。
例えエースの仲間であろうがジョーは初対面の相手を信用する様な
暫く考え込んでいたジョーだったが考えた所で答えは出ないし、せっかく会えた(見かけた)のだから顔を見て話しをしたいとジョーは思う。よっこらせと腰を上げたタイミングで先ほどエースが乗り込んだ海賊船…「ピース・オブ・スパディル号」がジョーのいる岬の方へ回り込んで来た。
「ナイスタイミングだ」とジョーが思ったのとほぼ同時に船に反応したウマヘビが海の中からザパァと顔を出した。ジョーは「あ…」と声を漏らし、エースおよびスペード海賊団の面々は
海王類から離れる為に慌ただしくなるそんな中、エースだけはなんだか見覚えのある海王類に腕を組みながら「うーん?」首を傾げていた。
「エース何してんだ!船動かすの手伝え!」
「いやァ…あの海王類どっかで見たことある様な気がしてよ」
「似た様なのはごまんといんだろ!いいから手伝えって!」
「そう言う感じじゃねェんだよデュース。もっと身近な………あぁ?!」
「∑なんっだよ急に!大声だしやがって!」
「思い出した!アレはアレだ!」
「アレだけじゃ分かんねェよ!」
「だからアレはー…」
『よっ…と。ちょっと失礼するよ』
エースとデュースで色々話しをしていると突然第三者の声がして二人ともそちらに目を向ければ
そんな二人の様子など全く意に介していないジョーは二人が見ていない間にウマヘビの頭を経由して船縁に乗った後「よっこいせ」と許可なく勝手に船へ乗り込み漸くエース達の方へ顔を向けた。そして「やぁ久しいね」とエースに笑顔を向けながらジョーが口にした事でエースは思い至った人物だった事で「やっぱオッサンじゃねェか!」と応えた。
そんな二人を見て置いてけぼりを食っているのはその場に共に居るデュースと「何だ何だ?」と見に来た
「あー…エースの知り合い…って事で良いのか?」
「おう。ジョーのオッサンだ」
『どうぞ宜しく』
「ドウモ…」
「つーかオッサンなんでこんなとこいんだよ。あの島に住んでんのか?」
『違うよ。買い物しに来ただけだよ』
「ふぅん違ェのか」
『ふふ。ルージュさんに会いたかった?』
「べっ!別にそんなんじゃねェ!」
『照れなくても良いのに』
「照れてねェよ!!」
などなどジョーの超簡単な紹介のみで二人で話をし出してしまい完全にデュース達は置いてけぼりである。そんなデュースのそばに寄ったのは情報屋のスカルであり詳しい事をデュースに聞こうとしたが「俺が聞きてェくらいだ」と何とも言えない顔で言われてしまいスカルは思わず同情するような目で彼を見た。
その間にも「以前会った時より身長が伸びた」やら「能力者になったんだ」やらまるで親戚のオジサンかの様に話すジョーの姿にただの「オッサン」ではないのかも知れないと思いだす。
そんなこんなしていると、突然ドーンッ!と爆音が響き船の近くに着水したようで水柱が立つ。全員が音方へ目を向ければ「MARIN」と書かれた帆を張る軍艦が追い掛けて来たようだ。何の情報もないエースの知り合いのオッサンに気を取られていた事で軍艦が近づいている事に気づかなかった面々は慌てて対応しだす。
砲弾が当たらない様に何とか舵を切ったり何だりしていると、砲弾の音に気づいたらしいウマヘビがジョーが何も指示を出していないにも関わらず動き出す。それを見たジョーは「あっマズイ」と思い慌ててウマヘビの方へ近づいた。
『待て待てウマヘビ!』
「ブルヒヒン?」
『沈めると面倒だから追い返す程度にしなさい!』
「ヒヒンブルル」
『沈めた方が手っ取り早いのはそうだけれど今回はダメだ』
「ブルル…」
『いつも感謝しているよ。だから今回も私の為に頼むよ』
「 ! ヒヒンブル!」
などと海王類と話をするジョーにエースは以前と違い目をキラキラと輝かせる様にして見ており、他の面々は驚愕な顔で奇異なものを見る目でジョーを見ていた。そんな様々な視線に気付いたジョーであったが特に説明する気はない様で曖昧に笑うだけ。
ウマヘビはジョーに頼られた事に上機嫌に軍艦の方へ進み、軍艦側からすれば何故かいる大型海王類が向かってくる事に大慌てで船の舵をとりUターンする羽目になる。それでもウマヘビはある程度まで追い続け、結果的に軍艦はこの島の海域に留まる事を断念したようで見えなくなった。
軍艦を追い払ってくれた事実にエースは「助かったぜ!」と感謝を述べ、ジョーは「私がやった訳ではないけれどね」と肩を竦めるに留めた。
海軍と再び一悶着起こす必要がなくなったスペード海賊団の面々は有難いのと同時にジョーが一体何者なのか気になりだす。大型海王類に話しかけたかと思えば海王類の方も彼の指示に従っている様子に「あり得ないだろ」と言うのが総意だ。しかし実際に目の当たりにしているし
故に一先ず彼等はその事実を飲み込むのだが、ジョーが何者なのかと言うのはハッキリさせたい思いであるのだ。
「エース…」
「何だよデュース」
「そちらがエースの知り合いなのは分かったが一体何者なんだ…」
「オッサンはオッサンだろ」
「意味分からん」
「エースの旦那…その説明は大雑把すぎますぜ…」
「そうですよ船長…もう少し詳しく教えて欲しいです」
「スカルもミハールも何言ってんだ。オッサンはオッサンだろ」
エースの大雑把過ぎる説明…にもなってない説明にデュースは勿論その後に声をかけたスカルも元教師のミハールも内心「オッサンしか分からない」と思った。他の船員達も同じような心境なのだがエースは特に気にしていないようだ。そもそも詳しく説明しようと言う気がないのかも知れない。
そんな事をスペード海賊団の間で話されている時、ジョーの視線の先にいるのはオオヤマネコのコタツでありジョーは「ネコも船に乗るんだな…?」と不思議そうにしていた。まぁ動物は海賊になってはいけないなどと言うルールはないのだから居ようが居まいがどちらでも良いのだがジョーがただ気になったと言うだけ。
ジョーにジーッと見られているコタツは本能的に相手の強さを感じ取っているのか若干屁っ放り腰になりながらもジョーの近くに来たかと思えば「にゃーん」と見た目にそぐわない何とも可愛らしい鳴き声をした。それにはジョーも目を丸めてから「ふふ」と表情を緩め足元に擦り寄るコタツの首元を撫でた。
『可愛いじゃないかお前』
「コタツって言うんだ」
「にゃーん」
『コタツか。私はジョーだ。よろしくね』
「ゴロゴロ」
「俺以外にあんま触らせねェのにスゲェ懐くな」
『ウチにも虎丸がいるからね。動物の扱いには慣れているよ』
「トラマル…つーとオッサンのとこには虎がいるって事か?」
『そうだよ』
「マジかよ!アイツら凶暴なのによく手懐けたな?!」
『最初が肝心でね。初めて会った時にどっちが上か分からせるんだ』
そうあっけらかんに言うジョーの言葉にエースは「確かにそれは大事だ」と共感したが他のメンバーは「そうかも知れないけどそれが出来るかは別だ」と思っているのだがジョーもエースも知る由はない。
結局ジョーが何者なのかと言う話が有耶無耶になってしまっているのだが、完全マイペースな二人にどんなに聞いても結局明確な答えは返ってこなそうだと判断したデュースは深い溜息を吐いてそれ以上ジョーについて聞く事をやめた。そんなデュースを見たスカル達も彼の判断に従う事にしたようだ。
ともあれエース達はイスカ率いる軍艦がこの島から去ったのを確認したため島に戻ってログが溜まるまで待つと言う話になった。ジョーはログなど関係ないが折角ならもう少しエースの話を聞きたい思いのため再び共に上陸する事にした。
*
**
***
グルっと島を一周して元々泊めてあった海岸に船を再び泊め、それぞれが船から降りて行く。ジョーもエースの後に続く様に船を降りてから「少し話せないかな?」とエースに聞く。
「いいけど何か話す事あるか?」
『海に出てからの事とか聞きたいかな。なんで能力者になったのか、とかね』
「あぁ…確かにガキの頃の俺を知ってるオッサンからすれば気になるか」
『うん。非常にね』
「分かった。話そうぜ。俺もついでに聞きてェ事あるし」
『じゃあ決まりだね』
「おう。って事でオッサンと話してくっから諸々の事はお前ェらに頼むわ!」
「それいつも通りだろうが…。ったく了解だ
エースの言葉に呆れた顔をするデュースだったが何を言っても無駄だと既に知っているため余計な事は言わずに部屋に籠り気味のミハールにいつも通り船番を任せ他のメンバーで途中で投げ打ってしまった物資調達に向かった。
そんな仲間を見送ったエースはジョーの方へ顔を戻し「どこで話す?」と聞き、ジョーは一瞬思考してからこの島に来る時に普段から使っている岬で話すのが良いだろうと考える。人に聞かれては困る様なことも話す可能性があるのなら人があまり立ち入らない場所で話すのがいい。その旨をエースに伝えれば「そうだな」とエースも直ぐに納得しジョーが向かう後を追いかけ共に岬の方へと向かった。
岬までの道のりでも他愛のない会話を楽しみつつ岬に着けばそこにはウマヘビがちゃんと戻って来ていてジョーが来るのを今か今かとソワソワと待っていた。ジョーを見つければ嬉しそうに声を上げ、そんな彼の後にエースがやって来たことに不思議そうな顔を見せているようにジョーは感じた。
エースは初めてジョーに会った時に一度見て匂いを嗅がれたウマヘビに対して今では興味深々に見ており「俺のこと覚えてるか?!」と岬ギリギリに立ってウマヘビに声を掛けている。その姿がかつてのロジャーそっくりなのだがこの場にその事実を知るものは残念ながらウマヘビだけだ。
ウマヘビは「ふんふん」と何かを確認するようにエースに顔を近づけたかと思えば「ブルヒヒン!」とエースを覚えているような鳴き方をした。
「うおっ!どう言う反応だよそれ!」
『多分ウマヘビもエースのこと覚えてるんじゃないかな?』
「今ので?」
『多分ね。覚えてないと取り敢えず威嚇するからこの子』
「そー言うってことは誰か威嚇されたのか?」
『シャンクスくんが私達が住む島に来た時に凄い威嚇されてたよ』
「マジか!つか赤髪もオッサンのとこ行ってるんだな」
『彼は元々ロジャーの船に乗ってて顔見知りだったし、エースを探し回っている時に一度遭遇したりもしてたんだ』
「そうだったのか…。俺一度赤髪のとこに行って挨拶しようと思ってんだ」
『挨拶?』
「おう。ルフィが随分と世話になったらしいからよ」
『あーなるほど?確かにルフィくんと知り合いだものね』
「それだけじゃなくてよ、海の主に食われそうなルフィを赤髪は自分の左腕を犠牲にして助けたらしい。だからアイツの命の恩人なら
『 ! 新しい時代に賭けてきたとは本人から聞いていたけれどそんな事があったんだね…』
エースから聞くルフィとシャンクスの関係、そしてシャンクスが左腕を東の海に置いてきた理由をジョーは今やっと理解出来た。
シャンクスからルフィの話を聞いていた時から楽しげに親しげに話す姿を見ていたジョーは随分とルフィの事を気に掛けているんだなと思っていた。ただ考えてみればロジャーもまた見習いとしてシャンクスの事を随分と気にかけていた事からシャンクスが同じ様な行動をとるのも何処か二人は似ていると思っているジョーは納得した。
今では四皇として君臨しているビッグネームのシャンクスを見つけるのは一海賊を見つけるよりは幾分か楽ではあろうが、先ずは前半の海を抜け新世界へ行かなければならない。エースなら直ぐに行きそうだとジョーは思いつつ「しっかり挨拶出来るといいね」と言うに留めた。
この後は暫しエースがウマヘビと戯れて頭の上に乗って遊んだりなんだりして時間を有したが、満足してジョーの居る岬へと戻ってきて座っている彼の隣に腰を下ろした。
「はー楽しかった!いいなオッサン!アイツにいつも乗ってて!」
『だろう?個人的には船よりも乗り心地いいと思ってるよ』
「確かに風とか波の影響ほとんど受けなそうだもんな」
『流石に大シケになると揺れるけれど基本快適だよ』
「マジで羨ましいなソレ」
『ふふ。それで?エースはいつ能力者になったんだ?』
「あー…割と海に出て直ぐだぜ?
『えっ待って…遭難していたの…?』
「まぁな!そこでデュースとも会って空腹が極限だった時にメラメラの実が流れて来たからソレを食って能力者になったんだ!」
『ゔぅーん…無人島で遭難してて能力者になるって致命傷だと思うのだけど…』
「確かにそうだったな。何度かイカダで脱出しようとしたけど出来なくて困ってたし」
『ならどうやって脱出したんだ?たまたま船が来たとか?』
「違ェよ。デュースが炎を原動力にするストライカーを作ってくれてよ!そんで一緒に脱出したんだ!」
海に出て早々大変な目に遭っていたらしいエースの話にジョーは頭を抱えたい思いなのだが、エース的には良い思い出になっている様なので野暮なことを言わない事にした。一先ず能力者になってしまった理由は分かったがその経緯に色々突っ込みたいがそこも言葉を飲み込んだ。
流れて来た謎の実を食べるとはそれ如何に?と言う気持ちもあるジョーだがそれに関しては自分自身落ちていた悪魔の実を食べてしまっているので黙秘したと言うのもある。
そうして無人島シクシスの話を皮切りに誰と何処で出会ってどんなことをしたかと言う話を身振り手振りを交えてエースはたくさん話した。その話をジョーは楽しげに聞きながら時には驚き時には質問したりと想像以上に話が弾んだ。
中でもこの島でも勃発していた女将校率いる海軍が何故かエースを執拗に追って来ている話もありジョーは「追い返すだけでなく沈めた方が良かったか?」と物騒な事を思ったり。言葉にしなかったものの何となく雰囲気で物騒な事を考えているのを感じ取ったエースは「余計なことすんなよ?」と釘を刺されたジョーは肩を竦めるだけに留めた。
そんな色々と紆余曲折あって海を渡って来ているエースの話を聞いたジョーが最終的に思ったのは「随分と急ぎ足だな?」と言うこと。ロジャーが現役で海を渡っている時は
『ねぇエース、グランドラインに入るまでもかなり早いけど何か急いでいるのかい?』
「……俺は一分でも一秒でも早く俺の名を世界に広めてェんだ。だからゆっくり進んでる暇なんてねェ」
『名を広めたい、か…。手配書だって出てるんだから着実に広がっているのは事実だろう?それなのに急ぐの?』
「あんなんじゃダメだ!もっともっと…!アイツの名を凌ぐ程の名声を手に入れんだ…!!」
『なるほど…ロジャーの名を凌ぐ程か。それは生半可な事で出来るものじゃないね』
「分かってるさ。だからこそ早く新世界に行って名を広める必要があるんだ」
『エースの言いたい事は分かった。けどそれはそんなに急いでやる事か?もう少しゆっくりでも良いんじゃないか?』
「オッサンに俺の気持ちは理解出来ねェよ…。俺とアンタはアイツの親族っていう立場は同じでも境遇が全然違げェからな」
『エース、君は…そんなにまでロジャーを…』
エースのロジャーに対する言葉の節々に強く濃い恨み辛みが滲んでいるのをジョーは敏感に感じ取り、それはエースの表情からも窺い知れた。
だからこそその気持ちを全て火にくべて全てを灰にしてしまう為にエースは「海賊王」となったロジャーを超えるほどの名声を、時代を変える程の…世界に革命を起こす程のでかい事をしなくてはならない固定観念に囚われていた。そうしなければエースは自分の内に根を張った
だからこそ幼い頃から名声を手にいれようと、そして悔いのないように生きると左腕に刻まれた刺青に誓ったのである。
そんなエースの想像以上にほの暗い心情を知る由もないジョーは何と声を掛ければ良いのか分からなかった。
確かにエースの言った通り二人はロジャーの親族であるものの状況も、環境も、境遇も全てが異なりロジャーに対する気持ちは両極端と言ってもいい。ジョーは弟のロジャーが生まれた時から知っていて彼の為人もよく分かっている。しかしエースは「海賊王」や「世界最悪の犯罪者」などと会った事もない父親の名前に振り回されて生きて来た。エースが幼い頃に「ロジャーに子供がいたら」と言うような質問をした事があったがその答えは全て非情なものでその度にエースの心は
二人の間に重い空気が流れ始めたのだがそれを断ち切ったのは意外にもエースでジョーに対して「暗い話して悪い」と言った。
「んな話されてもオッサンは困るよな」
『困る事はないよ。ただ…エースの気持ちを解ってあげられない自分が情けなくて腹立たしいよ』
「別に俺は共感して欲しくて話したんじゃねェよ。それでも…誰かに言いたかったのかもな…」
『暗い気持ちを一人で抱え込むのはかなり辛い事だ。だからもし話したい事があれば私はいつでも話し相手になるよ』
「……はぁーあ!何だかなァ!」
『えっなに?私何か変なこと言ったかな…』
「俺、昔はオッサンもアイツと同じ様にイケスカねぇクソ野郎だと思ってたんだ」
『え゛っ?!そ、そんなふうに思われていたんだ…しょ…ショックだ…』
「でも会ったら思ってたのと全っ然違くてただのお人好しのオッサンだったな」
『お人好し…よく言われるけどそんな事ないけどな』
「それと…オッサンは俺の事情を知ってっから何でも話せる…話しちまいたくなるヤツだよ」
『 ! ふふ…そっか。そう思われているのなら光栄かな』
最後の方は恥ずかしかったのか段々声が小さくなっていったが隣に座るジョーにはしっかり聞こえ控えめに、でも嬉しそうにジョーは笑った。そんなジョーを見たエースは少々バツの悪そうな顔をしていたが最終的に笑みを見せる。
この後は暗い話などは一切せず、ジョーの住む島の話だったり半年ほど前には新世界に行ってシャンクスに会って来た話などお互いの近況を話した。エース的にはまさかジョー達が新世界に行って前半の海に戻って来ているとは想像もしていなかった為驚きを隠せていなかった。
どうやって逆走したんだやら何やら色々根掘り葉掘り聞かれたジョーであったが、魚人島を通るにあたってはウマヘビ様様だったため残念ながら参考にはならないだろう。
そんなこんなありながらも二人は時間が許す限りたくさん話をしてある意味お互いの事を知れる時間となるのだった。
( はぁー…新世界行って戻ってくる奴いるとかトチ狂ってんな )
( え…それは言い過ぎじゃないか…? )
( 命張って魚人島通ったのにまた戻るとか普通無理だからな? )
( あー…まぁそれは理解してるつもりだよ )
( 何にせよオッサンは普通じゃねェな。知ってたけど )
( 酷い言われようだ… )
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