Act 33
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ジョーは眩しい光に一度目を瞑りもう一度開けば、彼の眼前には必死の表情のロジャーの姿が映る
彼自身何故自分は横になっているのか思い出せず、思い出そうとするとズキリ胸が痛みそこに手をあやって押さえる
その後「ゴホッゴホッ!」と激しく咳き込み再び吐血すれば、ロジャー達は顔面蒼白となりかなり狼狽だす
そんな彼等を押し除けてジョーの様子を見るDr.くれはは、先ず吐き出した血を検査する為に取った
ジョーは見知らぬ妙齢の女性に疑問を抱くも、自分の診察をしているのだと察し大人しくしている
彼も初めて感じる胸の痛みには戸惑いを感じる為、もし何かしらの病気ならば何なのか知る必要があると思ったのだ
「アタシの声が聞こえるかい?」
『は、ぃ…っ…』
「アタシが診た限り異常は無いようだけれど何処か痛む場所は?」
『胸、が…痛み…ます…』
「胸っ?! 心臓が悪いのか!?」
「五月蝿いよ! 黙ってな!! 胸が痛み出したのはいつ頃からだい?」
『……今日、突然…ですかね…』
「何か痛み出した心当たりは?」
『………能力…』
「能力?」
『能力を、使った後に一度…その後また痛み出して…目が覚めたらココに』
「アンタ悪魔の実の能力者かい」
『っ…はい、恐らく…能力の使い過ぎによる、リバウンドかと…』
「ヒッヒッ成る程、ならアタシの管轄外さね」
Dr.くれはが望診している様子をロジャー達はソワソワしながら見ているのだが、ジョーの「リバウンド」と言う言葉に驚く
ロジャーは勿論、おでん達もジョーの悪魔の実の能力にまさかリバウンドがあるだなんて聞いていなかった
しかしアレだけ凄い能力なのだから何かしらのリスクがあるのも考えてみれば当たり前の事なのかとも思う
とは言え今までその事に気付かなかった事でジョーの身を危険に晒した事にロジャーは不甲斐なさを感じていた
ジョーは自分の体が病魔に蝕まれているのでは無く、能力の使い過ぎにより負のエネルギーが溜まった事であると認識した
ちょいちょい放出している気でいたが、よくよく思い出してみれば大きく放出したのはカイドウの作った工場を爆破した時である
後はシャンクスの船に乗った時に敵船の船長とサボと邂逅した際の海賊に「
ただジョー的にはこの後に大きな「
何より一番溜まり易い「
とは言え自分の中で蠢いているであろう負のエネルギーを放出する必要があると分かったジョーは起き上がろうと体に力を入れた
『っ……』
「おい兄貴!! 無理すんな!!」
『……肩を、貸してくれるかい…?』
「何言ってんだ! 安静にしとけよ!!」
「そうであるぞジョー!!」
「倒れてから丸三日寝てたしな」
『え…冗談、だろうロシィ…』
「この状況で冗談なんて言わねェよ」
「兄貴が倒れたから急いでドラム王国に来たんだぜ!?」
「ウマヘビも全速力で泳ぎよったぞ!!」
『そうか…皆に、迷惑を掛けたね…ただ今は、私の中にあるエネルギーを放出したいんだ…』
「エネルギーを放出…? 一体何だってんだそりゃあよ」
『―――ゴホゴホッ!!』
「兄貴ホントに大丈夫なのか?! そのエネルギーを出せば治んのか!?」
『わ、たしの考えが間違っていなければ…ね』
「分かった、じゃあ行くぞ!」
ジョーの言い分に大分聞きたい事も言いたい事もあるロジャー達だが、一先ずは彼の体調を治さねばならない
そうするにはエネルギーを放出しなければならないと言うが、それが何なのかサッパリな面々は訝しむ他ないのだ
それでもジョーの言葉通りロジャーは彼に肩を貸して建物の外へと出たのだが、ピタリとジョーの足が止まる
歩くのもしんどいのかと思ったロジャーが彼を見れば、ジョーは青い顔をしながら目を丸めてキョロリと辺りを見渡した
彼はまさかこの島が冬島でかなりの積雪量があるとは思っておらず、この島でエネルギーを放出するのは問題があるように感じた
ジョーが危惧しているのはこれだけの積雪のある中、己の中に溜まっているエネルギーを放出した後何が起きるか、と言う事である
まず間違いなく雪崩が起きてしまうだろうと言うことは見れば分かり、そんな事になればこの島に住む人や動物たちに大きな被害を齎してしまうだろう
それはジョーの本意ではなく、出来るだけ迷惑にならない場所での放出が好ましいと思っているのだ
「どうしたんだよ? 歩くのしんどいなら俺がおぶってやるぞ」
『いや…この島での放出は…出来ない、と思ってね…』
「何でだ? 放出しなけりゃ兄貴のこの状態は治らねェんだろ?」
『多分ね…でもだからと言ってこの島に迷惑を掛けていい理由には、ならないよ…』
「迷惑…?」
『私がエネルギーを放出する時は、簡易爆弾のようになるんだ…ここでやったら大変な事になってしまう』
「 ! ……雪崩が起きるってことか…だが兄貴はどうすんだよ」
『あと二、三日過ぎても死にはしないさ…恐らくね』
「バカ言ってんじゃないよ、今の状態が続くようならアンタの命は持たないよ」
『 ! 』
「どう言うことだよ?!」
「アンタの体に病はないがその状態が続けば中身が保たない、長い事放っておけば間違いなく死ぬよ」
ジョーが「死にはしない」と言ったのをぶった斬ったのはDr.くれはであり、放置するば「死ぬ」とハッキリと言った
その言葉に食いつくのはロジャー達でどう言うことかと問い詰めるも、至って当然のように彼の中身が保たないのだと
まさか「中身」…いわゆる臓器が保たない程弱くなっていると言われるとはこの場にいる誰も思いもしなかったのである
ただ自分の体は自分がよく知ってるとはよく言ったもので、ジョーも中身が宜しくない状態であろう事は察していた
それでもこの島の人達に迷惑をかけてまで能力で溜に溜めた負のエネルギーを放出する気にはなれなかったのだ
しかし、医者である彼女に「死ぬ」とまでハッキリと言われてしまえばまだ死ぬ気のないジョーもその言葉を無視する事も出来ない
『では…どこか爆発が起きても大丈夫な場所って…ありますか…?』
「そうさね…とっておきの場所があるがアンタの体力が持つかどうか」
「俺が一緒に行くから問題ねェ! そこはどこにあるんだ?!」
「この先にドラム城がある山脈があってね、そこに放てば雪崩は起きないんじゃないかい?」
「分かったこの先だな?! ちょっくら兄貴を連れて行ってくる!!」
「おれも行くぞ!! 道中でまたあのウサギに襲われては戦えぬだろう?!」
「そうだな、頼むぜおでん!」
「おうとも! 任せておけ!!」
「ルージュ達はここで待っててくれ!」
「はい、お気を付けて」
力を放出出来そうな場所を聞いたロジャーはジョーを背負って走り出し、その後におでんも続いた
ジョー的には弟に背負われる事にかなり思うとこがあるのだが、そうも言っていられない程立つのもやっとである
その為甘んじてロジャーに背負われ、教えてもらった場所まで揺られる事となった
雪がチラつき足場の悪い中、そんなもの関係ないと言うような足取りで走るロジャーとおでん
途中ラパーンの群れに遭遇したがおでん達にボコられた群れだった様で彼等を見た瞬間逃げる様に身を隠した
彼等が進む先にはその場からでも見える巨大な山…「エントツ山」が見えるのだが、頂上が全く見えない程の高さがある
「なんじゃああの山!? アレがオババの言ってた山脈か?!」
「たぶんな!! にしても高っけェな!! テッペンが見えねェ!!!」
『……あの山なら、放出しても大丈夫そう、だね…』
思った以上の高さと幅の広さに驚きを隠せないロジャーとおでんだったが、ジョーの言葉にエントツ山へ急ぐ
近そうに見えて結構な距離があったエントツ山に彼等が着いた時にはジョーの症状が悪化していた
「ゲホゲホッ」と咳き込む度に吐血してしまい、ロジャーの肩を彼の血で汚してしまっている
それに申し訳なさそうなするジョーだが「そんな事気にすんじゃねェよ!」とロジャーは言う
辛そうにするジョーをエントツ山の麓で降ろし、ロジャーに支えられながら彼はペタリと山に両手を当てた
そして全ての爆破が自分の前方へ向く様にイメージしながら「
その瞬間、ボガァン!!とけたたましい音を立てながら山に穴を開ける様に爆破が起こる
爆破による爆風がジョーと側に居たロジャーに襲い掛かり、視界を遮られるも連続して続く爆破にそんな事言ってもいられない
暫くの間爆破が続いたかと思えばジョーが「ふぅ…」と息を吐いた事でその爆破が止んだ
それに気付いて少し離れて見ていたおでも彼等に近付き、ジョーが放出した場所を見て二人は絶句した
それは直径1メートル程の穴がポッカリと空き、奥の方にかなり小さく光がポツリと見える
すなわちジョーの放ったエネルギーによってこの幅のある山を貫通させてしまったのである
「穴が貫通しておる!?」
「何処が簡易爆弾だよ…ポセイドンとかプルトン並の破壊兵器じゃねェか…」
『私を人間兵器とでも言いたいのかいロジャー』
「こんなん見せられたら誰だって思うぜ? ってか体はどうなんだ? もう平気か?」
『うん、蠢いてたエネルギーは全部出したから大丈夫だよ』
「オババが言ってた中身がやられるってのも問題はないのか?」
『それも放出してると同時に元に戻してまた放出したから大丈夫』
顔色もすっかり良くなったジョーがニッコリ笑いながら「大丈夫」だと言い、ロジャーとおでんは漸く肩の力が抜ける思いだった
「もう二度とこんな想いは御免だ」と思うと共に、自分達はそんな想いをジョーにさせていたのだと改めて認識させられる出来事だった
この後Dr.くれはの家に戻ろうとしたのだが、何も考えず走って来たロジャーとおでんが場所を覚えている訳もなく…
ジョーが持って来ていたロシナンテのビブルカードを頼りに戻る事となる
その間に診察料として5000万ベリーを請求されている事をジョーに話せば、流石の彼も高額な料金に驚愕した
ジョーは自分のせいでそんな膨大な金額を支払うのはと思うのだが、ロジャーは「まぁ兄貴の命には変えられねェか」と言う
おでんもロジャーの言葉に同意し、その言葉を聞いたジョーは申し訳ないのと同時に擽ったいような嬉しい気持ちになるのだった
*********
行きとは違い歩いて戻った彼等の視界に入ったのは、Dr.くれはの住む家の中を遠くから見ている二足歩行の生き物…チョッパー
ロジャーとおでんは一瞬とは言え見覚えがあるが寝込んでいたジョーは「おや?」と首を傾げながら見ている
おでんはチョッパーを見つけると目を輝かせ「おぉーい!!」と声を上げて駆けて行く
その声に大袈裟な程ビクッと体全体を飛び上がらせて驚き、彼等に振り返り顔を真っ青にして隠れていた木に身を隠す
否…チョッパーは隠れているつもりなのだが体が普通に木からはみ出しており、全く隠れられていない
そんな様子を見たおでんとロジャーは笑い、ジョーも「隠れられてないね?」と苦笑いを溢した
「先程のタヌキではないか!! こんな所で何をしておる?」
「タヌキじゃねェよ!! おれはトナカイだ!!!」
「なぬ?! トナカイだったか!! すまんな!!」
「俺も普通にタヌキかと思ったぜ」
『見えなくもないけどタヌキにあんな立派な角はないんじゃないか?』
「「 あー確かに 」」
「り、立派な角だなんて褒められても嬉しくねェぞコノヤロー!!」
「立派な角」だと褒められて嬉しかったのか締まりのない顔をしながら不思議な踊りを披露するチョッパーをジョーは微笑ましく見ている
ロジャーとおでんは「喜んでんじゃねェか!」と突っ込みながらも「面白ェ!」とケラケラと笑っている
そんな彼らにハッとさせられたのはチョッパーであり、己が普通ではない事を思い出し今度はちゃんと木の裏に体ごと隠れた
「お、お前らおれが怖くないのか?!」
「なぜ怖がる?」
「面白ェ奴は嫌いじゃねェぜ」
『私的には可愛らしく見えるけどね』
「お、おれはトナカイなのに青っ鼻だし喋ってるんだぞ?!」
「鼻が青いのが何だ! 赤っ鼻の奴を知っとるしイヌもネコも喋っておったしなァ?」
「喋れる青っ鼻のトナカイが居たって驚きゃしねェよ」
『亀助さん達も居るしね』
「お前ェ名前はあんのか?」
「……チョッパー…トニートニー・チョッパーだ」
「そうかチョッパー覚えておけ、この世界は…海は広い! お前ェが知らねェような事もたくさんある!!
普通じゃねェ奴なんて五万といんだ!! んな事気にならないくらい胸張れることを見つけてみろよ!!」
「――――っ!!!! お、おれにも見つけられるかな…?!!」
「わははははっそりゃあ俺には分からねェな!! 見つけんのはお前自身だぜチョッパー!!!」
すごく後ろ向きなチョッパーに自分の思っている事をズバリ言ったロジャーは腰に手を当てながら高らかに笑っている
そんな様子を黙って見ていたジョーは、この海を一周したロジャーだからこそ言える言葉だなと感じた
チョッパーは目を潤ませながらも「おれも胸張れること見つけるよ!!」としっかりとした声で言い張った
その姿にロジャーとおでんはニッカリと笑い、ジョーも微笑ましそうにその様子を見ていた
そんなこんなあり、チョッパーは彼等の事は「怖い人間」のカテゴリーから外れ少し心を開いた
色々話をしたい所なのだが彼らは予定外の寄り道をしてしまっている事もあり、会話も程々にロシナンテ達が待つDr.くれはの家へ
待機組はDr.くれはの話し相手になっていたようで、どこか落ち着きがない状態で会話をしていたがロジャー達が戻って来てハッとする
ロジャーとおでんの後からケロッとした様に入って来たジョーを見て皆ホッと息を吐きだした
『みんな迷惑を掛けてすまなかったね』
「そんな迷惑だなんて思ってません!」
「そうです! ただ心配しました…!」
『ルージュさんもトキさんも心配してくれてありがとう』
「ジョーさん、もう体は大丈夫なのか…?」
『問題ないよロシィ』
「そうか…」
「もうこう言うのは今回限りにしてくれよ兄貴!! 心臓に悪ィ!!」
「そうだぞ! あんなに焦ったのは久しぶりだ!」
『うん これからはもっと気を付けるよ』
「そうしてくれ!」
『それでえっと…貴女が診てくれたのですよね、ありがとうございました』
「ヒーッヒッヒッヒッ! アタシは医者さ、病人が居れば診るが診察料はきっちり払ってもらうよ」
『それは勿論、貴女が請求した5000万ベリーきっちり払わせてもらいます』
「話が分かる奴は嫌いじゃないよ」
Dr.くれはが請求した金額全額を支払うと言ってジョーは一先ず船へ取りに戻らねばならない為、ウマヘビを何処へ待機させたのか聞きその場へ向かった
駆け足で向かって早々に必要な物を取り戻って来たジョーは、Dr.くれはに心からの感謝を述べ請求された金額を支払った
その潔さにDr.くれはも上機嫌に笑いつつ「もう用がないなら出て行きな」と彼らをさっさと追い出した
ジョー達が戻って来るのを待っていたロシナンテ達は再度「大丈夫か」など心配の声をかけ彼もそれに笑顔で応える
こうして少々トラブルがありつつも彼らはシャボンディ諸島へと向かう為にウマヘビの待つ岬へと戻るのだった
( あー…今になってドッと疲れが出る気がするぜ )
( 分かるぞロジャー…肝を冷やした分の疲労だろう )
( 本当に悪かったね )
( まぁでも重い病気とかじゃなくて良かったな )
( 病気だったら自分で治せるだろ? )
( ジョーの能力は何でもアリだからなァ )
( そうは言っても意識がなきゃ治すも何も無いだろ… )
( Σはっ!? 言われてみればそうだな?! )
( お主は絶対病気をしてはならんぞ!? )
( 無茶苦茶だねお前達…まぁでも今回の事で私の気持ちが多少は分かっただろう? )
( …おう、こんな気持ちはもう懲り懲りだぜ )
( うむ…そうだな )
( ドクトリーヌ! さっきの人間達はもう行ったのか? )
( とっくに出て行ってるよ )
( そうか…あのさドクトリーヌ、おれ医学をしっかり学んで世界を見てみたいんだ!! )
( 何言ってんだい、アンタに世界を見て回れる訳ないよ! )
( で、でも! おれも胸張れる事見つけて世界を見るんだ! )
( 医学も半端なお前にできる訳ないだろ!! )
( ぎゃああぁ――――――!!!??! )
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