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ロジャーとルージュの希望でエースに会いに東の海へ行き、ロシナンテの希望でローに会いに北の海へ行ってから二年の月日が経った。
その間にも色々なことが世界中で起こっており中でもローが名を挙げて手配書を発行された時にジョーがロシナンテに見せた。そうすればロシナンテは目に見えてテンションを上げ上機嫌となり、そんなロシナンテにロジャーとおでんが聞きに行けば気にしてた青年の手配書。
それを見た二人も一緒にテンションを上げて最終的に何故か宴を開くことなったりと、タートル島に暮らす彼らは至って平穏に暮らしていた。ただ平穏過ぎるのも玉に瑕でありロジャーとおでんが「暇だ」と言いながら大暴れした事もあったのだがそれはまたの機会に。
ジョーは相変わらず虎丸を背に読書をするか新聞を読んでいることが多いのだが今回は新聞を隅々まで確認しているようだ。
新聞に載っていたのは「マリージョア」にて「
別の記事に目を通していると少し遠いところから「あ゛――――――っ?!」と言うけたたましい雄叫びのような声が響いてくる。その声量に木に留まっていた鳥達はバサバサと飛び去り、寝ていた虎丸も思わず飛び起き、新聞を読んでいたジョーも目を丸め声のした方へ目を向けた。
まぁ目を向けた所で距離があるため何を思って叫んだのかなどジョーに分かるはずもないのだが。
声を上げた本人のロジャーは今夜の酒のつまみとして楽しみに取っておいた肉の燻製がなくなっている事に声をあげたのである。「犯人は誰だ?!」と言うような表情をしているのだが今回犯行に及んだのは腹を大きくした母狐のようだった。
流石に栄養が必要な妊婦(狐)に対して怒る事も出来ないロジャーはガックリと肩を落とす他なかった。肩を落としたまま中央部にいる虎丸とジョーのいる場所までトボトボと歩いて来て、どっかりと座って項垂れた。
「あ〜俺の酒のつまみがァ〜…」
『つまみ位他にもあるだろう?』
「あの肉の燻製を楽しみにしてたんだ!」
『まぁ燻製を作るのにそれなりの時間を掛けるから分からなくはないけれど…』
「貴重な肉だったのに…だが仕方ねェよな。あのキツネも元気なガキを産む為にはよ」
『あぁ、あの子に食べられたのか。なら仕方ないね。今回はあの子に譲ってあげたって事にしなよ』
「譲も何も知らねェうちに食われてたけどな」
相当楽しみにして居たのかいい歳をしたオッサンが口を尖らせ不貞腐れても「可愛くないな」とジョーは内心思う。とは言えここに住むにあたって楽しみがあるのは貴重で奪われたままでは流石に気の毒にも思うのである。
故にジョーは「そろそろ肉を補充しないとダメか」と考えたら行動に移すのも早く重い腰を持ち上げ立ち上がった。まだ新聞を読み終えていないジョーの行動に目を丸め意外そうに見るロジャーは首を傾げている。
それを受けたジョーだが買い物に行くと説明すると色々面倒になるだろうと何も言わずに手を軽く振ってその場を後にした。
そんなジョーに対して怪訝な顔をするロジャーであったが熊公(おでん命名)と戯れるおでんがロジャーを呼んだ事で意識が其方に逸れた。ロジャーはおでんの方へ嬉々として合流し熊公は化け物二人が揃ってしまった事に涙を浮かべながらも応戦した。
それを見届けたジョーは簡単に出かける準備を整えウマヘビの居るであろう海の方へ向かいウマヘビに乗って人知れずタートル島を出るのだった。
*
**
***
ジョーがウマヘビに乗って出て行った事にロジャー達が気付いたのはジョーが出てから大体二時間後で彼の持つ電伝虫が鳴っている。所謂鬼電と言うものなのだがジョーは誰からかかって来ているかなど見ずとも分かっている為総じて無視を決め込み電伝虫をカバンの奥の方へ押し込んだ。
それでも若干聞こえるのは仕方ないとしてジョーは肉を始めとした食料飲料を買うためにタートル島から少し離れた秋島へ。
いつも通り人目のない所にウマヘビを待たせ彼は町の方へと足を向け必要な物を手当たり次第買い漁っていく。町民達は男一人が買うには多過ぎるその量に少々引いてはいるのだがジョーは全く気にせず物色した。
一通り必要であろう物を買い終わったジョーは早々にタートル島へと帰ろうかと思ったが今帰ったら間違いなくロジャー達に何か言われると考え直す。故にジョーはロジャー達の
昼間は過ぎている時間帯なのだが思った以上に人がおりテーブル席は満席で今空いているのはカウンター席のみ。一人という事もあって元よりテーブル席に座る気はなかったジョーであったが思った以上の賑わいに期待が高まる。
既にカウンター席で大量の皿に埋もれる様に座っているシルクハットを被った青年から数席空けて腰掛けジョーは一息吐いた。
『マスターこの店のオススメを頼めるかな』
「 ! 兄ちゃんも旅人か…?」
『そうだけれど「私も」とは?』
「そっちの兄ちゃんもこの島には偶々寄った旅人らしくてな」
『あーなるほど…それにしても凄い量だね…』
「ここまで食べる奴にはオレも初めて会ったが食いっぷりが爽快で有難いんだが…あまり長居は勧めないぞ」
『私もここまでの子を見るのは初めてだね。あと食事するまでは帰らないよ』
この店のマスターとジョーで青年の話をしているのだが青年は食べる事に夢中で全く気にしていない様子だ。その食べっぷりは店主の言った通り爽快であるのだがジョー的には「あの細身の何処に入るのか」と言う思いである。
ロジャーやおでんも人並み以上に食べる大食漢であるがそれに比べられない程食べ、皿があり得ない高さまで積み重なっている。
そもそも店主の何処となくこちらを気遣うような態度にジョーは少々思う所があるものの気にしない事に。そんな事を考えながら頼んだ食事を待っている間に視界に入る積み重なった皿が崩れてこない事をジョーは願った。
テーブル席の方では酔っ払いが多くいるのか時たま怒号や何かをぶつける音などが響くが何時もの事なのか店主も大して気にしていない。ただジョーは家族団欒でワイワイ食べるのは好きだが他人が騒ぐ声を聞きながら食事するのは余り好まない
「静かに食事も出来ないのか…」と思いながらチラリと後ろを見れば柄の悪そうな男達が酒瓶やジョッキを片手にゲラゲラ笑っている。それを見て海賊がいることに気付いたジョーは海賊のせいで店主の様子が少しおかしかったのかと納得した。
そんな事を考えている間にコトリとホカホカと湯気が上る料理が出されジョーは一時考えるのを止め食事にありつく事にした。
ゴロゴロとした肉をふんだんに使って作られたあんかけ炒飯は絶妙な味加減で一口食べたジョーの口元に自然と笑みが溢れた。
『マスターのお勧めなだけあってとても美味しいね』
「おっ嬉しい事言ってくれるな」
『素人目にも拘って作られてるのがよく分かるよ。折角だし他にも何か頼もうかな』
「そう言ってもらえると料理人冥利に尽きるってもんだぜ…よし! とっておきを作るからちょっと待ってくれ!」
『ふふ、それは楽しみだね』
「おい店主!! 追加のメシと酒持って来い!!」
「 ! 注文が先だった兄さんのを作ってから準備しやすよ」
「あぁ? んな野郎より俺たちを優先しろ!!」
そう言った海賊が手に持っていた酒瓶をジョーの方へ投げ、それは見事に彼の背中にガシャンッ!と当たって割れた。しかもまだ中身が入っていた様でジョーの背中は濡れてしまい、それを見ていた海賊達はゲラゲラと笑い彼を馬鹿にする。
その様を見た店主は顔を真っ青にして「大丈夫か?!」と心配するもジョーは「問題ないよ」と片手を挙げながら示した。しかもジョーは濡れた背中を気にする素振りもなく食事を再開させ店主は驚き信じられないモノを見るような表情だ。
その騒ぎに流石に何か思うところがあったのか何も言いはしないがチラリと様子を伺う隣の青年の目線にジョーも気づき「すまないね」と言う様なジェスチャーをした。その仕草に青年はきょとんとした表情を見せてから「気にしてない」と言う様に肩を竦め自分の食事に再び集中した。
そんな彼らの様子に面白くないのが酒瓶を投げた海賊であり何を思ったのかガタリと席を立ちジョーの座るカウンターへ近づく。
「おいおい俺達をシカトして呑気にメシ食うとか舐めてんのか? あ?」
『料理は温かいうちに食べるのがベストだからね』
「はぁ? んなこたどうでもいいんだよ!俺達を…俺をシカトしてる事があり得なねェんだよ!」
『君達の相手をして私になんの得がある? 有益であれば私だって無碍にはしないさ』
「………どうやらテメェはこの俺を怒らせてェらしい…メシには酒は付き物だ、沢山飲ませてやるよ」
『……………………』
ジョーに絡む海賊は手に持っていた酒瓶の中身を彼の頭からドバドバと容赦無く引っ掛ける。ジョーは特に何の抵抗もせず酒に濡れるも食べていた料理だけは酒に濡れない様にサッと自身の前から横にずらし回避した。
無論その行動に海賊も黙ってはおらずジョーが避けた皿を掴み床に叩きつけ料理は無惨な姿に変わる。
やられっぱなしの姿を見た男も後ろで見ていた海賊達も「ギャハハハッ!」とゲラゲラ笑っている。店主は相変わらず顔を青くして見てる事しか出来ず食事に集中していた青年は今度は顔ごとジョーの方を見て怪訝な顔をした。
酒をかけられても何も言わないジョーに海賊達はヒートアップしていき汚い言葉を吐きながら空になった瓶を振り上げた。その行動に店主も青年も目を丸め青年は流石に見過ごせないと思ったのか咄嗟に動こうとしたもののその前にジョー自ら動いた。
振り上げていた瓶を掴めば男は驚いた顔をしたが、そんなものジョーの視界には入っておらず瓶を奪ってカウンターへ置いた。
『全く子供じゃあるまいに、こう言ったものを振り回すんじゃないよ』
「な、んだとテメェ!!! この俺を誰だと思ってやがる!!! この近海を治めるカイラー様だぞ!!?!!」
『え、誰?』
「ブッハ!!!」
「〜〜〜〜〜っのヤロウ!!!! ぶっ殺してやる!!!」
『君あまり物騒な物言いをするもんじゃないよ?』
「死ねェ――――――っ!!!!」
ジョーに恥をかかされた男は顔を真っ赤にして怒り腰に下げていたサーベルを抜くとジョーに向かって振り翳した。
それをカウンター越しに見ていた店主は「ヒィッ!!」と言いながらしゃがんで身を隠し、それを見たジョーは男の腕を掴んで止める。その後「酒を飲みすぎてイラつくなら飲めないようにしてあげよう」と言いながら男の腹部に手を添え「
見た目は全く変わっておらず男自身も何をされたか全く理解できていないのだがジョーが無意味な事をしたと思った。そのため腕を止められながらゲラゲラと笑った――その瞬間、顔を真っ青にしてその場に膝をつくように頽れた。
突然の男の変化に後ろで見ていた海賊達はもちろん、それを見ていた青年もまた驚いたように目を丸めている。
ジョーに絡んでいた男は一気に脂汗をかき始め肌が黄疸色へと徐々に変化していく。その様を近くで見ていた青年は驚きながらも「能力者か…?」と思うも、もしそうだとしても何の能力かさっぱりである。
「ぐおぉ……っおれ、に…なに、し…やがったァ……!!!」
『言ったろう? 酒の飲み過ぎは良くないと…だから飲めない体にしてあげたんだよ』
「テ、メェ……能力者かっ?!! 黙っ…てると、か卑怯だぞっ…!!!」
『可笑しな事を言うね? そんな事態々言う愚か者が何処にいるんだ? 何より海賊の君に卑怯とか言われたくないよ』
「ぐぅぁあ……!!! イテェ……ッおれの体…どう、なって……!!?」
『さぁ? ただ早急に医師に診てもらう事をお勧めするよ』
男は痛みに耐えかねて「す、ぐに病院行くぞ…!!」と後ろにいた面々の肩を借りて店を出て行った。
ジョーは「やっと五月蝿いのが居なくなった」と思いながら店内を散らかしてしまった事を店主へ謝罪した。身を隠していた店主は直ぐに立ち上がり「寧ろアンタは大丈夫か?!」と心配されたがジョーは笑顔を見せて問題ない事を伝えた。
海賊のせいで散らばった瓶と皿の破片を拾い始めたジョーに対して店主は「後でやるからそのままにしてくれ!」と言うもジョーは止める気はない。完全に被害者であるジョーだが、だからと言って散らかした物をそのままにする程腐ってはいない。
カチャカチャと音を立てながら拾っていると今まで黙って見ていた青年もしゃがみ込み破片を拾うのを手伝いだした。
『あ、私がやるから君はやらなくていいよ』
「いや手伝うよ」
『……申し訳ないね色々と…騒がしくもしてしまったし』
「アレはオッサンが悪い訳じゃねェさ。ただ気になるんだが…何で甘んじて酒受けたりしたんだ? アンタなら避ける事も出来ただろ?」
『あぁ…大した理由じゃないけれどね。一度目も二度目も私が避けたら折角の料理が台無しになっただろう?』
「気持ちは分かるけどそれだけの理由で態と受けたのか…?」
『まぁ結果として無意味だったけれどね』
「ふーん…確かにメシはダメになっちまったけどオレはオッサンの考え方嫌いじゃねェな!」
『おや、オッサンの感覚に共感してくれるなんて君も変わってるね』
「そんな事ねェだろ。メシは活力の一つだからな! 美味いもんは美味いまま食べるのに限る!」
『うーん若いのに達観してるなぁ』
青年の言葉に少々驚くもののジョーは嬉しそうにただ笑った。
二人が瓶と皿の破片を大方片づけ終えた時、奥に引っ込んでいた店主が袋とモップを持って扉にかかる看板を「close」に変えて戻って来た。割れ物は袋へと入れ濡れてしまっている床はモップで拭っていく中拭き物を持っていない二人は手持ち無沙汰になる。
手伝える事はあるかジョーが尋ねるも店主は「迷惑を掛けた相手にそんな事はさせられない」とその申し出を断った。そうなると本格的にやることの無くなったジョーと青年は互いに見合ってから元々座っていた席に一先ず腰掛けた。
ジョーは座っていた所を店主が掃除しているため青年の座る席の隣に一席空けて座った。
店を閉めてしまった為この場に残る意味は二人とも無いのだがジョーは食べ切れなかったあんかけ炒飯の代わりをあわよくば食べたいと残っている。青年はジョーの使った能力の事が気になり出来れば話を聞きたいと思いジョーが残る様子だったため共に残ったのである。
海賊の男によって濡らされたキャップとローブを脱いだジョーは空いてる席に置いて一息付いた。幸か不幸かローブのお陰で若干湿った感じはあるもののガッツリと濡れる事がなくて良かったとジョーは心底思った。
青年はキャップをとった事で顔がよく見える様になったジョーを見て「思ったよりオッサンじゃないな?」と思っていたりする。そんな視線に気づいたジョーは「どうかした?」と言いながら青年へと顔を向けた。
「いやー喋り方とかで結構なオッサンかと思ってたけどそうでもねェんだと思って」
『あはははっ! 随分と正直に言う子だね。君の言う通りオッサンで間違いないけど爺さんの方が妥当だよ』
「流石に俺でもそこまで言わねェよ! せいぜい四、五十代ってとこだろ?」
『そんなに若く見えるのかい? 嬉しいねぇ』
「実際は何歳なんだ?」
『もう七十半になるよ』
「はぁっ?! マジで言ってんのか!?」
『大真面目だよ』
「詐欺じゃねェか!!」
『酷いな。君が勝手に勘違いしただけで私が何かした訳ではないのだから詐欺とは言えないだろうに』
「見た目と年齢が違い過ぎるとかもう詐欺としか言えねェよ」
『まぁいいけれどね』
「いいのかよ」
見た目や年齢云々の話はタートル島で嫌と言うほどしているし何なら赤髪海賊団の面々にも詐欺の様な事を言われている。言われ慣れてしまってる感が否めないのに気付いたジョーは腑に落ちない気持ちになるが気を鎮めた。
二人の会話を掃除をしながら聞いていた店主は色々と突っ込みどころが多いのだが口を挟まずに作業をしテーブル席の方も片付けていた。ただジョーの結局は気にしていない言葉に対して青年が見事に突っ込んだ時は店主も同じことを思ったとか。
ジョーと青年の会話は取り止めのないものばかりだが、ただ聞いている分にはツッコミどころ満載で中々どうして面白い。そう思う人間がこの場には店主以外いないのだが、もしこの場にロジャーやおでんと言ったジョーを知る人が居れば「またやってるよ」と言いたくなるだろう。
「変わったオッサン…いやジィさん?だなァ…」
『断じて変わっているつもりはないのだけどね。呼び方も好きにしておくれ。にしても君も何故一人でここに?』
「じゃあオッサンで。まぁ別に一人って訳じゃねェけど腹が減ってはなんとやら、だろ?」
『その言い方ではまるで戦さにでも行くようじゃないか…とは言え空腹なのは嫌だよね』
「おう。だからここに来て直ぐ飯食いに来たんだけどまさか海賊絡みに巻き込まれるとは思ってなかった」
『それは本当に申し訳なかったね。私とて騒ぎを起こしたかったわけじゃないのだけれど…』
「その通りさ。今回は俺の対応が悪かった」
『いやいやマスターのせいじゃないよ。私ももう少しやりようはあったしね』
「なんだオッサン、片付け終わったのか?」
「あぁ…今回は迷惑料として俺の奢りでいくらでも食べて行ってくれ」
「マジか! よっしゃ!!」
『マスター…それは色々選択を間違えていると思うよ…彼の胃袋はブラックホールだから…』
「……それは覚悟の内だ…!!!」
「いや、俺を何だと思ってんだよ」
『え、食いしん坊…?』
青年の言葉にジョーが真顔で答えれば青年は何とも言えない表情をするも普通だと思っているが仲間内でも散々言われている事もあり、何よりあながち間違ってもいない為何も言えなかった。
店主は言葉通りに振る舞うため先ずは酒を二人に出してから料理に取り掛かり彼等は折角なので乾杯する事に。二人でジャッキを掲げカンッとぶつけ合えば一気に半分ほど飲み干してダンッ!とカウンターに置いた。キンキンに冷えた酒は喉越しも最高でジョーも青年も「くぅー!」と言うような表情をしている。そんな事もありながらふとジョーはここまで会話をしている青年の名前を知らない事に気付く。
とは言え何処か堅気には見えない青年に無闇に名前を聞くのも悪いかとジョーはチラリと彼を見てから聞く必要はないと思い直した。ただあまり気にしていなかったジョーなのだが何処か見覚えのある様な風貌であり内心首を傾げる。
基本的にジョーは関係の無い他人を覚える事が苦手…と言うより覚える気がない為引っ掛かりを感じる時点で普段のジョーからは考えられない。だからと言って考えれば思い出せるかと言われると残念ながらそう言うわけでもない為、結局は関心無いのと変わらないのである。
スッキリとしない胸中を抱えながらも会話をしているジョーだったが、そんな彼の様子など気にも留めない青年はジョーが踏み込まなかったラインを軽々超えた。
「そういやオッサン名前なんて言うんだ?」
『あーうん。そのラインは君には関係ないんだね。私はジョーだ。君は?』
「何言ってんだ? まぁいいや、ジョーのオッサンな! 俺はサボだよろしくな!」
『サボくん……?』
「おう!」
( サボくんと言う名前は聞き覚えがあるぞ……いつだったか確実に聞いた気が…… )
「 ? どうしたんだよそんなに考え込んで」
『いや……サボくん、以前私と会った事はあるかな?』
「ジョーのオッサンと会ったのは今日が初めてだろ? 流石にオッサンみたいな見た目と年齢チグハグ人間に会ったら忘れねェよ」
『いや言い方酷いな…。まぁでも若いサボくんが言うのだからそうなのかもね』
「そこは若いも何も関係なくねェか?」
『それが弟曰く、私は興味の無い事に関心が無さ過ぎるらしくてね…実際有名な海賊も海軍も知らなくて驚かれたよ』
「それは流石に言い過ぎじゃねェの? 有名な海賊と言えば白ひげとかビッグマムとかがいるし海軍も知将センゴクとかゲンコツのガープ辺りが有名だよな」
『うーん…サボくんの言う中で知ってるのはニューゲートくんとガープくんだけだね…。後の二人は申し訳ないが知らない』
「はっ?! 冗談だろ!? ビッグマムもセンゴクもかなり有名だぞ?!!」
「俺も知ってる名前だってのに……お前さん知らないのか……」
『毎回そう言われるけれど知ってるのが当たり前と思わないで欲しいな…』
「大海賊時代で知らない方が可笑しいんだよ!!!」
互いに自己紹介をしてジョーの知識の偏りが酷いことを知った青年ーサボと店主は有り得ないものを見る様な表情をする。そんな事言われてもジョー的には今までそうして生きて来たし特に問題や不自由があった訳では無い為これからもこの無頓着さは治らないだろう。
客である二人の会話に積極的に加わる事なく(最後は加わったが)料理作りに専念していた店主が彼らの前に出来立てのあんかけ炒飯を置いた。サボは目を輝かせジョーは目を丸めてから嬉しそうにし二人揃って手を合わせて「いただきます」をしてから炒飯にありついた。
アッツアツのあんかけ炒飯をかき込むように食べる事は出来ず、それでもサボは「はふはふっ」と無心に食べている。ジョーは先程しっかりゆっくり味わえなかった食事を楽しんでおり常に口元に笑みのせながら咀嚼していた。
そんな二人を見た店主は満足気に頷きながら頼まれてはいないが次の料理を作りを始めたのだった。
*
**
***
店主が料理を作り二人に出すのを暫く続けジョーはある程度食べた所で満足して「ご馳走様」をしたがサボはそうもいかない。ジョーが来店する前からかなりの量を食べていたのだが満腹を知らないと言うように出せば出すだけサボの胃袋に吸い込まれていく。
その食べる量にジョーはどこか感心しながら食後の珈琲をもらい一息付いた。それからまた暫くしてようやくサボの腹を満たしたのか「食った食った!」と言って文字通りたらふく食べて漸くフォークを置いた。
その頃には店主は腱鞘炎になりそうな程フライパンを振り続け一人満身創痍に陥っているが、それは覚悟の内のため誰も気に留めない。
「こんなに腹いっぱい食ったの久しぶりだ! 美味かったぜオッサン!」
「くっ……! うめェと言ってくれるだけで作った甲斐があるってもんだ…!! 最近はあの海賊が幅を利かせて客足はねェしよ…!!!」
『うん? あの海賊が言っていた事は事実だったのかい?』
「俺も知らねェな」
「旅人はそうだろうよ!! アンタが「誰?」って言った時は肝が冷えたぜ……!!!」
「俺はウケた!」
『うーん……言うほどの者ではなかった気がするけれど……』
「何言ってやがんだ?! この近海の島ではあの海賊は厄介な奴らだ! 船長が5500万ベリーの賞金首だしよ…!!」
『5500万ベリー…それって高いのかい?』
「高いだろ?!!!」
『そうなの?』
「グランドラインにいつ入ったかにもよるけどこの辺では高い方なんじゃないか?」
『ふぅんそうなんだね? 私の知り合いはもっと高額だから感覚がおかしくなったのかな』
「知り合いに海賊がいるのか?」
『うん』
「海賊と知り合うなんて辞めた方がいいぞ?!!」
『彼等は一般人に手を出すような子達じゃないから大丈夫だよ』
「へェー、因みに知り合いの海賊って誰なんだ?」
『そうだね。現役海賊で言うとシャンクスくんとは仲良くさせてもらってるよ』
………………………
……………………………………
「「Σはぁっ?!!?!」」
『そんなに驚く??』
ジョーが言った人物を聞いて驚きを隠せないサボと店主なのだが驚かれてる当の本人はあっけらかんと首を傾げている。自分がどれ程の事を言っているか全く理解していないのを察したサボも店主も「何モンなんだ」と思う。
ジョーはシャンクスの懸賞金がかなり高額な事は知っているが戦った所を見た事のないジョーからすればシャンクスのあの性格のせいでどうにも凄い海賊と言う考えから遠ざけていた。ただロジャーもおでんもシャンクスが名を轟かせる事を全く疑いもしていなかった事からジョーも考えを改めようとは一応している。
それでもシャンクスの船に乗せてもらった時などシャンクスの人となりを改めて見て感じたジョーには「気の置ける知り合いの子」の域をでないのだ。
サボと店主の驚きようを見てジョーは「なんだかなぁ」と思っていたりするのだが顔には出ていない為何を考えているか分かりづらい。
「赤髪のシャンクスと知り合いってなったら確かにあの海賊なんて目じゃねェな」
『まぁシャンクスくんと彼等じゃタイプが違い過ぎるけれどね』
「確かに赤髪は噂を聞く限り無闇に人を傷付けるタイプじゃ無さそうだな」
「だ、だが海賊は海賊だろ?! 善し悪しなんて関係ねェ!!! 海賊になってる時点で罪人だ!!!」
『…マスターの言いたい事も解るけれど全ての海賊が「悪」であると決め付けるのは良くないと思うよ』
「それはアンタが悪い海賊に会った事がないから言えるんだろ?!!!」
『そんな事ないよ。私にも許せない海賊はいるし全ての海賊を許容している訳でもないよ』
「なら何で海賊と仲良いなんて言える?!」
『先程も言ったが人も海賊も海軍でさえも善し悪しが必ずある。それなら人となりを自分で見て繋がりを作るかどうかは私が決めるよ』
「俺もジョーのオッサンの考えに同意だな」
「……悪いが店を出てってくれ」
二人の言葉に店主は自分が言っている事が一般的な筈なのに自分が間違っている様な錯覚を覚えてしまう。故に海賊を追い出してくれた恩人ではあるがこのまま話をしたくないと思い彼等に店から出る様言えば二人も特に何か文句を言う事なく席を立つ。
ジョーは「ご馳走様」とサボは「美味かったぜ!」とそれぞれもう一度言いながら店の外へ出た。
追い出された二人が共にいる必要もなくなりジョーが挨拶しようとした時「見つけた!」と言う声が響いた。ジョーはサボの奥に見える少女に目を向けサボも声のした方へ振り返り「お、コアラじゃん」と言い手を挙げている。
サボは軽く挨拶しているのだが少女の表情は非常に不満そうで二人の態度に差異がありジョーは二人を交互に見るしか出来ない。
「もぉー! サボくん今まで何処行ってたの?! 凄い探したんだよ!?」
「悪ィ飯食ってた!」
「勝手な行動は慎んでって言ってるよね?!」
「合流出来たんだからいいじゃねェか!」
「よくない!! サボくん一人の行動で皆に迷惑かけるかも知れないんだよ!」
「そんなヘマはしねェよ」
「そう言う問題じゃないんだってば!!」
( うーん…私がこの場にいる必要はないし…挨拶は出来てないけど帰るか )
「あ、ジョーのオッサンもう行くのか?」
『あぁうん。食事も出来たし連れも待たせてるからね』
「連れなんかいたのか? 一緒に来りゃよかったのに」
『私の連れをこの場に連れて来るのは無理かなぁ』
「ふーんそんなに素行が悪いのか? なんか意外だな」
『いやいやそう言う訳じゃないよ? 海から出れないからね』
「うん? どう言う意味ー……」
「ちょ、ちょっとサボくん!! 一般人と接触してたの?!」
「あ…あー…今回はお忍びでやらないといけないんだったか。悪ィ忘れてた!」
「もぉーサボくんしっかりしてよ!!!!」
サボが見知らぬ男と普通に会話を始めた事にコアラは驚き更に今回の遂行内容を忘れていた事には憤慨した。
サボの適当さにコアラはガミガミと怒っているのだがサボ本人は「悪かった」と言いながらも反省しているか怪しい所である。それが分かるからこそコアラの憤りが治らないのに何となく気付いているジョーは困った顔をしていた。
自分の事も言われているとなるとトンズラして帰る訳にもいかず帰るに帰れない状況に「もう少しかかりそうだ」と思う。しかも店を出て直ぐのところでコアラに捕まった事もあり人通りも多く、さまざまな目が彼等を見ているのだがサボとコアラは気付いていない。
ジョー的にはあまり人目につく様な事をして欲しくなく、わざとらしく「コホン」と咳払いを一つして二人の意識を自分に向けた。
『話をするのは構わないが場所を考えた方がいいんじゃないのかい?』
「えっ!?」
「あー確かにここ大通りだったな」
「気付いてたなら言ってよサボくん!!」
「いや今オッサンに言われて俺も気付いたんだよ!」
『まぁまぁ…私は行くけど人様に迷惑を掛けないようにね』
「待ってくれ! 俺まだオッサンに聞きたい事があるんだ!」
「ちょっとサボくん?!」
『私に聞きたい事…? 別に構わないけれど聞く事なんて何もないだろうに…』
サボが「聞きたい事がある」と自分を引き留める事にジョーは心底不思議だと言いたげな表情をしている。
そんな話になった事に良い顔をしないのがサボを探していたコアラでありサボを引き留めようとするが意味を成さない。その姿を見るとジョーの方が申し訳ない気持ちになってくるのだが何を言っても無駄だろうと短い時間でも察せた。
何ならコアラも一緒に行った方がまた合流すると言う労力がない為いいのだが話の内容が何なのか分からない以上話す相手は少ない方がジョー的にはいい。
二人来るのかそれともサボだけなのかは二人に任せる事にしたジョーは適当に歩いていようサッサと行ってしまった。ジョーの行動に呆れて帰ろうとしていると思ったサボは慌てたように「後でまた連絡する!」とコアラに言い「待ってくれ!」とジョーの後を追いかけた。
追いかけたのだが…ジョーは行く先々の店で荷物を預かって貰っていたのを受け取り結構な量を両手に抱えている。それを見たサボは「焦った俺がバカみたいだ…」と内心思っていたりするのだが、それ以上にジョー一人にしては量が多い。
店で食べている時も人並み程度の食事しかしていなかったのを確認しているため明らかに量がおかしいのだ。
「オッサンそんなに買い込んだら食料傷んじまうじゃねェか?」
『うん? あぁ大丈夫だよ。私一人で暮らしている訳ではないからね』
「そうなのか? こんなとこいるから独り身かと思った」
『はは、本当にハッキリ言うね? 私は弟達と暮らしているんだよ』
「へぇ! オッサン兄弟いるのか! 俺多分一人っ子だからなんか良いよな!!」
『多分って…自分の家族構成くらい分かるだろう?』
「あーそれが…ガキの頃の記憶がねェんだよ、俺」
『え、そうなのかい? それは失礼な事を言ったね…すまない』
「いや別に大丈夫だけどさ。今いる場所が俺にとって家のようなもんだし」
『そうか…それなら先程の少女もサボくんの家族かな?』
「そんな様なもんかな。スゲー世話焼いて来るけど」
『彼女も君のことが心配なんだよ』
「心配っつーか俺が何かやらかさないか見張ってる感がスゲェよ」
『それは普段のサボくんの行いのせいでは…』
「別にそんな酷いことしてねェよ!」
ジョーの言葉にサボは「心外だ!」と言いたげな表情をし、そんなサボを見たジョーはただ肩を竦めるだけに留めた。
買い物袋を抱えて大通りを抜け港の方へ行くかと思いきや全く想像していなかった方へ進む事にサボは首を傾げる。ジョーの進んでいる道は(道と言う道ではない)ただ岬があるだけで人気が無い所とは言えそんな場所を選ぶ意味はない。
流石に訝しむサボであるが万が一何かあれば対応は出来るだろうとあまり気を緩めすぎないようにジョーの後に続いた。
そんなサボの変化にもちろん気付いているジョーであるが全く気にする事なくウマヘビの待つ岬へと歩き続ける。二人の間に会話はなくなりただただお互いの足音だけがその場に響いており、どこか緊張感が増していっている感覚さえした。
暫く歩けば岬は見えて来て、ただただコバルトブルーの美しい海が広がっていて特に船があるような雰囲気でもない。「俺の考えすぎか?」と少し気を緩めたサボだったがジョーが口笛を吹いて目の前に大型海王類が姿を現して咄嗟に臨戦態勢へと入った。
しかし臨戦態勢に入ったサボは驚きはしたもののその瞳は何処か輝いてた。
「大型海王類がなんでこんな近くに!?」
『あー…すまないね。さっき話した私の連れだよ』
「はっ?」
『ウマヘビって言うんだ』
「イヤイヤイヤ待て待て待て! 誰が大型海王類が連れだなんて思うんだよ!!」
『だから謝ったろう?』
「そう言う問題じゃねェよ!」
『そう言う割にはウマヘビを見る目が輝いているよ』
「人に懐いた海王類を見るのは初めてだからな! それにしても海王類が連れって理屈がおかし過ぎねェ?」
『かくかくしかじかでね』
「分かんねェよ…はぁ〜〜…ただのオッサンじゃねェとは思ってたけど思ってた方向と全然違ェ…」
『何を言うんだ。私はただのオッサンで間違いないよ』
「どこに海王類を手懐けるただのオッサンがいんだよ! それに店の時もあの海賊どもを倒すのだって訳なかっただろ?」
『ウマヘビのことを言われると私も困るなぁ…。彼等についてはー…そうだね、倒す事は可能だったよ』
サボの疑問に「YES」で答えたジョーの言葉にサボは「だろうな」と分かっていたように頷いた。
一先ずジョーは買って来た荷物をウマヘビの頭(立て髪)に括り付けられている船の中へ入り簡単に整理してからサボの元へ戻った。サボ的には海王類の頭に何故船を括っているのか気になる所だが後で聞けば良いだろうと今は口を閉ざす。
立ち話も何だからと二人して適当に腰を下ろし暫し沈黙が続いたが先に口を開いたのはジョーだった。
『それで私に聞きたい事ってなんだい?』
「あの店で「現役で言うと」赤髪のシャンクスと知り合いだって言ってたけど海賊を引退?した奴とも知り合いなのか?」
『うん そうだね』
「今はただのオッサンでも元海賊なのか?」
『私が海賊? 私は本当にただのオッサンだよ。ただ弟が海賊をやっていたからその縁で知り合う人が多かったんだ』
「そういやオッサン弟いるって言ってたな! 今オッサンの弟は何してんだ?」
『多分島中を走り回っているんじゃないかなぁ…』
「いやオッサンの弟もいい歳した奴だよな? それが島中走り回るって何だよ!」
『子供っぽい所は全く変わっていないから強ち間違ってもいないと思うよ』
「ヘェ…オッサンは落ち着いた感じだから似てるのかと思ったけどそうでもなさそうだな?」
ジョーの弟…ロジャーとはあまり似てなさそうだと思ったサボだったが再三言うがジョー的にはそんな事ないと思っている。とは言え会う人会う人似ていないと言うため、その事に関して訂正をするのはもうやめることにしている。
弟が誰かを知らないサボに言っても分からないだろうと言うのもあるがジョーはただ肩を竦めるだけに留めた。
そんな他愛のない話をしているのだが、サボが聞きたい話はこんな事じゃないだろうなとジョーは感じ取っている。サボ的にも聞きたい事はあるのだが初対面の人間に己の「能力」の事を話してくれるか一か八かの部分がある。
まぁそう思っても「聞かない」と言う選択肢はサボにはないのため「オッサンの能力について聞きてェんだけど」と真正面から聞いた。
『私の能力?』
「海賊に触れて何かしてたろ? あれ悪魔の実の能力だろ?」
『あぁアレね』
「やっぱり隠してたりすんのか?」
『いや? 特別隠しているとかはないよ。私の能力は「事象を戻す事の出来る」と言うものだよ』
「――――っそれって「フェノフェノの実」か?!!」
『うん? すまないね、何て言う実かは知らないんだよ』
「知らねェのかよ!? 「フェノフェノの実」はこの世に存在しちゃいけねェ実とされてて世界政府が血眼になって探してる実だぞ?! 実際図鑑からその実の存在は消されてる!!」
『そうなんだね? けどその抹消された筈の実の事を何故サボくんは知っているのかな?』
「……俺たちは世界政府と敵対している組織だ。だからそう言う情報を得るために色々調査して回ってるんだ」
『成る程…となるとサボくんのいる組織は私の敵ではなさそうだね』
「 ! その言い方だとオッサンも世界政府と敵対してるって言ってる様なもんだぞ」
『その解釈で間違いないよ。私にとって世界政府も海軍も潰してしまいたい組織だ』
ハッキリと「世界政府」と「海軍」を潰したいと言ったジョーに驚いたサボはジッと彼を見てから本心なのだと諭る。ジョーの目には色々な感情が蠢いており二代組織と何かあったのは一目瞭然であるが、そこまで踏み込んで話を聞くのは流石のサボも躊躇った。
しかしそんな暗い目の色をしたのも一瞬で直ぐに先ほどまでの静かな目に戻り「こんな事言ったらマズイかな?」と冗談めいて言う。そう言ったところで先の言葉が冗談じゃない事くらいサボにも分かっており、ただ「かもな」と返す事しか出来なかった。
ただのオッサンじゃないと分かってはいたが、まさか世界政府や海軍を憎んでいるような人物だとは思っていなかったがサボにとっては僥倖だった。
「オッサン、アンタさえ良ければ俺たちの組織に加わらないか?」
『私が組織に? こんな年寄りを迎え入れようとせずとももっと若い子らがいるだろう?』
「年齢なんて関係ねェよ。同じ志を持っていれば誰だって構わねェ。それにオッサン普通に強ェだろ? 即戦力はウチとしては願ったり叶ったりだ」
『……君達は一体世界政府に対して何をしようとしているんだい?』
「俺たちの目的は世界政府…ひいては世界貴族の天竜人を文字通り潰すことだ」
『 ! …なるほど…確かに戦力が必要な訳だ』
「あぁ、だからこそアンタの力を俺たちに貸してくれ!」
『…私にも守るべき家族がいてね。申し訳ないがあの子達の側を離れる気はないんだ』
「家族…さっき言ってた弟か? オッサンと同じ思想なら一緒にくればいい」
『あの子はそう言う事を考える子じゃないよ。敵対視はしているだろうけど潰そうだなんて思ってないと思う。サボくんの誘いに乗れそうにはないけれど…そうだね、君達に力を貸すのは
ニッコリと笑いながら言うジョーを見て「何を言っても組織に入る気はないな」と分かるとサボは「ハァ…」と残念そうに溜息を吐いた。それでも幻の実を食した者の「力を貸す」と言う言質を取ったのだからそれだけでも儲け物だと思えば今回の任務は結構な収穫であろう。
結構真面目な話をしていた事もあり肩肘張っていたサボは「あー!」と言いながらゴロンとその場に横になり手足を投げ出す。突然の行動にジョーは目を点にするものの先程までとは違い年相応な行動に笑みを溢した。
その様子をチラリと横目で見たサボは子供扱いされているのにムッとした顔を見せる。
「オッサン俺のことガキだと思ってるだろ…」
『ん? まぁ私からすればまだまだ子供だろう?』
「そうかも知んねェけど子供扱いすんなよ」
『それはすまないね。サボくんと同じくらいの甥がいて何処か似ている気がしてね』
「俺とそいつが?」
『見た目とかじゃなくて…何と無くなのだけれど根っこの部分が似ている気がするんだ』
「ふーん。そいつは海賊になるのか?」
『そうじゃないかな。直接聞いた事はないけれど海に出る気ではいると思うよ』
「一緒に住んでるわけじゃねェんだ」
『うん。けどいつの日か会いに来てくれると思っているよ』
そう言うジョーの表情は先程とは全く異なり、その人物が心底愛おしいんだと言いたげなそれでサボは何となく羨ましくなる。
子供の頃の記憶をスッポリと失くしてしまっているサボは己の家族の事など何一つ覚えていないが、いい感情が湧かないのは分かっている。その為いい環境じゃなかったのだと言うのは嫌と言うほど感じており、ただそれだけではなく何か大切なモノも忘れている気がしてならないのだ。
サボの所属する組織…革命軍の面々が家族かと言われると、彼らは志を共にした同志でありそれ以上ではない。故に無条件に相手を想い、愛しくて堪らないと言う感情がサボには理解し難いことでもあったのだ。
そんなこんな話をしていれば結構な時間が経っておりジョーの電伝虫とサボの電伝虫が示し合わせたように鳴る。お互い見合ってからそれぞれ応答しジョーの方からは随分と騒がしい声が響きサボの方もまたお説教を受けてるようだ。
このままではお互いにメリットはないと理解した二人はそれぞれ別れる事としジョーはサボに「それじゃあ」と言ってウマヘビに飛び乗った。
『また会える日を楽しみにしているよ』
「おう。そん時は力を貸してもらう時かも知れねェけど」
『ハハ構わないよ。さてあの子達が痺れを切らして追って来ないうちに帰ろうかウマヘビ』
「ブルヒヒン!」
「そういやオッサンの弟って海賊って言ってたけど俺も知ってる海賊か?」
『まぁ知ってるだろうね』
「名前なんてんだ?」
『ロジャー』
「は…」
『私の弟はゴール・D・ロジャーだよ。内密に頼むね』
そう言ってジョーはウマヘビをタートル島へ向かわせジョーの言葉を咀嚼したサボは「Σはぁっ――――!!?!?!」と驚いた。
こうして彼らの邂逅は幕を閉じた。
( ゴールド・ロジャーの兄貴?! マジでか…!! だから世界政府を…!! くっそォー! もっと話聞けば良かった!!! )
( サボくん凄い驚いていたなぁ…まぁそれもそうか )
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