救済を
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ロジャーがローグタウンを出てその後を追うようにジョーが無人島に行き着いてから早一年の月日が経った。
ジョーは無人島に着いてから何日も掛けて一通りこの島がどうなっているのか調べ尽くした。どんな食べ物があるのか、どんな動物がいるのか、寝れそうな場所はあるかなどなど…。結果的に生活する面では何の問題もなさそうである。
ただ動物…謂わばこの島に住む猛獣たちは一様にジョーに戦いを挑んだ。その都度ジョーが返り討ちにしては負かされた猛獣は彼に平伏し何故か忠誠を誓うような仕草をした。初めこそ戸惑っていたジョーであるがそう何度も同じ事が起きれば慣れるもので今や気にしない。そもそもこの一年で島にいる力ある猛獣達は彼に挑み惨敗を喫している。
それに伴い力のない動物達はジョーに従えば力のある猛獣達に怯える事はないと察した。その為、弱い動物達は必然とジョーの周りを陣取っておりある意味強い猛獣が蚊帳の外に。無論それをよくは思わない猛獣が一度小動物(それでも通常よりデカい)に手を出した。それを見たジョーが怒った事でそれ以来猛獣が小動物に手を出す事は無くなったのだ。
そして現在
ジョーは今日も今日とて動物達を周りに従え(?)島を歩き回り食料調達をしている。小動物たちはどこに何があると言うのをよく知っていて案内をしてもらっているのである。もちろんジョーには動物の言葉を理解出来るわけもなく小動物の向かう先に歩いているだけ。それでもしっかり実の付いた木まで行けているのだからその辺は信用していいだろう。
そして食料調達を終えれば生活拠点にしている場所へ戻り猛獣達相手に戦闘訓練を行う…それが今のジョーの日常である。
*
**
***
場所は変わり…ジョーより先に海へ出ていたロジャーは旅路で仲間となった者達を連れて故郷へ戻って来ていた。その中には後に副船長を務めいずれ「冥王」と呼ばれるようになるシルバーズ・レイリーや航海士である「山喰い」すコッパー・ギャバンなどの姿もある。
ロジャーは一年ぶりとは言え帰って来た故郷を前に落ち着かなくソワソワした様子を見せていた。そんなロジャーを見た初めての仲間であるレイリーでさえ訝しげに思いロジャーに問いかけた。
「ロジャーそんなに故郷に帰るのが待ち遠しいのか?」
「別にそれはいいんだけどよ早く兄貴にお前らを会わせてやりてェんだ!」
………………
……………………………
「なんだって?」
「だがら早く会わせてェって…」
「違う。誰に会わせたいって言ったんだ…?」
「あん? 俺の兄貴だ!」
「お前…兄弟がいたのか…」
「話してなかったか? 俺と違って色々出来んだぜ!」
「それは胸を張って言う事ではないな」
自慢気に言うロジャーにレイリーは呆れた表情をしながらため息を溢す。そんなもの全く意に介さない彼は「わはははっ!」と陽気に笑っている。
暫くして故郷であるローグタウンへ着港しロジャーは我先にと船を降りてスタコラ走って行ってしまう。他の船員達は目を丸めその姿にレイリーが再度ため息をついている事などロジャーが知る由もない。ロジャーは故郷を出てからまだ一年しか経っていないのにすごく懐かしく感じていた。今まではここで寝起きしていたのが当たり前だったが今では海の上での寝食が当たり前になっている。
たった一年されど一年とはこの事かとロジャーは思う。
ロジャーは街郊外にある実家へと早く仲間達を紹介したいが為に只管に街を駆け走り抜ける。暫く走れば家が見えロジャーの気分も高揚していき勢いのまま玄関を開けて中へと入った。
「ジョー!! 帰ったぞ!!」
元気よく中に入るも中からいつも暖かく迎え「おかえりロジャー」と言ってくれる声がない。その事に首を傾げながらロジャーは「買い物にでも行ってるのか?」と思い暫くその場で待つことに。
待つにしても家の中の様子が最近は全く使われていないような雰囲気であることに更に首を傾げるロジャー。いつも綺麗にされている部屋の隅に埃が溜まっているし、ソファやテーブルもまた埃を被っている。何よりジョー専用の本棚はびっちりと埋まっていたのだが所々抜き取られているのだ。
それを見て嫌な予感がしたロジャーは急足でジョーの部屋へと向かいバンっと扉を開いた。ジョーの部屋もここ最近掃除された雰囲気はなく、やはり埃がうっすらと積もっている。ロジャーはお構いなくツカツカと中に入りクローゼットを思い切り開いて絶句した。
綺麗に整頓されていた衣類がなくなっているのである。
よく見てみれば整理整頓された部屋は、もうここの家主が帰ってこないと言っているような気がした。それを踏まえてロジャーは兄がローグタウンを出たのだと分かったが、なぜ自分に何も言ってくれなかったのかとも思う。モヤモヤとした気持ちを抱きながら部屋を出ようとした時、机の上に紙が置いてあるのに気付く。
その紙を手にとれば、そこには「Dear Roger」と書かれている事から兄から己への手紙だとすぐに分かった。
拝啓 ロジャー
この手紙をお前が手に取っているのはいつ頃になっているのだろうか。
ただ言えるのは、その時には私はもうこの家にもローグタウンにも居ないのだろうね。
ロジャーがここを出て暫く経ってから私は一人静かに暮らせる場所を探しに故郷を出る事にした。
定期的に戻ると言っていたが私がいなくて驚いたんじゃないかな?
その事に関してはすまない。お前の誘いを断って出ているのだからきっといい思いはしていないのだろうね。
でも分かって欲しい。ロジャーにはロジャーの人生があって、それは私にも言えたこと。
だからお互いに悔いのないよう生きよう。そして何時かまた会えた時は見て来た事を聞かせて欲しい。
ロジャーの話しをつまみにお酒を飲めるそんな日が来ることを楽しみに待っているよ。
それじゃあまた会う日まで。
愛を込めて ジョーより
そうジョーの字で書かれている手紙を読み終え、しっかりと折りたたみ懐に入れて家を後にした。ここで会えなかった事は残念であるが兄も海に出ていると言うのならいつか会えるだろうと思ったのである。そんな期待を胸に久しぶりの故郷をロジャーは楽しむのだった。
*
**
***
ロジャーが帰ってきている事など知りもしないジョーは無人島で持って来ていた数冊の本を大虎を背に読む。超巨大な猛獣だとしても結局は大きな猫と同じだと思っているジョーは少し他の人とは感性が違うかもしれない。
そんなジョーであるが一年この島にいれば持ってきていた本も読み飽きると言うもので…。繰り返し読んでいた本を途中でしおりを挟み閉じグーっと背伸びをしてから徐に立ち上がる。共に横になっていた大虎は立ち上がったジョーを一瞥するも、直ぐに目を閉じて眠りにつく。その姿をチラリと見てからジョーは久しぶりに海の見える岩場の方へと歩いて行く。
この島に住み始めてしばらく海に顔を出さなかったらウマヘビが拗ねていたのである。そんな事があったことからジョーは定期的にウマヘビの様子を見に行くようにしたのだ。
『おーいウマヘビー。元気にしてるかー?』
「ブヒヒヒン!」
『そうかそうか、ならよかったよ』
「ブルルル!」
とまぁ会話らしいことをしているのだが残念ながらジョーにはウマヘビの言っている事など分かっていない。
ジョーはこの一年の間に海近くの木を適当に伐採し、座れるように簡易な椅子を作ったのである。もちろん生活拠点としている場所にも住める場所をきっちりと作ってある。
暫くその椅子に座ってウマヘビと話しをしているとジョリー・ロジャーを掲げた船が見える。「あ、海賊船だ」とジョーが呑気にそんな事を思っていると、この島の近場に渦潮が出来ていたようでそれに船は飲まれた。その一部始終を見てしまったジョーは椅子から少し腰を持ち上げたが、いくら泳げても生身で渦潮には近づけない。ウマヘビに行かせても、まだ子供の海王類のため海賊船同様にそのまま飲み込まれる可能性が高い。
そもそも海賊船を助けようとする事自体間違っているのだが。
どうしたものかとジョーが思っている間にも海賊船は木っ端微塵になってしまい海の藻屑となった。それを見ていたジョーは「
海賊船なら船員が居るはずだと思ったジョーは、ここまで泳いで来れる者がいるかも知れないと待つ。しかし待てども待てども人がやって来る気配はなく誰も助からなかったのだとジョーはその場を後にした。
そして嫌なものを見たからと半強制的に猛獣達と戦うのだった。
( コラお前達逃げるんじゃない )
( ぐるるる…にゃーん… )
( ウホホッウホ… )
( ガウガウ…ガガウ… )
( なに…? やりたくないって? それじゃあ私の身体が鈍るだろう? )
((( Σ?! )))
( ロジャー…? お兄さんは留守だったのか? )
( あぁ! 俺が海に出た後兄貴も海に出たらしい! )
( ほぅ 海に…ならばいずれ会うかも知れないな )
( そうだな! その間に土産話しを沢山作らねェと! )
( そうか…まぁ程々にな )
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