救済を
name change
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
シモツキ村に食料調達をする為に立ち寄ってから更に数週間
ようやく彼ら…特にロジャーとルージュの目的である、エースの住まうドーン島へと辿り着いた
流石にフーシャ村にウマヘビを伴って着港することは出来ないため以前待機させた岬へと向かう
上陸出来る高さまでウマヘビが顔を上げ、それぞれがドーン島へと足を踏み入れば眼前に広がるは奥も見えぬ森である
そんな冒険感漂う場所にロジャーとおでんがウズウズと今にも走り出しそうな雰囲気を読み取ったジョーはすかさず二人の襟元を掴み止める
そのタイミングで走り出そうとしていた二人は「ぐぇっ!」とカエルを潰した様な声を出してその場にひっくり返った
「な、にすんだ兄貴!」
「ゲホゲホッ! 喉が詰まったぞ!」
『お前達が後先考えずに走り出そうとするからだろう?』
「だってよ! 冒険の匂いがするんだぜ?」
「そうだぞジョー!」
『そうか、今すぐ帰りたいんだね?』
「「ごめんなさい」」
『分かれば宜しい』
「ふふふ」
「お二人とも変わりませんね」
「この二人止められるジョーさんがスゲェよ…」
ジョーの笑みと「帰る」という言葉にすかさず正座をして謝る二人を見て、ルージュとトキは微笑みロシナンテは彼に対して賞賛する
ともあれ、無事にドーン島に着いたのは事実であり二人…特にロジャーのテンションが上がるのは致し方ないだろう
それを一応分かってジョーもそれ以上何かを言うことはなく、溜め息を吐いてからこれからの事を考える
エースに会いに来たのだから先ずは彼を探すのを優先しなければ、間違いなくロジャーは一人駆け出して行ってしまうだろう
それだけは断固阻止しなければならない為、早々に探したいのは山々だが以前会いに来た時から同じ場所にいる事がなかったエース
まぁ彼らは見聞色の覇気を使えるのだから人探しはそう大変ではないが、エース単体を探すとなると話は別である
それでもエースがこの森から外に出ている事は無いと思うジョーだが、失念していた事が一つ
『…エースはまだ海に出てないよ、ね?』
……………………
……………………………………
「確かにその可能性もなくはねェのか?!」
「ロジャーの息子に会えんのか?!」
『分からないけど可能性はあるよね、私がエースを見つけた時あの子九歳だったし…あれから四、五年は経ってるし…ねぇ?』
「せっかくここまで来たのに冗談だろ!?」
「何とかならんのか?!」
『もし海に出てたら私にもどうしようもないよ…うーん…ねぇロシィ、』
「なんだ?」
『海兵の時、十代で海賊やってる子は結構居たのかな?』
「まぁ…少なくはなかったよな」
『だよね…シャンクスくんだってロジャーの船乗ってた時まだ十代だったろうし』
「いやアイツは赤ん坊の時に拾った」
『………冗談だろう…? 拾ったって…まさか人攫いを…』
「ロジャーそんな外道な事をしておったのか?!」
「Σ違っげェよ!! 奪った宝箱の中にいたんだ!!」
『え…そんな事ある…?』
話しがエースの事から逸れに逸れてシャンクスが赤ん坊でロジャーの船に乗る事となった事が判明した
まさかのカミングアウトに驚きを隠せないジョーであったが、それは彼だけでもなく聞いてた全員が驚きである
何より元海兵で今の「赤髪のシャンクス」しか知らないロシナンテの驚きようは言わずもがなだ
話しがこのままシャンクスの生い立ちの方に流れそうになるのをジョーが食い止め、一先ずエースを探してみる事に
とは言え全員で探しに出るのは些か心配な部分のあるジョーは、「探してくるからここで待機」と皆に言う
無論それに異議申し立てるのはロジャーとおでんであり、「オレ達も行く!」と言い張るが彼の無言の笑顔に撃沈する
ジョーが一人エースを探しに行ってしまったのを見送ったロジャー達は、待機と言われたが如何せん手持ち無沙汰である
後ろは海、前は森と言い何もする事なくこの場で待つのは行動力の鬼であるロジャーとおでんには苦痛でしかない
「兄貴め…ビブルカードがあるんだから分かれて探しても問題ねェのによ」
「確かに! 何故それをジョーに言わんのだロジャー!」
「俺も今思ったんだよ」
「こうも待たされると動きたくて堪らんな!」
「いやいや、まだ5分も待ってないだろ…」
「ロシィは兄貴の味方か? つーかお前には甘いよなジョーのヤツ」
「それはおれも思っておった! おれ達との態度と全然違うのは何故だ?!」
不満の矛先がロシナンテに変わったのだが、その不満が「ロシィに甘い」と言うもので何とも小さい事である
そんな事を言われたらロシナンテは「日頃の行いのせい」だと思い、それを黙って聞いていたルージュとトキも苦笑いを見せる
一先ずこのまま何もせずジッとしているのも暇なため、女性陣が持ってきていたティーセットでロジャー達はお茶をする事になった
その頃ジョーがコルボ山の奥へと足を進んでいると、湧いて出てくる猛獣達だが彼の纏う覇気を本能で感じ取っているのか襲い掛かる事はない
そんな様子を見ながら人の気配のする方へと足を進めれば「いくぞー!!」と言う声と同時にボカン!と殴られる様な痛々しい音が響く
声のする方へ向かえば少年から青年へとなろうかと言うくらい成長したエースと麦わら帽子を被ったルフィが修行をしていた
二人はジョーが近づいて来ている事に全く気づいておらず、彼は敢えて少し離れた所から二人の闘いぶりをみる事に
ルフィが姿勢を低くしたかと思えば「ゴムゴムの
以前会った時は能力者だと言う話は全くしておらず、ルフィの性格からしてもし能力者だったのならその事を言っていただろう
カナヅチとは言っていたが、能力者だからカナヅチと言うよりもただ単に本当に泳げない様な言い方だったのだ
この数年で悪魔の実を食べてしまったらしい事を知ったジョーは、完全に海に嫌われてしまった事にルフィは落ち込んだだろうなと思う
ジョーがそんな事を考えている間にも二人の戦闘は続いており、ルフィの攻撃を難なく避けるエースは容赦なくルフィを蹴り飛ばす
結構な威力があった蹴りをモロに喰らったルフィはそのまま後方へ吹き飛び木に激突してそのまま地面に倒れた
「くっそォー!! 今日こそエースに勝てると思ったのに!!」
「はっ! 誰がオメェなんかに負けるかよ!」
「なんだと! 次はおれが勝つ! もう一回勝負だエース!」
「何度やったって結果は変わらねェよ!」
『精が出ているねエース』
一通り二人の修行を見てからなんの躊躇いも無く彼らの前に姿を現したジョーにエースもルフィも驚き目を見開く
エースに至っては己の名前を知られている事と、なんの気配もなく背後を取られていた事に危機感を覚えた
しかしよくよく見てみればどこか見覚えのある風貌であり、現れたのが己の「伯父」だと言っていた人物だと気づいたエースはそれはそれで驚いた
ルフィとも顔見知りではあるのだが、ジョーがルフィと会った時とはまた髪型がガラッと変わっているのもあり「誰だオッサン?」と首を傾げている
ジョーに至っては「見ない間に随分と成長したなぁ」と呑気に考えていたりする
「オッサンなんで居んだよ」
『久しぶりに会って一言めがそれかい? まぁ驚くのも無理はないけれどね』
「エースこのオッサンの事知ってんのか?」
「まぁな」
『酷いなルフィくん、私の事忘れてしまったの?』
「んー?」
「ちょっと待て、ルフィとも会った事あんのか?!」
『この下にある村のバーでね』
「あ…あぁ――――――っ!!!! あの時のカナヅチのオッサン!?」
『そうだけど覚え方が独特だね…』
「なるほど、ルフィがここに来る前に会ってたって事か」
ジョーの説明にエースは心得顔を見せ、ルフィはまさかフーシャ村で一度会って話した人物だとは思わず吃驚仰天である
それもそのはず、ジョーの見た目は彼らと会った時とさほど変わっておらず、変わったと言えば髪型と色だけだ
エースはあれから数年経っているのに寧ろ若返ってさえ見えるジョーに少々不気味なものを見るような顔を今度は見せる
甥にそんな目で見られるジョーは苦笑いをしながら「何か聞きたいことでも?」と問う
「数年前と見た目が全然変わってねェっつーより若く見えんのはなんでだよ」
『それは私の能力に関係しているね』
「えっ!? オッサン悪魔の実の能力者なのか?!」
「確かにそんな事言ってたな…詳しくは教えてくんなかったけど」
『簡単に言えば、私が戻したいと思う事象を戻せる能力だよ』
「 ???? 」
「戻したい事象を戻す…だからお袋とアイツを…いや、有り得んのか…?」
『まぁそう思うのも無理はないけれど実際に出来ている訳だからね』
「エース分かったのか? どう言う意味だよ!」
「もし怪我してもオッサンの能力を使えば怪我のない状態に戻れるって事だろ」
「えェ―――?! そうなのかスッゲェ!!!」
『因みに言っておくと私の能力は生命体にしか作用しないよ』
エースの解りやすく的の得た例えにルフィは驚きながらも目を輝かせ、そんな彼らにジョーも補足をしておいた
ともあれジョーは目的の人物であるエースを見つけることが出来て心底ホッとし胸を撫で下ろした
もし既に海に出て航海していますとでも言われたら何処を探せばいいのか分からないし、見つけられる確率は極端に下がる
故にこうしてエースが出る前にここに来れて良かったと思うのと同時に、以前来た時に共にいた少年ーサボがいない事に内心首を傾げる
人に対してかなり警戒心の強いエースが唯一心を許し行動を共にしていた友がこの場にいないことにジョーは違和感を覚えるのである
身なりからしてそれなりの身分の子だったように感じていたジョーだが、実際に聞いた訳ではない為本当にそうかは分からない
エースにサボの事を聞くか聞かないか考えるジョーの何かを探るような視線に気づいたエースは「なんだよ」と言いたげな目をした
『一つ聞きたいのだけれど…』
「なんだよ」
『以前一緒にいた子は一緒じゃないのか?』
「 ! 」
「オッサンもサボ知ってんのか?!」
『うん、前にエースに会った時に一緒にいたからね』
「―――…サボはもういねェ」
『………そうか』
ジョーの問いに一気に重い空気が漂い、エースの苦虫を潰した様な顔とルフィの暗い顔を見ればサボに何が起きたのか大体想像できる
何があって彼の命が脅かされたのかジョーにも分かりはしないが、何か理由がない事にはそんな事にはならないだろう
今の二人に慰めるような事を言っても恐らく逆効果だろうと分かるジョーは「彼の分まで強くならないとね」と言う
その言葉に弾かれたように顔を上げたエースの目には闘志が燃えており、言われなくても分かっていると言っているようだ
ルフィも同じように強くなる気は満々のようであるが、如何せん先ほどの闘いぶりを見てもエースには敵わないようであった
『二人のやる気がまだあるなら、私が少し修行を付けてあげようか?』
「 !! 臨ところだ!」
「オッサン戦えんのか?」
『まぁ人並み以上には戦えるかな』
「ふーん」
「おいルフィ、お前舐めてるとオッサンにボコボコにされんぞ」
「なにおう!? おれがオッサンに負けるわけないだろ!!」
『凄い自信だね、なら私も手加減なしでやろうか』
やる気に満ちているエースと少々侮り、ジョーには負けないと息巻いているルフィ
エースは以前ジョーを捕まえては強制的に修行に付き合わせたが、その度に扱きに扱かれた苦い思い出がある
今は前以上に力を付けている自覚はあるものの、ジョーに敵うかどうかは正直分からない
それだけ圧倒的な力の差をあの時エースはジョーによって植え付けられていた
エースとルフィどちらからやるか話しあった結果、エースが先にやる事になりルフィは「おれが先やりたかった!」と拗ねている
そんな彼を完全無視を決め込んでいるエースはジョーの前に立ち、少し腰を下ろしながらいつでも動ける姿勢をとった
ジョーは随分と余裕そうにただ立っており、その姿が以前の彼と重なったエースは不満な顔をしながらもジョーに飛び掛かる
相手の隙を探しながら殴る蹴るを繰り返すエースであったが悉く避けられ続け、時たま繰り出させるジョーの蹴りをエースは受けてしまう
そんな攻防を繰り返していれば、今度はジョーが姿勢を低くしてエースの顔ギリギリに手掌出したかと思えば足払いをしてエースを倒した
倒れたエースの腹の上に足を乗っけることで「私の勝ちだね」とジョーは息一つ乱さず微笑みながら見下ろした
「くっそ!! まだこんなに差があんのかよ…!!」
「エ、エースが負けたァ?! オッサンそんなに強ェのか?!」
「見りゃ分かんだーろが!」
『ふふ、まだまだ君らには負けな――…、こんな事している場合じゃなかったね…エース、』
「んだよ…」
『ちょっと頼まれて欲しい事があるのだけど聞いてくれかい?』
「はァ? なんで俺が…」
『エースにしか頼めないからね、あぁ心配しなくてもルフィくんは私が見ているから心配いらないよ』
「その心配はしてねェよ」
『この先の岬、覚えているかな? 私がウマヘビを待たせていた場所』
「あぁ…居たなそんなの、それが?」
『そこにエースへのプレゼントがあるから見て来て欲しいんだ』
「プレゼント? んなもん別にいらねェからもっと相手してくれ」
『悪いけどプレゼントを見て来るまでは相手しません』
そう言いながらバッテンを作るジョーにエースは口を引き攣らせながらも、ため息をついて言われた岬へと向かうのだった
渋々ながらもエースがロジャー達の居る岬の方へと歩いて行ったのを見送ってから、以外にもずっと黙っていたルフィへ目を向けるジョー
ルフィもエースの行った方へ目を向けていたが、その瞳は何処か不満そうな色をしており「プレゼントってなんだ?」とジョーに向き直る
「エースだけなのか? 俺もなんか欲しい!!」
『うーんまさかルフィくんも一緒にいるとは思ってなかったからなァ…』
「エースだけズリィ!!」
『んー…じゃあルフィくんと私の共通の知り合いの話はどうかな?』
「キョーツーの知り合い? 誰だそれ」
『シャンクスくん』
「 !? オッサンもシャンクスの事知ってんのか?!」
『うん知っているよ、彼の船に乗らせてもらった事もあるよ』
「えっホントかよ!? おれが何度頼んでも乗せてくれなかったのに!!」
『まだ幼かったルフィくんを危険な目に合わせたくは無かったんじゃないかな』
「副船長もそんなこと言ってたけど海賊なんだから危険なのは当たり前だろ!」
『うーんご尤も過ぎる意見だね…でももしルフィくんを船に乗せて君に何かあったらシャンクスくんは間違いなく責任を感じていたと思うよ
例え海賊船に乗ったら自己責任とは言え、まだ幼いルフィくんを乗せるとなると責任者となるのは船長のシャンクスくんなんだからね』
ジョーを船に乗せて己は乗れなかった事が不服なルフィを諭すように話す彼であるが、それでもルフィは「一度でいいから乗りたかった」と言う
初めて会った時からシャンクスの話をしていたルフィの様子を見るからにシャンクスに対して強い憧れを抱いているのはジョーにも分かっていた
ルフィにとって危険とか危険じゃないとか海賊船だからと言う事ではなく、シャンクスの船だから乗りたかったのだと
どんなに諭すように話をしようにも、結局「おれは乗れなかったのに」という所に話がいってしまう為ジョーも頭を悩ませるハメになるのだった
ジョーとルフィがシャンクスの話をしている時、エースは彼に言われた通り前にウマヘビを見た岬へと足を向けていた
正直己にプレゼントを持って来たのなら自分で持って来いよと思っていたりするのだが、何となく逆らえずジョーに言われた通りに動いている
その事実も何となく癪で、エースは口をへの字にしながら獣道を進んで行けば笑い声と話し声が聞こえてくる
「こんな所に人がいるのか?」と思いながらもしかしたら海賊がいる可能性もある為、息を殺し見つからない様細心の注意を払って近づく
近づいて誰がその場にいるのか目に留めたエースは、見覚えのある人…母であるルージュと父(認めてない)であるロジャーの姿
周りに知らない人も三人ほどいるが、それはエースにとってさして問題ではなく、ルージュとロジャーが居る事に動揺を隠せないのだ
しかし先ほどジョーがなんとしてもエースに「プレゼント」を見てくるように言った意味をここに来て理解できた
だが、だからと言って以前一度だけ映像電伝虫を通して少し話しただけの両親の元へ行けるかと言ったらまた話が別である
エースが隠れながらどうするか悩んでいると、「何時迄も隠れてねェでこっちに来いよエース!」と己を呼ぶ声にビクリと肩を揺らす
まさかこの場にいる事がバレているとは微塵も思っていなかったエースは、バッとロジャー達の方へ視線を向ければ全員が己の方を見ていた
何処となくバツの悪いエースだったが一泊置いてから隠れていた場所から出て行き、距離を空けた状態で彼らの前に立った
「……………、」
「見ねェうちにまた随分と大きくなったな!!」
「えぇ本当に…元気でいてくれて嬉しいです…」
「おぉー?! お主がロジャーの息子か! ロジャーにそっくりだなァ!!」
「やめろ! コイツに似てるなんて嬉しくねェ!! 俺はコイツを父親とは認めねェ!!!!」
「まぁ…」
「うわァ…」
「ロジャーお主…息子に相当嫌われておるな…?」
「わははははっ!! 直接嫌いだって言われてっからな!」
「それ笑い事か…?」
エースがロジャーに似ていると言う話になると、本人は断固としてそれを認めたくなく鬼の形相で強く否定する
それにはトキは驚き、ロシナンテはドン引きし、おでんは気を遣うように言い、ルージュは困った顔をしている
自分が嫌われている事は以前電伝虫で話をした時に分かりきっているため、こうして顔を合わせても変わらない事は大体予想は出来た
故に大口開けてロジャーは笑うのだが、そんな姿を見たロシナンテの呟いた言葉は誰もが思う事である
大人組で色々話している間エースはずっと警戒しているように近づくことはせず、ただただ彼らの事を見ているだけだ
ロジャーが「こっち来いよ!」と言ってもガン無視し、そんな対応をされたロジャーをおでんが爆笑し殴られると言う漫才じみた事もしている
ジョーには「プレゼント」だと言われたが、エース的には母に会えた事は有り難いが如何せん余計な人が多い
誰にでも心を開くような生き方をしていないエースからして、今の状況は居心地の悪い事このうえなかった
そんなエースの様子に気づいているのは母であるルージュと同じく子を持つトキの二人で、互いに見合い小さく頷いてからルージュが立ち上がる
ルージュの突然の行動にワイワイ騒いでいたロジャーとおでんは「おっ?」と言う顔をし、ロシナンテはただ様子を見ている
彼女はエースの側へと寄り、エースは突然近づいてきた母に緊張するのかピシリと固まり直立不動になってしまう
「エース、向こうで少し私とお話ししましょう?」
「え……おぅ、」
「待て待て! 俺も一緒に…」
「ロジャーさんは少し待っていて下さい」
「Σえっ!?」
「わははははっ! ロジャーお主仲間外れではないか!!」
「うるせェーこの野郎!! 喧嘩売ってんのか?!」
「おーやるかァ?!」
「……これジョーさん戻って来た時怒られるんじゃ…」
「あの人たちの事は放って置いて私たちはお茶の続きでもしましょう」
「あ、はい」
ルージュに連れられエースは少し離れたところで二人腰を下ろし話をし出すのだが、ロジャーが除け者にされ事におでんは大爆笑
それには流石のロジャーも思う事があったのか、おでんと取っ組み合いの喧嘩を始めるのだがこの場に止めてくれる人はいない
トキは完全にロジャーとおでんを放っておく気でいるようで、ロシナンテもそんなトキに誘われお茶のお代わりを貰った
輪を離れた二人はルージュが質問をしてエースが答えると言った感じにポツリポツリと会話をしている
親子とは言え、ずっと離れて暮らしていた事もあり互いに距離を測り兼ねており話が弾むと言うのはまだまだ難しい
「大きくなったわね、もう十三歳だものね」
「 ! 俺の年齢知ってんのか…」
「ふふ当然よ、息子の事だもの」
「……ふーん、」
「ふふ…エースはこの先海へ出るの?」
「おう、海に出て俺は名声を手に入れるんだ」
「エースなら直ぐに手に入れられそうね」
「俺が名を上げるの見ててくれよ、その時はお袋のファミリーネームを名乗るからよ」
「 ! それがいいわね…あの人のを使ったら狙われてしまうもの」
「そうじゃねェよ、俺がアイツと同じのを名乗りたくないだけだ」
「……そんなにロジャーさんが嫌い?」
「お袋には悪いがあんな奴大嫌いだ! アイツのせいで俺がどれだけ苦労したと思って…! …悪ィ、お袋に言う事じゃなかった」
「ふふ…良いのよ、私たちのせいでエースが大変な思いをしていたのはジョーさんに聞いて知っているもの」
「 ! …アイツの事は嫌いだけど、俺…お袋には感謝してんだ」
「 ! 」
「ガープのジジィから話は聞いてる…命懸けで俺を守ってくれてありがとう…」
真っ直ぐにルージュの目を見て言った感謝の言葉に彼女は目を丸め、その瞳に涙いっぱい溜め幸せそうに微笑んだ
二人の話声は四人のいる所まで届きはしないが、親子でしっかりと話ができているのは遠目から見ても分かった
その輪の中に入れていないロジャーは「心底不服です」と言いたげな表情をして妻と息子の後ろ姿を眺めている
そんな姿に流石のおでんも「弄りすぎたか」と思い、ロシナンテも不憫だなと思いながらロジャーをチラリと見た
だがロジャーがずっと黙って我慢しているはずもなく…突然立ち上がったかと思えば、二人の元へ駆けて行きエースを真ん中にして腰をかけた
無論、突然隣にやってきたロジャーにエースは心底嫌そうにして離れようとするが、ロジャーに引き止められそれも出来ない
無理矢理座らされればエースは抵抗して二人の攻防はどんどん取っ組み合いへと変わっていき、終いにはエースがロジャーに殴り掛かっている
しかし覇気も知らない子供のパンチにロジャーが当たる訳もなく、ヒョイヒョイと避けていればエースはムキになっていく
「クッソが! 避けんじゃねェ!!」
「わはははっ! それはオメェが弱ェから当てらんねェんだよ!!」
「俺は弱くねェ!!」
「ヒヨッコのくせに何言ってやがる!! おらカウンターだ!」
「ぐっ!! っのやろォ!! 絶対ェ負かす!!!」
「わははははっ!! 出来るもんならやってみろ!!」
ロジャーは心底楽しそうにエースを煽りに煽り、殴る蹴るを仕掛けてくるエースの攻撃を悉く避け続け、隙があればカウンターをお見舞いする
ドカッ!バキッ!と痛々しい音が響くのだが、それを受けているのは全てエースでありどんどん傷が増えていく
その姿をハラハラした様子で見ているのはルージュで、おでんは楽しそうに二人のやり取りを見ている
トキとロシナンテは相変わらず我関せずで一緒にお茶をしているのだが、どのお茶にはどのお茶請けが美味いとか話していた
暫くロジャーとエースのじゃれ合い(?)が続いたのだが、最終的にはエースがボロボロにされた所で二人のやり合いは終了した
「ハッ…! ハァハァッ! く、っそ…!! 一発も、当てられなかった…!!」
「俺がオメェに負けるかよ!! もっと強くなって出直して来い!!」
「覚えてろよ…!! 必ずテメェをボコボコにしてやるからな…!!」
「そん時は受けて立ってやるさ!!」
この先我が息子が己に挑戦してくると思うとロジャーは嬉しくて仕方なく、地面に倒れてるエースを笑顔で見下ろした
見下ろされる事も癪に障るエースは嫌そうな顔をしながら大きく息を吐いて起き上がり「帰る」と言って来た道を戻ろうとする
そんな息子をすかさず止めるロジャーだったが、エースは彼を無視してルージュに「じゃあなお袋」とだけ言って行ってしまった
もっと話をしたかったロジャーは残念そうに肩を落としおでん達のいる場所へ戻り腰を下ろし飲み残してあるお茶を流し込んだ
エースは足早にジョーとルフィがまだ居るであろう何時もの修行場へと戻れば、案の定そこに二人はまだいて話をしているようだ
話をしていると言うか、ルフィが一方的に話をしていてそれをジョーが相槌を打ちながら聞いていると言った方がいい
以前何処かで見た光景だが、この光景を知っているのは酒場のマキノとその場にいた村の人間だけである
ガサッと音を立てながらエースが戻って来たことに気づいたルフィは「あっエース戻ってきた!」と嬉しそうに言う
しかし戻って来たエースの姿がボロボロだった事にルフィは心底驚き飛び上がるようにしてエースの側へと駆け寄った
「エースどうしたんだよ?! すげぇボロボロじゃねェか!!」
「何だっていいだろ…ジョーのオッサン、アイツに勝つにはどんだけ強くなればいい」
「 ???? 」
『 ! そうだね…私に勝てない事にはあの子に勝つのは無理かな』
「アイツの方っがオッサンより強ェのか?」
「なァなァ、なんの話してんだ?」
『本気でやり合った事はないけれど、海を渡って来たあの子に敵うとは思ってないよ』
「ふーん…ならまずはオッサンを倒す」
『ふふ、私もまだまだエースに負ける気はしないよ』
「今はだろ、もっと強くなって絶対ェオッサンもアイツも倒す」
「なァ! 二人ともなんの話してんだよ!! おれにも教えてくれよ!!」
自分には分からない話をジョーとエースに「俺も混ぜろ!」と言いたげにルフィが地団駄を踏みながら抗議する
その姿にジョーは苦笑いを溢し、エースは面倒臭そうな顔を隠しもせずルフィを一瞥し溜息を吐いた
ともあれ、ジョー的には「エースに会う」と言う目的を達成出来た事もありこの島に長居する理由はない
他にもロシナンテが気にしている北の海に居るであろう少年に会いに行くと言うべつの目的があるのだから
『それじゃあ私は行くから、今度は君達が会いに来ておくれ』
「なんだ、もう行くのかよ」
「えぇー?! もっとゆっくりして行けよ!!」
『そうしたいのは山々だけれど私達にも予定があるからね、今回はお暇させてもらうよ』
「ここに来たって事は暇を持て余してるもんかと思った」
『まぁ否定はしないよ』
「暇ならもっと居ればいいじゃねェか!!」
『行ったろう? まだ予定があるから長居は出来ないんだ…だから二人にはこれを渡しておくよ』
「何だこれ?」
「ただの紙切れじゃねェか!」
『海に出て私を訪ねる気があるならその紙を頼りに来るといいよ』
「こんな紙切れがオッサンのとこまで案内してくれるとでも言うのかよ」
『うん、因みに二人はいつ海に出る予定かな?』
「俺は四年後、十七になったら出る」
「イイなァエースは後四年で海に出れるの! おれも早く海に出てェ!!」
エースもルフィも十七歳で海に出るのを知ったジョーは「何か理由があるのか?」と思うもそこまで深く聞く事はない
一先ず二人とも海に出る気はあるようなので、また会う事もあるだろうとジョーは思った
エースが此方に戻って来たと言う事は、岬ではロジャー達が待っていると言う事でジョーは今度こそ戻る
まだまだ話し足りないルフィは彼が行くのを阻止しようとしたが失敗に終わりエースはただ黙ってジョーの後ろ姿を見送るのだった
通って来た獣道を抜ければ待機を言い渡された面々は、相変わらずお茶を飲んでおりまったりとした空気が流れている
ただロジャーだけ何処となく暗い空気を漂わせているのだがジョーはそうなってる
『やぁ、ロジャーもルージュさんもエースとは話せたかな?』
「はい、貴重な時間を作って下さってありがとうございます」
『いいんだよ、息子に会いたいって思うのは当たり前だからね……所でロジャーは何故落ち込んでいるんだ?』
「エースと手合わせは出来たが話は殆ど出来なかった……!!!」
『それでも手合わせは出来たんだね? エースはロジャーの事を避けるだろうとは思って居たけれど』
「Σそんな事思ってたのかよ!?」
「わははっ! 実際めちゃくちゃ嫌がられておったしな!!」
「うっせェ!!!」
『トキさんとロシィには退屈だったかな?』
「そんな事ありませんよ」
「俺も別に退屈はしてない」
『そうかい? なら良いけれど』
話を聞けばルージュはエースと普通に話が出来たようだが、如何せんロジャーの様子に「予想通りだ」とジョーは苦笑いしか出ない
とは言え、以前からエースがロジャーを極端に嫌っている事は知っていた為手合わせをした事は普通に驚きであった
ともあれ一先ずはエースに会う事は出来たのだから一つの目的は達成されたと言ってもいいだろう
ジョーは「この後予定がある」と言ってエース達の側を離れたが、流石にこのまま蜻蛉返りするつもりはない
男達だけであればそんな強行を取る可能性もあったが、今回はルージュとトキが共にいる為一泊でもこの地にするつもりであった
無論、ちゃんとした宿があり身心共にしっかり休める場所であればの話だが
『せっかくここまで来たのだから少し観光でもしようか』
「おっ! ジョーが観光を許可するとは意外な!」
『ならおでんくんは真っ直ぐ帰るかい?』
「ごめんなさい、おれも観光したいです」
『よろしい』
「観光つってもここ有名な場所なのか?」
『それを私に聞く? 有名かどうかは知らないけれど、この先に高町って場所があるからそこなら色々見られる筈だよ』
「何だかんだジョーさん観光出来るかどうか知ってるんだな」
『まぁ一度ここに来た時に色々見て回ったからね…ただ個人的には観光場は私は好きではないかな』
「好きでもねェ場所に行かせる気だったのか?!」
『私は好まないってだけでお前達はどうか分からないだろう?』
ジョーがドーン島のゴア王国をよく思っていないのは以前ここに来てグレイ・ターミナルとの差を目の当たりにしたからである
故に一度見に行っただけで、あとは適当に森の中を歩き回りエースとサボに捕まれば修行に付き合ったりして過ごしていた
フーシャ村を見つけたのも森の中を歩き回っていた事で発見しただけで、ただの偶然でルフィとも出会っただけである
ロジャー達はジョーが嫌がる程の国がどんな所なのか色々聞いた結果、満場一致で「高町には行かなくていい」と言う結果となる
まさかの展開に彼もパチパチと目を瞬かせてから「なら私のお勧めのバーに行こうか」と高町に行かないならとフーシャ村までの道を進んだ
女性陣の足並みに合わせて森を歩き続ければ、村名にある様に風車がクルクルと周り長閑な雰囲気を纏う村にやって来た
ジョー以外の面々は、興味深そうに辺りを見渡しながら彼の後に続き、村の人達は見慣れない彼らを遠巻きに見ている
それもそのはずで長身の男どもが四人と小柄な女性が二人という「どう言う関係なんだ」と聞きたくなるようなメンツであるのだから
因みに彼らの服装はちゃんと一般人に見えるような簡素な格好をし、変装としてメガネやら帽子やらを被っていたりする
しかし纏っている雰囲気がただの一般人には残念ながら見えない事から村の人たちは近付こうともしないのである
そんな視線を珍しく全く気にしていないジョーは真っ直ぐにある建物へと進み「PARTYS BAR」と看板が出ている事から目的地だと皆が分かった
多少建て付けが悪いのかギィと鈍い音をさせながら扉を押し中へ入れば、「いらっしゃいませ」と声が掛かる
店主のマキノはやって来た一行が見た事ないのは勿論だが、先頭で入って来た人物を見て「あら?」と首を傾げた
『やぁマキノさん、ご無沙汰だけれど私の事覚えているかな?』
「あ…以前いらっしゃたジョーさんですか?」
『うん 今回は家族も連れて来たんだ』
「まぁそうなんですね! どうぞゆっくりして行って下さい!」
『ありがとう お言葉に甘えるとするよ、あと適当にお酒と摘めるものを頼めるかな?』
「分かりました、直ぐにご用意しますね」
『うん、よろしく頼むよ』
マキノと少し会話をしてから空いている席へと向かってジョーが後ろを振り返れば男性陣はポカンとした顔で彼を見ていた
特にロジャーとおでんに至っては「好い人はいない」と聞いていた事もあり「信じられない!」と言いたげな顔をしてジョーをガン見している
勿論、ロシナンテも驚いてはいるのだが「ジョーさんも男だしな」と納得しルージュとトキも二人の関係を気にしている様子だ
それぞれの心情を何となく察したジョーであるが取り敢えずその場に立っていると邪魔な為「早くおいで」と彼らを呼び寄せた
その声に応えて足早にジョーの座っている席へとガタガタと音を立てながら座り、「それで?」と前のめりにマキノとの事を聞きたがった
「おい兄貴、あの娘とはどう言う関係だ?」
「以前は好い人はおらんと言っておったろう?」
『別にお前達が思っている様な関係ではないよ? 以前来た時に一度立ち寄っただけで
それにホラ、シャンクスくんが来た時に話してたロジャーと同じ夢を語ってた子ともココで会ったんだよ』
「マジでか!?」
「あの夢を語る子供が!?」
「ロジャーに夢なんてあったのか?」
「Σロシィそりゃどう言う意味だよ! 俺にだってあったわ!!」
『まぁそう言いたくなるロシィの気持ちも分からなくはないかな』
「あんまりじゃねェか?!」
上記の会話は終始小声で行われていたが、時々声を張ってしまうのは内容的に致し方ないだろう
ロジャーが語り追っていた夢が何なのか知らないロシナンテと女性陣はどんな夢だったのか気になる様子
その為三人の視線はロジャーへと向いており、それに気づいたロジャーはボリボリと頭掻きながら「別に大した事じゃねェよ」と前置きする
そうして語られたロジャーの夢を聞いたロシナンテは「は?」と言う顔をし、女性陣も驚きの表情である
以前聞いていたジョーとおでんでさえも「何度聞いても度肝を抜かれる」と思うロジャーの夢
そしてその夢
当時の事はおでんも居てよく覚えているのか、懐かしい事を思い出している様な顔をしている
そんな話をヒソヒソと変わらず小声で話している所に「お待たせしました」とマキノが人数分の酒と摘みを持って来た
彼女に礼を言ってからそれぞれ飲んだり食べたりを始めたのだが、今度は外がザワザワと騒がしくなる
その事にジョー達は「何だ?」と思いながら周りの様子を伺っていると、そんな彼らに気付いたマキノが親切に教えてくれた
「恐らく港ににガープさんがいらしたんだと思います」
その言葉に男性陣は「ゴフッ!」と飲んでいた酒を詰まらせ、女性陣もまた聞き覚えのある名に目を丸めた
中でも特に驚いているのは好敵手と言えたロジャーでエースを託した事もあり内心「マジかよ!」と叫んでいる
無論それはジョーにも言えた事で、エースを引き取り育ててくれた事には感謝するがそれはそれ
直接関わってはいなくとも海兵でありロジャーを処刑へと追い込んだ事に変わりはないし「何故このタイミングで」と思っていた
別の意味で身を強張らせているのがロシナンテである
元海兵であった彼は幼い頃センゴクに助けられ、その事からもちろんガープとの面識も持っている
故に万が一この状況…処刑された筈の「海賊王」と共にいて、本部へ連絡を入れてない事を知られてはどうなるか分かったものではない
海軍本部が取引していた悪魔の実を奪った時点で海軍には戻れないし裏切り者となっているのをロシナンテは理解している
彼等を引き渡せば免責されるだろうが、数年間共に過ごし暮らして来たロシナンテには彼等を海軍へと引き渡す覚悟を持つ事が出来なくなっていたのだ
それぞれがそれぞれの事を胸の内で考えている時、ジョーにとっては更なる爆弾となる言葉をマキノが落とした
「ガープさんはルフィの祖父でよく警邏として来て下さるんですよ」
『ルフィくんの……祖父…』
「はい」
( マズい…エースは大丈夫としてルフィくんは私の事を口止めしていない )
「 ? どうかされましたか?」
『あ、あぁいや…何でもないよ』
吃りながらもマキノに「何でもない」と言うが、ジョーを良く知るロジャーは随分と動揺している彼に驚いていた
もちろんロジャー程付き合いが長い訳ではないが彼の性格を少なからず理解しているおでん達も意外そうな表情だ
マキノはそんなジョーに気づく事はなく、ガープに挨拶しなければと「ごめんなさい、少し空けますね」と言って出て行った
一先ずこの島に海軍…しかも中将であるガープが来たのであれば、残念ながらこの場に留まっている訳にはいかなくなった彼等
しかし、ロジャー達とやり合うだけの力があるガープが目と鼻の先にいて彼等の存在に気付かないなどあり得ない
無論ロジャーが生きてこの場に居るとは思ってもいないだろうが、それでも力ある者がこの東の海の島に居るのがガープからすれば問題である
ともあれ、ガープが何かアクションを取る前にこの場から出て行かなければならないとジョーは全員に目を向けた
『残念だけどこの島での観光はお終いにして早々に出よう』
「ガープなら別に平気だと思うぜ?」
『お前ね…一番会ってもらっては困るのはロジャーなんだよ? それにロシィだって会わせる訳にはいかない』
「あーそうか、ロシィは元海兵だったもんな」
「おれ達と共におる所を見られたらマズいのか?」
「まぁ…本部に連行されてアンタ達の事を強制的に話されて処刑だろうな」
「マジか」
「それはヤバいな」
『…私が思っている以上な処遇だね……本当にそうなるの?』
「センゴクさんもガープさんもそこまでする様な人じゃねェけど中将の一人のサカズキさんはそう言うの許さない人だからな」
「サカズキィ? 俺は知らねェ海兵だな」
「おれも知らん!!」
『海賊してたなら知ってても良いんじゃないの……ともあれやっぱりロシィも見つかる訳にはいかないね』
「だな、だが此処から出るっつってもあそこから出たら間違いなく見つかるぜ?」
『マキノさんには悪いけど店の裏から出よう』
ジョーの言葉に「まぁそれしか無いよな」と男性陣は頷き、女性陣もその案を否定するつもりはない
話が纏まればガタガタと席を立ち足早に店裏に向かう彼等であったがそれとほぼ同時に此方に近づいて来る気配
それに気付いた彼等はジョーを殿とし急いで裏から外に出て行き、ガープが店に入った時には彼等が座っていた席には空のジョッキとお金だけが置かれていた
急足でウマヘビに待機してもらっている岬へと向かっているのだが、あの場から消えた事で不審に思われた様で後を追って来る気配
間違いなくガープがジョー達の後を追いかけており、そんな状況にロジャーとおでんは楽しそうに「わはははっ!」と笑っている
『お前達笑ってる場合じゃないよ! もっと急ぐから彼女達を!』
「すまんすまん! けどこの状況が懐かしくってよ!! よっと!」
「きゃっ」
「わはははっ!! このスリルが堪らんなァ!! トキ来い!」
「はい おでんさん!」
「この状況で笑えるアンタ達可笑しいだろ…」
『私もそう思うよ』
急足のままロジャーとおでんはそれぞれ嫁を抱き上げ、それを確認したジョー達は駆け足で岬へと向かった
ロジャーとおでんは人一人抱き上げているのを感じさせない軽やかさで駆け抜けており、岬に近づいて来たタイミングでピュイと口笛を吹く
それを合図にザッパァン!とウマヘビが姿を見せ、ロジャーを先頭に頭上にある船へと飛び乗って行き最後にジョーが飛び乗った
直ぐに出る様指示をし、ウマヘビは「ブルル!」と唇を振るわせながら海に潜り彼らの乗る船はドーン島を出るのだった
遅れて彼らのいた場所にやって来たガープは既に遠くの方に小さく見える船を見て「うーむ…」と唸るも今更どうする事も出来ないと本来の目的の元へ行くのだった
( わはははっ! 久しぶりにガープから逃げたな!! )
( 海に出るとこれがあるからいい! )
( 追いかけられて嬉しそうな海賊初めて見る… )
( ロジャー達だからね、感覚が可笑しいんだよ )
( それは流石に酷くねェか?! )
( これが醍醐味であろう!? )
( ルージュさんとトキさんは大丈夫かい? )
( 私たちは大丈夫です )
( おでんさん達に抱えられていただけですから )
( それはそれで負担もあるだろう? 特に二人は配慮がなさそうだしね )
( それは言えてる )
( さっきから酷くねェ?! )
( ジョーはおれ達に対して辛辣すぎる!! )
( エース! ルフィ! ワシじゃ!! )
( げぇジジィ!! )
( ジィちゃん何で来たんだよ!! )
( 何じゃその言い草はァ!!! )
(( ギャァ―――!!! ))
( ジィちゃんは直ぐ殴る!! オッサンの方が優しかった!! )
( あっバカッ…!! )
( オッサン…? 一体誰のことじゃ、正直に言うてみい )
27/33ページ