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ロジャーとおでんは嫁さん達の説得に渋い反応をしていたのだが最終的に折れ、彼女達は「シャッキー'SぼったくりBAR」で待機する事になった
「やっぱりそうなったか」と思うジョーに残る話しをされて酔いの醒めたロジャー達は「なんで許可したんだよ!!」と凄い食い付いた
最初はジョーも反対はしたものの、彼女達の意志の固さを感じてしまえば彼とて頑なに「NO」とは言えない
もちろんココに置いて行くのは心配だし共に居てくれたらと思うが、ジョーだって女性には強く言えないのである
そんなこんなあった翌日
レイリーがコーティング作業に入るため、ウマヘビのいる場所へと案内の為ジョーが一緒に向かった
船がウマヘビの頭に括られていると言う想定外な様相を見たレイリーは彼には珍しく大口を開けてケラケラと笑う
そんな様子を見たジョーは心底意外そうな表情をするのだが「まぁアレを見たら面白いか」とレイリーの笑いが収まるのを黙って待った
レイリーの笑いが収まった後はテキパキと動き出し、ジョーはこの場に居ても邪魔になるだろうとその場を離れた
ロジャーやおでん達は嫁さん達と暫し離れてしまう為、その穴を埋めるかの様に観光地で遊ぶようだ
二日酔いに苦しんでいたロシナンテもジョーの能力で回復し今回は適当にぶらついているようで一人で出て行った
それぞれがコーティングが終わるまで自由行動をする中、ジョーもまた岬を離れ適当に歩き回っていた
先ずは赤髪海賊団への手土産を買って行かねばならないと考えているジョーは繁華街のあるグローブへと行きたい思いである
ブラブラと歩いていれば観光地とは違う賑わいを見せている場所に出て、ジョーは運よく繁華街へと出て来れた
( ふむ…結構賑わっているね、やはり海賊に土産と言ったら酒…だろうか… )
ジョーの中で「海賊=酒」と言う方程式が確立してしまっているため、手土産ならば酒だろうと酒屋を探しながらも色々見て回る
今買ったところでコーティングをしている邪魔になるだろうと、シャボンディ諸島を出る前にまた買いにこようと酒屋を離れた
途中本屋を見つければフラリとそこに立ち寄ってしまいそうになり「まずいまずい」と首を振りながら本屋から離れキョロリと辺りを見渡す
精肉店や青果店などなど多岐に渡って出店されており、客引きをする人もかなり多くジョーも何度か味見にと手渡されたりした
それをありがたく受け取りながら見て回っていると時間がかかり過ぎると思った彼は路地裏の方へ一旦避難した
厚意でくれているのは百も承知なのだが、これだけ貰ってしまうと「買わなくては」と思ってしまうのがジョーと言う人だ
自分の所為で大きな出費をしてしまった事もあり、出来るだけ節約をしたいジョーは路地裏を適当に歩きまた通りに出ようとした
しかし先ほどまでの賑わいが嘘のように静まり返っており、何かがあったのだと察した彼は路地裏からそっと通りを確認した
確認した先では先程まで楽しそうにしていた人達が隅に避け一様に膝を付いて頭を下げている状況で、ジョーは「何事?」と目を白黒させる
次に彼の視界に入ったのは頭をカプセルのようなもので覆っている人物で、四つん這いにさせた奴隷の背に乗り道を通っていた
( 何だアレは…非常に不愉快だな… )
「ジョーのオッサン、出て行ったらダメだ」
『 ! 君は…サボくんじゃないか』
「よっ! また会ったな」
『久しぶりだね…と言いたい所だけどアレが何だか君は知っているのかい?』
「知ってるも何もアレは天竜人だろ…世界貴族ってやつだ」
『あぁ…アレがそうなのか…そんなのが居るとは知っていたけれど初めて見たね』
「まぁ天竜人なんて会いたくねェし見たくもねェけどな」
『そうだね…流石にあんなもの見せられたら手を出してしまいそうだよ』
「やめとけ、天竜人に手を出したら海軍大将が動いちまう…アンタには厄介な事だろ」
『それは確かにそうだね』
「ここに居ても良い事は何もねェ…離れた方がいいぞ」
『だね、君の言う通りにしよう』
路地裏から見ていたジョーに話しかけたのは以前秋島で邂逅したサボであり、まさかこんな所で会うとは思っていなかった彼は驚いた
それはサボにも言えた事なのだが、天竜人相手に何かしでかしそうなジョーを一先ず止めこの場を離れる事を提案した
それに同意したジョーは直ぐに来た道を引き返し、その後にサボも続くように着いて行った
暫く歩いていけば何処か閑散とした場所に出て人の気配も自分たち以外ないのを確認したジョーは足を止めた
『さっきは止めてくれてありがとうね』
「別にいいさ、俺たち的にも海軍大将に来られちゃ困るからな」
『ふふ そうか…でもまさか此処で君とまた会うとは思わなかったな』
「それはこっちのセリフだからな? アレからオッサンの事メチャクチャ探したのに全っ然見つからねェし情報も全くねェんだもんよ」
『だろうね、私が住んでいる島はちょっと特殊だから見つけようと思っても難しいと思うよ』
「マジかよ…まぁでも此処で会えて寧ろ良かったな、オッサンに会わせたい人がいるんだ」
『私に…?』
「おう、会わせたいっつーより会いたいって言ってる人だけどな」
サボの言葉に「一体誰だ?」と言いたげなジョーなのだがサボと関わりのある人など皆目見当もつかず「?」が大量に飛んでいる
そんなジョーを見て拒否されている様子は無い事から「こっちだ」と言ってサボが先導し、ジョーは取り敢えず着いて行くことに
人気のない所を迷いなく進むサボに少々訝しむジョーではあるが、エースの友であるサボを蔑ろにする選択は彼にはなかった
例えサボが己の事を忘れていようとも、エースがサボを大切に想っているのを知っているのだから関係ないのだ
しばらく歩けば一軒の酒場が見えて来て、サボはその店へと迷いなく入って行きジョーもそれに倣い中へ入った
中にはそれなりの人がおり飲んだり食べたりをしている中、サボは店主と何かを話してから更に奥の部屋へと入って行ってしまった
流石にこれ以上奥に入るのは躊躇われたジョーはその場に留まったのだが、着いて来ていない彼に気づいたサボが顔を覗かせた
「オッサン何してんだ、こっちだ」
『……部外者である私がそこに入るのは些か抵抗があるのだけれど』
「あー…大丈夫だぜ、オッサンを狙うような奴は此処にはいねェからさ」
『……その言い方だとこの酒場は君の所属する組織関係の場所なのかな?』
「あぁそうだ」
『そうか…それなら問題なさそうだね』
そう言ってジョーはサボが待っている部屋へと向かい、サボが中に入った後から彼も中へと足を踏み入れた
その部屋は十畳ほどの広さで数名いるだけなのだが、間違いなく力ある者であると分かる覇気を持っている人物達だった
サボが会わせたいと言った人物の為問題はないだろうが気は抜けないと判断したジョーは扉の前から動く事はしない
彼が警戒しているのを見て察している者達…革命軍の面々は、サボから報告を受けていた「ゴール・D・ジョー」が目の前にいる事にそれぞれの反応を見せていた
サボの報告を疑っていた訳ではないが、今まで消息不明だった男が自分の目の前にやってきたら誰だって驚く…それは「革命家ドラゴン」もまた同じである
何より自分が思っていた以上に若く見えるその人にドラゴンだけではなく、その場にいるバーソロミュー・くまやエンポリオ・イワンコフも驚いているのだ
誰も口を開く事なくただ相手の様子を見ている面々だったのだが、そんな中口を開いたのはドラゴンだった
「俺の名はドラゴン、革命軍の総司令官をしている」
『ご丁寧にどうも、私はジョーと言う者だ』
「あぁサボに話は聞いている」
『そう…それで? 私をここに連れてきた理由は何かな?』
「ただ俺が貴方に会ってみたかっただけだ、それ以上の理由はない」
「ちょっとドラゴン?! 世界政府と敵対する大物をみすみす逃す気なの?!」
「手を貸してくれると言質を取って居るんだ、それ以上高望みをする気はない」
「本気?! 何処に居るかも知れない相手の手を借りるなんてどするって言うの!?」
「……確かにそれは一理ある、どうするつもりだドラゴン」
「そうだな……、」
『それなら私の電伝虫の連絡先を教えておこうか?』
「 ! それは助かるが…盗聴される恐れがある以上お互いに易々と連絡を取る事は出来んはずだが」
『盗聴防止用の電伝虫も常備しているから問題ないよ』
「なるほど、それならば問題はなさそうだな」
「オッサン用意周到だな」
『色々とバレる訳にはいかないからね』
自分宛の電伝虫の番号を教えるために紙とペンを借りたジョーはサラサラと数字を書き連ねてドラゴンへと渡した
それをしっかりと受け取り「感謝する」と言いながら懐にしまったドラゴンは友好の証として手を差し出した
それを一度一瞥してからジョーも手を出し、二人は握手を交わすのだった
この後はくまとイワンコフとも挨拶をし、話も終わっただろうと思ったジョーはこの場に長居する気はなく早々に出て行く
そんな彼を引き止める者はいないがジョーの後に続いて出て来たサボに彼は不思議そうにサボを見ている
その視線に気づいているサボは「飯食いながら話しようぜ」と言う事らしく、断る理由のないジョーは了承した
ここが酒場である事からここで食事をするのかと思えば違う場所に行くようで酒場を出て元々いた繁華街の方へと歩き出した
暫く無言で歩いていたのだがジョーには聞いておきたい事があり、「確認したいのだが…」と前置きをしてからサボへ視線を向けた
「なんだよ?」
『以前会った時、私とは初対面だと言ったが私と君はそれ以前に会ったことあったよ』
「はぁ? 俺全く覚えてねェし、前も言ったがオッサンみたいな奴と会ってたら忘れねェよ」
『サボくん言ってたろう? 「ガキの頃の記憶がない」と…私と会った時は幼かったから覚えて無いのだろうね』
「マジでか?! ってことはガキの頃の俺のことを知ってんのか?!」
『詳しく知っている訳では無いけれど…海賊になろうとしていたのは知っているよ』
「俺が…海賊に…」
『サボくんは何故今の組織に入る事になったんだい?』
「死にかけてた所をドラゴンさんに助けて貰ってそのまま革命軍に入ったんだ」
『死にかけた…? 一体何があったのかは覚えているのかい?』
「いや…そう医者に言われただけだから俺自身の実感はなかったな」
『そうか……前に私に甥が居るって話したのは覚えてるかな?』
「んな衝撃的な事忘れるわけねェだろ!!! オッサンの甥って事は海賊王の息子だろ?! 世間に知れたら一大事だぞ!!!」
『かも知れないね、でもそんな甥と君は友達だったのだよ』
「――――――え、」
『あの子に会いに行った時にサボくん、君とも会っていたんだ』
そう当時を思い出すように話すジョーにサボは驚きを示すのと同時に、どこか戸惑っている様な様子を見せた
そんな姿を見たジョーは忘れてしまっては居るものの、心の奥底にはしっかりとエースとの事が残っているのかも知れないと彼は思った
だからと言ってその記憶を取り戻させる事が出来るかと言われると出来なくは無いだろうが、革命軍として過ごして来た記憶を消してしまう恐れがある
そうなってしまう可能性が少しでもあるのなら己の能力を使う訳にはいかないだろうとジョーは思っている
サボはまさか自分の無くした記憶の中にジョーと遭遇していた事実を知り驚くのと同時に、彼の言う「甥」と言う言葉に胸が締められる思いだった
覚えていない筈なのに忘れてはいけない相手の事を言われているような気がしてサボはどうしようもなく胸が騒つくのである
そんな混乱している姿を見て「言うべきじゃなかったか」と思ったジョーはサボに軽く触れ今し方した会話を
そうすればサボは一瞬ポカンとした表情を見せたが、直ぐにジョーの方へ視線をむけ「何の話してたっけ?」と首を傾げた
『どこで食事しようかって話だろう?』
「あー…そうだっけか…? なんか違う事話してた気がするけど…んー…?」
『若いサボくんでも物忘れみたいな事があるのだね?』
「まぁなくはねェけどオッサン程じゃ無いと思うぜ」
『はは! そうかも知れないけれど相変わらずハッキリ言うなァ』
「今更取り繕っても意味ねェだろ」
『そうだねぇ…サボくんはサボくんだものね』
「ちょっと待て、それどう言う意味だよ!」
『ふふふ どう言う意味だろうね?』
ジョーが能力を使った事でサボは先ほどまでの話は綺麗さっぱり忘れている為、彼は別の話へと切り替えた
サボ自身はどこか納得いっていない様子であったがジョーの聞き捨てならない言葉にその考えも頭の隅へと追いやられた
繁華街に出てからも二人は色々と会話をしながら歩いており、食事処へ行こうとしているにも関わらずサボは時たま出店で物を買って食べている
その様子をただ微笑みながら見ているジョーなのだが内心「これから一緒に食べるのだよね?」と思っていたりする
サボはこれくらい腹の足しにもならないと言いたげに結構な量を出店で食べたのだが、目的の食事処を見つければ嬉々としてその店へと入って行く
それにジョーも続くように中へ入れば時間帯的にも混み合う時間なのか結構な人がおり、彼らは以前同様カウンター席に並んで座るのだった
カウンターに座った瞬間サボは店主に色々頼み出し、その量を聞いた店主は目を白黒させているものの仕事を全うしようとフライパンを手に取った
以前会った時にかなりの量を食べるのは知っていたが食べ歩きもしていたにも関わらず相当量を頼んだ事に流石のジョーも驚きを隠せない
「そんなに入るのか…」と思うのだが入るからこそ頼んでいるのは分かるので彼もその量には何も言わずに自分の分を頼んだ
先に出された酒を手に乾杯をしてから一口飲み二人して「はぁー」と息を吐いた
『それにしてもサボくんがシャボンディ諸島に来てるとは思わなかったね、よくココには来るのかい?』
「そんな頻繁にって訳ではねェけど、人が多く行き交う分情報が入り易いからな」
『成る程…サボくんも公にされてない筈の事知っていたね』
「まぁな、各地を回って情報を集めて対応するのが俺の仕事でもあるんだ」
『ほぉー…ホント若いのに凄いねぇ…君のその姿勢には脱帽ものだね』
「そうか? これくらい普通だろ」
『いやいや、私が君の歳ぐらいの時そんなバリバリ働いてた記憶ないよ』
「それはそれでどうなんだ…オッサン」
『まぁ暮らしていけるだけのお金があれば問題なかったしね』
「そんなもんか?」
『そんなもんだよ』
そんな話をしていれば頼んでいた料理が出され、二人は会話を一時中断しサボは目を輝かせながら食べ始めジョーもそれに倣う
ガツガツとかき込むように食べるサボを横目にジョーも一口一口味わうように食べる
店主は他の客の料理を作りつつジョーとサボが頼んだ料理も同時進行で作っており、かなり忙しなく動き回っている
それを見たジョーは「大変そうだな」と他人事と思いながら眺めつつ食べる手を止める事はない
両頬を膨らませ「もきゅもきゅ」と擬音がしそうな程溜め込みながら食べる姿はまるでげっ歯類を彷彿させる
内心ジョーもそう思っていたりするのだが、そんな事知る由もないサボはゴクリと飲み込んでからジョーへと顔を向けた
「そういやオッサンは何でここに居るんだ? 前みたいに買い物か?」
『あぁ…ちょっとこれから新世界に行く用が出来てしまって…』
「いやいや 新世界はちょっとで行くような場所じゃないだろ!」
『まぁそうなんだけれどね、行くと言い出したら言う事聞かないから仕方ない』
「仕方ないです済ますオッサンもヤベェな…」
『そんな事ないと思うけど…まぁ用事済ませたら即戻って来るから問題ないよ』
「戻って来るって…新世界に入って逆走する奴早々いねェぞ…」
『別に私は旅をする気はないからねぇ…そもそも他にも逆走してる子はそれなりにいるよ?』
「例えば誰だよ」
『先ず昔で言えば私の弟も逆走してたしシャンクスくん…はアレは逆走だったのかな…? あとはニューゲートくんとかね』
……………………
………………………………………
「はぁあ?!!?!! つか何でそんなこと知ってんだよ!!!」
『わざわざ会いに来てくれたからね』
「そういや何年か前に白ひげが新世界から姿が消えたニュースがあったな…まさか…」
『そうそう、その時に彼等が私の住む島に来たんだよ』
ジョーから語られたグランドラインを逆走したであろう人物の名に驚きを隠せないサボ
以前会った時にシャンクスや白ひげと知り合いだと言う話は聞いていたが、だからと言って大物海賊が逆走してまで会いに行くのかと疑問が浮かぶ
冗談だと言われた方が納得できるのだがジョーからは冗談で言っているような雰囲気は全くなく、ただ事実を述べているのだとサボは肌で感じた
ロジャーの兄だと宣ったジョーの存在がどれだけの人間に対して重要なのか計り知れず、サボは本気で革命軍に入ってくれないかと心底思う
そうすれば万が一彼がピンチに陥った時はシャンクスや白ひげが味方についてくれる可能性があるのだから、革命軍としては喉から手が出る程欲しい人材なのだ
まぁ一度断られている以上、あれこれ言って話を拗らせ「力を貸す」と言う話までなくなってしまうのは困るため余計な事は言わないのだが
「はぁー…マジでオッサンの立ち位置が意味分からねェわ…大物海賊団が会いに来たってなんだよ」
『立ち位置も何も今も昔も私は一般人でただのオッサンだよ』
「そう言い張るのは自由だけど俺らからすればただの一般人ではねェよ」
『そうなのかい? おかしいなァ…目立たない様に暮らして来たのに』
「手配書が出てる時点で目立ってないとは言えねェだろ」
『言われてみればそうだね…? いやでもアレは不可抗力だしなァ…どしようもない』
「まぁ確かに…オッサンが海賊で手配書が出た訳じゃねェもんな」
『そうなんだよ、のんびり静かに暮らしていたのに不本意極まりないよね』
「なんか話聞いてると隠居生活してるみたいだな?」
『あー…間違ってはいないかもね、実際孤島で隠居しているようなものだよ』
「孤島って前半の海のか?」
『そうだよ』
「ふーん…虱潰しでオッサン探したけど全然見つけられなかったし情報も得られなかったぞ?」
『まぁ早々見つかるような場所には住んでいないからね』
先程会った時にも言われた言葉を聞いてジョーも同じような事を繰り返し、どこに住んでいるのかなどを言う気はないようである
ジョー的にはロジャーやシャンクスが自力で見つけ出した事もあり他の人にも「自力で見つけてみろ」と言う感じなのだ
まぁタートル島が島では無いことを知らない者からすれば先ず
偶々あの近くを通ったりする船は甲殻一族からジョーに連絡が行くため、できる限り近づけさせないようにしてもらっているのだから
そんな事など知らないサボ達革命軍がジョーを見つけ出そうとするのは相当時間を掛けなければ無理な話なのである
色々な会話をしながらも食事もし、サボの注文量の多さに店主がだいぶ疲弊している様子を見ながらジョーは食事を終えた
そしてサボが満腹…とまでは言わずとも満足するまで食べるのを待ってから、サボも忙しいらしくその場で二人は別れた
サボと別れた後もジョーは適当に繁華街をぶらついていると、ベンチに腰掛けている見覚えのある大男を視界に捉える
言わずもがなロシナンテであり、ずっとその場にいるのか微動だにしない事から鳥が頭の上や肩に止まっている
いつもと様子の違うロシナンテにジョーは首を傾げながら近づき、隣に腰掛けながら「ロシィ?」と声をかけた
「 !! ……ジョーさん、」
『どうしたんだ、何かあったのかい?』
「いや…何でもねェよ」
『何でも無いって顔じゃないよ、私で良ければ話聞くよ』
「……今ここに天竜人が来てるんだ」
『うん そうだね、私も見かけたよ』
「ジョーさんは…天竜人をどう思う…?」
『率直に言って胸糞悪いかな、世界貴族だか何だか知らないけどぶっ飛ばしてやろうかと思ったよ』
「はっ?! やってねェよな? ぶっ飛ばしてねェよな?!!?!」
『流石に海軍大将が動くって言われたら出来ないよ、面倒事は御免だからね』
「って事は、大将が動かなけりゃぶっ飛ばしてたって事か…」
『まぁそうだね…と言うか止められなかったら多分ぶっ飛ばしてた』
ケロリとぶっちゃけるジョーにロシナンテは青い顔をしたまま愕然とした表情を見せ、どこの誰だか知らないが止めてくれた人に感謝した
ジョーが胸糞悪く感じるのは当然だが、だからと言って天竜人に逆らおうとする人間は先ずいない筈である
天竜人に逆らえば人生ドン底お先真っ暗待ったなしなのだから当たり前と言えば当たり前だろう…誰だって明るい道を歩みたいものだ
しかしジョーはそう言ったことなど関係なく己が不快に感じれば誰であろうが、例え天竜人であろうがぶっ飛ばす対象なのである
それもそうだろう…ジョーの判断基準は大まかに「身内」か「他人」か「知り合い」かの三つに分けられるのだから
再三言うが彼にとって「他人」は「敵」と同義であり、「身内」「知り合い」以外の人間は基本的に関心は無くどうなろうがどうでもいいのである
「絶対それ俺たちの前以外で言わない方がいいぜ」
『ん? 天竜人ぶっ飛ばしたいって? まぁアレに会わなければ態々言わないよ』
( 天竜人をアレ呼ばわり…俺の出生を知ったらどう思うんだろうか… )
『それで? ロシィは何を思い悩んでいるんだい?』
「…大した事じゃねェから気にしないでくれ」
『うーん…ロシィも頑固だね、大した事だからそんな青い顔しているのだろう?』
「……悪い…出来れば話したくねェんだ…」
『……分かった、無理に聞き出すのも悪いしロシィが話したくなったら何時でも聞くよ』
「すまねェ…ありがとう…」
ロシナンテが本気で話したくなさそうだった事から無理矢理聞くのをやめたジョーはベンチの背もたれに寄り掛かりグッと伸びをする
その状態でチラリと横を見ればガックリと項垂れたような体勢のロシナンテの背をバチンッ!と結構強めに叩けば「イッ?!」と身を伸ばした
叩いた張本人を涙目ながら振り返れば目元を緩め見守るような表情をしており、ロシナンテは抗議しようとした声が「ヒュッ」と飲み込まれた
そんなジョーを見てロシナンテは「この人は何を言っても受け入れてくれる」と漠然と思い、話す気はなかったのに勝手に口が開いた
「俺は…元天竜人なんだ」
ポツリと、聞き耳を立てないと聞き逃してしまいそうな程小さな声で溢されたその言葉にジョーは目を丸め驚きを示した
それと同時にロシナンテがなぜ暗い顔をしていたのか察し、ジョーは知らなかったとは言え酷い言い方をしてしまい申し訳なく思った
そこからロシナンテは己の出生、何故マリージョアから地上へと降りる事になったのか覚えて居る範囲でポツリポツリと語った
その話にジョーは遮る事なくただただ相槌を打つだけで静かにロシナンテの言葉に耳を傾けている
そして天竜人が「世界貴族」と言う肩書を失う事がどんな事になるのか、実際にこの身に受けた事も包み隠さずロシナンテはジョーに話した
「天竜人が天竜人じゃなくなれば如何なるかなんて火を見るより明らかだ…実際何度も死にかけたしな
母上が死んでドフィが父上を撃ち殺して……気づいたら俺はセンゴクさんに助けられてたんだ」
『………そうか、幼い頃にそんな事があったんだね』
「はっ…幻滅しただろ…? 俺にはジョーさんが胸糞悪いと思う奴らと同じ血が流れてんだ」
『確かに血筋はそうなのかも知れない…でも私の知ってるロシィはドジでおっちょこちょいなロシィだけだ
元天竜人だろうが関係ないし、ロシィがアイツらと同じ感性を持っているだなんて思っていないよ』
「っ……なんで、そんな風に言えんだ…もしかしたら本性を隠しているかも知れねェだろ…!」
『ふふ そう言う時点でロシィはいい子だよ、私にとって愛すべき家族だ』
「 っ!! 」
『出生がなんだ! 生まれてくる場所なんて誰も選べやしないのだから私は私が見て信頼に足るかどうか判断するよ、だからロシィ…話してくれてありがとうね』
「っぅ…俺っ…ジョーさんの元に来れてよがっだ…!!!」
『ふふふ こちらこそ、私たちの元に来てくれて嬉しいよ』
ロシナンテの過去…出生を聞いたジョーであったが彼からしてみれば「だからなんだ」と言う思いなのだがロシナンテからすれば違う
元天竜人だと知れれば間違いなく一般人は己に牙を剥くだろうことは分かっているし、実際子供の頃に受けた仕打ちは心の奥深くに傷として残っている
だからこそ話したくは無かったロシナンテだが、ジョーは全てを包み込むように何処までも暖かく「家族」として「愛」を伝えてくれる
それがどれだけ有り難く嬉しい事なのか改めて実感したロシナンテは膝に肘を付き下を向きながら溢れる涙を流した
その様子を見たジョーは小さく見える背に手を当ててゆっくりと上下に動かし撫で、その優しさにロシナンテの涙腺を更に緩ませるのだった
( ゔっうぅ…涙が止まらねェ…!!! )
( 泣ける時に泣いておくといいよ )
( もうガキじゃねェんだ…!! そんなに泣いてたまるか…ゔぅ…っ! )
( と言いつつ泣き止みそうに無いね? )
( うるせェ!!! ジョーさんは何でそんな懐が深ェんだよ!!! 普通敬遠するだろ!! )
( わぉ怒られた…それに私は別に懐深くないよ? 家族に甘いのは認めるけれど )
( 同じ事だ!!! )
( えー…違うと思うけどなァ… )
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