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「よっしゃー! 早速行こうぜ
「おぉー!!」
『…………はぁ…』
ジョー達一行は旅路の準備を進めて来て漸く出発出来るだけの準備が整い、今まさにタートル島から出ようとしていた
ただ当初ジョーが予定していた北の海または西の海に行く手立てだったのだが、それが大きく変わった
しかも一番行くにしてはリスクの高い東の海になってしまった事にジョーはもうため息をつく事しか出来ない
なぜ当初の目的地とは異なり東の海に変更となったのかは実に簡単である…ジョーとロシナンテ以外の全員が望んだから
ロジャーとおでんが東の海に行きたがるのはまぁジョーにも分かるのだが、まさかそこにルージュとトキまで便乗するとは思っていなかったのである
問題児二人ならば彼も抑え付ける事はできるのだが、女性陣をそうする事はできる訳も無く…敢えなく東の海へ行く事に渋々ながら頷いたのだ
その代わりと言っては何だが「絶対に騒ぎや問題を起こすな」「派手な動きをするな」「人の多い所では名を呼ぶな」などなど…
数多くの「約束」をする事によってジョーも頷いたのだが、それらが守られるかどうかは不安が残るところではある
その為、最後には「どれか一つでも守れなかった場合即座に帰還する」と釘を刺された事もあり一先ずは大丈夫だと思っていよう
**********
出港までに色々とありはしたが、何とか彼らはタートル島を出て東の海へ行くべくカームベルトを目指していた
彼らは女性陣が共にいる事もあり船に乗っているが、その船はウマヘビの頭部のたてがみに括り付けられ珍妙な状態にある
本来であれば普通に船に乗って行く予定だったのだがそれを知ったウマヘビが駄々(?)を捏ねた事により上記の通りになってしまったのだ
当初それをみたロジャーとおでんは大爆笑をし、カームベルトを通るに当たってはある意味いいのでは無いかとその状態で行く事になったのである
ウマヘビの頭に括ってある船だけが海面に出ており、船が沈まぬ様に器用にも泳いでいるが船の下には大きな影がある為側から見れば異様だ
あり得ない速度で進む船に誰もが驚愕な表情をするだろうとジョーは思いながら甲板で風を受けていた
ぐんぐんカームベルトを進み、タートル島を出てからものの数時間で東の海の海域へと出て、目視出来る距離に彼らの故郷…ローグタウンが見えた
「おっ! 見えて来たなローグタウン!」
「二人の故郷だな?! どんな所か楽しみだ!!」
「わはははっ! 色んなとこ案内してやるよ! ワノ国に比べりゃ見劣りするがな!」
「そんな事はない!! その島にしかない良さがあるだろう!!」
「確かに違ェねェ!!」
「え…流石にローグタウンに行くのは無理なんじゃ…」
『……ロシィの言う通りローグタウンには行かないよ』
…………………
………………………………
「「Σなにィ―――?!!」」
『何を驚くんだい…当たり前だろう? ローグタウンは流石にリスクが高過ぎるよ』
「俺もジョーさんに同意」
「バレない為に変装してんだろ?! なら大丈夫だろ!?」
「そうだぞ! お前達の故郷に行けるのをどれだけ心待ちにしていた事か…!!」
『おでんくんの気持ちは嬉しいけれど、ある意味ローグタウンで私達兄弟の顔を知らない人間は居ない筈だよ
ロジャーはそこで公開処刑されているし、私も指名手配されてるからね…海軍は島の人達に色々聴取していると思うよ』
「だから行かないよ」と冷静に淡々と言うジョーの言葉にロジャーとおでんは「そんなバカな」と言いたげな顔をする
特におでんにしてみては折角楽しみにしていた二人の故郷観光が出来ぬことに大層ショックを受けている様子である
ジョー的にはそんな顔されても困る思いであり、そもそも東の海に赴く事自体渋っていたのに故郷になど行ける筈もない
それを理解していなかったのかと今更ながら気付いたジョーは心底呆れたと言う様に深い溜め息を吐くほかなかった
ロジャーとおでんから「ローグタウンに行こう!」と言う言葉を受けるジョーだが聞き耳持たずピュイーと口笛を吹く
その音に反応したウマヘビが彼らを乗せた頭を海面からだし、更にヘンテコな見た目なのだがこの場に気にする者はいない
順調に進んでいた航海はウマヘビが顔を出した事で一時停止し、ジョーに呼ばれたウマヘビは不思議そうにブルルと唇を揺らした
『順調な航海中すまないねウマヘビ、この先にある島には寄らないから向こうの方へ方向転換しておくれ』
「ブルルヒヒン?」
『うん、よろしく頼むよ』
「ちょっと待ってくれよ兄貴!」
「そうだぞジョー! 少しだけでいいから観光したい!」
『さっきも説明したろう? 顔の割れてる私とロジャーはローグタウンに入る事は出来ないよ』
「それは重々承知している! それでも!! おれは二人が生まれ育った地を見たいんだ!!」
『おでんくん…』
「兄貴俺からも頼むぜ!! 兄貴だって久しぶりに帰てェと思うだろ?!」
『……正直な所私は故郷に帰りたいとは思っていないよ、ただ…そうだね…故郷に想い入れがあるのは事実だよ』
そう言うジョーであるが言葉とは裏腹に彼の表情は冴えず、何かを懸念している様に見える
ロジャーもおでんも感じ取っているのだがハッキリと言わないと言う事は言うべきか悩んでいる事を知っている
故に無理矢理聞き出す様な事はせず、ジョーが話し出すのをただ黙って待った
しかしジョーは思い悩んでいた事を二人に言う事はなく、再び深ーい溜め息を吐いて短時間だけ寄る事を許容した
思ったより簡単に許可が降りたことにロジャーとおでんは驚きに目を丸めたが、その後には満面の笑みで「ありがとう!」と言う
まさか許可を出すとは思っていなかったロシナンテは「大丈夫なのか?」とジョーへと視線を向けるも彼も肩を竦めるだけ
四人で会話をしている間ウマヘビは「どうするんだ?」と言いたげにソワソワしており、ジョーは苦笑いして「あの島へ進んでおくれ」と頼む
そんな彼の声にウマヘビは元気よく鳴き、また顔を海底へ入れてから真っ直ぐにローグタウンを目指した
**********
既に目視出来る距離に居たこともあり、風の影響なども関係のない一行はローグタウンに到着した
とは言え毎度の事ながら港に着港する事は出来ないため、人のあまり寄り付かない場所でそれぞれが下船する
ジョーが懐かしい光景を見ている横で、ロジャーとおでんのテンションは高く、ロシナンテ、ルージュ、トキも何処かワクワクしている様子だ
一先ずはそれぞれ目立った行動はせず好きに過ごす事となり、ロジャー夫婦とおでん夫婦は共に行動する事に
もちろんジョーのことも誘ったロジャー達だったが彼がそれを断りロシナンテと共にある場所へと向かっていた
それはジョーとロジャーが海に出るまでずっと過ごして来た所謂実家だ
互いに何も話さず歩き見えて来たその場所に「やはり」と言う気持ちを抱きながら向かった
ジョーが実家があった場所にたどり着くも、そこには跡形もない焼き焦げた木材があるだけだった
そんな有り様を見たロシナンテもこの場で何があったのかすぐに察するも、なんて声を掛ければいいか分からず黙っている
彼がローグタウンに赴きたく無かったのは目の前の現状を懸念していたからと言うのもあり、実際ジョーの考えた通りである
この地に「ゴールド・ロジャーが生きていた」と言う物を排除する為に海軍か将又この島の人間が焼き払ったのだろうと彼は思う
恐らく街に行っても同じような状況だろうとジョーは考えており、そんな故郷をロジャーやおでん達に見せたくは無かったのだ
そう思っても今回こうしてこの場に来たのは彼等がここに来ることを望んだからだが、来た事を後悔していないか少々不安に思うジョー
そう考えてから「ロジャーだったら笑い飛ばすだろう」と頭を振って考えを改めてから彼は実家だった物に背を向け街へと足を向けるのだった
ジョーとロシナンテが別行動を取っていた頃、四人で行動を共にしているロジャー達は街並みを見て回っていた
ローグタウンを出てからかなりの年月経っている事もあり、色々と変わっている部分もあるものの暮らしていた時と変わらない
「凄い活気があるな!」
「あぁ! 昔はもっと人が少なかったような気もするけどな!」
「見たところ海賊や海軍といった人達が多く見られますね?」
「うむ、確かにトキの言う通りだな?」
「何か理由でもあるのかしら…?」
「ここは
などなど…色々と話をし店を覗きながら歩いている中で時折聞こえてくるのが、やはり「海賊王」の事である
海賊達は「一つなぎの秘宝を見つけるのは俺だ」と声高らかに言い、海軍は「次世代の海賊王を出すな」など言っている
そんな中ヒソヒソと話しをしているのがローグタウンに住まう人々であり「ゴールド・ロジャーの所為で海賊が増えた」やら
「大海賊時代になっていい迷惑だ」などなど…マイナスな言葉が飛び交う
そんな声が街中を歩いている四人にもしっかり聞こえており、おでんを始めとした女性陣達もいい顔をしていない
しかしそんな中でもロジャーだけは何も気にしていないかの様に笑っており「言いたい奴には言わせとけ」とでも言うような表情である
もしこの場にジョーが居たのなら、例え話しているのが一般人であろうとも何かしらのアクションを起こしていた事だろう
何よりこの状態も彼が懸念していた一つのため「やはり」と思うのと同時に「ロジャーの事を何も知らない癖に」と文句でも言うのだろう
そんな中、突如ビリッと覇気の波動をロジャーとおでんは感じ取り、ルージュとトキは意識こそ失わなかったが顔色を悪くした
二人が意識を失わなかったのは散々三人が覇気を行使しながら試合をしていた事が起因しており、謂わば慣れたのである
三人の覇気に慣れるというのはある意味凄い事なのだが、残念ながら今いる者たちの中でそれを指摘する者は存在しない
何度も試合いをした事で直ぐにこの覇気を出しているのがジョーだと気づいた二人は女性陣をそれぞれ抱き上げて駆け出す
バタバタと走り抜けた場所にはロジャーが公開処刑された処刑台があり、それを見上げた状態のジョーがその場に立っている
周りにいた一般人は勿論のことその場にいた海賊も海軍も意識を失い地に倒れており、そこに立っているのはジョーとロシナンテだけであった
「兄貴! 一体どうしたんだ?!」
「ジョーが覇気を剥き出しにするなんてな!」
『………すまない、この処刑台を見たら昂った気持ちを抑えられなかった』
「あー…兄貴にとってはいいもんじゃねェしな…」
『それはお前にとっても同じだろう? 街中を歩いていてよく解ったよ…ここはもう私達を受け入れる事はない…決してね』
「……だろうな、だからと言って悲観的になる事でもねェだろ? 俺達にはもう帰る場所はあるんだからよ」
『そうだね、その通りだよ』
「にしても流石ジョーの覇気だな! 皆気絶してしまっている!」
「兄貴の覇気がスゲェのは分かってるけどよ、それにしても海賊も海軍も弱過ぎんだろ! 俺達の時代じゃ考えらんねェな!」
『それはお前達が規格外なだけだと思うよ』
「わはははっ! かもな!!」
怒りが迸っていたジョーであったが、ロジャーたちのお陰で何とか気を鎮めて漏れ出ていた覇気がスッとなくなる
そうであっても一度気を失った者達がすぐに目を覚ますかと言われればそんな事もなく、彼も悪びれた様子は一切ない
それもその筈で、ジョーにとってこの島にいる人全てが敵であると判断しているのだから
唯一申し訳なさそうにしたのは、ロジャーとおでんに抱えられているルージュとトキを見た時で「すまなかったね」と謝ってすらいる
ジョーと言う人間は己の懐に入れた者であれば何があろうとも守ろうとする一方、敵と見做した者には容赦など一切ないのだ
そんなこんなあり、このままでは騒ぎになるだろう事は火を見るより明らかであるため早々にローグタウンを出る羽目になる
まさか問題や騒ぎを起こすなと言った張本人がやらかしてしまっている事実にジョーは肩身の狭い思いである
そんな事もありジョー的にも流石に悪いと思っているようで「エースに会いに行こうか」と言うほどだ
その言葉に皆大層喜び、その中でも一際なのがエースの両親であるロジャーとルージュであるのは当たり前だろう
「ホントか兄貴! エースに会いに行くんだな?!」
『うん、今回は私の落ち度だからね…埋め合わせはするよ』
「やったなルージュ!!」
「はいっ! 会えるのが楽しみです!」
「わはははっ! 二人の息子か! おれも会ってみたいぞ!」
「私もです!」
「みんなで会いに行こうぜ! きっと驚くぜ!!」
『だろうね、ただロジャーの事はとことん毛嫌いしてたから避けられるかも知れないよ?』
「Σえっ! そうなのか?!」
「わはははっ上等じゃねェか! 逃げたら追いかけるまでだぜ!」
『………これ以上嫌われないように程々にね、』
ジョーの最後の言葉はロジャーに届いていないようで、ただただ「楽しみだ」と言うように笑い続けている
その姿におでんもルージュもトキも皆笑顔であり、そんな姿を見ていたら彼も会いに行かせるのを渋っていたのがバカらしく感じた
こうして一行は早々にウマヘビに括られている船に乗ってローグタウンを出るのだった
一行がローグタウンを出た後、処刑台広場で多くの人が倒れている事でロジャーに準ずる者がやって来たのではと大問題になった
あながち間違ってもいないのだが既にその場を彼らは去っており、結局解らずじまいになっているなど彼らは知る由もない
ローグタウンを出て何の障害もなく順調に進む中、通り過ぎる先にそれなりの大きさの船が鎮座しているのをそれぞれが見付ける
ジョリーロジャーを掲げている訳でなく、商船で頓挫している様子でもないその船に誰もが「あれは何だ?」と言う思いであった
ただ外装が魚のようなものとしか判断が付かない面々だったのだが、そばを通った時漂う香ばしい香りからそこがレストランである事を知る
その香りに釣られるように誰かの腹の虫が豪快に鳴り、その音に同調するかのようにまた別の誰かの腹が鳴り響く
とは言え、たった六人しか乗っていない船で豪快に腹を鳴らすような人間は限られているのだが…
「ここって海上レストランなんじゃねェか?!」
「いい香りが漂ってくる…!!」
『十中八九そうだろうね』
「腹も減ったし寄って行こうぜ!!」
「賛成!!」
『お前達だけで決めるんじゃないよ…ルージュさんとトキさんはどうかな? お腹空いてるかい?』
「はい、折角ですから寄りたいです」
「私も小腹が空きました」
『ロシィは?』
「俺も」
『そうか…じゃあ寄って行こうか』
「いよっしゃあ! おーいウマヘビー!! あの船のそばに寄ってくれー!!」
一行は良い香りを漂わす海上レストランに寄って行く事にし、ロジャーは海底を進むウマヘビへと声を掛けた
「船上から聞こえるのか?」と内心思うジョーであったが、不思議なことに聞こえたようでゆっくりとレストランへと近付いた
ただ近づき過ぎると色々と問題もある為ある程度の距離は空いており、ロジャーとおでんは女性陣を抱いて飛び移りそれにジョーとロシナンテも続いた
彼等がやって来たのは最近東の海では有名な「バラティエ」と言う海上レストランである
バラティエのオナーであり料理長であるゼフは昔は海賊団の船長としてこの海を渡って居た時に食糧難に陥った事があった
そんな時に「会場にレストランがあれば良いのに」と言う考えの下、海賊団壊滅後に今まで集めていた資金を全て投じて作られた店だ
店を作り店員も集まり始めてみれば評判は良く、口コミも広がり今では多くの客で賑わう程になっている
そんな店に香りに釣られてやって来たジョーたち一行は店内に入り一つのテーブル席へと通された
どこを見ても高そうな服を着て上品に食べる者が多く、完全に彼らはこの店から浮いているのだが気にする素振りはない
否、女性陣は若干肩身の狭い思いをしているものの男どもはそう言った事に疎いようで全く気付いていないのである
そんな中腹の虫を盛大に鳴らし続けているロジャーとおでんはテーブルに置かれているメニュー表を食い入るように見ている
何を頼もうか吟味しているのだが、どれもこれも洒落たネーミングをした料理名ばかりで何が何だか解らない彼ら
それはジョーにも言えた事であり、メニュー表を見て初めて「この店場違いじゃないか?」と思い始めたのだがもう遅い
ただ女性陣は全てが分かるわけではないが料理名を見て「何となくこう言う物かな?」想像する事は出来ていた
ただ唯一ロシナンテだけはまだ海兵だった時に知将センゴクに可愛がられていた事もあり、美味しいものを色々食べていたりする
無論、元天竜人だったこともあるのだがその時はまだ幼かったこともあり、料理の良し悪しなどちゃんと分かっていなかった部分もあるのだ
誰もがメニューを見ていたそんな時、おでんがバッと顔をあげ「おでんはないのか?!」とそれなりの声量で彼らに聞いた
まさかレストランでおでんが有るか無いかなど聞かれるとはつゆほども思っていなかった面々は流石にポカンとした顔を晒しながらおでんを見た
「この店ではおでんはやってい無いのか?!」
『いや…流石にこう言った店でおでんは出さないんじゃ無いかな…』
「俺もそう思うぜ…」
「あったら逆に驚きだ…」
「なにィー?! そうなのか!? おでんが食べたかったぞ!」
「おでん様、旅に出ていた時もおでんが出る事などおでん様が作らない限り出なかったですよ
それはつまりおでんはワノ国では食べられておりましたが、外の島々ではあまり知られていないのでは無いですか?」
「な、なんと勿体無いことをしているんだ…!?」
「考えてみりゃトキの言う通りだな」
「確かに私もおでんさんが作って下さったのを初めて食べましたね」
『私もルージュさんと同じだね、おでんくんが作ってくれなければおでんと言う食べ物を知らなかっただろうね』
「あり得ん…! あり得んぞお前達っ!! おでんを知らんとは何て勿体無い…!!」
それぞれの言葉におでんは相当ショックを受けたようで「ガーン」と効果音がつきそうな表情をして絶句している
それ程までにおでんを食べたいのか何なのか…一先ずジョー的には周りの目が痛いため声のボリュームを落として欲しい限りだ
しかもおでんの声は厨房にいるコック達にも聞こえていたのか、怪訝な顔をして彼らの席を見ているのだから堪ったものではない
すかさずジョーが「煩くしてすみません」とヘラリと謝れば、周りの客もコック達も取り敢えずは彼らから視線を外した
追い出される事や一悶着起きる事もなく何とかそれぞれが食べたいものを選び注文するのだが、注文に取りに来たのはまだ幼い少年
その少年は煩くしていた彼らの席に良い印象がないようで、硬い表情で注文を取っていくのだが如何せん、注文の量が多い
次から次へと料理名を挙げていくロジャーの様子は、普段から食べる量の多い彼を見ている彼らにとっては普通のこと
しかし注文を取っている少年ーサンジからすればあり得ない程の大食漢なのだと、若干引き気味に全ての注文を取り終え厨房へと戻って行った
その後ろ姿を見送ったロシナンテが「あの歳で店の手伝いを…」とボソリと呟き、その声を拾ったジョーは例の少年を思い出しているのかと思った
思わず口に出たような様子の言葉を深掘りする必要はないだろうとジョーもその様子を見ていた皆も内心「そうだな」と思うだけに留めた
だがこうして皆で船出しようと話をした時に北の海に行こうかって話も出ており、ロシナンテは口にこそしないが例の少年を気にしているのは一目瞭然だった
『すまないねロシィ』
「えっ…何がだ…?」
『ロシィだって例の少年に会いたいだろう?』
「 ! …まぁ会いたいとは思うが、ローならきっと上手くドフィから逃れて生きてくれてる…ってジョーさんが言ったんだぜ」
『そうだね、そうだけれど誰かに会いたいと思う気持ちは理屈ではないし私にも分かるからね』
「んなこと言うなら会いに行けばいいじゃねェか」
「そうだぞ! こうして皆で出て来ているのだからな!」
『確かにそうだね、ロシィだけに我慢を強いるのもおかしな話だものね』
「え…い、いのか?」
『勿論だよ、何より私だってロシィが命懸けで守ろうとした子には会ってみたいよ』
笑いながらそう言うジョーにロシナンテは目を丸めながらも嬉しそうに笑い「ありがとう」と言う
そんな姿にロジャーもおでんも嫁さん達も満足げに笑いながら二人の様子を見ていた
今いる東の海でエースに会った後は航路を変えて北の海へ行き、例の少年ーローを探す事となった
そんな話をしていれば、ロジャーが頼んだ大量の料理が運ばれてきて皆が美味そうな匂いと見た目に目を輝かせる
直ぐに両手を合わせて「いただきます」をしてからロジャーもおでんも料理にがっつき始め、他の面々も食事を楽しむ
タートル島にいるとどうしても単調な料理になりがちなのだが、やはりちゃんとしたレストランとなると最高に美味いとジョーは思う
普段は交代制で料理当番を回しているため、女性陣が作るものはやり美味いのだが男どもが作るのはお察しの通りだ
ガツガツと食べ進め、皿が開けば新しい料理が運ばれるのを何度も繰り返し漸く食べ終わった時には皿が山のように積み重なっていた
「はぁー食った食ったァ!」
「実に美味かった!」
「本当に美味しかったですね」
「えぇ! ワノ国では食べた事のない物も多かったです!」
「うむ! ここの料理人は一流だな!」
『だね、ロシィは舌が肥えてそうだけど美味しかったかい?』
「美味かった…つうかたまにセンゴクさんに料理店に連れてって貰ったくらいで別に肥えてねェ」
「なんだロシィ! お前センゴクのお気に入りか?」
「いや、それはどうか分かんねェけど…」
「イーヤ! あの堅物が一兵士をわざわざ飯に連れてく筈ねェ!!」
そう腕を組みながら「間違いない!」と言いたげな態度のロジャーに対し、ロシナンテは「センゴクさんのイメージどんなだよ」と思っていた
だがこんな人目の多い所でロジャーに繋がりそうな話をするのは得策ではないと思い、これ以上話を繋げるのをやめた
そんな気遣いに気づいたジョーはロシナンテをチラリと見てから伝票を手に取り会計を済ませる事に
彼の行動を見た面々はそれぞれ席を立ち、店を出る時には「美味かったぜ!ごっそーさん!」と言って出て行った
会計場に立つサンジは粗暴の悪そうな者達からの意外な言葉に目を丸めていたが、案外悪い奴らじゃないのかと思ったり
サンジの視線が店から出た連れ達に向いているのに気づいたジョーは苦笑いしながら目の前の少年に声をかけた
『私の連れが煩くしてすまなかったね』
「 ! …いや、この店に入った時点で一応は客なんで」
『ふふ、そう言ってもらえると有り難いね』
「それに…食事に対してちゃんと挨拶出来る奴をとやかく言う気はねェ…デス」
『 ! そうだね、私もそう思うよ』
一言二言話をしてきっちり会計を済ませたジョーは「美味しかったまた来るよ」と言って店を出て行き、その姿をサンジは見送った
ジョーが会計を済ませて船へと戻れば、甲板でロジャーとおでんがまだかまだかと言いたげに彼を待っていた
彼の姿が見えれば「早く行くぞー!」と手を振ってジョーを急かし、彼もまた苦笑いを溢しながらも要望に応え駆け足で船に乗り込んだ
全員が船に乗ったのを確認したロジャーが「出航ー!」といえば、やはりウマヘビに聞こえたのかスゥーっとゆっくり動き出す
その事実にジョーは「なぜ聞こえる?」と再度思い、コクリと首を傾げながらただロジャーを見た
こうしてジョー一行は美味い料理で腹拵えも済み、今回の一つの目的でもあるエースの住むドーン島へと向かうのだった
( なぁジョーさん、 )
( うん? どうしたんだいロシィ )
( ずっと聞きたかったんだが皆が言ってる「エース」って誰なんだ? )
( あれ? 教えてなかったっけ? )
( 聞いてねェ )
( ちょっとロジャー、ロシィにエースの事教えてなかったのかい? )
( うん? 言ってなかったか? エースは俺の息子だぜ! )
( は……ロジャーの、息子……?!!!??! )
( おう! 直接会えるの楽しみだぜ!! )
(( ロジャーが生きてるのも大問題だが…息子もいるって…知られたらマズいんじゃ… ))
( ロシィの言いたい事は分かるけど大丈夫だよ )
( ! 何を根拠に… )
( ロジャーもエースも…私の懐に入った子達は絶対に守ってみせるからね )
( !! )
( わははははっ! 兄貴に囲われたら無敵だな!! )
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