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新世界にてビブルカードとロジャー、おでん、ロシナンテの武器を調達し、白ひげに遭遇して帰路についてから幾日経った
ジョーは有難い事にサイクロンなどに見舞われたりする事なく順調に海を進み、前半の海へ戻って来ていた
ただワシの国から帰る際、何かに追いかけられている感覚を覚えた彼だったが気にせずそのまま向かったのである
そして海底を潜り魚人島を通る際、ずっとウマヘビの口内にいた事もあり彼はシャボンディ諸島へと立ち寄る
口内にいた事で付いてしまった臭いを
一先ずお風呂に入ってから折角上陸したためレイリーに会って行こうと考え、彼は宿のある区域へと足を向けた
*******
宿に着くまでに無法地帯を通る為イチャモンを付けてくる輩がいたが、全て返り討ちにして彼は宿に着いた
すぐに一部屋借り、シャワーを浴びればようやく生きた心地のするジョーは深く息を吐き出す
スッキリした所で長居する気のない彼は宿にいる必要がなくなり荷物を持ってサッサと出て行く
そんなジョーを見た宿の店主は怪訝な顔をするも、払うものは払っている為何も言う事はない
宿屋を出てレイリーが居そうな場所…彼が知る限り「シャッキーSぼったくりBAR」である
レイリーにあった時、残念ながら彼のビブルカードをもらっていない為、自力で探すほかない
こんな広い所を探さねばならないと思うと流石のジョーも億劫に感じてしまうのは仕方ないだろう
そのため「会った時にビブルカード貰っておけばよかった」と心底思っているのである
何を言っても探さねば会えぬため、彼は一先ずレイリーの住んで居るはずのBARへと行く事にした
ガシャりと買った武器が入っている袋を肩に担ぎ直し、無法地帯へと足を踏み入れる
『うーん…やっぱりそうなるか…』
相変わらずそこはゴロツキやら人攫いやら色々な人間が襲いかかって来るわけで…
それを蹴散らしながら進む彼の通った道には、やはりと言うべきか屍(死んでない)が転がった
暫く歩き続ければ漸く見えてきた「シャッキーSぼったくりBAR」
階段をサクサク登り店の中へと足を踏み入れれば、カウンター内にはシャッキーがタバコ片手に立っている
彼女もジョーがやってきた事に驚きを示すも、すぐに笑顔に変わり「いらっしゃい」と招き入れた
「シャンクスちゃんと来てからそんな経っていないのに早かったのね」
『ありがたい事に必要な物がすぐに手に入ったからね』
「あら、そうだったの? そういった運も持っているのかしら」
『そればっかりは私にも分からないな…ところでレイリーくんは…いないようだね?』
「あの人ならあと二、三ヶ月は帰って来ないわよ」
『おや…どっかに出かけているのか…』
「賭博に行ってるはずよ」
『賭博か…でも帰ってこないと言うのは…?』
「適当に女の家に上り込んでるはずだから」
『んん?! それは…君的にはいいのかい…?』
「それでこそレイさんだもの」
そう言うシャッキーの表情を注意深く見るジョーであったが、特別負の感情があるようには見受けられなかった
そのため本心からそう思っているのだと感じ、彼もそれ以上何か言うことはない
ただ心の内で複雑な感情を抱き、レイリーの印象が少し変わった事は別として
ともあれ、レイリーに会って帰ろうかと思っていた彼の思惑は達成できそうにない
賭博場に行ってもいいが、やらぬ自分が赴くのは商売をしている人からすれば邪魔者だろう
それを分かっているジョーは「このまま帰るか…」と独ごちれば、シャッキーが「ビブルカード使う?」と問う
その言葉に目を丸める彼だったが、折角なら一目会ってから帰りたかった事もあり有り難く借り受けた
『ありがとう、助かるよ』
「気にしないで、あの人探すとなるとソレは必要だもの」
『……そんなに大変なんだね、レイリーくんを探すのは…』
「お金がなくなったら人間屋にも潜り込んだりするみたいだから」
『ヒューマンショップ…?』
……………………
…………………………………
「まさか知らない…?」
『すまない…どうやら私は世間知らずらしくてね』
「ふふふっ! それでよくココにいられるわね、それだけの実力があるって事かしら
この無法地帯を歩いて来るとなると色んな人に襲われたんじゃないかしら?」
『そうだね、しつこい位には』
「きっとその中に人攫いもいたはずよ」
『それは物騒だけど…こんな老いぼれ攫っても需要なんて無いだろうに…まぁ全て返り討ちにしたけれど』
そう微妙な表情をしながら言うジョーに、シャッキーは「貴方は魅力的よ」と言いながら笑う
そんなこんなで、彼は一先ず彼女に借り受けたビブルカードを頼りにレイリーを探す事にするのだった
**********
シャッキーSぼったくりBARを出てからジョーはビブルカードを頼りに紙が動く方へとひたすら進む
ビブルカードは一方向を向いており、レイリーはその位置から動いていないのを示していた
「賭博場で楽しんでいるのかな?」と呑気に考えながら進むこと数十分…あろう事か着いたのは1番グローブ
ジョーは把握していないがヒューマンショップがある場所であり、富裕層が多く出入りしている
それを遠目に見る彼は頭上に「?」をたくさん飛ばしながらも、手元のビブルカードを確認する
やはりソレは目の前の建物に向かって動いており、そこにレイリーがいるのを示していた
彼が疑問に思っているのは賭博場とはかけ離れた雰囲気をしているからで、相変わらず首を傾げている
ともあれ、ここにレイリーがいるのなら入らない訳にはいかないなとジョーは人の波に乗って中へ入った
中は彼の想像以上の人がおり、ほぼ満席状態で空いている席を探して1番後ろの隅の席に座る
( 一体ここで何があるんだ…? )
彼はシャッキーにヒューマンショップの事を詳しく聞いてきた訳ではない為、実態を知らない
周りの人達が袋一杯に持っている金を目にして「そんな金どうするんだ?」と言いたげな表情で見ている
無論、彼はいつも通り帽子にローブのフードをかぶっている為その表情を窺い見ることは出来ないのだが
大人しく座っていれば、壇上に派手な格好をした男が現れ「今回の商品」について話し出す
初めこそ黙って見ていたジョーであるが、その内容を聞き実際に競りを目にした事で機嫌が急激に降下する
「何百ベリー」やら「何億ベリー」やら手を挙げては跳ね上がっていく金額に反吐が出そうだった
( こんな所にレイリーくんがいるのか…? )
そう思いだした頃、彼の目には信じられない光景が広がる
商売人の紹介で壇上に現れたのが、ジョーが探していたレイリーその人だったからだ
ギョッと目を向いて壇上の彼を見ていれば、レイリーもジョーの存在に気づいたのかキョトンとした顔を一瞬見せる
その後不敵に笑ったかと思うと、堂々たる姿でその場に佇み続けている
客達は老人を買おうと言う人は中々おらず、それでも奴隷にと一人の客がレイリーを落札した
ジョーと言えば、衝撃すぎてレイリーが落札されるまでピクリとも動かなかったが直ぐにハッとする
壇上裏へと戻されたレイリーを見てジョーもそそくさとその場から離れ、裏に続きそうな場所を探す
キョロキョロと辺りを見渡しながら歩いていれば目立ち、見張りの者にも不審に思われる
「そこのお前! そんなところで何をしている!」
『あぁ丁度よかった、舞台裏に行きたいのだけれど行き方を教えてくれないかな?』
「はぁ? 教えるわけないだろうが! さっさと出で行け!」
『そうもいかないんだよ、話をしたい相手がいるのでね』
「知ったこと…か…ぁ……あれ? 俺は一体…」
『悪く思わないでおくれ』
ジョーは話をしていても通してくれないと判断し、男の記憶をある程度
その結果、男は何故この場にいるのか分かっておらず頭上にたくさんの「?」が飛び交っている
それを見てから「向こうが出口だよ」と教えてやれば、男は礼を言いつつそちらに歩いて行った
これで邪魔者はいないと再び壇上裏を探すべく歩くこと数分…いかにも怪しげな扉があった
そこを何の躊躇いもなく開けようとドアノブを回すも、流石に鍵が掛かっており開かない
「鍵を探すのも面倒だな」と思ったジョーは力業でバキンッと無理矢理こじ開け中へと入った
そんなことすれば中にいた見張りにもろバレな訳で…何だ何だとワラワラ彼の周りを取り囲む
「なんだお前?!」
「どうやって入って来た⁉︎」
『普通に扉から』
「Σ何が普通だ‼︎」
「鍵壊してんじゃねェか‼︎」
「コイツを捕まえろ‼︎」
『おっと! 別に君たちには用はないのだけどね…』
彼を捕まえるために襲いかかる男たちをヒョイヒョイと躱しながら辺りを見渡す
たくさんの牢が立ち並ぶ一つに、ジョーの探していた人物が優雅に酒を飲みながら楽しげに彼を見ている
それを見たジョーは流石に不服に思い、ムッと口をへの字にしながら襲いかかってくる男たちを的確に気絶させていく
ものの数秒で全員を地に伏し、スタスタと目的の人物が入っている牢の前に立つ
相変わらずレイリーは楽しげに牢の中から彼を見上げた
「やぁ、まさかもう戻ってきているとは思わなかったな」
『やぁじゃないよ全く…BARにいないから探しに来てみれば何でこんな所に…』
「少々資金がなくなってしまってね、その調達をしようとしたまでだよ」
『資金調達…? こんな所で出来るのかい?』
「私を買った者から拝借しよと思ってね」
『それはまた…豪快な事だね…』
「なにこんな所で使う金だ、私が貰ってもいいだろう?」
『私に文句はないよ、ただやり方がね…君が出てきて驚いたんだよ?』
「わはははっ! それは済まなかったな! 私も貴方がいて驚いたがな!」
『ここで話すのもアレだし…いつ出られるんだい?』
「競が終われば直ぐだろうな」
『なら適当な場所で待っているから出て来たら来て貰っても?』
「あぁ分かった」
ジョーはこの時点でレイリーを出して行こうとは思っておらず、そう提案すれば彼もそれに頷く
その話を聞いていた者たちは「今出ないの?!」と思っているのだが、そんな事彼らが知る由もない
資金調達をすると言うレイリーの言葉を優先させようとした結果である
ジョーがその場から立ち去ろうとすれば、レイリー以外の捕まった者達が「助けてくれ!」と懇願する
それを見た彼は一瞬逡巡するもこのままでは彼らの未来はひどい事になるのだろう事は分かった
その為牢の入り口にかけられている南京錠をバキンッと破壊して回った
ただ牢から出られたとしても彼らの首には奴隷であると言う証の首輪が付いている
それは無理矢理外そうとすれば爆発する仕組みになっており、ジョーはその事を残念ながら知らない
その為なんの躊躇いもなくその首輪に手を伸ばしたのだが、それを見ていたレイリーが待ったをかけた
「それは一筋縄では外れん代物だ」
『んん? そうなのかい? じゃあ鍵を探した方がいいか』
「鍵で外すのが無難ではあるが覇気で外せん事もない…タイミングが重要だがね」
『私にそんな事させる気かい? 失敗したらどうなるの?』
「無理矢理外そうとした時点で爆発する」
『爆発…全く穏やかじゃないね…それなら鍵で外した方が安全じゃないか』
「それもそうだが、これだけの人数の鍵を外すには時間がかかる…その間に他の者が来てしまうぞ」
『んー…確かにそうだね…まぁ来た所で寝ていて貰えばいいのだけど…』
「わははっ! その方法もあるな!」
『因みにレイリーくんは覇気で外せるのかな?』
「あぁ」
『ふむ…なら一度外すのを見せてもらっても? やり方さえ分かれば私にも出来るかも知れない』
「まぁその方が早いだろうしな」
そう言いながらレイリーが己の首に着いている首輪に触れれば、その瞬間ピッピッピッと音が鳴り出す
二人の様子を見ていた者達は「ヒッ」と引き攣った声を出し、顔面蒼白になる
そんな彼等に目も暮れず、ジョーは一心にレイリーへと視線を注いでいた
一片の見落としもしてはならないと言うように、瞬きも忘れたかのようにジッと見ている
音の鳴る間隔が早まったかと思えば、レイリーは目にも追えぬ程手早く首輪を外し放り投げる
その瞬間ドカンッと首輪は爆破しその場は一瞬静けさが漂った
周りで見ていた者達は何が起こったのか分かっておらず、目で追えていたのはジョーだけ
そんな中ジョーは顎に手を添えながら「ふむ…」と考え込んだと思えば再び辺りを見渡す
首輪が着いている彼らは、実験台にされるのではと怯えを見せるが彼の目は違う物を捉える
それは、彼らの首についている物と同じ首輪であり、ジョーはそれを何の躊躇いもなく己の首に着けたのである
『やはり見ただけじゃ感覚は掴めないね』
「だからと言ってソレを着けるとは…貴方も随分と大胆な事をする」
『初めてやる事を被害者である彼らで試す訳にはいかないだろう?』
「それにしても、だ」
『失敗しても多分死にはしないだろう?』
「覇気で纏っておけば何の問題もないだろうな」
『なら尚更自分で試すのが一番だね』
レイリーの言葉にジョーは頷きながら着けた首輪に触れ、再びその場にピッピッピッと音が鳴る
その様子を固唾を飲んで見ている捕まっていた者達と何の心配もなさそうにしているレイリー
そんな彼らに見守られながら、ジョーは音の間隔が早まったのを聞き外すタイミングを見計らう
そして絶妙なタイミングで首輪を外し、それをポイッと放り投げた時首輪は爆発した
彼はたった一回見て、己でやってみて、それだけで感覚を掴んでみせた
これなら問題なく出来るだろうと判断したジョーは、一つ頷いてから首輪の着いている彼らへ向き合う
『さぁソレを外そう』
そう言えば、恐々としている彼らであったが実際にやって見せた彼を信用し首輪を外すのを任せるのだった
それなりの時間を有し全員分の首輪を外し終えた時、壇上裏へと回って来た時に倒した見張りが目を覚ます
「うぅ…」と頭を抱えながらモソモソと起き上がり顔を上げれば、牢から出ている商品である者達
その傍らには、自分たちを一瞬の内に沈めた怪しい装いをした男が一人
ことの重大さを理解した見張りはサッと顔を青くしてから、すぐ様捉えようとするも呆気なく返り討ちにあうのだった
一方、壇上で商品の紹介をしていたこの場を取り締まっている男が商品の進みが遅い事に不審に思い始めていた
いつもならばもっとスムーズに事が進んでいるのだが、今回はそれが中々進まない
その事に客である富裕層の者たちからはブーイングが発せられており、機嫌を取るのに手間取っていた
その男の助手としている者に男は小声で状況を確認した
「おい! 一体どうなってる?!」
「それが…商品がまだ上がって来ていません…」
「なにィ?! ならお前がさっさと取って来い‼︎」
「は、はいっ!」
男はイラただし気に語気を強め、その男を壇上裏へと向かわせた
しかしその者はすぐに戻って来て顔を青くしながら「商品が…もぬけの殻です…!」と報告した
それを聞いた男もまた顔を青くし壇上裏へと駆けていき、ことの重大さに更に顔面蒼白にしたのは言わずもがなだろう
**********
捕まっていた人たちを全員解放し、ジョーもその場を離れレイリーが来るのを適当な場所で待った
なんだかんだレイリーも彼らと共に出ていく事にしたようだったが、資金調達はしっかりするようで会場へ向かったのだ
それを少々呆れながらも見送ったジョーは、ヒューマンショップからそれなりに離れた場所で待機しているのである
暫く待っていれば、どうやって奪って来たのかレイリーの手にはそれなりの大きさのある袋が二つ
彼が歩くたびにジャラジャラと音がするあたり、結構な額が入っているのは想像に難しくない
「すまない、待たせたかな?」
『そんな事はないけれど…また随分と取ってきたね』
「私を買った者と、その隣にいた者から拝借してきたのでね」
『あ、そうなんだ…彼らはお金がなくなってさぞ困っているだろうな…』
「こんな所に使う金があるんだ、端金だろう」
『そうなのかい? それは随分と非人道的だね…海軍は何もしないの?』
「ここはそれが黙認されているからな、海軍に何かを言った所で意味はない」
『とことん腐っているのだね…海軍と言う組織は』
「全ての人間がそう言う訳でもないがね」
そう言うレイリーの言葉でジョーの頭の中に浮かんだのは、ロジャーが信用できると言っていたガープ
海軍でありながら「大悪党」とされるロジャーの息子であるエースを生まれてから今も世話しているであろう男
そんな男を知っているからこそ「それもそうだね」とどこか納得したように頷いた
レイリー的にはロジャーの事もありそれが意外だったのだが、深く聞く必要なはいと口を閉ざす
一先ずゆっくりと話ができる所と言えば、やはりシャッキーが切り盛りしているBARだろう
二人は特に何かを言うこともなく必然的に13番グローブにあるそこへと足を向けた
無法地帯へと入ればやはりと言うべきか、海賊やら何やらが喧嘩を売って来るのだが彼らの敵ではない
あっという間に蹴散らしてしまい、それを見ていた者達は彼らに手を出すのは得策ではないと離れて行く
そのお陰か、無法地帯を歩くには珍しく一回の襲撃だけでサクサクと進む事が出来るのだった
『いつもより人が少ないね』
「我々には勝てんと分かったのだろう、彼らも馬鹿ではないと言う事だ」
『そうか、行きで向かって来た子達もそう解ってくれれば楽だったのだけどね』
「見た目がそれだからではないか? 正直あまり強そうには見えんぞ」
『え…そうなのか…まぁ海軍本部が近いココで顔を晒すのは気が引けるからな…仕方ないね』
「あぁ、そう言う意味合いもあって顔を隠しているのか」
『うん、もう私の手配書は取り下げられているらしいけれど念のためにね』
「ん? そうだったのか? シャッキーは何も言っていなかったが…」
彼の言葉にレイリーは知らなかったようで「そうなのか」と言いたげにしている
ジョー自身、手配書が取り下げられているらしい事を知ったのもイゾウに聞いたからに過ぎない
故にいつ取り下げられたとかは知らず、詳しくは話すことが出来ないのだが…
そもそも手配書が取り下げられたと言うよりは風化して知る人が殆どいなくなったと言った方が正しいがジョーが知る由もない
そんな話をしている中、ガシャガシャと重々しい音を出すジョーの持つ袋
レイリーの視線はそちらに向き「武器を拵えて来れたのだな」と彼に聞く
それにジョーも肩に下げている袋を一瞥してから「うん」と頷いた
「二人分見つけられたのか?」
『うん、一つの島で全部見つけられはしなかったけれどね』
「そうなのか? なら暫くシャンクス達と共に行動していたのか?」
『ビブルカードを作った島で彼らとは別れたよ、その後向かう島がニューゲートくんの縄張りだったからね』
「ニューゲートの? そうなるとシャンクスが共に行く事は出来んな」
『そうなんだよ、ワシの国と言う島でね…そこにニューゲートくんも偶々居たから会っても来たんだ』
「そうなのか! アイツは元気にしていたか?」
『私から見た限り元気そうではあったよ』
「そうか…懐かしいものだな」
『レイリーくんやロジャー達とは敵対していたのだよね? 航海中によく会ったりしていたのかい?』
「そう頻繁に会う事はなかったが…寄った島々で偶然会うことは多々あったな」
そう言いながらその時の事を思い出しているのか、レイリーは目を細めながら想いを馳せている
その姿を見たジョーは「心残りがあるのだろうか」と思いながらも、余計な詮索はしない
ただロジャー海賊団として航海していたその時期は彼にとって掛け替えのない時間だったのだろう
それがレイリーの声色や表情からもありありとジョーには見て撮れたのである
暫く沈黙が続く中、彼は思い立った事をレイリーに問いかける
『レイリーくんさえ良かったら遊びに来るかい? ロジャーとおでんくんとも会いたいだろう?』
「 ! いいのか? あまり人が立ち入るのはリスクがあると思うが…」
『まぁそうだけれど、ロジャーを支えてくれていた君を招かない訳にはいかないよ』
「支えられていたかは分からんがね…だが…そうか、良いと言うのなら共に行かせてもらおう」
『フフ もちろん大歓迎だよ、レイリーくんが来たらロジャーたちは驚くだろうね』
「わははっそうだろうな!」
急遽決まったレイリーのタートル島訪問
きっとロジャーもおでんも驚愕の表情を見せた後に、満面の笑みを見せるだろうとジョーは思う
唯一ロシナンテだけは伝説の男と言われる「冥王」が現れたら度肝を抜かれてドジを踏むかも知れないが
早速いく準備やシャッキーにその事を伝えなければならないため、足早にBARへと向かう二人
暫く話しながら歩いていれば目的地が見え、階段をそそくさと登って行き店の中へ
先にレイリーが入りその後にジョーが入ったことで、シャッキーは「見つけられたのね」と微笑む
その言葉を聞いてレイリーは「先にここに来ていたのか」と思いながらも口にはしない
ジョーはシャッキーのそばへと寄り、借り受けていたビブルカードを返そうと差し出した
『これありがとう、とても助かったよ』
「いいのよ、今回レイさんはどこにいたの?」
『君が言っていたヒューマンショップにいてね…流石に驚いたよ』
「あら! 一番確率が低い所なのに…タイミングが悪かったわね」
『私もそう思うよ』
「タイムングが悪かったのはあの場に居合わせた者たちだろう」
「あらレイさん、そんな荷物持って遠出でもするの?」
「あぁ、彼の住む島に暫く行ってくるよ」
「そうなの?」
『すまないね、少しレイリーくんを借りて行くよ』
「気にしないで、気をつけて行って来てちょうだい」
そう言って笑顔で送り出すシャッキーに彼は「よく出来た人だな」と思いながら再度詫びを言う
その際、先程返したレイリーのビブルカードを半分千切って「あげるわ」とジョーに差し出す
それを見て申し訳なく思い少々渋るも、彼女の手で握らされてしまいありがたく貰い受ける事に
彼女に色々込み込みで礼を言い、レイリーと共に店を出てウマヘビを待たせているグローブとへと向かった
相変わらず無法地帯を歩いているのだが、もう彼らに向かってくる者達はおらず平和に進む事が出来ている
たったそれだけの事なのだが、ストレスなく歩けることにジョーは大分気持ちが楽だった
足止めされる事もなかった事から、ウマヘビのいる岬まで時間は掛からずあっと言う間に着いた
ジョーがピュイーっと口笛を吹けばそれを聞きつけたウマヘビがザッパァと勢いよく顔を出す
その水飛沫が掛かりそうになった彼だったが、咄嗟に後ろへと飛び退いた事で事なきを得た
『こらウマヘビ、もっと静かに出て来いといつも言っているだろう?』
「ブルルン…ヒヒン!」
『待たせ過ぎだって? それは悪かったよ、もうタートル島へ帰るよ』
「 ! ブルルヒヒン!!」
『あぁ頼むよウマヘビ』
「…相変わらず会話をしているようだな」
『全く何を言ってるか分からないけれどね』
「それでも会話が成り立っているようだ」
『まぁ強ち間違った解釈はしていないと思ってるよ』
「ウマヘビの反応を見る限りそうなのだろうな」
『さぁ行こう、乗り心地は保証するから寛いでおくれ』
「海王類に乗って旅に出る事があるとはな、長生きはするものだ」
そう言いながらジョーの後に続きウマヘビの頭の上に乗ったレイリーは、どこかワクワクしているようだ
レイリーが乗ったのをしっかり確認してからウマヘビの頭をポンポンと叩き、合図を送る
それを合図にウマヘビもゆっくりと泳ぎ出し、グングンとスピードを上げて泳いで行く
船に乗る時とは全く違う風圧がかかるも、それは心地いくらいの風である
ジョーの言った「乗り心地の保証」とはこう言う事かとレイリーは思いながらこの旅を楽しむ
そんな中、隣に座る彼が抱えるように持っている武器の入っている袋に再び目がいく
「武器はシャンクスにも見て貰ったのか?」
『うん、でもそれでもよく分からなくてね…結局店員にも色々聞いたよ』
「そうか、だが納得いく一振りを買えたようだな」
『いや…買ったというか譲り受けたんだ』
「譲り受けた?」
『レイリーくんなら知ってるかな? まだロジャーが旅をしている時に立ち寄ったらしいのだけど
その当時唯一この剣を握れたのがあの子だけだったらしい…そんな話を聞いた事はあるかな?』
「聞いた…と言うよりその場に私もいた…まさかその剣を?」
『曰く付きの剣だったのを私も持てたから持って行ってくれと言われたんだ』
「確かにそんなこと言っていたような気がするな」
『それ以前に私の持っているこの剣を打った刀匠のお弟子さんが打ったものらしくてね
この剣と共に居させてやってくれとそう言って譲ってくれたのだけどね』
「それはまた…凄い巡り合わせじゃないか、その剣はロジャーに渡すのだろう?」
『うん、私には父から譲り受けたこの剣があるしこの
「神來剣? 譲り受けた剣の名柄か?」
『私が名付けたのだけどね…この剣が
そう言うジョーの言葉にレイリーはただ「そうか」と言いながら、彼が袋から取り出した剣を見る
この剣を持った者を狂わせるらしく、持つかは「任せる」と言われレイリーは一先ずただ見るだけに留める
万が一、こんな海の上で剣に呑まれるような事があっては彼に迷惑がかかると思ったが為だ
ジョー的にはレイリーだったら何の問題もなく持てるだろうと思っていたが、敢えて彼の判断に任せた
曰く付きなのは事実のため、持ちたくないと思う事もあるだろうと思ったからだ
神來剣の話はひと段落つき、次はおでんの二振りの刀を取り出しレイリーに見せた
柄に鍔・鞘と完璧に装飾されているその刀を見たレイリーは「ほう」と感銘の息を吐く
「これはまた随分と立派な刀だな」
『何でも以前おでんくんが持っていた刀を打った刀匠が、彼の為に新たに打った物らしいからね』
「 ! それはまた何故新たな刀を…おでんの二振りは業物だったが…」
『子息女に譲るからと手放したみたいでね、それを知って新しいのを打ったんじゃないかな』
「そうか、あの刀をモモの助達に譲ったか…かなりの業物だ…生半可な者では持てんはずだ」
『え…そんな物騒な刀なの…?』
「おでんの刀は妖刀だからな、あの刀は持ち手を選ぶ」
『なるほど…おでんくんも大分規格外な子だね…改めてそう思うよ』
「わはははっ! ロジャーを弟に持つと言うのに規格外など慣れているだろう!」
『言われてみればそうだね、二人がいると感覚が麻痺してしまうよ』
そう己を棚に上げて言うジョーにレイリーは心底おかしそうにケタケタと笑う
ジョー的には「何がおかしいのだろうか」と思うところだが、楽しんでいるのならいいかとも思う
そんなこんなで、タートル島に着くまでの間二人は他愛のない話しをして過ごすのだった
( レイリーくんの持っている剣はずっと同じものを使っているの? )
( あぁ、そうそう変える物でもないからな )
( ふむ…そう言うものなのだね )
( ジョーさんもそうだろ? )
( 私の場合は父から譲り受けたから使ってるに過ぎないよ )
( そうなのか? ずっと使っていれば愛着が沸くようなものだろうに )
( 確かに…今更変えようとは思えないかな )
( 何より使い慣れた剣の方が戦闘には向いている )
( なるほど…レイリーくんと話をすると勉強になるよ )
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