救済を
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ロジャーが「海に出る」と宣言してから数日後にロジャーはついに生まれ育ったローグタウンから出港する。結局ロジャーは兄の説得に失敗し一人でこの大海原へ出て行く事になった。無論ロジャーはとっても不服そうな表情をしているのだがそんな顔をされた所でジョーも考えを改める気など毛頭なく港でロジャーを見送る気満々だ。それが更に面白くないと言いたげな顔にさせているなど少々鈍感なジョーに伝わるはずもない。
ただジョーも100%安心して送り出そうとしている訳でもなく、それなりに戦えるとしてもそれはこの島での話。海に出れば海王類やもしかしたら海賊に襲われる可能性だって捨てきれないのだから。
「じゃあ行ってくるな!」
『うん。気をつけて行くんだよ』
「あぁ! 俺なら大丈夫だ!! やっぱり俺としては兄貴が心配だ!」
『ダイジョーブだから気にせず自由に渡って来なよ』
「んー…分かった! 今回はジョーを連れて行くの諦めるが気が変わったら何時でも言えよな! 迎えに来る」
『フフ…うん ありがとう。でも連絡手段ないからそれも無理じゃないか?』
「あー…定期的に戻ってくる!」
『それじゃあ海に出た意味がないだろう? 私の事は本当にいいからお前の好きなように生きておいで』
「……おう!」
ジョーの言葉にしばし考えたロジャーだったが最終的にはニカっと歯を覗かせるように笑った。そして繋いでいたロープを解けば船は波に揺られ少しずつ港から離れていく。それを旅立つロジャーも島に残るジョーもお互いが見えなくなるまで手を振り続けたのだった。
*
**
***
ロジャーを見送った日から数日が経ったある日。
ロジャーが船出に出てそう経たずにジョーもまた荷物を整理し家を出ようとしていた。故郷に特別な思い入れがある訳でもなく…更に言えば家族がいない今いる意味はないと思っているジョー。そのため静かに過ごせる場所を探そうと1人海に出る事に決めたのである。
ここで彼ら兄弟の事を少し話そう。
彼等ゴール兄弟の父親は武道家であり二人ともに幼い頃から厳しく武術を教え込まれていた。そのお陰で剣術に体術はこの島で敵うものなどいないのではないかと言われる程腕っ節がたつ。それを解っているジョーであるが兄と言うもの常に弟を気にかけるものであり海に出たロジャーを心配するのは仕方のない事だろう。色々思う所はあるジョーだが父から譲り受けていた剣を持ちここを出るために準備していた船へ向かった。
そして人知れずジョーはローグタウンから出てロジャー同様に大海原を進むのだった。
*
**
***
海へ出たジョーは特に目的地がある訳でもなければ行きたい場所がある訳でもない。完全に行き当たりばったりであり、ある意味衝動的に出てきた感が否めない。それでもジョーは故郷へ戻るという選択肢は一切なく気の向くままに波に乗って船を進めた。
その結果…ジョーの乗る船はローグタウンから程近いリバース・マウンテンに真っ直ぐ進んでしまっている。このままでは何の準備もなく
この海が5つに分かれている事くらいは知っているがどこから
その間にも船は流されて行きジョーの船はリバース・マウンテンに突入してしまった。
『ここはどうなっているのだろう? なぜ海が上に登っているんだ?』
と呑気な事を言っているジョーにはことの重大さが全くと言っていいほど解っていない。とは言え今更この先が
暫く速い流れに乗っていれば船は頂上へと辿り着き、次の瞬間には勢いよく降って行く。バシャバシャと大きな水飛沫を上げて滑るように降る船に振り落とされないように手摺りに掴まりながら踏ん張る。一際大きな音を立てガクンと衝撃が走ったかと思えば船はリバース・マウンテンを降り切った。
「ここはどこだろうか?」とジョーが思っていると降りてすぐの灯台のある双子岬に海賊船が止まっておりその船員達がいるのが見えた。彼らは楽器を手に歌って踊って楽しそうに演奏しておりそれを楽しげに聴いている子クジラ。随分と賑わっているようでジョーが来た事に気づいていたとしても特に気にしていないようである。何より気にしなかったのは海賊船ではなかったからなのであるがそんな事ジョーが知る由もない。
賑わっている所に水を差すのも悪いと思ったジョーは早々にその場を離れて行った。
*
**
***
ローグタウンを出て右も左も分からない状態で気の向くままに船を進めてから数日後。ジョーは
見える島はゴツゴツとした岩が鬱蒼とした木々を囲う様に立ち並び恐らく無人島であろうことが伺える程度。普通の人なら避けて行きたい場所であろうがジョーは1人静かに過ごせる場所を探している。故に積極的にその島に向かって真っ直ぐ進んでいく。
『あの島はどんな所だろうか…楽しみだな』
のほほんとそんな事を言いながら船を進めていると進行方向に突然現れた海王類。ザバァと蛇のような体と鱗を持ちながら馬のような顔を持つそれに目を瞬かせるジョー。巨大魚を見る事はあっても海王類を見るのは実は初めてなジョーはそれなりに驚いているのである。
海王類は獲物を狙う目をしており今にも襲い掛かって来そうな程威嚇をしている。苛立っているのを感じ取っているジョーであるが初めての海王類に興味津々だ。
『これが海王類か? ローグタウンでも見たことなかったけれど…実に興味深いな』
「ブヒヒーン!」
『顔は馬のようだが…体は蛇か? 随分と変わった姿形をしている』
などなど…ブツブツと海王類を前に観察し考察しているのだが、どこかズレている。何より未だに
姿を表した海王類に至ってはビビる事も逃げる事もしない人間に戸惑っていた。実は今出て来た海王類はまだ子供であり今回初めて人間を目の当たりにしている。一先ず人間は彼等海王類にとってはただの捕食対象のため食う為にグアっと大きく口を開けた。それを見たジョーも流石に「あ、食べられそうだ」と言う事に気づき腰に下げた剣を手に取る。
船を破壊されるのも今後困ると言うことでジョーはグッと膝を曲げ海王類の目の前まで跳躍したかと思えば鞘から抜かぬまま剣を振りかぶりドガンッ!と頭に叩きつけた。その威力になす術なく海王類はバッシャーンと頭を海へと叩き付けられるのだった。
『全く。私を食べても美味くないぞ? もっと別の物を食料として欲しいものだ』
「ブルル…」
『なんだ? まだやるって言うのか?』
「ブルブル…!!」
『分かればいいんだ。所で少し手伝って欲しいんだがこの船をあの島まで押してくれないか?上手いこと風が吹かなくてなァ…ちょっと困っていたところだったんだよ』
「ブルヒヒ!」
叩きつけられ頭にタンコブを作った海王類は涙目になりながら何が起きたのか分かっていないような感じであった。しかし目の前で食べようとした人間が色々言っているのを聞き海王類は「逆らってはならない」とジョーの要望に応えるべく大きく頷く
ジョーの乗る船の後方へ回れば頭を使ってスイスイと前方の恐らく島と思われるところまで押して行く。押して貰えば岩場まであっという間に着いてしまいジョーは荷物を持ってその島に上陸した。遠目からでもそうであったがこの島は随分と鬱蒼としており人など住んでいる雰囲気は一切ない。そもそも島かどうかも怪しいほど陸地はゴツゴツとしており余り船を近づけると傷つきそうな程だ。
取り敢えずあまり近づけられないとは言え船が流されて行かないように何とかしなければならない。船首についてるロープをすぐ側にある大きな突起に括り付け「こんなものか」と頷いた。ただ気になるのは未だに先程殴った海王類がジョーを見ながら近くをウロウロとしている事だ。
『お前さんもう深海へ戻っていいぞ』
「ブヒヒンッ!」
『んん…? ここにいたいのか?』
「ブヒン!!」
『まぁ…居たいのならお前の好きにするといいよ』
「ブヒヒヒン!!」
『変わった海王類だなァ。でもここにいるなら呼び名が必要か…? うん…ウマヘビにしよう』
ジョーの言葉にどことなく嬉しそうにする海王類…改めウマヘビ(命名)はその場でクルクルと回る。それが何を意味するのか分かっていないジョーは「まぁいいか」とウマヘビをその場に残し奥の方へ行く。
ゴツゴツとした岩があるのは周りだけで、そこを過ぎれば見通しの悪い森であるがジョーは気にせず進む。邪魔な木の枝や雑木を手で避け、それでも足りない時は剣でバッサバッサ切りながら進んだ。ひたすらに進んでいる間、三方から何かが近づいてくるのをジョーは感じ取っていた。この視界がほとんどない所で襲われたら堪ったものではないと足早に広いところを探す
暫く歩けばポッカリと空けた場所へと出て、その中央に行って三方にいる何かを待つ。そう待たずして現れたのは普通のサイズを遥かに凌駕した巨大動物である。その事実に普段はのほほんとし余り動じないジョーも流石に驚きに目と口をポカリと大きく開いた。
『これは…凄いな…こんな大きな生き物が居ようとは…』
ジョーの視界にいるのは三頭の動物…大虎・大ゴリラ・大熊であり三頭とも獲物を見つけて牙を剥き出しだ。流石にこの巨大動物達を前に「まずい事になった」と冷や汗を流すジョーであるが決して悲観的になる事はない。
腰に下げてる獲物に手を置き、いつ襲いかかって来られようと対応出来る様に構える。そんな互いに睨み合っている緊張状態の中一番最初に動き出したのは大虎だった。鋭い爪と牙をむき出しにしながら勢いをつけてジョーに飛びかかってきた。それをサッと横に飛ぶことで避けるもそれを待っていたと言うように大ゴリラが腕を振り下ろして来る。その攻撃はゴロリと転がるように避けなんとか難を逃れるも更に大熊が追随してくる。
地面を抉りながら鋭い爪で切り裂くようジョーに振るうが彼は跳ね上がるようにその攻撃を避けた。
『こりゃたまげた…! この動物達種族こそ違えど連携してくるとは…!』
ザザザッと三頭から距離を取り一息ついてそんな感想をポロリと落とすジョー。そんな事を言えるだなんて余裕がある証拠か…それともただ単に抜けているだけか。まぁ動物達からすればそんな事どうでもいい事であり、ただ目の前の獲物を狩るだけなのだが。
暫く睨み合ったかと思えばどちらともなく動き出し戦いに身を投じる。動物達は慣れたもので連携をとって攻撃しジョーはそれを見切り避けながら確実に打撃をくらわす。そんな攻防が繰り広げられること数十分…流石に動物達は息が上がり始めていた。しかしジョーは多少息が上がってはいるものの、まだまだ余裕が窺え戦えるのがその出立ちで分かる。
『なんだ、もう終いか? 思ったより根性ないな』
「ぐるるるっ」
「ウホホ…」
「ガウガウ…!」
『 ?? おい逃げるのかい…? 敵を前に背を向けるのは賛成しかねるぞ』
ビリッ
「「「 Σ?! 」」」
『一度向き合ったら逃げるんじゃない』
そう言うジョーからは凄まじい威圧感があり猛獣達は恐怖に恐れ慄きその場を動けずただ震え上がる。動物の本能というべきか「この人間に逆らってはいけない」という認識が動物達の中に芽生えた。そして弱肉強食とはよく言ったもので強いものに従う習性を持つためジョーの前に三頭は平伏した。
少しイラついていたジョーもまさかそんな行動を取ってくるなどつゆ程も思ってもおらず驚きに威圧が霧散する。キョトンと一応平伏している巨大動物達をただただ見上げ「どうしたんだ?」と内心思うのだった。
( お前達何をしてるんだ…? )
( ぐるるるっ )
( ウッホホ! )
( ガウガウガウ )
( うん すまな。何を言っているか分からないな )
((( Σガーン )))
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