救済を
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海上レストラン「バラティエ」を出てから二週間が経ったある日。
大食いが二人もおりたくさん積んできた筈の食料も底をつきかけており、どこかの島で食料調達しなければならなくなった。まさかこんなにも減りが早いとはジョーも思っておらず想定外な出費になってしまうと頭を抱える。
タートル島に住んでいる彼らは働いて金を稼ぐ事もできず、あそこに近づいてきた海賊船を沈めてはそこから金品を拝借しているのだ。故にそんなにお金を持っている訳ではなく今回の出航のためにかなり出費した事もあり出来るだけ節約したい思いなのである。
だが腹が減ってはナンとやら…ロジャーもおでんもジョーに言われて満足に食べられていない事から元気がない。彼らよりも身長があるロシナンテの方が燃費の良い体をしていると内心思っていたりするジョーなのだがこればかりは体質だろう。
『仕方ない…このままドーン島に向かおうと思っていたけれど食料がない事には旅は出来ないからね。どこかに寄ろうか』
「待ってました!」
「どこの島に寄るんだジョー!!」
「この辺に寄れる島なんてあるのか?」
『さぁ私が知るわけないじゃないかロシィ』
…………………
……………………………
「いやいやいや…兄貴頼むぜ…」
「何も知らんで島に寄ると言ったのか…?」
「ジョーさん、それは流石に…」
『知らないものは知らないよ。それに最初に見つけた島に行けばいい』
ジョーの言葉に不安そうにするロジャー達を一瞥してから彼は甲板へと出てピュイーと口笛を吹けばウマヘビが顔を上げる。ザパァと浮上したウマヘビに「次島が見えたらそこに向かっておくれ」と言えば「ブルヒヒン!」と鳴いてまた潜る。
ジョーに頼られて余程嬉しかったのか先程まである程度ゆっくり進んでいたのか少しスピードを上げた事にジョーは苦笑いした。それでも食糧難になるよりは早めにどこかの島に着いて食料の調達をした方がいいと気にする事はなかった。
*
**
***
次の島に着くまで暇なためそれぞれが好き好きに過ごす中、ジョーは一人甲板で読書をしていた。よく晴れ心地いい海風に吹かれながら彼はのんびりとした時間を過ごし途中眠気に襲われながらも読書を続けている。
暫くするとウマヘビの進むスピードが落ちたのを感じ取りジョーが顔を上げれば進む先に島が見えていた。「思ったより早く島が見つかったな?」と思いながら早い分には問題ないため船内にも聞こえるように「島が見えたよ!」と声をかける。
そうすればバタバタと駆ける音が聞こえ次いでバァン!と壊れそうな音をたてながら開いた扉から顔を出すはロジャーとおでん。その後をのんびりとロシナンテが続き更に後から女性陣が出てきてジョーが見ている方へ視線を向けた。
「おー! あそこに上陸するんだな!」
「どんな冒険が待っているか楽しみだなァ!」
「いや、あそこには食料調達しに行くだけなんじゃ…」
「なァに硬いこと言ってんだロシィ! 上陸するからには色々みて回るのが鉄則だろ!」
「そうだぞ! トキ達もたまには陸でゆっくりしたいだろうしな!」
「あー…確かにそう言われるとそうだな…」
『今回はおでんくんの意見に私も賛成だけど、あくまでも食料調達がメインだよ』
「けどよ全員で調達するわけじゃねェんだろ?」
『まぁそうだけど…と言うか私がするけど、あまり目立った行動はしないでおくれよ』
そう再三注意を促すジョーだが「ローグタウンでは兄貴がやらかしたけどな」とロジャーに言われぐうの音も出ない。バツの悪い彼は咳払いを一つしてから各自自由行動でいいが夕方までには船に戻るようにジョーが伝えれば皆が頷いた。
今回は嫌な思いをしなければいいと思うジョーだが行ってみない事には何も分からない為「なるようになれ」と言う思いでもある。
島に近づけば近づくほど何だか既視感を覚えるジョーなのだが、それは彼だけでなくロジャーもおでんもトキも同じ気持ちだった。それもそのはず、今彼らが向かっている場所はシモツキ村と呼ばれる村がある島であり元々ワノ国出身の者が作った村なのだから。
無論そんな事など知らない彼らは「なんだかな?」と言う感じなのだが。普段なら港には着港せず岬がある場所へ停めることが多いのだが今回は女性陣もいる事からちゃんと港へと停める。
ただウマヘビの頭に括られているのは変わらないため多少距離はあるものの彼等からすれば些細な距離だ。故にロジャーとおでんは恒例となりつつある嫁さん達を横抱きにして上陸し、その後に続くようにジョーとロシナンテも上陸した。
「いよっしゃー! 色々見て回ろうぜルージュ!」
「はい」
「おれ達も行こうトキ!」
「はい、おでんさん」
『ロシィはどうする?』
「俺も適当に見て回ってる」
『分かった。気をつけるんだよ』
「……俺はそんなガキじゃねェ」
『ふふ。そうだけれど私からすればまだまだ子供だよ』
ロジャーとルージュ、おでんとトキはそれぞれ夫婦水入らずで観光するようでさっさと行ってしまう。残されたロシナンテとジョーだったのだがロシナンテも単独行動をすると言えばジョーが過保護のような発言をする。
それがロシナンテには不服らしく不貞腐れたような表情をしながらも町の方へ向かっていった…が途中で転けた。そんな姿を見てジョーは苦笑いを溢してしまうがジョーはジョーで食料調達もするが観光もする為別ルートで町の方へ向かった。
この島を見てから感じていた既視感がなんなのか察したジョーは「雰囲気がワノ国に似ているのか」と呟く。建物の作りから木々の感じ、それら全てがジョーの知るワノ国に似ていると言うより模した様な感じなのだ。
周りの風景を見ながら歩いていれば刀を三本も持って駆けてくる緑色の髪色をした少年。「少年の体格には刀三本とはちょっと多くないか?」と思いながら様子を見ていたら、そんな視線に気付いたのか少年と目が合うジョー。
「なんだよオッサン、見てんじゃねェ!」
『これは失礼。三本も刀を持っているのが珍しくてね』
「悪いかよ! 俺が何本持とうがオッサンには関係ねェだろ!」
『確かに君の言う通りだね』
「……変なオッサン…つーか見ねェ顔だな…余所者かよ」
『うん、そうだよ』
「ふーんまぁいいや。俺は世界一の大剣豪になる男だ! 覚えとけ!」
凄い事を豪語し「じゃあなオッサン」と言いながら駆けて行った少年を見送るジョーは「元気な子だなァ」と思いながら己も歩き出す。
それにしてもあの歳…と言っても幾つかは知らないがまだまだ少年の域を出ないであろう彼が持つには少々釣り合わない三本の刀。おでんも二刀流として刀を二本持っているが彼の体格からして二刀流は何ら問題ないのはジョーにも分かる。
やはり体の出来上がっていない少年が持つには余りあるような気がするジョーは大きなお世話だろうが少年が向かった先へ踵を返した。
少年の気配を辿って来れば彼の向かった場所は道場のようで流石にその中にまで入るのはマズいだろうと建物を見上げる。このままここに居てはただの不審者のためジョーは諦めて改めて食料調達をしに町の方へ向かうのだった。
ジョーが少年と遭遇していた頃、夫婦でデートをしているロジャー達とおでん達は何だかんだ合流して一緒に回っていた。ただおでん、トキ、ロジャーもジョー同様にこの村がワノ国に酷似している事が不思議でしょうがなかった。
基本的にワノ国から出ることは違法とされているのだが、こんなにも似ているとワノ国出身の者がいるのではないかと思わせる程だ。
「うーん…やはり何処を見てもワノ国に似ておるなァ」
「そうですね おでんさん」
「確かになァ…だがおでんが外に出るまで誰も出てないんだろ?」
「……いや確かおれの前に違法に出奔した者がおった気が…」
「マジでか? そうなるとソイツがここまで来てワノ国に似せた可能性はあるな?」
「うむ…だがそれもかれこれ何十年も前の話だ」
結局考えた所で答えが出るはずもなく、この事は一先ず頭の隅に押しやりせっかくの観光を楽しむ事にする面々。とは言え対して広い島でもないため全て回るのにそんな時間もかかりそうも無いのだが、取り敢えず近くのレストランに入るのだった。
一方一人で行動をしているロシナンテもまた適当に歩き回っているのだが何度か何もない所で転んだりしていた。その姿を村の人たちに見られては「大丈夫か?」と心配され流石のロシナンテも大変恥ずかしい思いをしながら歩いていた。
特にこれと言って見たいものも欲しいものもないロシナンテだったが、ある店に置いてある嗜好品…タバコが目に入る。今までドフラミンゴファミリーに潜入するにあたってタバコを吸っていたのだが、それが癖になってしまったのか口寂しい気がするのだ。
ジョーに助けられてからは一切吸っていなかったが吸ってもいいだろうか…と思いながらもその考えを打ち消す。
「あそこには多くの動物がいるんだ…タバコの臭いはキツイだろ…」
世話になっている手前、動物が嫌がるであろう物を買って行くのは優しい心を持つロシナンテには出来る筈もない。。タバコから視線を外し先の方を見れば、そこにはジョーが店で食料の調達をしているところだった。
あれこれとかなりの量を買い漁っているようで店主も目を回しながら言われたものを紙袋へと詰め込んでいる。
そんな姿を見たロシナンテはジョーの手伝いをしようと近づきながらジョーは何とも不思議な人だと思った。偶々ミニオン島へ来ていて見ず知らずの死に損ないを助け出した事もそうだが、何よりジョーの纏う空気感が人を惹きつけるのである。
( 死に損なって、目覚めて、目の前にあの人がいて…海賊王が生きているのにも驚いて…あり得ない事が立て続きに起きた )
初めは「信用出来ない」と言いタートル島から出る事も禁じられ、まさに籠の中の鳥の様な気分だった。ロジャーが生きていて以前手配されていた兄のジョーがいるこの場所を何とかして海軍に知らせるべきではないかと思ったりもしていた。
だが問答無用で彼らとの生活をして行くうちに彼らの人となりを知り悪い人じゃないのを知ってしまった。今では彼らの事を海軍に報告しようなんて考えが一切無くなってしまうほどジョーとロジャーに絆されてしまったのだ。
( 何より…今では俺の事も受け入れてくれてるのが良く分かる )
それが嬉しい反面、やはり元海兵でロジャーの事もあり彼らに対して少し後ろめたい気持ちもあったりするのだが…きっとその事を彼らに言えば「その時お前はガキだったろ」と「気に止む事はない」と言うのだろうとロシナンテは思う。
何より兄弟として仲のいい二人を見ていると己も血の分けた兄弟であるドフラミンゴともっと上手く出来たのではないかと思ってしまうのだ。そんな事絶対にあり得ないと分かっていてもジョーとロジャーの関係性を見ているとどうしても考えてしまうのである。
ゆっくりと…でも着実にジョーへと近づくロシナンテにジョーも気づき笑顔を見せて手を振ってくれる。
たったそれだけの行為が己もジョーの内側に入れた事を知りロシナンテは胸の奥が熱くなる思いだった。ポケットに突っ込んでいた手を出して振り返そうとしたロシナンテだったが相変わらず何もない所ですっ転んでしまう。
直ぐに立ち上がろうとしたロシナンテの目の前に手が差し出され顔を上げれば苦笑いをしているジョーがいた。
『相変わらずだねロシィ』
「すんません…」
『ふふ、なんで敬語? 元気の塊の二人もそうだけどロシィも目を離せないなァ』
「俺は二人ほど酷くねェよ」
『まぁそうだけど、そのドジっ子はどうにかならないものかね』
「………俺も転びたくて転んでんじゃない」
『ははっ! そりゃそうだね。まぁ手の掛かる弟が増えても私は構わないけれどね』
「 ! おとうと…俺が…?」
『うん。私はお前達の事が愛おしくて堪らないんだよ』
優しい笑みを見せながら言うその言葉を受けたロシナンテは何と返していいのか分からずポカンとジョーを見上げた。ジョーと言う男の懐が深い事はここ数年共に暮らしてよく分かっているが何故愛まで語れるのかロシナンテには分からない。
けれどその言葉が想像以上に嬉しく思っている己もいて、ロシナンテは本当の意味でジョーの懐に己も入れた事を実感した瞬間だった。
ジョーはいつまで経っても立ちあがろうとしないロシナンテに首を傾げながらも腕を取ってグイッと引っ張る。ロシナンテよりも何センチも身長が低いジョーであったが想像以上に力強い引きにロシナンテは容易に立ち上がっていた。
その事実にも驚きながらジョーを見下ろすと「はいこれ」とロシナンテに何かを手渡した。
「これは…飴?」
『さっきタバコを見てたろう? 動物たちの事を考えるとタバコは許可出来ないから代わりに』
「……見てたのか」
『まぁロシィがタバコを吸っていたのは助けた時に香ったから知っていたけれどね』
「 ! …口寂しくなる事があるから助かる」
『ふふ、いいえ』
タバコの代わりにと渡された飴を早速食べ始めるロシナンテは鼻をスッと通るハッカの香りが心地いい。
ロシナンテを起こす為に地面に置いていた袋を持ち直したジョーであったが、その一つをロシナンテが奪うように持つ。その行動に一瞬驚くジョーであるが直ぐに笑顔で「ありがとう」と言いながら二人並んで船のある港へと向かうのだった。
( あの子達は一体何処で何をしているのだろうね )
( さぁ…あの人らの行動原理は俺には分からないし )
( うん、それは私も分からないよ )
( ジョーさんでも分からない事あるんだな )
( 正直二人は私にとって珍獣もいい所だからね )
( 珍獣… )
( あ、この事は二人には内緒だよ? バレたら煩いからね )
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