Act 21
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武器屋でいい剣に巡り合いそれを譲り受け翌日にはビブルカードを受け取った。そんなジョーはウマヘビの頭に乗って武器屋の店主に教えてもらった「ワシの国」へと向かっていた。
シャンクス達とは今朝ここで別れることを告げ丁重にお礼をしてから出て来ている。突然のことに全員驚いたのだが行き先が白ひげのナワバリだと知り納得したのだ。まぁシャンクス的には近海まで送り届けるつもりでいたため少々納得していないようだったが。
シャンクスの要望通り作ったビブルカード三人分と亀助の物も共に渡しジョーもシャンクスのビブルカードを受け取った。早々に前半の海になど来ないのだろうがいつでも迷わずに来られるように、互いの安否が分かるように。
そんなこんなで新世界では流石にログポースなしは危険だとベックマンに言われジョーは初めて身につけて簡単にログポーズの見方を教えてもらってから海へ。上機嫌にスイスイ進むウマヘビに首を傾げるジョーであるが考えてみればウマヘビに乗るのは久しぶりだ。
この先の島と言われても正直ピンと来ていないジョーだったのだが「なんとかなるか」と楽観的でもある。飲食物も一応数日は保つ量をあの島で調達して来ているため嵐などに遭わない限り心配していないとも言える。
ジョーは進む間暇を持て余すため大量にある本の中から適当に一冊取り読書に勤しむのだった。
*
**
***
シャンクス達と別れてから数日。
ようやく島のようなものが視界に入りジョーはウマヘビをそこへ向かわせた。近づくにつれその島の港にレッド・フォース号を遥かに凌ぐ大きさの船が泊まっているのが分かる。遠目でもその大きさが分かるのだから近づいたらさぞ大きいのだろうとジョーは思う。
そして何より目につくのはデデンっ!とデカデカと掲げられている海賊のシンボル。ここが白ひげ海賊団のナワバリなのだと全面的に主張しているそれにジョーは「ほー…」と感嘆した。
毎回のことであるが海王類のウマヘビを港に近づけることは出来ないため港からは離れた岸からジョーは上陸する。ウマヘビ的には「また置いて行くのか」っていう感じがありありとその感情が伝わってくる。
それに苦笑いしながら「ごめんよ、刀を買ってすぐ戻る」と言いつつ人の気配の多い方へ足を向けた。ジョーはウマヘビに乗るにあたって桐箱のままでは乗りづらいと思いそれ用の袋に入れて肩に下げている。
スタスタ足早に歩いて行けば思ったより街まで近く多くの人が行き交う通りに出た。
『ほー…活気があるね。さてはて武器屋は何処にあるのかなと…』
そう一人呟き辺りを見渡しながら歩いていると海賊っぽい風貌の者達を見かける。この島をナワバリとしている白ひげ海賊団のクルーであり物資調達をしているようだ。「何処の海賊もやる事は同じだな」と思いながらそんな彼等の後ろを通り過ぎるジョー。
ただひたすらにジョーの目的は先日いた島の武器屋の店主に聞いた武器屋へ行くこと。今のところそれ以外に寄るような予定はないため早く済ませて帰ろうと考えているのだが……食料をシャンクスから分けて貰ってウマヘビに乗っていたとは言え、やはり島の料理を食べたいと思うのは必然だろう。ジョーはちょうど昼時でもあるしレストランかなんかで腹ごしらえをしてから探そうと考え直す。
しばらく道なりに歩けばナイフとフォークの絵が描かれた看板が目に入り迷う事なくそこへ足早に向かいキィと音を立てながら戸を開け中へ。やはり昼時と言うのもありそれなりの人数で賑わっており空いてる席はカウンターのみ。
テーブル席は恐らく島の住民とこの島に来ている海賊達で埋まっている様だとジョーは推測する。元より一人でいる時はテーブル席をあまり好まないジョーはカウンター席の一番隅っこに腰掛けマスターに声を掛けた。
『注文をしてもいいかな?』
「勿論! なんにする?」
『そうだな…マスターのお勧めを頼めるかな』
「それなら和牛タップリ丼だな!」
『美味そうだね。それを頼むよ』
「任せときな! にしてもお客さん見ない顔だな? 旅人か?」
『そうなんだ。初めてここに来たのだけれどとてもいい島だね』
「だろ? 前はタチの悪い海賊が来たりもしてたんだが今は白ひげ海賊団のお陰で平和さ!」
『そのようだね。港に大きく掲げられてるシンボルを見たから』
話をしながらも出してもらった水を飲みつつ肯定するようにジョーも頷いた。どうやら住民は島を守ってくれている白ひげ海賊団にとても感謝しているようだ。他の海賊から襲われる心配がないと分かれば確かに感謝する事だろう。
マスターは料理を作りながらもよく口も動きテーブル席にいる半分は白ひげ海賊団のクルーなのだと言う。店に入った時点でそうなのだろとは思っていたが半分もいるとは流石にジョーも思っていなかった。水を飲みながらチラリと後ろを向けば大口を開けて笑い合う海賊達の姿。よくよく見れば話している相手は島民のようで随分と仲の良い様子である。
少々意外そうに見ていたジョーとそこにいる一人の男と目がかち合った。奇抜な髪型が特徴的で気怠げな目をしてシャツの前を全開にしたその出立ち。その胸元には大きく刺青も入っており「そう言えばさっき見た海賊も同じモノが掘ってあったな」と思い出す。だからと言って何かあるかと聞かれれば全くないのだが頭に残るモノだったのは確かだ。
なんたって興味関心の薄いあのジョーが頭の片隅とは言え覚えていたのだから。
ジョーがそんな事を考えている時、目がかち合った男…マルコはジョーの事を観察していた。店に入って来た時から帽子を目深にかぶり肩には恐らく武器の入った袋を持っている。怪しさ満載の男を見かけて注視しないマルコではなく目を光らせて見ているのだ。
マスターと話をしたかと思えばチラリと肩越しにテーブル席を見てきて目が合ったマルコ。容姿の全貌を見れたわけではないが男の目や雰囲気からは敵意を全く感じはしない。だが気を抜くことは出来ないと思い暫く注意深くジョーを観察することにマルコは決めた。
背中に視線が突き刺さるのを感じるジョーであるが反応する事はなく和牛丼が出来るのをただ待つ。そして香ばしい匂いが漂い出て来たかと思うと唾が出そうな程美味そうな丼ものである。
ジョーは手を合わせ「いただきます」をしてから和牛丼食べ始め今まで食べた事のない味わいに笑顔になった。
『とても美味しいね』
「だろう? この店で一番人気のメニューだからな!」
『この美味さならそうなるのも頷けるよ』
「わはははは! アンタ口が上手いな!」
『私は事実を言っているまでだよ』
「なら有り難くその言葉を受け止めねェとな!」
『そうしておくれ。所でマスター一つ尋ねたいのだけれどいいかい?』
「なんだ?」
『この島の武器屋って何処にあるのかな?』
「武器屋?」
『ちょっと人に刀を見て来て欲しいと頼まれてね。この島の刀は良いと聞いて来たのだけれど』
「おっそりゃお目が高い! ここの武器屋の店主は鍛冶もやっててな。品揃えも良ければ整備も出来ていいと評判だぜ!」
『それはとても期待ができるね』
「だろ? この先に少し小高い所があるんだがそこにあるぜ」
『この先だね。ありがとうとても助かるよ』
「良いってことよ! アンタは悪い奴には見えねェからな!」
『フフ そう言って貰えると嬉しい。さてとても美味かったよご馳走様』
「おう! また来てくんな!」
『うん是非』
ジョーは武器屋の場所を聞き食べ終えた事から長居する事なくお代を置いて出て行った。それを笑顔で見送ったマスターと何事もなく出て行ったジョーを見るマルコの目は変わらず厳しい。
それに気付いていた同じ席に座る着物を着た中性的な顔立ちをした男…イゾウとリーゼントでコックの服装をした男…サッチがマルコが見ていた先を共に見てから口を開いた。
「そんなにあの男が気になるのか?」
「別にそう言う訳じゃねェよい」
「そう言う割には随分と目を光らせてたじゃないか」
「帽子を目深に被って武器を持ってりゃそれなりに見るだろい」
「流石にオヤジのナワバリのこの島で何かしようなんて奴いねェと思うけど」
「同感だね」
「何にせよ奴の行き場所は把握しておく」
そう言ったマルコはガタリと席を立ち先程マスターのいるカウンターへと近づく。マスターはマルコ自らやって来たことに少し目を開いてから「どうしやした?」と笑う。その様子を見て「先程の男と変な話はしてなさそうだ」と思いつつマスターに尋ねる。
「さっきここに座っていた男、何しにここに来たか聞いたかい?」
「あぁ…あの人ですか? 武器屋に用があるとか」
「武器屋?」
「えぇ、なんでも人に刀を見て来て欲しいと頼まれたとか…そんでこの島の刀が良いと聞いて来たと」
「ふーん…そうかい。分かったよい」
「あ、あの…俺何か言っちゃマズかったですか…」
「いや アンタは営業をしていただけだい。何かあればこっちで対処するよい」
そう言ってマルコはカウンターを離れ先ほどまで座っていたテーブル席へと戻る。同じ場所へ座り直せば「待ってました」と言わんばかりに身を乗り出してマルコへと問うはサッチ。
「何を聞いてきたんだ?」
「さっきの男が何しにこの島に来たのかだよい」
「確かに聞いておきたい事だな。奴は何しにここへ?」
「人に頼まれて刀を見に来たんだとよい。それが本当かどうかは別としてな」
「うーん刀ってなると武器屋か…あまり行って欲しい場所ではないわな」
「よい。わざわざ接触する事はねェが…誰かに見張らせとくか…」
「それなら俺が行こう」
「 ! いいのかイゾウ。お前ェも何かしら用があるだろい」
「一日中張り付けって訳じゃないだろう? なら俺が行く」
男の見張りを買って出たイゾウに驚く二人であるが彼の心境を考えると何も言えなくなる。彼ら白ひげ海賊団は以前この船に乗り二番隊隊長を務めたおでんの身に起きた事を知っていた。それを知った時には既におでんは処刑され赤鞘九人男たちも行方不明もしくは死亡というふうに聞いた。クルー達は弔い合戦をと思っていたが、それを白ひげが決行する事はなかった。
白ひげにも守るべき者が多くいてカイドウと戦えばタダでは済まないのが分かっていたからだ。もちろん兄弟同然のおでんの事を思えば何かしてあげたいだろうが白ひげはそんな己の感情を押し殺したのだろう。
そんな事もあり特にワノ国出身でおでんの家臣であるイゾウは、ワノ国を模したこの国を守りたいと思う気持ちは人一倍強い。それを分かっているマルコは「なら頼んだよい」とだけいい、この件はイゾウに託した。
そんな話しをされている時、ジョーは武器屋へと到着し中を見て回っていた。
ここの武器屋は話に聞いていた通り刀が豊富に置いてありジョーはここに来てまた思い悩むことに。ジョーがずっと使ってきたのは剣であり「剣よりも分からないぞ…」と言う気持ちなのだ。色々見て触ってみたりしているのだが如何せん…全く良し悪しが分からないのである。
参ったなとジョーが思っているとカランとドアベルを鳴らして入ってくる着物を着た男。チラリとその人を確認してから気にすることなく刀を物色するが…やはりチンプンカンプンだ。
( うーん…剣を見ていた時はシャンクスくんが居たからなぁ…結果的に神來剣を貰ったのだけれど… )
「アンタどんな刀が欲しいんだ」
腕を組んで思い悩んでいるジョーを見るに見兼ねた店主が読んでいた新聞を置き彼の側へ。そして上記の通り問いかければジョーも聞いてきた店主に「実は…よく分からなくて…」と言葉を濁す。
それもその筈でおでんが二振りの刀を使っていたのは知っているもののどんなものがいいなど皆目検討もつかない。何より以前使っていた刀が大業物21工と呼ばれる代物を使っていたのだとレイリーから聞き更に困っているのだ。
ぶっちゃけ大業物21工と言われてもジョーにはピンと来ていなかったが良い物を使っていたのは分かった。だからこそ困っている訳だが店主もどんなものがいいのか判らなければアドバイスのしようがない。
そんな姿を黙って見ていたイゾウは「武器に精通していない」と確信を持つ。来て少ししか経っていないがジョーは首を傾げながら刀を取っては戻しを繰り返して店主に声をかけられていたのだから。しかもアドバイスをしようとした店主さえも黙らせる程なのだから相当だろう。
「どんなのがいいか分からないって…アンタ何しにここに来たんだ」
『もちろん刀を買いにだけれど自分のではなく頼まれた物だからね…。さっぱりなんだ』
「刀を買うのに人に頼むだと…? 舐めた野郎だな…本人連れて出直して来い!」
『それがちょっと出来ない事情があってね。昔彼が使っていた刀なら聞いてるのだけれど…』
「ならそれを言ってみろ」
『あー…確か…大業物21工を二振りだと聞いているよ』
「大業物21工を二振りだと?!」
『聞いた話だとね。正直私は武器に詳しくないからよく分からないのだけれど…』
レイリーから聞いた話しをそのまま店主にすれば、それはもう大いに驚かれてしまう。それを見てようやく「そんなに凄い物を使ってたんだな」と思うジョーだが口にはしない。口にしたらきっと店主に烈火の如くお叱りを受けるだろう事が今の反応から窺えるからだ。
どうしたものかと考えていると店主は「それを持っていたのは一体どんな奴だ」と問う。その質問にジョーはなんて答えたらいいか一瞬思い悩むも名前を伏せればいいかと思い直す。
『とても破天荒で何事にも興味を示して…ただ芯は真っ直ぐある子だよ』
「そいつ子供か? 子供がそんな大業物を?」
『ちゃんと大人だよ。子供っぽい部分もあるけれどね』
「そうなのか? 二振りの大業物の刀…なんだかワノ国の今亡き大将軍みたいな奴だな」
「同感だね。俺も同じ事を思った」
店主と話をしていると店にいた着物の男が会話に加わって来て驚くジョー。そちらに目を向ければ火を付けていないキセルを手で遊ばせながら二人を見ていた。
ジョー的には「誰だろう?」と言う感じだが店主は男を知っていて「イゾウさん」と言う。そんなイゾウの目がジョーへと向き視線がかち合いジョーは場違いにも「綺麗な顔をしている」と思った。
イゾウはジョーが話していた刀を頼んだ人物が己が慕い付き従っていた光月おでんのようだと思った。そのため話に加わる気はなかったのだが思わず口を割って出てしまったのである。実際のところジョーに刀を頼んだのはおでん本人なのだがイゾウは死んだと思っているため分かりはしない。そもそもジョー自身もおでんだと分からせないように話しをしているため分かるはずもないのだが。
「お前ェさんに刀を頼んだって言う奴の名前は何てんだい?」
『あー…それは諸事情により答え兼ねるかな』
「さっきもそんな事言ってたねェ…。誰かを匿っているとか?」
『そうかも知れないしそうじゃないかも。私はその事に関しては答える気はないよ』
「思ったより口の硬そうな
イゾウの質問に答える気はないとハッキリと物申すことに店主は驚き目を丸めて二人を交互に見ている。店主的には白ひげ海賊団のクルーであるイゾウにそんな事言える一般人がいるとは思わなかったのだ。イゾウはイゾウでそんなハッキリしているジョーにある意味好印象を抱いていた。
そんな風に思われているだなんて考えてもいないジョーは取り敢えず刀二振りどうにかしなければと言うことばかりが頭にある。立てかけられているものや壁に飾られているものから選ぶには多すぎて分からない。
ジョーが唯一「あれが良さそう」と思う刀があるのだが見た限り売り物ではなさそうなのだ。ショーケースに入れられ大層大事にされているのが分かるくらいなのだから。それでも念の為に聞くだけ聞こうとジョーは店主へ目を向けてショーケースを指差しがら尋ねた。
『あそこに入っている刀は売り物ではないのだよね?』
「アレか…あれは売れねェぜ。あれを持てるのはこの世で一人だけだからな」
『 ? そうなのか? とても良さそうなのだけど…それだと仕方ないね』
「アンタも可笑しな客だな…普通そう聞いたら是が非でも欲しがる所だぜ?」
『そうなのだろうね。素人の私でも良い刀だと分かるのだから』
「当然だ…アレは俺の師匠があのお方の為に打った刀だからな」
『お師匠が丹精込めて打った刀か…それなら尚更買うなんて烏滸がましいね』
「くくく…本当に可笑しな男だ。欲が無さすぎやしないか?」
「俺もそう思うぜ…」
『そうかな? 出来ればあの刀がいいけれどそんな話しを聞いたら買わせてくれとは言えないよ』
そう言いながらニッコリ笑うジョー(帽子被っててよく見えはしない)にイゾウは再度笑う。店主も「変わった客だな」と思いながらも悪い印象は持っておらず寧ろそこまで言われたら良いものを見繕ってやろうとさえ思えた。
ショーケースに入っているのは装飾も綺麗にされている二振りの刀で丁度良さそうではある。しかしやはり先程の話を聞けば「買わせてくれ」と言えるわけもなくジョーは完全にその刀を諦めている。
そんなジョーを見て店主は「持つだけ持ってみるか?」と問いかければジョーは驚いたように目を瞬いた。しかしその申し出を丁重に断ったことに今度は店主の方が驚きに目を丸めた。
「別に持つだけなら構わねェが…」
『持ってあぁこれだって思ってしまうのは困るからね。やっぱりヤメておくよ』
「……そうか」
『ところで君たちは元々ワノ国出身なのかな? 二人とも着物…と言ったかな? それを着ているし』
「あぁ、お師匠の元で刀鍛冶の修行をしてこの国に移った」
「俺も出身はワノ国だ。今はもう随分と帰っていないけれど」
『帰ってない…。まぁ帰れないのだろうね』
「 ! ……お前さん何を知ってる? ワノ国がどうなっているか知っているのか?」
『詳しくは知らないけれど一応はね。酷いものだよ本当に…』
「何故知ってる? あそこは鎖国国家…情報が外へ出ることは殆どない筈だが」
『あー…ちょっとタイミング悪くワノ国へ行っていてね…その時に色々あったんだよ』
そうなんとも煮え切らない言い方をするジョーにイゾウは訝しげな表情をしながら見ている。店主も今ワノ国が最悪な状況であることを知っているため「何を知ってるんだ」と言いたげだ。それらの視線を受けたジョーは「余計なこと言ったかな」と内心思うも顔にはおくびも出さない。ただあそこまで言ったら何故その事を知ってるのか疑われない程度に話すしかないかと思い直す。
『私がその事を知っているのは頼み事をしに知人に会いに行ったからなんだよ』
「知人? お前さんワノ国の人間に知人がいるのか…早々に外へ出る事はないんだが」
「確かにそうですよね…」
『私が住んで居る所に訪ねて来てね。その時に知り合ったんだよ』
「へぇ…どこに住んでんだ?」
『私かい? 前半の海のどこかだよ』
「前半の海だって? 新世界ではなく?」
『うん。新世界へ来たのは今回で三度目で今住んでいるのは前半の海だ』
( この男…無害そうに見えて実はかなり危険な奴なんじゃあないだろうな… )
「前半の海から新世界に買い物だけで来たってのか?!」
『そうなるね…新世界でしか買えない物だったから仕方ないんだよ』
店主の言葉に苦笑いしながら答えるジョーは本当に仕方ないと言いたげな感じである。
イゾウはジョーの雰囲気や出立ちからただの旅人である事は察せるが実力の程は見た目だけでは判断しづらい。もちろんある程度戦えるのだろう事は佇まいで分かるのだが、それが何処まで出来るのかが問題だ。新世界に来れている時点で覇気は使えるのだろうが、どれほどの覇気の持ち主かなど判りはしない。なんとなくマルコが警戒した理由が解ったような気がしたのと同時に「さすが長男様だ」とイゾウは思った。
取り敢えずジョーは店主に適当に良さそうな物を見繕ってもらう事となり出された二本を握ってみる。ジョーは元々刀使いではないため刀が手に馴染むとかよく分からないが、悪くはなさそうだと思う。刀を握りながら「ふむふむ」と頷きながら色々な角度から見てこの二振りにするかと決めた。
ジョーが「これを頼むよ」と店主に言おうとしたのと被るようにイゾウが口を開く。
「お前さんワノ国に知人がいると言ったな? その人の名は何てェんだ?」
『私の知人?』
「あぁ。もしかしたら俺も知っている者かも知れないだろ?」
『確かにそうだね。と言うか知ってるんだろうね』
「知ってる…? 有名な奴なのかい…」
『有名というか知ってないとマズいと思うけれど…彼の名は光月おでんと言う子だよ』
「 ?! 」
イゾウの質問に知人が誰かくらいなら話ても平気かと思い名を口にすればイゾウは勿論店主も驚きに目を開く。ワノ国出身でその名を知らぬ者などおらず「バカ殿」だのなんだの言われたりしているが信のおける主人。己が命を賭して守るべきだったその人の名が目の前の男から出て来たことにイゾウに驚くなと言う方が無理な話しだろう。
何よりおでんを知っているとなると白ひげ海賊団に乗っている時かもしくはロジャー海賊団に乗っている時のみ。それでしかおでんがワノ国を出た期間はないし己がジョーを知らない事からして後者である可能性が高い。
何よりイゾウにはおでんがワノ国に帰ってからの主人に会っていると言う目の前のジョーに色々聞きたい思いだった。イゾウには珍しく色々と頭の中をグルグルとめぐり言葉がなかなか出てこない中口を開いたのはジョーだった。
『やっぱりおでんくんを知ってるようだね』
「当然だぜ…。おでん様を知らねェ奴はいない。あそこに入れてある刀もおでん様に宛てた物なんだからよ」
『 ! そうか…彼に…( それなら是が非でも欲しいな… )』
「お前さんが……、」
『ん?』
「お前さんがおでん様と最期に会った人間か…?」
その問いにジョーは何て答えていいか分からなかった。
おでんに最期に会ったも何も…おでんは生きてタートル島で今日も今日とて走り回っている事だろう。無論その事を話すことは憚られるのだが…この感じからして繋がりが深いのかとジョーは思った。そうなると死んでいるのだと思わせたままなのも酷かと思うが、あまり知られるのも…と思ってしまう。
だがイゾウはワノ国出身であり、もし殺されたのだと思っていて実は生きていると知っても誰かに言ったりはしないだろうともジョーは考える。それは店主にも言えたことで己が「この事は内密に」と言えば恐らく外に漏れる事はないのだろう。
そもそもおでん宛に造られたというあの刀を受け取るには彼が生きている事を話さねばならない。そうしなければ何と交渉した所で店主はあの刀を売りに出す事はないのだろうから。色々考え込んでいるジョーに「そんなに答え兼ねる事か」とイゾウも店主も思うが何も言わずに待った。
そんな二人を見てジョーは…二人におでんの事を話すことを決めた。
『君のその質問に私は答えられない』
「答えられない? どういう意味だい…」
『単刀直入に言おう。おでんくんは死んでいないよ』
そうジョーが言うとイゾウは驚愕に目を大きく見開いたかと思うとガッとジョーの胸ぐらを掴む。イゾウの瞳には驚き・戸惑い・喜び・怒り…色々な感情が入り混じり混乱しているのがアリアリと伝わる色をしていた。それもそうだ…今までずっとおでんは死んだものと思っていたのにここに来て「生きている」と言われれば誰でも混乱する。
イゾウはジョーの胸ぐらを掴んだはいいが言葉がなかなか出て来ず力の限り掴む手が震えるばかり。そんな姿を見たジョーは姿勢はそのままにゆっくりと現実味を帯びるように話しをした。
『おでんくんの最期に会ったのは誰かと聞いたね? それは私を含めた多くの民衆がそうだろう。私は彼の家臣からSOSを受けてワノ国に行ったのだけれど遅かった…彼は一度死んでる』
「 !? どういう意味だい…おでん様は生きていると…!」
『うん生きてるよ。私が蘇生した』
「 ?! そんな人智を覆すようなこと…」
『本来はしてはいけない事なのだろうけれど…私にとっても彼はとても大切な子…だから助けた』
「お前は…悪魔の実の能力者か…それで…」
『その通りだよ。能力で彼を蘇生…と言うよりは生きている時の状態に戻したと言った方が正しいけれど…。ともあれ、おでんくんを助け出して今は私の住む島で匿い共に過ごしているんだ』
「経緯はこの際何でもいい…おでん様が生きている事が全て…!! 助けてくれた事…感謝する!!」
『感謝される謂れはないよ。言ったろう?私にとっても大切なんだ』
「 ! …そうか。ならこれ以上言うのは野暮ってもんだ。胸ぐら掴んで悪かったな」
『それだけ衝撃だったのだろう? 気にしていないよ』
胸ぐらを掴んでいたイゾウは落ち着きを取り戻せば直ぐにその手を離し謝る。ジョーはジョーで全く気にしていないようでケロリとしており咎めの言葉が出ることはない。二人の話をただただ驚きのまま聞いていた店主は今になってやっと我にかえり「ちょ、ちょっと待ってくれ!」と二人の話に口を挟んだ。
「おでん様が生きてる?! 蘇生させた!? 話がぶっ飛び過ぎてて意識飛んだぜ…!?」
『まぁ普通ではあり得ないだろうからね』
「そりゃそうだぜ! 死人が生き返るなんてあり得ねェよ!!」
「このグランドラインじゃぁ何が起こるか分からんさ。現に生き返っていると言うのなら万々歳だ」
「イゾウさんは信じるんですか今の話!? 嘘かも知れないんだぜ?!」
「嘘は言っちゃいないだろう。そもそもこの場面で嘘を付くメリットがない」
「それは……刀…! あの刀が欲しいから言ってるとか…!」
「もしそうなら、さっき話している時点で説得にかかってるだろ」
「ゔっ…確かに…」
『私の言葉を信じられないのは分かるよ。だから別に信じなくても構わない』
「え……」
「くく…本当にお前さんは可笑しな奴だ。普通信じてもらいたいだろうに」
『おでんくんが生きている証拠を見せられないからね。仕方がないよ』
店主の言葉に傷付くとかそう言う事はなくさも当然だと言うように店主の言葉を肯定した。その事に店主は「えっ」と言う顔で固まりイゾウはクツクツと喉で笑っている。
ジョーの言い分ももっともで、おでんが生きていると言葉ではどうとでも言える。信じてもらうには何かしらの確固たる証拠を見せたり何だりしなければならないだろう。何故かイゾウはジョーの言葉を信じたようであるが、それは人それぞれ信じるモノは違うもの。イゾウにとっておでんは恩人で主人である事から「生きていて欲しい」と言う願望が強いのだ。
それぞれが思う事がある中ジョーは空気を読まずに「まぁ確かに出来ればあの刀が欲しいけれど」と口にした。それを聞いた店主は「それ見たことか!」と言いたげにジョーに物申す。
「やっぱり刀目当てか!!」
『元々刀目当てで来てるから当然だよ』
「おでん様の名を出したからと言ってあの刀を渡すとは思うな!」
『んー…おでんくん宛なら丁度いいと思ったのだけど…これだけ頑ななら諦める他ないね…』
「そんな頭ごなしに言わなくてもいいんじゃないか?」
「イゾウさん、俺はやっぱり信じられェんすよ! あの刀を師匠から預かって此処に来たのはおでん様が亡くなられてからだ!万が一でもおでん様の為に打った刀が奪われてしまわぬようにと…!!」
「そうかい……となるとお前さんが確固たる証拠を提示しない限りその刀は諦めないとならないな」
『うーん…そう言われると困るね…連絡は出来れば取りたくはないし…だからと言ってビブルカードって言うのも証拠としては不十分だろうし…』
「ビブルカードを持ってるのか? おでん様の…?」
『あるよ。元々新世界に来たのはビブルカードを作りにだからね。その後連絡が来て武器も買って来てくれってなって今に至っているんだよ』
そう言いながら前の島で作ったビブルカードをカバンから取り出して見せる。それは確かに普通の紙切れと間違いそうになるよく見慣れたビブルカード。ジョーの手にあるそれはある方向に向かってスススッと動いてる。この紙の先におでんが居るのかと思うとイゾウは何とも言えない気持ちにさせられる。
店主はジョーが言っていた通りビブルカードだけでは信じる事は出来なかった。なにせ他の人のビブルカードを持っていれば今のようにその人に向かって動くのだから。
店主の気持ちが手に取る様に分かってしまうジョーはどう説得しようかと頭を悩ませるのだった。
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