Act 30
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海に落ちたロシナンテがローの船へと乗ったのを確認したジョーはウマヘビにもっと近づくように指示をする
それを聞いたウマヘビも一鳴きしながらポーラーラング号に近づき、それを警戒したロー達だったがそれより早く彼が「私も失礼するよ」と勝手に乗る
ロシナンテと共にいたと言う事は敵対する相手ではない事をローも理解はしているが、余りにも見た目が怪し過ぎるジョーに警戒心は解けない
それを肌で感じ取っているジョーだが「彼がロシィの探し人のローくんか」とマジマジと観察して要るため、そのせいで警戒心が取れないとも言える
「コラさんと一緒にいるアンタは一体誰だ…海軍の人間か?」
「Σ海軍?!」
「まさかこの人達海軍なのキャプテン?!」
「おれ達捕まっちゃう?!」
「安心しろロー、俺ももう海兵じゃねェしジョーさんも違う」
「……なら何でそんなにも身を隠すような格好をしてんだ」
「あー…ジョーさんにも色々あってだなァ…」
『濁さなくても良いよロシィ、私も札付きなもんだから出来るだけ顔を晒したくないんだよ、納得してくれるかい?』
「札付きだと? ならアンタもコラさんも海賊ってことー…」
「ぶえっくしょい!!」
「……………一先ずコラさんは風呂に入れ、シャチ案内してやってくれ」
「りょーかい!」
「悪ィな」
執拗に顔を隠すジョーが何者なのかと言う話をしているのを遮るように大きなくしゃみが彼等の場に響いた
盛大なくしゃみをしたのは言わずもがなロシナンテであり、寒い気候の海に落ちればそりゃ寒いだろう事は誰にでも分かる
ロシナンテ的には話の腰を折ってはいけないとムズムズする鼻と寒さに耐えていたのだが、流石にずっと耐え切る事は至難だったのである
ローに風呂を借りる事となり心底申し訳なさそうにしながらロシナンテはシャチの案内の元船内へと入って行った
その場に残った面々の間には暫し微妙な空気が流れはしたが、それを断ち切ったのは意外にもローで「冷えるから中に入るぞ」と言って船内へと消える
それに続くはペンギンとベポで、ジョー的には「私も行っていいのか?」と言う気持ちなのだが「アンタも来い」との声に中へ入った
船内に入ればジョーが考えていたより広々としており、キョロリと辺りを見渡すもそれもあまり良くないだろうとやめた
ロー達が向かったのは食堂の様で、適当な場所にローが座りペンギンは当たり前の様に飲み物を入れにキッチンへ
ベポはローの隣に腰をかけその様子を見ていたジョーはローの向かい…はロシナンテに空けておきベポの前の席に腰を落ち着けた
暫し沈黙が続く中、芳ばしい珈琲の香りが漂いそれを人数分持って来たペンギンがそれぞれ配りベポとは反対のローの隣へ
少ししてロシナンテを案内していたシャチも戻って来てペンギンの隣へと腰をかけ、他にも数名いるクルーからの視線が刺さる中ローが口を開いた
「さっきは聞きそびれたがアンタ達は海賊なのか?」
『いいや、私もロシィも海賊ではないよ』
「じゃあ何でアンタは海賊でもねェのに札付きになってる?」
『私が海軍にとって看過出来ない存在だから、だろうね』
「看過できねェ存在だと…?」
「海軍が看過出来ないって何したんだ…」
「実はやばい人…?」
「でもキャプテンの知り合いの知り合い、何だよな…」
「……コラさんはアンタに救われたと言っていたが…どう言う事だ…」
『それはー…』
「お、いたいた! シャワー助かったぜロー!!」
……………………
………………………………
「コラさん……」
『今日はとことんタイミングがいまいちだねロシィ…』
「え…なんかスマン…」
シャワーを借りていたロシナンテがタオルで頭を拭きながら彼等のいる食堂へ来たのだが、先程から色々タイミングが悪い
話をしていたジョーとローは何とも言えない顔をしており「まぁロシィ/コラさんだしな」と二人の気持ちがシンクロした
ロシナンテはジョーが空けていたローの前の席に座り、ニコニコと上機嫌に目の前の彼を見ている
そんなロシナンテにローは少々居心地の悪い思いをしているのだが残念ながらロシナンテはそれに気づいていない
話を仕切り直す為に咳払いをしてからジョーにローは目を向けた
「それでアンタは何者でコラさんを救ったとはどう言う意味だ」
『私はジョーと言う者でロシィを助けたのはまぁ…正直成り行き、かな』
「え、そうだったのか…?」
『うん ロシィ達がいたあの島に立ち寄ったのも私の「人探し」の一環だったし
あの場に居合わせた時は面倒ごとに巻き込まれたとしか思ってなかったよ』
「マジでか」
『マジマジ 更に言うとロシィが血濡れで多分海兵にボコられてるのも知ってるよ』
「マジでか?! ジョーさんにはカッコ悪ィ所ばかり見られてんなァ俺…」
『そんな事ないよ、ローくんを守る為だったんだろうし、そんなロシィだったから助けたんだよ
あの場で私がリスクを犯してロシィを助ける義理もなかった訳だしね』
「確かにそうだよな…身も知らぬ俺を助ける必要は本来なかったんだし…」
『まぁ結果的には目の前で人が死にそうなのを見て見ぬ振りは出来なかったのだけどね』
「それはジョーさんがお人好し過ぎるんだ」
『え…そんな事ないと思うけど…実際ボコられてたロシィを助けなかったし』
「あー…確かに…?」
『だろう?』
「ちょっと待てコラさんと二人で話を完結させんじゃねェ!」
初めこそローの質問に答えていたジョーだったが、ロシナンテの介入で聞きたい事は聞けてる筈なのだが二人で話しを進める事にローは「待った」をかけた
それにはジョーもロシナンテもきょとんとした表情をしながらローへ視線を向け一先ず口を閉じた
ローはジョーがカミングアウトした内容に色々言いたい事も聞きたい事もあるのだか、何から言えばいいのか頭を悩ませた
そんな様子を見ていたペンギン、シャチ、ベポとこの場にいるクルーは「この話俺たち聞いてていいのか?」と言う心境であった
ローの過去に何があったのか少しだけかい摘んで聞いていたが、詳しく聞いたわけではない
故にこの場にいるクルー達は今話している事はローの暗い部分に触れているのだと分かり全員でアイコンタクトを取る
その為三人を始めクルー達がローに「俺たち席外してるな」と言い食堂から出て、それぞれ「はぁ〜」と息を吐いた
全員が出て行ったのを見たローは「気を遣わせたな」と思いながらもこれから話す事は良い話ではない為引き止める事はしなかった
ジョーとロシナンテも彼らの事のため何も言わずに様子を見るだけである
「あー…色々突っ込みてェ所だが…結局アンタはあの時あの場に居たって事だよな?」
『うん そうだね』
「それなのに俺たち…コラさんの状態を見てシカトしてたって事か…?」
『その通りだよ、さっきも言ったけど私も人探しの途中だったし介入する理由も義理も無かったからね』
「普通人がボコられてたら止めに入るだろ…アレがなけりゃコラさんはあの時必要以上に痛め付けられることもなかった…!」
『ふむ……君は何か勘違いしている様だけど私は決して善人ではないよ、私にとって大切な人は何があろうと守るけれどそれ以外に興味はない』
「………俺が助けてもらって目を覚ました時も同じ様な事ジョーさん言ってたしなァ…しかも面と向かって「信用出来ない」とも言われたし」
『それは、ねェ? 助ける予定ではなかった知らない子を助けてしまったからね…私にも色々事情はあるし』
「まぁ今になってみればジョーさんの言動も納得出来るし、当然だと思うぜ」
「……コラさんはコイツの事そんなに信頼しているのか?」
「そうだな! 俺にとっちゃ命の恩人ってのもあるが、何より懐の広い人だってのはもう分かってるしな!」
「懐が……深い…? ただ自分本位なだけじゃねェのか」
「ジョーさんの事を知るにはそれなりの期間共に過ごさねェと分からねェさ」
「………そうか、」
『…ロシィの私の株高過ぎないか? ローくんの言う自分本位って言い得て妙だと思うけれど』
「ジョーさんさっき自分で言ってただろ? アンタはただ大切なモノを守ってるだけだ」
ローが評するジョーの人となりに彼自身納得する部分があるのだが、ロシナンテ的にはそんな事はないらしい
それには「意外だな?」と思うジョーなのだが、それに関して何かを言おうものなら更に追い打ちをかけられそうな為彼は口を閉じた
そんな二人の関係性が全く掴めず分からないローは何とも言えない表情をしているのだが、彼等は全く気付いていない
結局ジョーの事を知れたのは名前とミニオン島に居た理由だけで、ロシナンテを助けた経緯があやふやで良く分からず仕舞いだ
今ローが一番聞きたいのは「ロシナンテが何故生きているのか」と言う事なのだが、ジョーの様子からして教えてもらえる気がしないのである
「コラさん、アンタはさっき一度死んだと言っていたがどう言う意味だ…?」
「そのままの意味だぜ? 俺はあの時ドフィと向き合って確かに死んだ……だから俺は能力者じゃなくなった」
「 ! ……なら何で…死んだ人間が生き返るなんてあり得ねェ…!」
「まぁそうなんだが……それに関しては俺からは何も言えねェな」
「……アンタの能力か何かで助けたのか」
『あーうん、そうだね』
「だがそんな能力あり得るのか…信じられねェ」
『と言われてもね、ロシィが生きている事が私の能力を裏付けているだろう?』
「……なら俺がここで死んでもアンタが生き返らす事が出来るのか?」
「Σローお前なに言ってんだ?!」
「どうなんだよ」
『まぁ出来るけど私が君を助ける道理はないよ』
ローの挑発する様な言葉にロシナンテは驚きに声を荒げ、ジョーは表情一つ声色一つ変えずに淡々と答えた
その答えにロシナンテは驚きながらもジョーの言っている事は間違いはなく、ローが死んでも彼が助ける道理も義理もない
先ほどロシナンテを助けた何だと言う話とリンクするものであり、ジョーが庇護下に置いた人間ではない為ローを助ける事はしないだろう
それをジョーの纏う空気感から感じ取ったロシナンテはただただ慌て、ローに早まる様な事をしない様に必死に止めている
勿論ローとて実際に死んで見せる気はさらさら無いのだが、動揺の一つもしないジョーに「何なんだコイツは」と言う思いで一杯である
そんな空気の悪い中何も感じていない様に口を開いたのはジョーで、ローは目に見えて顔を顰めた
『そんな嫌な顔しなさんな、私の能力を知りたいのだろう?』
「いいのかジョーさん…」
『まぁ別に今までも隠していた訳ではないからね、世間に知られる機会がなかっただけだから』
「あー…確かにあそこに居れば外には漏れないだろうな…」
『ふふ だろう? 私の能力は私が戻したいと思った事象を戻す事の出来るものだよ』
「戻したい事象を戻す、だと…?! そんな能力あり得なねェだろ!! そんなの神の領域だ!!」
『そんな事言われても事実だよ、何よりロシィが君の前にいる事が証拠だろう?』
「っ…確かにその能力が死者にも有効ならコラさんが生きている事も納得出来るがっ!」
『何としても否定したい感じかい? まぁ君が何と言おうと私の能力は変わらないよ』
淡々と己の能力の事を開示したジョーにローは人としても一人の医者としてもあり得ない事を聞かされているのに脳がその理解を拒む
「戻したい事象を戻す」などと言う能力が存在するのであれば、世間で知られていてもいい筈なのだが、悪魔の実の図鑑などにも一切の記述が無いのをローは知っている
己が食べたオペオぺの実がどう言った実なのか知るために調べた時、そんな大層な能力を秘めた実の記述は載っていなかったのだ
ただ、その実が実在しているのを知っていて「誰か」が隠し隠蔽したのであるならば図鑑に載っていないのも頷けるものである
実際のところずっと昔にジョーの食べた「フェノフェノの実」を食べた人物がおり、その実の恐ろしさを記述した物はあった
しかしその実の存在を恐れ無かった事にしたい「世界政府」によってその実の存在自体を隠しているのである
隠しているものの、世界政府は「ゴムゴムの実」と「フェノフェノの実」を我が手にする為に世界中を探させているのだ
そんな事実を知らないジョーもロシナンテもローも、彼の食べた悪魔の実がそんな物だと言うのを知る由もない
ジョーの説明を聞いてもローはどこか納得していない様子ではあるが、最終的にロシナンテを救ったのは事実として受け入れた
「アンタが居なければコラさんは死んでた…この人を救ってくれてありがとう」
「 ! ロー…お前、」
『どういたしまして』
「コラさんはこの先どうするんだ? 海軍に戻るのか?」
「いや…もう俺が海軍に戻る事はないだろうぜ…俺の帰るべき場所はあるからな」
「 ! ……それがこの人の場所って事か…アンタはー……いや、何でもねェ」
『心配しなくてもロシィは私にとっても守るべき「家族」だから、誰かに狙われても守ってみせるよ』
「 ! そうか」
ローが何を気にしているのか何となく察したジョーはロシナンテを「守る」とハッキリと言い切った
それを聞いたローは一瞬驚いた顔を見せるものの声色からして嘘を言っていないのを感じ取り一言返すだけだった
ただ「守る」と言われたロシナンテだけはその言葉に「不服だ」と言うような顔をしており「俺もジョーさんを守る!」と言う
そんな事言われ慣れていないジョーはきょとんとした顔を見せ「なら私のピンチの時は頼むよ」と言いながら笑った
ロシナンテが生きている究極のサプライズを受けたローは、一先ず聞きたかった事を聞けた事に大きく息を吐き椅子に深く座り直す
その様子を見たジョーは「これで尋問のような話は終わりかな?」と思いながらもローの出方を見守るように口を閉ざしている
ロシナンテもまた真面目な話は終わったのを感じ取り、今度はこっちが話を聞く番だと言うように嬉々としてローに話かけた
「ローは今までどんな暮らしをしてたんだ?」
「どんなって…別に大した暮らしはしてねェ」
「なら珀鉛病は自分で治したのか?」
「まぁ…コラさんが能力を使えば治せるっつったからな」
「そうか! やっぱりローはスゲェなァ!! 俺が思った通りだぜ!!」
「……そうかよ」
「それにしてもよくドフィから逃げ切ってくれた…俺は目を覚ました時はローが見つかって捕まってねェか気が気じゃなかった」
「……コラさんが守ってくれたから…俺はドフラミンゴから姿を隠せてたんだ」
「……ロー、お前ドフィに復讐しようとか考えてないだろうな?」
「 ! だったらなんだ」
「俺はこうして生きてる、ローが態々危ない橋を渡る必要はねェ」
「それは結果論だろ…この人がいなけりゃアンタは死んでたんだ…その報いは受けてもらう」
「ロー…」
ローはロシナンテが危惧していた通り、彼を殺したドフラミンゴを深く憎み復讐する事を誓っており何を言っても意味がない様子である
そんな様子を黙って見ているジョーには大切な人を奪われてその奪った相手に復讐したいと言う気持ちが少なからず分かる
自首したとは言えそんな事ジョーには関係なくロジャーを公開処刑として見せしめにする様な行いをした海軍に対して思う事は多々あるのだ
それでもジョーが復讐に走らず思い留まっているのは、偶然とは言え己の宿した悪魔の実の力で最愛の弟を救う事が出来たからだ
もしロジャーを救うことが出来ていなかったら「海軍に対して何をしていたか分からないな」とジョーはぶっちゃけ思う
ジョーにはこう言った経緯がある為ローの言っている事も遂げようとしている覚悟も理解してあげる事が出来る
しかしロシナンテは元々優しい性格をしており、完全に善性の人間である事から復讐をしようとするローを何としても止めたい思いであるのだ
何よりローが危険な目にあうと解っていて止めない道理はロシナンテにはないし、ドフラミンゴの悪意に触れて欲しくもないのである
「何を言ってもドフィを討つ気なんだな…」
「あぁ…それが俺の生きている意味だ」
「……分かった、その時は俺も一緒に行こう!」
「はっ?!」
「海賊だからと言ってローにだけドフィの元に行かせる訳にはいかねェ!」
「それは俺の戦いだ! コラさんが手を出す必要はねェ!!」
「イーヤ行くぜ!! 何と言われようと俺はローと共にドフィを止めに行く!!」
「〜〜〜〜〜っ!! アンタも何とか言えよ!!」
『いやー部外者の私が口を挟むのはお門違いじゃないかい? まぁでもお互い頑固者だね』
「ジョーさんには言われたくねェな」
『酷いなロシィ…』
「〜〜〜とにかく! 俺はドフラミンゴとの戦いにコラさんを巻き込む気はねェからな!!!」
ドフラミンゴへの復讐にロシナンテが同行すると言う暴挙に出てローは珍しく焦ったように声を荒げるが相手は何のその
「絶対に一緒に行く!」と息巻いておりローはまた頭を抱える羽目になるのだが、今考えた所でまだまだ先の話である
それを分かってはいるのだが、その先の話でもロシナンテが同行する気満々なのがローにとっては頭を悩ませる原因だ
しかもこの先事ある毎にその事を思い出して頭を抱えなければならなくなりそうでローは「先が思いやられる」と思った
ジョーは二人のやりとりを見ていて「仲良いなぁ」と思いつつ「年の離れた兄弟のようだ」とも思う
ともあれ、二人で話したい事もあるかも知れないと思ったジョーはガタリと音をたてながら席を立ち上がる
その音に反応した二人はジョーに目を向け、その視線を受けた彼は「二人で話す事もあるだろ?」と言って食堂を出て行った
ロー的には「人の船を好き勝手動くな」と言いたい所だが、言った所で意味ないだろう事も分かっており盛大な溜息を吐くだけに留めた
ジョーは食堂を出て船内を彷徨い歩くのはマズいだろうと甲板に出てウマヘビと戯れていようと思い至る
静かな船内を歩き甲板に繋がる扉を開けばそこには食堂を早々に出て行った三人の気配があり、どうやらウマヘビを観察しているようだ
ただ、超大型海王類と言う事もあってかなり恐々と見ているのだがウマヘビが何もして来ないと分かっている様子だ
「マジでデケェよな…これに乗ってたあの人達マジで何なんだろうな…」
「さぁな…一人はキャプテンの知り合いっぽかったがもう一人はぶっちゃけ何も分からん」
「海軍じゃないならきっと大丈夫だよ」
「そんな楽観的になれねェよベポ…」
「確かにな…この海王類を手名付けてる時点でマジでヤバいだろ」
「なんかごめんなさい…」
「「打たれ弱っ!!!」」
『面白い話をしているね』
「「「 Σ!!!??!? 」」」
『おや…そんなに驚かなくても…』
ペンギン、シャチ、ベポは目の前にいるウマヘビにばかり気を取られジョーが船内から出て来て真後ろにいる事に全く気づかなかった
しかも彼ら的にはジョーと言う存在は非常に怪しく不気味な存在として認識されている為、ローがいない状態で対面するのは避けたい思いだった
そんな事思っていても既に対面してしまっている以上、不自然にこの場を去るのもどうかと思うペンギン達は「どうする?」とアイコンタクトを取る
無論ジョーには彼らが己に向ける感情を何となく察してはいるのだが、だからと言ってウマヘビと戯れに来た彼がこの場を離れる考えはない
故に若干の膠着状態が続いているのだが、それを破ったのはジョーであり彼らの方へ一歩前へ踏み出した
それを見た三人は無意識のうちに一歩後ろに下がってしまっているのだが、彼らは気づいていない
『ハハ、そんなに怯えなくても取って食おうなんて思っていないよ』
「べ、別にビビってなんかねェぞ!?」
「そもそもあまり歩き回らないでもらいたいんだが?!」
「そ、そうだ! キャプテンが黙ってないぞ!!」
『シロクマが喋るのか…』
「クマが喋ってすみません…」
「「今はその打たれ弱さ何とかしろ!?」」
『はははっ!! 面白いね君たち、シロクマの君はアレだろう? あーっと…アレだよアレ…』
「いや…アレと言われても…」
「俺たちにも分からねェわ…」
「おれはアレ呼ばわりなのか…」
『ちょっと待っておくれ、思い出せそうで思い出せない…歳だなぁ……あっ! そう、ミンク族じゃないか?』
「えっ!? オジさんおれの一族の事知ってるの?!」
『私自身はミンク族に会うのは君で三人目だが知り合いに聞いた事あったんだよ、戦闘に特化した部族だとね』
「え、えへ! 戦闘に特化したって言われると嬉しいな!!」
「ベポ絆されんなよ?!」
「結局この人のこと何も分かってねェんだからな?!」
「ハッ! そうだった!」
『うーん警戒心が強いね君たち…別に何もしないのに』
ベポが少々ジョーの言葉に絆されそうになっているのをシャチとペンギンは慌てるように言い聞かせているのだがそれを聞いた彼は不服そうである
ロシナンテの大切にしているローの船員である彼らをどうにかしようなど微塵も思ってはいないし、何かするなら声をかける前に船を沈めているとジョーは思う
まぁそんなこと言ったら更に警戒されるだけだと分かっているジョーは肩を竦めるだけで特に何かを言う事はなかった
三人は冷や汗をかきながらもジッとジョーの動向を見張っているのだが、彼は全く気にした素振りもなくウマヘビへと近づく
そうすると必然的に三人にも近づく事になり、ペンギン達はジリジリと後退しながら横に避けジョーの歩く道を無意識に空ける
余りにも自分に怯えている面々を見てジョーは「私ってそんなに怖いのか?」と内心ショックを受けていたりするのだが顔には出ていない為誰も気付けない
元々キャップとローブのせいで表情を読み解くことは難解なのだが、その事を彼は完全に頭から抜け落ちている
ジョーが来たことにウマヘビは大層嬉しそうに「ブルル」と唇と振るわせ彼に顔を寄せてきた
『お前には色々苦労をかけるね、もう少し待ってておくれよ』
「ヒヒンブルブル!」
『今回の旅が終われば暫くはまたゆっくりする事になるさ』
「ブルル…」
『え? もう少し旅をしたいの?』
「ブルブルヒヒン!!」
『うーん…あまりあの子達を待たせるのもなぁ…』
「おいペンギン!! あれどう言うこと?! どう言う事なんだよ!!? 何で海王類と喋ってんの?!!?!」
「俺が知るか!! あの人に聞いてみればいいだろ!!」
「聞けるかっ!!」
「海王類と喋れるなんて凄いなァ!! おれも喋れるようになるかな?!」
「「なるかっ!!」」
「調子乗ってすみません…」
「何やってんだお前ら」
「あっキャプテン!」
「それがあの人突然海王類と喋り出して…」
「はっ? そんな事できる訳ねェー……話してんのか、アレは…」
「会話してる様に見えるが、ジョーさんはウマヘビの言ってる事は分かってねェそうだぜ」
「 ! ならアレは茶番か…?」
「あの人的にはウマヘビとコミュニケーションをとってるらしい」
「海王類とコミュニケーションってなんだよ…」
徐にジョーがウマヘビと話し出した事にシャチとペンギンはギョッとし、ベポはどこか羨ましそうにしていた
そんな彼らの元に食堂で話をしていたローとロシナンテが出て来てジョーがしている事をペンギンが説明する
ぶっちゃけ説明された所で海王類と話している時点で意味が分からないローなのだが、すかさずロシナンテからのフォローが入るのだが結局意味不明であった
海王類と話をしているのもそうだが、まさか名前まで付けているとは思ってもみなかったがその名前が見たまんまでネイミングセンスの欠片もないとローは思う
ジョーは背後で色々話をしているのは気付いているのだが全く気にする事なく顔を近づけて来たウマヘビの鼻の部分を撫でる
一挙手一投足観察しているロー達の視線がグサグサ刺さるジョーは「いい加減鬱陶しいな」と言う思いでウマヘビを一撫でしてから彼らに向き直った
『話はもう済んだのかな?』
「あぁ! ローの近況も聞けたし俺は満足だ!」
『そうか…君はもうロシィと話さなくていいのかい?』
「別に今生の別れじゃねェんだ…今度は俺から会いに行ってやるよ」
『ふーん…君達に私たちが住む場所を見つけられるか見ものだね』
「いやあそこを見つけるのは流石に厳しくないか…?」
『まぁ…そうだろうね、ロジャーもシャンクスくんも見つけるのに相当掛かったようだし』
「マジでか……」
「ちょ、ちょっと待てっ!! 今ロジャーとシャンクスと言ったか?!」
『え、うん言ったけど?』
「それはゴールド・ロジャーと赤髪のシャンクスの事か?!」
『二人以外にその名前の人は居ないだろう?』
「な、んでそんな大物とアンタは知り合いなんだ…!? 何なんだよアンタ…!!」
『何って…ロジャーは私の弟だよ、言わなかったか?』
「「「「 はぁ?!!?! 」」」」
「ジョーさん…そのカミングアウトは心の準備が欲しい所だぜ…?」
『そうかい? 別にロジャーだって人の子なのだから兄弟がいたって不思議じゃないだろう?』
( そう言う問題じゃないんだよなァ…… )
ジョーが誰もが知る大物海賊の名前を挙げた事にローは驚愕し、彼が何者なのか本気で分からなくなったがまさかの爆弾発言が投下される
ロジャーの兄だと言ったジョーは「大した事は言っていない」と言いたげな態度だが、その事実を知らない者からすれば衝撃的過ぎるのだ
それをロシナンテが教えるのだが、如何せん彼は聞く耳を持たず的外れな考えを持っている様である
ロー達は開いた口が塞がらない状況に置かれるも、ハッと我に返ったローはジョーが言っていた「海軍にとって看過出来ない存在」と言う意味を真に理解した
そりゃ「海賊王」の親族が居れば海軍からしてみれば何としてでも「処分」しておきたい存在だろうと
そして最近になって「ゴールド・ジョー」と言う男の手配書がかなり高額な懸賞金を掛けられて発行されたのをローも見ている
そんな男がまさか恩人であるロシナンテを助けた人物として目の前にいるだなどと誰が思おうか……誰も思うまい
衝撃的過ぎる事にペンギン達は完全に固まってしまっており、ローは「厄介な人物と顔見知りになってしまった」と心底思うのだった
( 話が終わったなら私達はお暇しようか )
( そうだな、みんな待たせてる状態だし )
( まぁそこはクロッカスくんがいるから大丈夫だろうけど )
( そうなのか? )
( うん 医者なだけあってクロッカスくんには頭上がらないっぽいしね )
( なるほど、じゃあそう言う事だから俺たちは行くぜロー! )
( あ、あぁ…コラさん、あまり無理すんなよ )
( ガキが何言ってやがる! 俺は大丈夫だ!! )
(( スゲェ不安だ… ))
( ロシィ…十代の子に心配されるのはどうかと思う… )
( Σイヤイヤ!! そんな心配されるようなー…おわっ?! )
( ………私がちゃんと見ておくから心配はいらないよ… )
( あぁ……頼む…… )
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