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レイリーと甲殻一族を連れてタートル島に帰還してから時は経ち、彼等のいつもの日常が戻って来ていた。
ロジャーとおでんは武器を新たにし使い勝手を確認しつつ己の手に馴染ませる為に毎日毎日互いに切磋琢磨している。二人が木の棒ではなく武器を手にした事で大型の猛獣達も「付き合ってられるか!」と言う様に二人を見かけると一目散に逃げて行くようにった。
ロシナンテも新しい武器を手に色々確認をしているようで彼用に新築したツリーハウスで何かしらしているようだ。ジョーに至っては虎丸を背に新聞を読むと言う毎日の日課を二人の声や武器のぶつかり合う音に邪魔されていた。
何処か静かでゆっくり読める場所を求めたジョーが辿り着いたのは亀助の頭部でありそこに腰を落ち着け読むのが彼の日課となりつつあった。
更に二年経ったある日の事。いつも通りニュースクーを読もうと開いたジョーの目に飛び込んで来た記事それは…。
【 白ひげ海賊団の母船が新世界から姿を消した?! 】
と言う見出しがデカデカと掲げられており流石にジョーも驚きに目を丸めどう言う事なのか食い入る様に読み漁った。
記事によれば数ヶ月前に白ひげ傘下の船が新世界のとある島に集まりそこには母船も泊まっていた。しかし数日もしないうちにその島から母船だけが姿を消しており、傘下の船も一斉に何か目的も持った様に散開したらしい。
その日を境にどこを見ても白ひげ海賊団の母船を見る事は無くなったと言う様な事がツラツラと書き留められていた。この記事が本当かどうかなどジョーには分かりはしないし知る由もないのだが気になる事ではある。たったの数十分だっただろうが会話をした相手なのだから気にならない方が可笑しい。
『彼等が誰かにやられる…なんて事はあり得ないだろうし…一体どうしたのか…』
新聞を開きながらジョーが首を傾げていると、亀助の息子の亀郎が海底から海面に上がってきた。まさか海底にいるとは思っていなかったジョーは「何故そこから…?」と思うのだが口にはしない。
波を立てないようにゆっくり海面から顔を出してジョーを見ることから用があるのはどうやら彼のようだ。
『どうかしたのかい?』
〈 うむ…海底から船が近づいて来ているが如何様にするかと思いまいった 〉
『海底から船? 潜水艦ってことかな?』
〈 いや普通の船であると思う 〉
『って事はコーティングされた船が海底から此処に近づいて来ているって事だね?』
〈 その通りだ 〉
『因みにその船にはジョリーロジャーは付いていたか分かるかな?』
〈 うむ 黒い帆が付いていた故海賊船であろうな 〉
亀郎の言葉にジョーは怪訝な顔を隠しもせず何故海底に潜ってこの場に進んで来ているのかと彼は思う。
コーティングされていると言う事は少なくともシャボンディ諸島まで確実に進んだ海賊であることが分かる。しかしジョーが分からないのは数々の危険を潜り抜けやっと着いたそこから逆走して来るのは何故なのかと言う事。
しかも態々コーティングを施してから海底を進んで来ている事もジョーが訝しんでいる原因だ。何よりこの磁気のない亀助目指して向かって来ている事にも疑問が浮かび上がる要因でもある。
これがマリンを掲げる海軍であったなら、どこからかロジャーが生きている事が漏れたなど思い当たる事はある。しかしそんな漏れるような行動をジョーはとってきていないし話した相手も彼自身が信頼のおけると判断した人物にだけだ。
よってこの場に海軍が来ることもまず無いだろうが海底からの来訪者だってジョーにとっては想定外な出来事である。
そんな事を亀郎の話を聞きながら思案し首を傾げているとザッパァと水飛沫を上げる音が彼等の元へ届いた。海賊船が海面に上がってきたのかと顔を上げたジョーの目に映った海賊船…遠目からでも分かる大きな白鯨を模した海賊船だった。
その事実にジョーは口を半開きにしたままポカンとした表情を晒し想定外な人物の来訪を知る。
まだ距離のある船から青く輝く何かが一直線にジョーの元へ飛んで来てジョーの上空で羽音をさせながら止まる。その人物がワシの国で出会ったマルコだと気づいたジョーは呆けた顔のまま見上げ「能力者だったのか」と場違いな事を考えた。
「よう、久しぶりだな」
『え、あー…うん? 久しぶり、だね…?』
「おでんに会いに来たんだが、この近くに船を泊めても問題ねェかよい?」
『う、うん…問題ないけど…態々新世界から来たの…?』
「それ以外にないだろい」
『いや まぁそうなんだけど…遠路遥々ご苦労様だね。船は適当に泊めてくれて構わないよ』
「了解だよい」
そう言ってマルコは颯爽と飛んで行き直ぐにモビーへと戻りモビーも話を聞いたのか真っ直ぐ亀助の方へ進んでくる。その間にも多くの亀達が島の如く亀助の周りを守るようにいるのだがジョーが許可を出したと分かったのかぶつからない様に避けて行く。
その事実にモビーに乗っている面々は「島が勝手に動いてる?!」と驚いているのだがジョーが知る由もない。ジョーに報告に来ていた亀郎もあの海賊船が敵ではないと知ると己の持ち場に戻るようにスゥーっと泳いで行った。
ジョーは先程新聞で読んだ記事を思い出し白ひげの母船を見なくなった原因はこう言う事だったのかと思い至る。
一先ず彼らがここに無事上陸出来るのを見届けるべきか、もしくは先に奥へ行ってロジャーとおでんに伝えるべきか考えた。いや…その前にロシナンテに話しておかないとレイリーの時の様にぶったまげてドジを踏むかも知れない。
奥にいる二人にも誰かがここにやってきた事は彼らの覇気で伝わっているだろう…ならばいいかとジョーは結論付けだ。モビーが亀助の頭部付近まで来たのだが亀助がデカすぎる故どの船よりも大きい筈のモビーも今は何だか小さく見える。ジョーは亀助の頭の上から覗き込むように下を見て甲板に出て来ているクルー達もドデカい島に目を丸めていた。そんな中に一際大きい白ひげエドワード・ニューゲートが愉快だと言いたげに笑いながら立っている。
残念ながら梯子とかそんなものこの場には無いため飛び移ってもらう他ないのだが…どうしたものかとジョーは考える。そんな事を思案していると、なんともタイミングよく毎日亀助の周りを彷徨っているウマヘビが顔を見せた。
見慣れているジョーは丁度いいと思うも白ひげ海賊団の面々は大型海王類が出たとそれぞれが武器を構え出す。それを見たジョーは慌てながらウマヘビは敵では無いことを伝えるのだがクルー達は「何言ってんだコイツ」と言いたげな顔をした。
そんな彼等の表情を無視したジョーは自分に気づいて近付いて来たウマヘビに声を掛けた。
『ウマヘビ、彼らがコチラに来やすいよう手を貸してやってくれないかな』
「ブルヒヒン?」
『そう、わざわざ遊びに来てくれたみたいでね』
「ヒヒンブルブル」
『後で遊んであげるから頼むよ』
「あの男…海王類と話してんぞい…」
「クックッ…ワシの国で会った時もそうだったが面白い男だ」
「え、なになに? お前らあの男と会った事あんの?」
「ワシの国でイゾウに監視をしてもらった男だよい」
「え?! なんでその男がいる所に?! 今回会いに来たのは元二番隊隊長の奴だろ!?」
「オヤジが貰ったビブルカードで来たんだから間違いねェだろうよい」
「同感だな」
などなどと話しているのはマルコ・イゾウ・サッチの三人であり他の隊長やクルー達はジョーの奇行をただ見ている。白ひげに関しては可笑しそうに「グラララ」と笑っておりジョーに対して警戒している雰囲気は一切ない。
そんな白ひげの対応もありクルー達は持ち出した武器を下ろしジョーの奇行をただ見ているだけに留まっているのだ。
ウマヘビはジョーの説得の下、己の頭の上に乗り易いように高さを調節しながらモビーへとスイッと近づいた。それを見ていた白ひげは何の躊躇いもなくウマヘビの頭上へと乗り、その後に各隊長達も続くように乗っていく。マルコだけは己の能力で亀助に移れるため翼を広げ亀助へ移動するウマヘビニ合わせて飛んだ。
1番初めに亀助に上陸するはエドワード・ニューゲートその人であり続々と隊長達も彼の後ろに控えるように上陸した。
「グララララ。突然押し掛けて悪いな」
『それは構わないけれど…君たちが姿を消したから凄い騒ぎになっているよ? 大丈夫なのかい?』
「問題ねェ! 他の息子どもにナワバリの島は見張らせてる」
『他の息子…? この船以外にもえっと、息子が居るの…?』
「あぁ、だから何の心配もいらねェ」
『そうなんだ…因みに船に残ってる子達はこちらに来ないのかい?』
「奴らの事を知られたくねェなら最小限にする他ねェ」
『あぁ…心遣い感謝するよ。じゃあ早速二人のいる奥に案内するよ』
軽く挨拶を交わしてからジョーはロジャーとおでんの居る生活拠点へと白ひげ一行を案内する。頭部から首を伝って甲羅の上へと移動しそこからは木々が生え森のようになっており、その隙間から動物達が様子を伺っている。
怯えも逃げもせずにただ影からジッと見てくる動物達に少々気味の悪さを感じるものの襲ってくる事はない。まぁ客人である白ひげ海賊団の面々はそんな事知らないため何時でも対応出来る様に武器に手を置いているのだが。
それをチラリと見たジョーは「彼らに手出しはしないでくれ」と言いつつまた前を向いてただ歩く。ここの住民であるジョーに言われて仕舞えばそうせざる得なく隊長達は渋々ではあるものの各々武器から手を離した。
しばらく歩けば中央部のひらけた場所に出て、その場にはひっくり返っている虎丸とそれを背に座っているロジャーとおでん。ジョーが誰かを引き連れているのに気づいていた二人だったが姿を見て驚愕に目を丸め口を半開きにしている。
特におでんは世話になった白ひげ海賊団である事からロジャー以上に驚いているようで「おぉ?!」と言いながら立ち上がっている。
「白吉っちゃん?!」
「グラララララ! 元気そうじゃねェかおでん!」
「おうとも! 白吉っちゃんも変わら…なくもないな?」
「オメェが船を降りてから何年経ってると思ってやがる!」
「それもそうだな!」
「おでん!」
「おでん様っ!!」
「おう! マルコもイゾウも元気そうだな!」
「元気そうだなじゃありませんよ!! 俺がどんな思いでいたと思っているんですか!」
「すまなかったなイゾウ。だがおれはこうして五体満足でいる!」
「そう言う問題じゃねェだろうよい」
「はー…驚いたな…まさかニューゲート達がここに来るとは思ってもいなかったぜ」
『それは私も同じだよ。彼らが消息を絶ったって記事を先程読んだばかりなのに…まさかここに来てるなんてね…』
「まぁ見た限りおでんに会いに来たんだろうがな」
『だろうね。じゃないと態々新世界から前半の海を逆走して来ないだろうしね…』
「わっはっは! 確かにそうだな! そういやロシィにはコイツらが来た事伝えたのか?」
『まだ伝えてないけど…あの子もそろそろ大物が来る事に慣れたんじゃないかな』
「慣れたとしてもあのドジっ子加減は治らねェと思うぜ?」
などなど客人達とおでんが再会を果たし会話を楽しんでいるのをゴール兄弟は遠目に見ながら二人で会話をしていた。とは言えロジャーもまさかこんな所まで白ひげがおでんに会いに来るとは思っていなかった為驚き一杯である。
暫くそれぞれが話をし一段落ついたのか白ひげが兄弟の方へ視線を向け彼の目にロジャーの姿が映る。好敵手であったゴール・D・ロジャー…数十年前に公開処刑された筈の男が生きてこの場にいる事に白ひげは敵ながら嬉しく思った。
おでんと話をしていた隊長達も白ひげの見ている方へ視線を向け、その先にいた人物を見て誰もが愕然とする。海賊王と呼ばれた男…しかも死んで居るはずの男が己の目の前に堂々と立っていたら誰だってそうなるだろう。実際、驚きに戦慄く隊長達は「ゴールド・ロジャー?!」と声を大にして叫んでいるのだから。
「グララララララ!! 話には聞いていたが本当に生きているとはなロジャー!!」
「わははははっ! 俺だって目が覚めた時は驚いたぜ!! これも全てはジョーのお陰だ!」
『あんな死に方させる訳ないだろう…全く』
「おでんもオメェが助けたと言っていたが何の能力だァ?」
『その話をするにしても立ち話もなんだ…適当に座っておくれ』
「折角なら酒を飲みながらがいいな!」
『ロジャーとおでんが飲み干してしまって今ここにお酒はないよ』
「はっ!? そうだった!!」
「グララララッ!! 押しかけたのは俺達だ。酒くらい出すさ!」
「おっ流石ニューゲートだぜ!」
『申し訳ないと言いたい所だけれどお酒飲みたいのなら持参してもらう他ないね』
今ここに酒がないと言うことで急遽白ひげから酒を提供してもらう事となり、その話を聞いていたマルコがいち早く動く。数人の隊長達を連れたちこの場を離れたかと思えば数分もしないうちに戻って来て沢山の酒が並べられる。それを見たジョーは「こんなに沢山いいのか?」と思いがらも相変わらずひっくり返っている虎丸を背に座る。そんな彼の隣に目を輝かせているロジャーが座りロジャーの正面には白ひげ、おでんと座っていく。
ロジャーとおでんを救った能力の事を知りたいマルコとイゾウも彼らの輪に加わり酒盛りを始めた。
グビグビと豪快に飲む白ひげの姿にジョーは「ほー…」と目を瞬かせながら己の手にある酒を一口飲んだ。ロジャーもおでんも白ひげに感化されたように一気に酒を煽っており、こんな飲み方したら明日は二日酔いだろうなとジョーは思った。
少しずつ酒が入りテンションが上がって行く面々の中、顔色一つ変えていない白ひげは「それで?」と呟く。
「おでんとロジャーを救ったと言うオメェの能力は何なんだ?」
『あぁ私が得たのは私の戻したいと思う事象を戻すコトの出来る能力だよ』
そう真っ直ぐに白ひげを見上げて言ったジョーの言葉に聞いた本人は勿論、その場にいたマルコとイゾウも驚きの表情を見せた。ジョーの言葉にその場が一時静まり返ったが直ぐさま問い返すのは一番隊隊長でありながら医師でもあるマルコだった。
「事象を戻すだって…? そんなんあり得ねェだろい…」
『そう言われても…』
「オメェの見た目が変わってねェのもその能力のせいか?」
『そうそう流石ニューゲートくん分かってるね』
「もう俺のが兄貴より年上に見えるよな」
「うむロジャーの方がジョーより年上に見えるな」
「そこはそんな事ねェって言う所だろうがおでん!」
「グララララ!諦めろロジャー!オメェの方が老けてるぜ」
「うるせェ! お前ェには言われたくねェぞニューゲート!!」
ジョーの能力の話から兄よりロジャーの方が年上に見える見えないなど、どんどん脱線していく。そんな彼らをただ見ているジョーは別段気にしておらず話が逸れたなら逸れたで構わないと言った風だ。
しかしマルコはジョーの能力が本当に戻したい事象を戻せるのなら最近体調の良くないオヤジをなんとか出来るのではないかと考えた。船医を兼任しているマルコと優秀なナースもいるのだが1番控えて欲しい酒を止める気のない白ひげにお手上げ状態なのだ。酒のせいで病気を悪化させ体が徐々に悪くなっていっているとしても白ひげが酒を断つ事はないのだろうとマルコは思っている。
ロジャー・おでん・白ひげの三人で盛り上がっているのを尻目にマルコはジョーに疑問をぶつけた。
「ワシの国で会った時アンタはおでんを蘇生したと言っていたが…それが事実として他にはどんな事が出来るんだ?」
『どんな事、か…私が実際に試して来たのは何を何処まで戻せるのかって事だ。結果としてある程度の事は戻せるよ。ただ私の能力が作用するのは生命体だけで間接的に生命体に触れていない限りは無生命体には何の作用もしない』
「ほぉ…そりゃスゲェよい」
「おでん様を救った力…敵であったなら想像以上に厄介な能力だな…」
『まぁ蘇生したと大層な事言っているけれど実際の所は生きていた状態に戻しただけなのだけれどね』
「同じようなもんだろい。生命体であれば何でも戻す事はできるんだよな?」
『うん出来るよ』
「それは……病も治せるって事でいいんだよな?」
『勿論可能だ。実際ロジャーが患っていた不治の病とやらも治したよ』
そう言いながらジョーはロジャーの方へ視線を向け直ぐにマルコへと戻す。
マルコも共に聞いていたイゾウもジョーとワシの国で会い白ひげと話をしている時にそんな話をチラッと聞いたため知っている。ただジョーがロジャーへ視線を向けたことで二人も釣られるようにロジャーへと一度目を向けてから直ぐにジョーへと戻した。
そんな視線を十二分に感じ取ったロジャーは「なんだ?」と言いたげな表情をしながら三人の顔を見渡した。
「俺になんか付いてるか? 三人とも見てきやがって」
『いいや。なんでもないよ』
「何でもなくはねェだろ」
「ロジャーあんた不治の病だったそうだが今は何とも無いのかよい」
「ん? そんなもん兄貴が俺を生き返らせた時に一緒に治してくれたぜ!!」
「むっ?! そうであったのか!?」
「いや、オメェは気付けよおでん!!」
「グラララ! となるとまた旅が出来そうじゃねェかロジャー!」
「まぁな! 兄貴の許可が降りねェ限り此処から出れねェけどな!」
「あぁ? よくこの自由人をこの場に留めさせておけるな」
『勝手に居なくなっていたら地の果てまで追いかけて首根っこ掴んで連れて戻る気でいるからね、私は』
「……おっかねぇよい」
「だな……」
ニッコリと笑いながらあまり物騒な事を言わなそうなジョーがそんな事を言うと本当にそうなりそうだとマルコとイゾウは思った。実際そんな事を言われたロジャーの顔色が若干悪い様な気がする為、あながち間違っておらずジョーなら本気でやり兼ねないのだろう。
聞きたかった事を聞けずじまいになってしまったマルコだが時間はまだあると思い一先ずは酒を飲む事にした。ジョーもマルコが別の何かを聞きたかったのだろう事は何となく察していたが間が悪かったなとジョーも思う。
酒が入りドンチャン騒がしくなってきた頃、女性専用ツリーハウスからルージュとトキがやって来た。トキは見覚えのある面々に顔を綻ばせながらおでんの側へと寄り白ひげ達に挨拶を交わす。ルージュもトキの後に続きロジャーの側に腰を下ろしてから彼の目の前に座る白ひげへと頭を下げ挨拶をした。
この場にトキ以外の女性がいる事にマルコとイゾウは以外そうな表情をしながら一先ず彼等も挨拶をするのだった。その後ロジャーがルージュの肩を抱きながら「俺の女だ!」と自慢する様に高らかに言い、それを聞いた隊長達はポカンとした表情を晒した。
『ふふふ!やはりロジャーに奥さんがいるの皆意外に思うようだね』
「なんでだよ! 失礼な奴らだな!!」
『だってロジャーだよ? 初めて聞いた時は私だって心底驚いたさ』
「確かにそうだったな…失礼にも程があんだろうが」
『悪かったよ』
「グララララ! 幸せそうで何よりじゃねェか!」
「分かるか?! 愛しい人と過ごすのは最高だぜ!!」
「おれにも良く分かるぞロジャー! トキと子供達、そして我が侍達と居られた時は至福であった!」
「 ! おでん様! 俺も…! 他の皆も同じ気持ちです…!!」
「わはははははっ! そうか!」
妻が隣に座るロジャーとおでんは心底幸せだと言いたげな表情をしており、それはルージュとトキにも言えた事でである。その様子を温かく見守るは彼等を救い出して来たジョーであり改めて助けられて良かったと心の底から思うのだった。
しみじみとした気持ちで酒を嗜むジョーだったのだがビシビシと横から感じる視線に彼はそちらに目を向けた。そんな視線を送っていたのはロジャーでありジーッとジョーを見ていたかと思えば「兄貴はどうなんだ?」と唐突に問いかける。
質問の意図を掴めなかったジョーはキョトンとし首を傾げながら「何の話しだ?」と逆にロジャーへと返した。
「だから兄貴は女作ったりしねェのか?」
『また随分と急な話しだね…』
「そんな事ねェよ。よく俺とおでんで話してたしな」
「うむ! 愛しい者が側にいるのはいいぞ!」
『お前達を毎日の様に見てれば分かるし私は現時点で幸せだし満足しているよ』
「女を作る気はねェと?」
『そう言うニューゲートくんはどうなんだい?』
「質問を質問で返すんじゃねェアホンダラァ! グララララ!」
『あ、君も今のはぐらかしただろう? まぁ何にせよそう言うのってタイミングもあるだろうし私には縁がないんだよ』
「自分で作ろうとしねェと縁なんか作れねェだろ! マジで兄貴はもっと外の世界を見て回った方がいいぜ!?」
「いっそおれ達で船出するのも良いのではないか?!」
「おっ! いい考えだぜおでん!」
『お馬鹿そんな事出来るわけがないだろう? 私達がここを空けてしまったら誰が彼女達を守るんだ?』
「何言ってんだ!ルージュ達も一緒に行けばいいじゃねェか!」
「無論トキも一緒だ!」
「あらあら」
「うふふ、きっと楽しいですね!」
『あぁダメだ…本気で船出する気だこの子達……』
ジョーの女性関係の話になったかと思えば何故かロジャーもおでんも船出をする気満々になっており彼は頭を抱えた。何気にルージュもトキも「楽しそうだ」と女性二人で笑い合っているのだからジョーも強く否定し辛い状況である。
そんな様子を見ている白ひげは面白そうにしておりマルコとイゾウは「苦労しているんだな」と言いたげな目でジョーを見た。
そんなこんなで突然の来訪者であったがドンチャン騒ぎながら時間は過ぎて行くのだった。
*
**
***
―― 夜
ずっと続く賑やかな声に銃を弄っていたロシナンテも「なんなんだ?」と言うように顔を出したのだが、いたのはあの大海賊白ひげ海賊団の面々。その事実にギョッと目を丸め何もない所ですっ転んで見せドジっ子加減を知らない面々は「何やってんだ?」と言いたげな顔だ。
そんな中恐々としながら彼らの輪に加わる事になったロシナンテであったが何だかんだロジャー達が間を持ち普通に話している。
まだまだ賑わいを残す中、酒を飲みすぎたジョーは酔いと熱った体を覚ますために亀助の頭の上に来ていた。結局ロジャーとおでんは船出する気満々でそれを止めるのにかなりの労力を費やしたジョーは今すぐにでも布団に入りたい思いであった。
そうしないのは客人が来ているからであって、もてなす側が席を外すのも良く無いだろうが此ればかりは多めに見て欲しいとジョーは席を立ったのだ。
昼間、白ひげ達が来たときは呑気にも眠っていた亀助は今は起きており、ジョーがやって来た事で起きたとも言う。水の入ったジョッキ片手に深々とため息をこぼすジョーに亀助は何とも愉快そうに「フォッフォッフォッ」と笑っている。
『笑い事じゃないですよ亀助さん…』
〈 いやなに、ワシが眠っておる間に騒がしくなっておると思うてのォ 〉
『あぁ…あの時眠っていたんですね…。なんでもおでんくんに会いに来てくれたようでして奥でずっと騒いでますよ』
〈 おぉミズタキの孫じゃったか!フォッフォッフォ! 騒がしくなるのも無理はないのォ! 〉
『騒がしくするのはいいんですけど、また船出したいって言い出しまして…私の苦労も知らないであの子達は…』
〈 ふむ…前々から思うておったが一度出てみてもいいのではないか? 〉
『でもロジャーは顔が知れてますから海軍にでも見つかりでもしたら…』
〈 変装でもなんでもすれば案外バレぬものよ。それに一度出れば童共も文句を言わなくなるじゃろうて 〉
『……確かに…それは一理あるかも知れませんね』
〈 ここの留守はワシらがおるで心配する必要もなかろう。腹を括るのも良いかも知れぬぞ 〉
そうアドバイスをくれる亀助の言葉にずっと船出する事を渋っていたジョーも考えるように顎に手を当てた確かに一度ここから外に出て暫くして戻ってくれば、ロジャーもおでんも暫くは納得して大人しくしているだろうと思う。
無論それがずっと続くと言う訳ではないが、それでも一時凌ぎだとしても静かになってくれるのなら有難いとジョーは思った。
そんな話を亀助としているとジョーの元へ近づいてくる気配が一つ…振り返った彼の目には怪訝な顔をするマルコの姿。会話をしていた様だっがジョーが一人でこの場にいる事にどうやら何かしら思うことがあるらしい。
「アンタ誰と話してたんだ…?」
『亀助さんだよ』
「カメスケ…? 一体誰だよい」
『君達が島だと思って上陸したここが亀助さんだよ』
…………………
………………………………
「 はっ?! 」
『ハハハ! みんな亀助さんの事を知ると驚くね』
「ゾウと同じって事かよい…だが何故前半の海に…」
〈 寝ておったらここまで流されておったわ! フォッフォッフォ 〉
「 !? 」
『って事らしいよ』
マルコとジョーで話していたのだが己の話をしていると分かった亀助が最後は締め括った。突然のことにマルコは驚きに目を丸めたものの「そうかよい」とだけ言ってジョーの隣に座る。
何しにこの場に来たのか察しているジョーはマルコが話し出すのを待っているのだが暫く黙ったままである。その為ジョーも特に何かを言う訳でもなく持って来ていた水を飲みながら話し出すのをただ待った。
それから暫くしてマルコは「さっきは話が逸れちまったが」と前置きをしてから口を開いた。
「ロジャーが患っていた不治の病を治せたのなら…オヤジの体も治す事が出来るか?」
『 ! 勿論できると思うけど…それを彼は望んでいるのかな?』
「オヤジは頼みはしないだろうが俺を初めとした全員がオヤジの体を案じてる」
『そうか…そんなにニューゲートくんの体は悪いのかい?』
「今は治療でなんとかなっているが酒を辞めねぇ限り悪くなる一方だよい」
『なるほど…海賊から酒を切り離すのは難しいだろうね…。君の話し振りからして彼も禁酒するつもりは無いようだ』
「その通りだよい…。だから一度オヤジの体を診て欲しいんだよい」
白ひげの体調を案じたマルコからの頼みにジョーは「もちろん協力するよ」と快く頷いた。ただ診てもらう張本人である白ひげが今の話に首を縦に振るかが問題であるのだがマルコの意思は強いようだ。何がなんでも診てもらう気でいる様で何処か意気込んでいて「これだけ慕われて嬉しいだろうな」とジョーは思った。
今日はもう遅いし酒も入って上機嫌な所に水を差すのは良く無いだろうと明日の朝、今の話をする事となった。この後は他愛のない話をしているのだがジョーが世間知らず過ぎて会話をする度にマルコを驚かせる事となる。
終いには呆れさせてしまうのだが今のジョーには知る由もない。
「勝手な事してんじゃねェマルコ!!」
「何と言われようと俺は間違った事してねェよい! 皆が思ってる事だよい!」
朝、昨晩ジョーと話した事をマルコが白ひげに話せばやはりと言うべきか覇気を漏らしながら怒りを見せる白ひげ。その怒りを己が一身に受けているマルコは一瞬身を竦ませるも負けずに白ひげを見上げ間違った事は言っていないと言う。
しかもマルコの後ろには全隊長が揃っており皆の想いを背負って言っているのがアリアリと伝わって来る。
そんな一触即発な空気の中それを見守っているのはタートル島の住民(?)で白ひげの体を健康体に戻す役割のジョー。ロジャーとおでんは昨晩飲み過ぎた事で二日酔いになっており、その辺で頭を抱えながら蹲っている。
ロシナンテも相当飲まされたのか死にそうな顔をしながらロジャー達と同じ場所で倒れ込んでいた。時折「治してくれ兄貴〜…」やら「水ゥ〜…」などなど何とも情けない声が聞こえるもジョーは完全に無視している。
初めは白ひげとマルコが言い合っていたのだが次第に他の隊長達も懇願する様に意見し出した。ただただその光景を見ている事しか出来ないジョーは「長くなりそうだ」と思いながら別の事を考え出す。
それは昨晩亀助に相談という愚痴をした「ロジャーとおでんが船出しそうな件」である。
亀助的には一度出てしまえと言うのだが、やはりジョーは態々身バレしそうな事をする必要は無いのではないかと思うのだ。だが勝手に出て行かれては己の心労が半端ない事になるのも考えずとも解る事で本気でジョーは悩んでいた。
悶々とする中「アホンダラァ!!」と言う言葉共にマルコがジョーの横を通り吹き飛んで行く。思考の渦に落ちていたジョーであったが流石に真横を人が飛んで行けば気付くもので驚きに目を丸めている。
吹き飛んだマルコは木にぶつかって止まりはしたものの強い覇気で殴られた事もあり表情を歪めていた。
「俺の体の事は俺が一番よく分かってらァ! お前達がとやかく言う謂れはねェ!!」
「ぐっ…だったらッ…! 日に日に悪くなってるのも分かってるんだろい?!」
「だからどうした、これが俺の人生だ!!」
「ッ…!」
「お前ぇジョーと言ったな」
『うん?』
「マルコが勝手な事言った様で悪かったなァ」
『いいや? 私は頼まれただけで、どうするかはニューゲートくんが決める事だ』
「コイツが言った事は忘れろ」
「オヤジッ!!」
「黙ってろマルコ!! 俺に恥かかせんじゃねェ!!」
「くっ…ッ!」
マルコが必死に診てもらう事を頼むも白ひげは聞く耳持たず、更にはジョーにマルコに言われた事は忘れろとまで言う。確かに白ひげの体の事なのだから本人がどうするか決めるべきだとジョーも思うが何故ここまで頑なに拒むのかジョーは疑問だった。
誰しも健康体に戻れるのなら戻りたいと思うのが人の性であろうに…しかし白ひげはそれを強く拒むのだ。
そんな白ひげの言葉に苦虫を潰したような表情を見せるのは彼を「オヤジ」と慕う隊長達であり複雑な感情を抱いているようである。受けようとしない白ひげの気持ちを唯一理解し得ているのは奇しくも二日酔いでぶっ倒れているロジャーだった。
ロジャーもまた不治の病を患いどんどん体が蝕まれていくのを感じながら薬で痛みを抑え果たした世界一周。その前にジョーに会いに行っていたのだからジョーにその事を話せば病のない状態に体を戻してもらう事は出来ただろう。
しかしそうしなかったのは、それが己の人生であり運命なのだと思ったからだった。結果的に公開処刑後に兄の逆鱗を踏み抜きつつ病がない状態まで戻してもらった訳なのだが…それはロジャーが望んだ事ではなかった。
結果的にどんなにマルコや他の隊長達が体を診てもらうよう頼んでも白ひげはついぞ首を縦に振る事はなかった。何とも重苦しい空気が流れる中、流石にマルコ達が気の毒になってしまったジョーは白ひげを見上げ訊ねた。
『本当にいいのかい? 彼等も君の事を想って言っているようだけれど』
「そんな事ァ解ってるアホンダラァ。だがコレが俺の人生…オメェの手を借りる気はねェよ」
『……そうか。私は彼等の気持ちが痛いほど良く分かるから出来れば戻してあげたかったけれど…』
「そりゃ余計な世話だぜ」
『そう、だね…けど次会う事があれば問答無用で健康体に戻すから覚悟しておいておくれよ?』
「グララララ! 余程な事が無い限りもうこの海には戻って来ねェさ!」
『それはどうかな? この先何が起こるか分からないよ』
「フン、一丁前なこと言いやがる」
『フフフ こう見えても私は年長者だからね』
「グララララ!! そうだったな!!」
ジョーの冗談めかした物言いに笑う白ひげは最後に「世話になったな」と言いながら帰る旨を伝える。その言葉に「そうか」と「寂しくなるね」と言う彼に更に笑う白ひげだったが、ゆっくりと立ち上がり自船へと戻って行く。
その後ろ姿を複雑な感情を詰め込んだ様な表情をしながら奥歯を噛み締めるマルコが見る。偉大な背中…その背中を守るのが己の役目であり、それと同時にずっと着いて行きたい背中でもある。
確実に蝕み始めているその体を健康体に出来るのならばそうして欲しかったが、それも叶わなかった。そんなマルコの感情を感じ取ったジョーは「何れまた何処かで会うことになると思うよ」とマルコに言う。
そんな気休めの言葉など必要ないマルコは怪訝な顔をしながらも「あぁ」とだけ言って白ひげの後に続いた。
ロジャーとおでんは相変わらず二日酔いでぶっ倒れている為見送りはジョー一人である。全員がモビーに乗り込んだのを確認し、ゆっくりと船は新世界へ戻る為の航路を進んで行く。
モビーの甲板では隊長達が「ありがとう!」やら「またなぁー!」やら「おでんに宜しくなぁ!」などなど
沢山の言葉が船が見えなくなるまでジョーの耳に届き、彼も「また来ておくれ」と彼等に聞こえずとも呟いた。
白ひげ海賊団を見送ってから中央部へ戻れば変わらぬ姿勢でいるロジャーとおでんとロシナンテ。その様子からして相当飲んだのだなとジョーは思いながら二人の側にしゃがみ込んだ。
『ニューゲートくん達は新世界へ帰ったよ』
「おぅ…話は聞こえてたぜ…」
「最後に白吉っちゃんとイゾウに挨拶したかったぞ…」
「ゔぅ……気持ち悪ぃ…」
『二日酔いなんかになるからいけないんだよ。これに懲りたら飲む量を考えなさい』
「そりゃあ…無理ってな話だぜ…。アイツらが来たら特になァ…」
「ロジャーの…言う通りだァ……頭が割れるゥ〜…」
「兄貴…何時もみたいに治してくれよ…」
「おれも頼む〜…」
『そんな事より皆に話があるんだ』
そう言うジョーに二人は「そんなこと?!」と叫びたい所だが残念ながらそんな元気は今の二人にはない。何も言えずにいればジョーはそれが解っているのか「昨晩亀助さんと話したのだけれど」と前置きする。
『お前達は幾度となく外に出たいと言っていただろう? だから一度出ようか、皆で外に』
そうジョーから言い出すとは思ってもいなかった事が彼から発せられ、ロジャーもおでんも突っ伏しながらポカンとした顔をする。衝撃過ぎて暫く何も言えずにいた二人だったがジョーの言った言葉の意味を理解した途端「ホントか?!」と飛び起きた。
その後ロジャーもおでんも顔を真っ青にして結局仰向けに倒れ込み、うつ伏せの姿勢から変わっただけで変わらず苦しんでいる。それでも顔が見える分二人の心情がアリアリと伝わりジョーは苦笑いを見せながら「分かり易いな」と呟いた。
「お前ェホントに兄貴か?!」
「ジョーから言ってくるとは俄には信じられん…!!」
『失礼だね…お前達…』
「だってよ何度俺たちが行きてェって言っても聞く耳持たなかったじゃねェか」
「そうだぞ! それがどんな風の吹き回しなんだ!?」
『二人の言う通りだね。ただ私も思う所があって…思い悩むくらいなら共に出れば良いと思ったんだよ』
「そうだったのか…悩ませちまった事は悪かったな」
「うむ…ジョーの気持ちも考えるべきだった」
『もういいさ。これから先は楽しい事を考えよう』
「それもそうだな! なら早速出る準備しねェと!」
「皆で出るとは楽しみだなァ!」
『出るにあたって色々と必要物資も多いからそれが揃って準備でき次第出るよ』
ジョーの言葉に俄然やる気を出すロジャーとおでんなのだが、どんなに元気そうでも忘れる事なかれ…二日酔いである事を。旅に出れると言う楽しみでテンションの上がった二人は先程と同様にガバリと飛び起きたのだが顔色が良くなっている訳ではないのだ。
二人は「忘れてた」と言うように頭を抱え再度ジョーに二日酔いを治してくれる様懇願し、ようやっと後を引く辛さから解放されたのだった。二日酔いにも関わらず突発な動きをしていた二人とは違い、ずっとうつ伏せに倒れ込んでいたロシナンテの事もジョーが治した。
「ありがとうジョーさん」
「イヤー頭痛と気持ち悪さがないって最高だな!!」
「うむ! 体調も良くなった事だし早速出る準備だな!」
「そう言やさっき必要物資が何だ言ってたが具体的には何が必要だ?」
『まずロジャー、お前がお前だとバレない様にする為の変装道具一式とおでんくんとトキさんの着るものかな』
「あー変装なァ…やっぱしねェとダメか?」
『しないならロジャーは留守番決定』
「ウソウソ! 冗談だって! 変装でも何でもするぜ!!」
「ロジャーは分かるが、おれとトキの着る物も調達するのは何故だ?」
『この辺では着物は珍しいからね。悪目立ちするのは避けたいんだよ』
「成る程! その辺の事はジョーに任せよう!」
『いや…私に全て丸投げされても困るのだけど…』
「準備するのはいいけどよ、どの航路を進むかとかその辺も考えねェとな!つーか航海士いねェじゃん?!ロシィ出来るか!?」
「いや、俺も専門外…」
「
『その事だけど此処から出る時は
まさか「偉大なる航路から出る」と言われるとは思っていなかった三人は目を丸めたかと思えばその内の二人は目を輝かせる。ジョー的にはまた駄々を捏ねられるのではないかと思っていた為、意外な反応に逆にジョーがポカンとした顔をした。
おでんは今までグランドラインから出た事がなかった事が起因しているようで楽しみなのを両腕を上げて全身で表している。ロジャーは久しぶりに四つの海を観れるのかと、しまいには「エースに会いに行こう!!」などと言い出す始末である。
その言葉に賛同の声を上げるのは言わずもがなおでんであり、エースと連絡をした際見られなかった事を未だに悔やんでいたからだ。ロシナンテ的には「エースって誰だ?」と言う感じなのだが盛り上がっている所水を指すのも悪いと黙っている。
しかしジョーは彼らの故郷である東の海に行く気は一切なく、なんならルージュの故郷である南の海も候補から外していたりする。それを二人に伝えれば「えー!!」とブーイングが飛び交うのだが、どう考えてもその二つの海に行く訳無いだろうとジョーは呆れた。
『お前達は馬鹿なのか? 顔の割れてる故郷に行くなどあり得ないだろう…』
「変装すんだろ? なら問題ねェって!」
「おれも二人の故郷に行ってみたいぞ!!」
『無理なものは無理だよ。エースに関してはあの子が海に出れば会う事もあるよきっと』
「いやいやいや、このジィさん亀に住んでる限り無理だろ」
「うむ おれもそう思うぞ」
『まぁ何とかなるさ』
「テキトウかよ…東の海がダメとなると何処に向かう気なんだ? もう決めてんだろ?」
「なに?! そうなのかジョー!!」
『別に決めてはいないけど…北の海か西の海に行くつもりではいたよ』
ジョーの言葉に二人は「なぜそこ?」と言う表情を見せるがロシナンテは期待の眼差しを見せた。ジョー自身深い意味があって言った言葉ではないのだがロシナンテの反応を見て「そういえばロシィを回収したのは北の海だったな」と思った。
テキトウ加減を感じ取ったのはロジャーであり「マジでテキトウだぞ…」と内心思っていたりするのだが口にする事はなかった。ただ表情には出ていた為、ジョーは肩を竦めるだけでそれ以上の事を言わず留めた。
おでんからすればグランドラインもそうだが、そこから出た四つの海となれば何処であろうと楽しみな事に変わりはない。「今から待ち遠しいなァ!」と年甲斐もなくウキウキとした顔をし、そんなおでんを見た兄弟は顔を見合わせ笑う。
そんなこんなで皆で旅に出ようと言う話をルージュとトキにもし二人も楽しそうだと乗り気で本格的に話を詰める事になるのだった。
( 一先ず私がロジャーの変装一式とおでんくんとトキさんの服を見繕って来るよ )
( おう頼んだぜ! )
( 着物以外の服とは楽しみだなァ! )
( あのジョーさん、私も同行させて頂けませんか? )
( トキさんも? いや、確かに女性の服を買うって私には厳しいね…。それじゃぁお願いしようかな )
( はい! )
( トキさんが同行してくれるなら、ルージュさんも欲しいものがあったら彼女に伝えておいておくれ )
( そんな、いいんですか? )
( 勿論だとも。旅には色々必要になるだろうからね )
( ありがとうございます! )
( あっ兄貴! 船の調達も忘れんなよ! )
( え? 船が必要か? )
( 必要に決まってんだろ?! 俺達だけならウマヘビでいいかも知れねェが、ルージュ達も居るんだぞ?! )
( あぁ…そうか そうだね。女性が居るのにウマヘビはダメか…船も見てこよう )
( 大丈夫かよ…スゲェ不安なのは俺だけか…? )
( わははははっ!! 流石に大丈夫だろう! 船が必要な理由も分かっているしな! )
( だといいけどよ… )
( あと必要なのは…ブツブツ… )
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