Act 33
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ジョーがサボと邂逅し、色々話をして最終的に己の事を少し明かした後誰かにリークされていないか新聞をくまなく見て確認していた
何日もそれを続けたがジョーの事が新聞に載る事はなく「本当に内密にしてくれてるのか」とサボの好感度が上がったのは必然だ
その後サボの名前に聞き覚えが何故あったのかも思い出したりもして、サボが黙っててくれているのも頷けるものである
エースには「サボはもういない」と言っていた事もありジョーは彼が何らかの原因で亡くなっているものと思っていた
しかし蓋を開けてみればサボは左目に大きな傷痕があったものの元気に過ごしているので、エースはこの事実を知らないのだろうとジョーは認識した
そんな日から更に二年ほどの月日が経った頃、相変わらず騒がしい音をBGMに虎丸を背に新聞を読み込んでいると目に留まる「四皇」という文字
なんでもその内容が新世界で名を轟かせているシャンクスが「四皇」と呼ばれる様になったと言う内容の記事だった
馴染みのある名前に驚き目を丸め「元気にしてるかなぁ」と思いつつ「四皇ってなんだ?」とも思う
一先ず「四皇」については置いておくとして、シャンクスの近況を新聞とは言え知れる事はジョーにとって嬉しい事だ
彼にとってシャンクスもまた己の内側に入れた人間であるのだから
「兄貴なに一人で笑ってんだ?」
『んー? シャンクスくん元気かなぁって思ってね』
「シャンクス? 何でまたいきなりんな事思ったんだ?」
『ちょうど新聞に彼の事が載っててね、それで思ったんだよ』
「マジでか! 俺にも見せてくれ!!」
『ほらここ』
「ほうほう…アイツも元気にやってるみてェだな!!!」
シャンクスの記事を読んで彼の活躍を嬉しそうに「わははははっ!」と笑うロジャーの声に気付いたおでんとロシナンテは「何だ何だ?」と彼等の方を向く
二人が彼らの側に寄り新聞を覗き込んでロジャーが笑った訳を知ったおでんは共に笑い、ロシナンテは驚愕に目を丸めた
ロジャーとおでんはさて置きロシナンテは記事の内容をしっかり理解しているのを感じ取ったジョーは年長者ゆえ「四皇」の事を聞きづらい
それでも自分だけ知らないと言うのは何だが癪だったジョーは恥を承知で「四皇ってなんだ?」と三人に問いかけた
そんな質問をされ笑っていた二人はピタリと笑い声が止まり、ロシナンテは「マジで言ってるのか」と言いたげな表情でジョーを見た
「……俺たちの時代に四皇っつーのはなかったから俺もよく分からねェ」
「右に同じく!」
「Σえっそ、そうだったのか…て事は大海賊時代が始まってから出来たのか…?」
『ロシィは四皇の事を知っているようだね?』
「そりゃあまぁ…四皇ってのは新世界に皇帝の様に君臨する四つの大海賊の総称だ」
『四つという事はシャンクスくん以外にあと三人いるって事か』
「あとは白ひげ、カイドウ、ビッグマムの三人だ」
「おっ! やっぱりニューゲートは入ってるか!!」
「流石は白吉っちゃん!! だがまさかカイドウもその四皇に入っているとは…」
『本当にね…私も同じ気持ちだよおでんくん』
「なァに四皇だろうが何だろうがワノ国に手を出したあ奴を野放しにする気はない!!!」
『勿論だよ、その時は私達も力を貸すからね』
「当然だな!」
「おうとも!! 二人がいれば負ける気はせん!!!」
「……アンタ達あのカイドウと何か因縁があるのか…?」
おでんがワノ国出身なのは見た目からしても分かる事だが、何故そこからこの場にいるのかロシナンテが話を聞いた訳ではない
ただ処刑された筈のロジャーがいて、死んだ筈の己もこうして生きている事を考えると同じ様な事がおでんの身にもあった事は察せる
察せるだけで何があったのかなど分かりようもないのだが、今話を聞いている限りカイドウと何か因縁があるらしい事を知る
そんなロシナンテの疑問に三人はきょとんとした表情を見せ「そう言えばロシィは知らなかったな」とおでんが言う
そしておでんから語られたワノ国の惨状とカイドウともう一人の男との因縁の話はロシナンテに衝撃を与えた
鎖国国家でワノ国の内情など海軍でさえ知りようがないのだが、まさかそんな事が起こっていようとは思いもしない
そしてジョーの武勇伝…あのカイドウに一太刀浴びせたと言う事実にロシナンテは愕然とした表情でジョーを見た
その視線に気付いた彼はただ肩を竦めるだけで否定も肯定もせず、その話が事実なのだとロシナンテはとんでもない所に身を置いてるのを再確認する羽目になった
彼等の間に少し沈黙が続いた中、胡座をかいて座っていたロジャーがパシリと自分の膝を叩き「会いに行こうぜ!」と言う
「誰に」と言う主語がなかったが話の流れ的に間違いなくシャンクスに会いに行こうと言っているロジャーにジョーは頭を抱えた
そんな事を言い出せばおでんも賛同するに決まっており「よいなァ!」と爛々とした目をしている
『一応聞いてあげる…誰に会いに行こうって……?』
「んなのシャンクスに決まってんだろ!」
「赤太郎に会うのは何年振りだァ?!」
「もう会いに行く前提なのか…」
『馬鹿を言うんじゃない…シャンクスくんは新世界にいるんだよ? エースに会いに行った時とは訳が違う』
「ウマヘビで行きゃあ直ぐだろ!!」
「確かに海王類なだけあって進むスピードは間違いなく速いな!」
「今の話の流れだと全員で行く気か…?」
「当然だろ? ロシィは行きたくねェのかよ」
「行くも行かないも俺赤髪に会った事ねェんだが…」
「そういやァ赤太郎がここに来た時ロシィは会っておらんかったなァ」
『確かにそうだったね…ってシャンクスくんに会いに行くのは無理だからね?』
「何でだよ行こうぜ!!」
「そうだぞジョー!! 赤太郎に会いに行った後白吉っちゃんの所にも行こう!!」
「おっいいなそれ!! ニューゲートのやつ驚くぜ!!」
「赤髪だけじゃなくて白ひげにも会いに行こうって言うのか…ヤベェなこの人ら…」
『私もそう思うよロシィ…はぁー…頭が痛い…』
「相変わらず苦労してんなジョーさん……」
シャンクスの元へ行くと言い張るロジャーとおでんにジョーは本気で頭を悩ませ眉間にシワを寄せながら米神を押さえている
そんな姿を見たロシナンテは同情せずにはいられずジョーの肩をポンと叩く事しか出来ない
その優しさが身に染みる思いであるが一先ずは行く気満々の二人を何とか宥めなければ、本気で新世界まで行かざる得なくなってしまうだろう
それだけは何としても阻止したいジョーは新世界に行くとなると女性陣の身に危険が及ぶリスクが格段に高くなる事などを懇々と説く
しかし確かにリスクは高いかも知れなが、自分たちと共にいれば何も問題はないと逆に言い返されジョーは「確かに」と看破された
まさかジョーが話し合いの中で看破されるとは思っていなかったロシナンテは驚くものの、ロジャー達の言い分は尤もな為部が悪いと思った
「今行かねェとこの先絶対行けないだろうしよ! 祝いも兼ねてシャンクスのとこに行くぞ!!」
「そうだ! こちらに来てもらうばかりでは申し訳が立たぬであろう?!」
『ぐっ…痛い所をついてくるねおでんくん…でもやっぱり新世界へ行くのは私は反対だよ』
「ルージュ達が心配なのは分かるけどよ、ずっとここに閉じ籠ってばかりなのも体に毒だぜ?」
「だな、以前出かけてから暫く経つしまた皆で行こうではないか!!」
( 今回はジョーさんが押し切られそうだな… )
「俺たちだけじゃ不安だってんならコーティングでシャボンディ諸島に寄るんだしレイリーも連れて行こうぜ!」
「おぉそれは妙案ではないか!! レイリーも居れば怖いものはないな!!」
『はぁ〜〜〜〜…分かったよ…レイリーくんも同行してくれるなら新世界に行こうか』
「いよっしゃあ!! さっすが兄貴!! 話が分かるぜ!!」
「なら急いで準備せないかんなァ!!」
「冥王も一緒に行くとか…マジでか…」
『ごめんよロシィ…あぁなったあの子達を私が止めるのはもう不可能だ…』
「いやでも普段は止められてるだろ…?」
『普段は言ってみたってだけだからね…本気も本気の時の二人をどう止めろと…?』
……………………
………………………………
「諦めるしかないな…」
『だろう…? あぁ〜何事もなく行って帰ってこられればいいけど…』
話が決まればロジャーとおでんは新世界へ行く事を嫁さん達に伝えに行ってしまい、その場に残るのはジョーとロシナンテのみ
何を言っても今回は押し切られるのを途中で悟ってしまっていたジョーはシャンクスに会うのは良いが面倒事がありそうで心底憂鬱である
ロシナンテも航海中に何かありそうだなとは思うものの、ジョーほど厭なの気持ちはないが会いに行く相手だけが気掛かりだ
なんて言ったって会いに行こうとしているのは四皇になる前から名を馳せていた赤髪のシャンクスと、もしかしたらその流れで白ひげの所にも行くかも知れない
更にはシャボンディ諸島にいるらしい元ロジャー海賊団の副船長を務めた「冥王シルバーズ・レイリー」が同行するかも知れない事実
一度ここに遊びに来た時に会ってはいるが、進んで会話をしたわけではないロシナンテは少々…否、大分胃がキリキリする思いである
そんなこんなで新世界へ行くことは確定してしまい、ジョーとロシナンテも出かける準備をする為にそれぞれのハウスツリーへ戻るのだった
********
早急に準備を済ませたロジャー夫婦とおでん夫婦に急かされてジョーとロシナンテも荷物を持って合流した
以前ウマヘビに括り付けていた船は今は外されており、今からまた括り直すのかと思うとジョーは内心「面倒だな…」と思う
だが男達だけで行くのなら直で乗っても何の問題もないが、やはり女性も居るとなると直乗りはよろしく無い
仕方なくまた括り直すかと男達四人で労働をしようとした時、ウマヘビの近くに亀郎が水飛沫を上げながら姿を見せた
『あれ? 亀郎さん突然どうしたんだい?』
〈 此度お主らが新世界へ赴くと言う話を族長から聞いてな、我が連れて行ってやろう 〉
『えっ!』
「マジでか! 亀郎も亀ジィと似たり寄ったりだし快適な航路を進めるな!!」
「トキ達にも良いな!!」
「ウマヘビに乗ったら落ちる可能性もあるし」
『「「それはロシィだけだ」」』
「えっ……」
『でも亀郎さんはココを離れてもいいのかい? 折角一族でのんびり出来ているのに』
〈 新世界に居座る訳ではないのだろう? ならば問題はない 〉
『そうか…それなら今回は亀郎さんにお願いしようか、亀郎さんはコーティングは…?』
「流石に必要じゃねェのか?」
「亀助は必要ないと言うとったがなァ」
「えっ亀助ジィさん自分でコーティング出来るのか…?!」
『そうなんだよ、私も初めて知った時は驚いたよね』
〈 うむ…我が父亀助は特別故な…済まぬが我は魚人島まで潜れる強度の
心底申し訳なさそうにする亀郎に「とんでもない!」と言うジョーだが、ロジャーとおでんは「出来ねェのか」と何となしに言う
そんな言葉を聞いたジョーが黙っておらず、無言で二人の頭をガツンッ!と殴りデリカシーのない二人を黙らせた
大きなタンコブを携えたロジャーとおではん「ごめんなさい」と亀郎に謝るのだが「う、うむ」と逆に亀郎が萎縮する羽目に
そんな流れを見ていたロシナンテは「先が思いやられる」と思いながらも口を挟めば余計ややこしくなるのは分かる為、ただただ見ているだけだ
そんなこんな亀郎に乗って行くような形で話が進めば話の内容を理解しているかの様にウマヘビが不満そうに「ブルル」と唇を揺らす
ウマヘビ的には出かける時は何時も自分に乗って行くのに亀郎に乗ろうとしている事に納得いかない様子である
ジョーやロシナンテ、女性陣はウマヘビが思っている事など分かりもしないがロジャーとおでんは「不貞腐れてる」と言う
そんな馬鹿なと思うジョーであるが、海王類なのに表情豊かなウマヘビからは確かに不貞腐れた様な感じを受けた
『いつもウマヘビに頼り切っているから今回はココで休んで貰いたいけど…不満そうだね?』
「ブルヒヒン!!」
『うぅーん…何を言っているか分からないけど自分が行くと言い張ってる様な気がする…』
「間違っちゃいないぜ兄貴、ウマヘビは少しでも兄貴と離れたくねェようだな!」
「海王類に惚れられるジョーもスゲェなァ!!!」
「惚れるなんて感情が海王類にあるのか…?」
『同感だよロシィ』
「海王類だって生き物だしな、そう言う感情もあんだろ!」
『そう言われるとそうかも…? けどもしそうだとしても惚れられる様な事した覚えはないよ』
ジョーの疑問も尤もなのだが、その疑問に答えられる人物は残念ながらこの場にいない
ロジャーはウマヘビが何故か懐いた経緯を随分昔に聞いたが流石にそんな昔に聞いた事を覚えている筈もない
当時のウマヘビは生まれたばかりの逸れ海王類であり、迷い込んだ海流で出会ったのがジョーである
空腹と心細さ、見知らぬモノに対する恐怖から襲い掛かったのだが敢え無く返り討ちにあう羽目になった
その時に彼の強さと見逃してくれる器の大きさに惚れ込み、今やジョーの事を父親だと思い込んでる節があるのだ
そんなウマヘビのみぞ知る事実をジョー達が知る由もなく「なんだかな?」と言う様に皆首を傾げている
ともあれ亀郎に運んで貰うとなるとウマヘビがどうなるか分からない事もあり、結局いつも通りウマヘビに乗って行く事になるのだった
ウマヘビに乗るにあたって船を括り付けてから甲殻一族の面々に見送られながら彼等は新世界を目指し海へ出た
海へ出ればグランドラインを長きに渡り航海する海賊、最近入ったばかりの海賊、時々海軍などなど
様々な船を見かける中、彼等の乗る船に襲い掛かる海賊が後を絶たず何隻もの海賊船が海の藻屑となり散っていった
流石にジョリーロジャーを掲げていない船に海軍が近寄る事はなく、そこだけはジョー的にはホッとする部分である
なんて言ったってコチラには処刑された筈のロジャーと元白ひげ海賊団の二番隊隊長に元海兵と見つかれば捕縛待ったなしの面子なのだから
もちろんその中にジョーも入るのだが、彼は己のことは棚に上げてロジャー達の安否ばかりを心配しているのだ
正直なところ海軍からすれば何処かに潜み暮らしているジョーを血眼になって探しているのだが、そんな事を彼が知る由もない
今回の航海は新世界へ向かっている事もあるからかいつも以上に海賊船と出会し襲撃を受ける回数が多い
久しぶりの身内以外での戦闘にロジャーもおでんもイキイキしてぶっ飛ばして行っていて、ロシナンテも銃は使わず素手で倒している
ジョーも時たま戦闘に参加するものの殆どはロジャー達でどうとでもなる為眺めている事が多く、手を出す時は手っ取り早く能力を使っていた
そんなある日の海賊からの襲撃時のことである
いつも通りロジャーとおでんを先頭にロシナンテも加わり戦闘中、三人の包囲から上手く抜け出した数人がジョーの方へ武器を向けた
それをただ一瞥したジョーに彼が非戦闘員だと思った海賊達は下卑た笑みを浮かべながらジョーに切り掛かった
彼は足を軽く上げてタンッと振り下ろし能力を発動すれば、武器を振り上げていた海賊達はグルンと白目を剥いて倒れた
その姿を戦いながら見ていたロジャー達は「もうマジで何でもありだな」と思いながら最後の一人をぶっ飛ばし戦闘は終了した
そんな中ジョーは若干違和感を感じた己の胸に手を当て首を傾げるも、今はその違和感もなくなっている事から気のせいかと頭の隅へ追いやる
『ここ最近で随分と懐が潤ってきたね』
「だな! ルーキーとは言え結構持ってる奴が多いぜ!」
「これだけあれば暫くは贅沢できるな!!」
「そこは節約しようって考えはないのか…」
「何を言うかロシィ! 金は使ってナンボであろう?!」
『流石にそれは時と場合によると思うよ』
「まぁでもウメェ飯と酒は買いてェよなァ」
「ロジャーは節約するタイプではなかろう?!」
「俺の印象どんなだよ!」
「見たまんまだと思う」
『ロシィに同意』
「Σ見たまんまって何だよ!!! 兄貴は前からとして最近ロシィも俺に厳しくねェか?!」
「そんな事はねェよ、たぶん」
「たぶんって言ってる時点でそうだろ!!!」
『それはロジャーの日頃の行いのせいだと思うよ』
ジョーとロシナンテに散々な言われようのロジャーは「ガーン!」とショックを受けたような顔をするも財宝を集める手は止まらない
皆で手分けして色々かき集めてみれば財宝は勿論の事、しばらくは困らないだけの食料も酒も結構な量を入手出来た
それらを持ってルージュとトキの待つウマヘビへと戻り、食材と酒は彼女達に任せ財宝は余っている一部屋に取り敢えず押し込んだ
一仕事終えればそれぞれ自由時間となり、ロジャーとおでんはまだ動き足りないのか船の外へ出て広いウマヘビの頭の上を走り回る
ロシナンテは適当に持ってきた本をソファにどっかりと座って読み出し、ジョーも新聞を片手にロシナンテの隣に座った
否、座ろうとした瞬間ズキリと胸が痛み、そのまま競り上がって来るものを「ゴホッ」と手に吐き出せば彼の手は真っ赤な血で染まる
珍しくジョーが咳き込んだ事に「大丈夫か?」と思ったロシナンテが彼を見て、驚愕に目を丸め「ジョーさん?!」と声を荒げた
ロシナンテの大きい声に食材の整理をしていた女性陣も彼らの方を振り向いた時、ジョーの体はグラリと傾き床へと倒れた
まさかの事態に誰もが動揺したが、いち早く判断をしたのはロシナンテでジョーの状態を見ながら彼女達にロジャーとおでんを呼ぶよう頼む
ハッとして直ぐに外に出てロジャーとおでんを呼び、船内に戻ってきた二人はジョーが倒れている事に目を丸め側へ駆け寄った
「兄貴?! 一体どうしたってんだ!?」
「分からねェ…突然咳き込んだかと思えば吐血してそのまま気を失っちまった…!!」
「なんと言うことだ…!! ジョーしっかりせい!!」
「ど、どうすりゃあいい?!! 何かの病気か?! このままじゃ兄貴死んじまうのか!!?」
「素人の俺たちじゃどうにも出来ねェし取り敢えず医者に診せるのが一番だ」
「い、医者か! どこの医者に診せる?! クロッカスか?!!」
「早い方がいいだろうからここから一番近い島で見てもらった方がいいと思うが…」
「地図…!! 地図はどこやったっけか?!」
「あなた、地図です…!」
「すまねェルージュ!!」
「ここから近い島……ここではないか?! ドラム王国!!」
「ドラム王国か!! 確かあそこには名医が多かったはずだ!!」
ドタバタと全員が焦りを見せながらもこれから行く先を新世界からドラム王国へと一時変更し、倒れてしまったジョーはベッドに寝かされた
ロジャーは初めてみるジョーの寝込む姿に一番動揺しているものの、数々の不祥事に見舞われた事もありやるべき事は分かっていた
男達で病人を見るよりは女性に任せた方がいいだろうとジョーの事はルージュとトキに任せる
ロジャー達はジョーの容体が今以上に悪化しない事を祈りつつ、早くドラム王国へ着くことを優先させるのだった
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ジョーが倒れて意識不明のまま三日ほど経った頃、ようやく目的地であるドラム王国へと辿り着いた
この国は雪が降り積もる冬島であり、防寒具をしっかりと着込んだロジャー達は早速医者に診てもらおうと上陸した
グッタリとしたままのジョーをロジャーがしっかりと背負い、万が一落としてしまわないように紐でも固定している
暫く歩けば町が見えてきて身軽なおでんとロシナンテがそれぞれ医者はいないか尋ねて回るも町民は一様に首を横に振る
よくよく話を聞けばこの国の王が抱える「イッシー20」以外の医者は全員国外追放されてしまったらしい
まさかの事態に全員焦りを覚えるものの、一人の町民が「Dr.くれは」と言う医者だけこの国を出ず残っていると言う
何処にいるのか尋ねるが、この町にはおらず山奥の方に住んでいて町に降りて来ることは殆どないと言う事だった
「ここにいねェなら俺たちがそっちに行くしかねェな」
「おうとも! 早くジョーを医者に診せねばならん!!」
「俺たちはいいがルージュさん達はどうするんだ…?」
「もちろん私達も着いて行きます」
「足手纏いなのは分かっていますがジョー様が心配なのは私達も同じですから」
「よく言ったトキ!! それにお前達を足手纏いだなんて思ったことなどないぞ!!」
「おでんさんの言う通りだぜ、もしもの時は俺たちでアンタ達を守るしよ」
「ヒュー! ロシィかっこいー!!」
「男前だなァー!!」
「茶化すんじゃねェよ!!」
ロシナンテの言葉にロジャーとおでんが茶化せばロシナンテは頬を染め噛み付くも残念ながら迫力も何もない
ルージュとトキはそんな彼等を見て「くすくす」と笑い少々肩に力が入っていてのがフッと抜けた
そんなこんなでジョーを診てもらう為におでんを先頭にロジャー、女性陣と続き殿はロシナンテが務める
結構な積雪がありザクザクと歩くものの普通の道とは違い皆の体力を徐々に奪っていく中、途中で大きな影…ラパーンの群れが彼等の行手を阻む
しかし相手が悪くおでんとロシナンテによってボコボコにされラパーンは涙ながらに地に沈んだ
その後もロシナンテが雪に足を取られて転ける事を何度かしたものの彼等の眼前に見えて来た大木
漸く目的地に着いたのだと急く気持ちがあるも、走ればジョーに負担が掛かると慎重に向かった
扉の前まで来てドンドンッと叩くもうんともすんとも言わず、中に誰か居るのは分かっている面々は尚も扉を叩き続けた
「中にいるんだろ?! 助けてくれ! 病人がいるんだ!!」
「頼むジョーを助けてくれ!!」
ロジャーとおでんが必死に中にいる人に声をかけ続ければ、カツカツカツとヒールを叩く音が聞こえ「うるさいよ!」と言いながら妙齢の女性が扉を開いた
その人…「Dr.くれは」はチグハグな面子を見て怪訝な顔をするものの、ロジャーの背にグッタリと背負われているジョーに目を向ける
ピクリとも動かないその様子に「死人を見る気はないよ」と本気なのか冗談なのか分からない事を酒瓶片手に言い放つ
その言葉に「死んでねェよ!!!」と噛み付くロジャーとおでんに、ロシナンテ達もムッとした表情を見せる
そんな彼等を見たDr.くれはは溜息を一つ溢しながら「あそこのベッドに寝かせな」と言い彼等を室内へ招き入れた
言われた通りロジャーはジョーをそっとベッドへと寝かせ、邪魔にならない様にDr.くれはにその場を譲り様子を見る
彼女はベッドサイドに腰掛けながらジョーを診て、確かに浅く弱い呼吸をしている事から死んでいないのは分かった
触診やら聴診やら色々診ていくもののこれと言って悪い所がある様子はなく、ただ「眠っている」としか言いようがない状態であった
ただやけに心音が小さい事が気になるが、命に別状がある程のものではなかった
「兄貴の様子はどうなんだ?!」
「心配しないでもただ眠っているだけさね」
「眠ってるだけ…? 倒れる前吐血してたが…」
「そう言う事は最初に言わないかい!!」
「ぐはっ!!」
「ロシィー?!!」
「何をするかオババ!!!」
「誰がオババだい!!! 口には気をつきな!!!」
「べぶらっ!!」
「おでーん!!!」
「小僧どもアタシの事はドクトリーヌと呼びな!!」
ジョーの容体が気になるロジャー達は口々に聞くのだが、まさか「眠っているだけ」と言われるとは思ってもいなかった
実際すぐ隣で吐血して倒れたのを見ていたロシナンテがその事を伝えれば先に言わない事に対してDr.くれはの強烈な蹴りを受ける羽目に
その後のおでんの言葉に激昂し更に強烈な蹴りがおでんを襲い、扉を吹き飛ばしながら外へと飛んで行ってしまった
それを隅の方で見ていたルージュとトキはロシナンテには同情するも、女性に対して失礼な事を言ったおでんには些か冷たい目を向けている
無論、吹き飛ばされた彼がその目を見ることは無かったが、唯一無事であるロジャーは「あんな目で見られたら立ち直れない」と思った
Dr.くれはは二人を蹴っ飛ばした事で少々鬱憤が晴れたのか「吐血した」と聞いてもう一度ジョーの診察をする
やはりどんなに診ても彼女の診断に間違いはなく、何処かに病魔があるとかそういった症状は一切見られなかった
「あのドクトリーヌさん、ジョーさんは本当に何ともないのですか?」
「ヒッヒッなんだいアンタこの小僧のコレかい?」
「えっ」
「ルージュは俺の妻だぞ!!」
「そんな事はどうでもいいさね、この小僧は心音が弱いが特に問題はない」
「どうでも良くはねェが…兄貴は何ともないのか…なら何でこんな…」
「病気以外のことをアタシに聞かれても知らないよ、暫くは安静にさせておくんだね」
「診察ありがとうございます、ドクトリーヌ様」
「小僧どもはなっちゃいないが小娘たちは礼儀がなっているね」
「うぬぅ…酷い目にあった…」
「死んだ両親を見た気がする…」
「さて、診察料だけどね5000万ベリーだよ」
「Σ高っ!!? それぼったくってねェか?!」
吹き飛ばされたおでんが戻り、撃沈していたロシナンテもヨロヨロとしながら立ち上がった所で診察料の要求
診察料にしては膨大な金額にロジャーを始め、全員が目を丸めて驚くがDr.くれははその金額を訂正する気はないようである
そんな中外では薬草を取りに行っていたDr.くれはの弟子…トニートニー・チョッパーが戻って来ていた
しかし中から知らないニオイがたくさんする事と扉が破壊されている事で人を恐れる彼は中に入れずウロウロと行ったり来たりしていた
そんな気配にロジャー、おでん、ロシナンテは気付いているが敵意は無いことから一先ずはジョーの事を優先させている
チョッパーはどんな人間がこんな所まで来たのか気になりそっと中を見れば、大男が三人と女性が二人
その人数の多さに「ヒッ!」と小さい声を上げてしまい、その声を男性陣は聞き逃さずパッと後ろを振り返った
彼等の視界に入ったのは立派なツノを携える二足歩行の何か…タヌキのような動物に目を丸める
特におでんはミンク族と関係が深く、動物が二足歩行 = ミンク族と思っている節があり目を輝かせている
チョッパー的には全員の目が己に向いた事に顔を真っ青にして「うわぁぁあぁぁ!!」と言って逃げて行ってしまった
「なんだァあのタヌキ、逃げちまったな?」
「ミンク族か?! まさかこの様な場所にもいようとは!!」
「いや流石に違うんじゃ…」
「アレはアタシの弟子のチョッパーさね」
「アンタの弟子って事は医療を学んでんのか?! タヌキが?!」
「ヒッヒッヒッ! 医療を学ぶのに人も動物も関係ない、学ぶだけの器量があればね」
彼女の言葉に全員「確かに」と思いながらチョッパーが居た場所を見ていると、ベッドに寝ているジョーがもぞりと動く
ピクリとも動かなかった彼が動いた事にロジャー達は目を丸め一様にジョーに呼びかけ、ゆっくりと瞼を押し上げた
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