救済を
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魚人島で一時の休息を取った赤髪海賊団の面々及びジョーはレッド・フォース号へ乗り込み再び海底を進む。
相変わらずウマヘビがいる事で他の海王類やら海獣に襲われることなくスムーズに進む事が出来ている。ジョーは先程の予言のこともあり間借りしている部屋に篭り色々な推測を立てていた。「多くの人を救う」と言うことがどう言う状況で起こりうるのか…ジョーなりの推測を。
とは言えそうたくさん考えられるものでもなく、やはりジョーの中では「死者を救う」という事ばかり考えてしまう。これまでに四人もの人を「救って」来た事がジョーにそう考えさせてしまう大きな要因である。そんなマイナスの方に考える必要はないのだろうがこればかりはどうしようもなかった。
『……救うとなると…恐らく私の周りの人間だろうけれど…ロジャーとおでんくんは流石にもうないだろう…。そうなると…一体…シャンクスくんやレイリーくんって訳でもなさそうだが……』
もしかしたらロシナンテの様に成り行きで救うことになる可能性も捨て切れず「考えても無駄か…」とジョーは独ごちシャボンディ諸島で買った本を開く。頭の中を空っぽにして余計なことを考えずに済む方法は今のジョーには読書しかない。
ジョーは目的の島に着くまでの間、食事や睡眠以外の時間はひたすらに本を読み続けるのだった。
*
**
***
魚人島を抜けてから数日経ち、ようやくレッド・フォース号は目的の島へとたどり着いた。予言を聞いてからほとんど間借りした部屋から出ることのなかったジョーは久しぶりの日差しに目を細める。篭りがちだったジョーがちゃんと出て来てくれたことにシャンクス達がホッとしている事にジョーは気付いていない。
堂々と港につける事はできないため街から少し離れた海岸へと泊め続々と降りていく。そんなクルー達の後に続いてジョーも船を降りれば先に降りていたシャンクスが待っていた。
「ジョーさんビブルカード作るんだよな? 案内してやるよ」
『いいのかい? シャンクスくんも何か予定があるんじゃ?』
「俺ァ別にねェから気にすんな!」
『そう…? なら頼もうかな』
「おう! 行こぜ!」
ジョーはシャンクスの厚意に甘えてビブルカードを作成できる所まで案内してもらう事に。
街に向かう間他愛のない話をしている二人なのだが如何せん彼ら以外にも海賊がいるらしく様子を見ているようだ。その視線が鬱陶しく感じるジョーであるが一々文句を言っても意味がないのも分かっている。何たって相手は海賊なのだから。
本来であれば手を出してくるだろう海賊も相手が名の知れた人物だと分かれば身を隠したくなるだろう。シャンクスに言わせれば「根性のねェ」と言う思いだが態々己から行く事はしない。ただジョーは思う事があった…「海賊なら少なからず金品を持っているのでは?」と。今ジョーはどうにかして資金を工面しなければならない状況下にあるからこその考えだ。
カトラスと刀二本と銃一丁を買うには今の所持金ではどう頑張っても足りないのだから。
『シャンクスくん』
「ん? どうした?」
『こちらの様子見ている海賊達は金品を持っていると思うかい?』
「金品?まぁ曲がりなりにも海賊だからな。持ってるんじゃないか?」
『そうか…ちょっと所持金が心許なくてどうにかしたいんだけれど…』
「アイツらから奪うって?」
『ダメかな?』
「奪ってナンボな海賊だぜ?ダメなんて事ァねェよ!」
『乗せてもらってる身だけれど海賊になったつもりはないよ』
「だはははっ! そうだったな!」
『まぁでも…彼等から少し貰っても大丈夫ならちょっと貰って来るね』
「俺も手伝うか?」
『シャンクスくんの手を煩わせる訳にはいかないよ』
シャンクスの申し出を断りジョーは先程から視線を向けられている方へ足を向けた。見ていた海賊達は赤髪のシャンクスと共にいた男が突然進路変更して近づいて来た事に驚く。しかし顔も見た事ない奴に負ける気などないと言う様に不敵な笑みを浮かべ待ち受ける海賊。そんな様子を遠巻きに見ているシャンクスは「あの海賊も気の毒だな」と思っていた。
ジョーが今まで相手にして来ていた者はタートル島に住む猛獣達である。そして今やロジャーとおでんとも手合わせ的な事をして来ていたのだから強いのは当然だ。
ただロジャーやおでん相手だからこそ手加減というものを残念ながらジョーは把握していなかった。いや…把握していないと言うよりも手加減したつもりでもそこらの者にとっては手加減ではないのだ。それを分かっていないのをシャンクスは肌で感じ取っているからこそ同情したのである。
案の定ジョーの攻撃の一発一発が物凄く重く一撃でのされていく海賊たち。それなりの人数が居たのだがジョーの相手にはならずボロ雑巾の様に地へ伏した。ただジョーはあっという間に終わってしまった事に心底不思議そうにしているのだが。
『最近の若い子はこの程度なのかい?』
「イヤイヤ、ジョーさんが強いんだぜ? コイツらが弱いってのもあるかもしれねェけど新世界に入れてる時点でそれなりの筈だ」
『ふぅん?そうなんだね?ただ私はごく一般的だよ? ロジャーとおでんくんとは比べ物にならないからね』
「イヤァ…二人と比べるのもどうかと思うぜ…?」
『そうなのか? 正直ほとんど二人としか拳を交えてないからよく分からないのだけど』
「二人と拳を交わすってなんかシュールだな? 武器は流石に持たねェのか」
『持つ武器を持ってるのは私だけだからね』
「あぁそうか! だから今回追加で頼まれたんだもんな」
『まぁ何時迄も木の棒で戦り合うのも限度があるからね』
「木の棒?! だぁはっはっはっはっ!! よくそんなで戦り合えたな!」
『慣れれば案外簡単だよ? 耐久性がなくて簡単に折れてしまうけれどね』
「折れるって覇気纏ってやってんだろ?」
『それでも耐えられないんだよ』
武器がない代わりに木の棒を使っていると知ったシャンクスは腹の底からケラケラと笑う。まさかあのロジャーとおでんがそんなチャンバラみたいな事をしているなど露ほども思っていなかった。覇気を纏っているとは言え木の棒を振り回している姿を想像するだけで笑いを誘うのである。
ツボったようにケラケラ笑うシャンクスを見たジョーは「面白い事言ったかな?」と不思議そうだ。そんなジョーを見て更に笑いを助長しているなど彼は微塵も思っていないだろう。
ともあれ海賊たちから金品を有り難く
街にやってくればそれなりに賑わいを見せており活気のある街並みである。ジョーはキョロリと辺りを見渡しながら歩くも足はしっかりとシャンクスの後について行っている。それを見兼ねたシャンクスは「何か見てくか?」とジョーへ問いかけた。
『あぁ すまないね気を遣わせて。気にしないでおくれ』
「急いでる訳でもねェし見たいもんあるなら言ってくれていいぞ?」
『これと言って見たい物がある訳じゃないんだ。こう街をゆっくり歩くのは久し振りでね』
「そうなのか? なんか買いに出たりもするんじゃないのか?」
『出来るだけリスクを下げる為に必要な物を買ったら直ぐ帰宅だからね』
「……そうか…かなり窮屈な思いしてんだな」
『私は自由に動けているからまだマシだよ。二人には窮屈だろうけれどね』
「二人とも誰よりも自由だったからなァ…。でも理解はしてんだろ?」
『勿論してくれているよ。それでも心苦しい思いではあるんだ』
そう言うジョーにシャンクスは何て声をかければ良いか分からなかった。
ジョーが二人を匿い隠し続けているのは世界政府や海軍、そして因縁の相手から守る為だと言うのは分かる。おでんにトキが居るようにロジャーにもルージュと言う女性がいる事を聞いている。二人…特にロジャーが生きていると知られれば間違いなく彼女にも矛先が向けられるだろう。皆を守るために自分たちがジョーの元を訪れた時も己だけしか二人に会う事が叶わなかったのだ。
それだけ徹底しているお陰か世間に「海賊王ゴールド・ロジャー」が生きているなど知られていない。公開処刑後に遺体を奪われた政府関係者は最悪な場合を考えているかも知れないが…。そんな事もあり二人に窮屈で不自由な思いをさせてもジョーは心を鬼にして隠し続けているのだ。
そんな話をして暫し沈黙が漂うも、そんな暗くなりそうな空気を壊したのはジョーだった。
『ウジウジした所で何も変わらない。いつかあの子達も自由に暮らせる日が来るのを気長に待つよ』
「そうだな。俺もそんな日が来ればいいと思うぜ」
『まぁ…その日まで私は生きているか分からないけれどね! ははははっ!』
「Σそこ笑い事か?! つーかそんな見た目で言われたら変な感じするぜジョーさん…」
『何を言うんだシャンクスくん。これでも私はもう前期高齢者なんだよ?』
「年齢的にはそうなのかも知れねェけど…見た目がよ…マジで見えねェ」
『ははははっ! 若造しているからね』
「若造っつうか…歳取ってる感じしねェんだよなァ…」
能力で体の若さを保ているからか小皺などは見られるもののジョーの見た目が当時会った時と大差ないと思うシャンクス。髪は黒髪よりも白髪の方が目立っているのだが、それでもまだ黒髪があることに驚きなのである。
自分が一般的に歳の取り方が少し違うのはもちろんジョーも分かっているのだが別段気にしてはいない。己の手配書が出て云十年…この方が政府に見つかる確率が非常に低いのだから。ただシャボンディ諸島で会ったシャッキーが言うようにジョーの息子だと思われる可能性はあるのだが。
そんなこんな話しをしながら歩くこと数十分…目的地であるビブルカードを作れる場所へ辿り着く。カランとドアベルを鳴らしながら中へ入れば中年男性がカウンターに座ってタバコを吸っている。
「らっしゃい…アンタか赤髪さん」
「よォ! 相変わらず暇そうだな!」
「まぁこちとら客はお前さんらのような海賊または海軍が多いんでね…」
「だははははっ! そりゃそうだ!」
「それで? 依頼はなんだ? そちらの兄さんは初めて見る顔だが」
「今回は俺じゃなくて彼がビブルカード作りてェってんで案内したんだ」
「そうかい…作るのはアンタ一人分でいいか?」
『全部で七人分作って欲しい』
「七人…なら丸一日は掛かるだろうからまた明日取りに来てくんな」
『代金は?』
「受け渡しの時に」
『そうか。ならよろしく頼むよ』
「受けた依頼は手を抜かねェよ」
店主はジョーから受け取った七人分の爪の入った容器七つを受け取り早々に奥へと入って行った。その姿に「仕事熱心な子だ」とジョーは感心したように頷いてから一先ずここに用はないため店を出る。
シャンクス的にはジョーが言った七人分と言うのが気になって仕方なかった。
タートル島に住んでいる人はジョーを含め六人である筈だが彼は確かに七人分と言ったのだ。実際にロジャーとおでんの二人に会い二人に愛している女性がいてもう一人誰か居るのを知っているのだから当然の反応だろう。
「さっき七人分って言ってたが六人じゃないのか?」
『あぁ…それが亀助さんの分も作ろうっておでんくんが言い出してね』
「亀助って島だと思ってた亀だよな? どうやって爪を取ったんだ?」
『出航する日におでんくんが海に潜って取ってきたんだよ』
「マジか! ホントおでんさんは何しだすか分かんねェな!」
『本当にね…いい加減落ち着いてくれてもいいと思うのだけどね』
「だははははっ! おでんさんが落ち着くのはヨボヨボになってからだろうな!」
『え…もしそうなったら手足をどうにかするしか…』
「Σいや怖ェよ!!」
『はははっ冗談に決まってるじゃないか』
「十分本気に聞こえたんだが…」
ジョーの本気なのか冗談なのか分からない言葉にシャンクスは流石にギョッとした。まぁジョーは「冗談だ」と言うのだがシャンクスとしてはどこまでが本気なのか正直分からないところだ。
ともあれ目的であるビブルカードの製造の依頼はした為あとは武器の調達だけである。
一先ず先ほど海賊から拝借した換金できそうな金品を換金所で現金にしてから武器屋へ。シャンクスにはお礼を言って別れようとしたのだが「暇だから」と言ってジョーと共に行動するようだ。それに関しては別にいいのだが「船長というのはそんなに暇なのだろうか?」とジョーは思う。
何を思ったところで意味はないとジョーは頭を切り替え武器屋へと足を進めた。とは言えどこに武器屋があるか分からないため結局シャンクスに案内してもらっているのだが。シャンクスの案内の元向かうのは街中にある武器屋ではなく少し郊外にある武器屋だった。
『こんな所にもあるんだね。人が来なそうだけれど』
「ここは一般向けには売ってねェから」
『そなのかい? それって私買えるのか…』
「俺と一緒にいりゃあ平気だと思うぞ」
『あぁ…そうかシャンクスくんも海賊だからね。助かるよ本当に』
「いいって! この店は結構掘り出し物もあってよ良いもん見つかるかもしんねェな」
『うーん…正直武器の良し悪しって分からないから何とも…』
「だから俺が一緒に見るんだろ?」
……………………
………………………………
『そうだったね。忘れていたよ』
「だと思った! さっきの店出て礼を言われた時は驚いたぜ!」
『申し訳ない…私も年だから物忘れがね。参ったよホント…』
「全然そうは見えねェけどな」
ジョーの言葉にケラケラ笑うシャンクスに対し彼は「本気で悩んでいるんだけれど」と思うも口にはしない。もう年寄りなのは今に始まった事ではないし物忘れも誰しもが通る道だと思うから。いずれシャンクスも通る事になるだろうなんてジョーは思いながらも武器屋のドアを押し開ける。
中に入ればシャボンディ諸島の武器屋のように陳列されている。金額もピンからキリまであり「これは選ぶの大変そうだ」とジョーは内心ゲンナリする。
そんな中店先にいなかった店主が奥から顔を出しシャンクスを見て「らっしゃい」と言う。そしてその後にジョーの方も見て少々訝しげにするもののシャンクスと共にいるからか何も言われる事はなかった。
取り敢えずジョーはロジャー用のカトラスとロシナンテの銃から探す事にしそれが並ぶ棚へと歩みを進め眺める。シャンクスも好きに見ており時たま店主と何かを話しているようだがジョーが気にする事はない。
どれもこれも同じように見えるジョーは「うーん…」と頭を悩ませつつどこかしっくりこない感覚を持つ。良さそうだと思って手に取ってみるも何か違うと直ぐに棚に戻すこと数回…全く決まりそうにもない
そんな姿を見ていたシャンクスが声をかけよとしたタイミングで店主の方が先に口を開いた。
「どんな物を探してるんだ」
『え…そう言われても特に…』
「その割には随分と納得してなさそうだが?」
『あー…武器は手に馴染むものがいいと助言されたのだけれどしっくりこなくてね…』
「いいアドバイスを受けたもんだ。アンタが言ったのか?」
「いや俺は言ってねェからベックかヤソップあたりに聞いたんじゃねェか?」
『シャボンディ諸島の武器屋でたまたまヤソップくんに会ってね。その時に言われたんだよ』
「なるほど…狙撃手のヤソップか。流石の目利きだな」
「当然だろ! ウチの
『新世界の武器屋の方が良いものが置いてると言ってもいたのだけれど…ダメだねてんで分からないよ』
「この辺の武器は良質なもんだと思うぜ?」
『そうなのかい? 私の手には馴染まないのだけど…あの子には馴染むかな?』
「どうだろうな。こればかりは握ってみないと分からねェしよ」
「なんだ自分の武器を探してるんじゃねェのか」
『お使いを頼まれたんだ。うーん…よく分からない…』
「武器を買うなら本人を連れてー…おいアンタ! その腰に下げてる剣…!」
『え? これかい? これが何か?』
「ちょ…ちょっと見せてくれ…!」
『構わないけど…』
ジョーが己の武器を買いに来たのではないと知った店主は面倒くさそうな顔をする。しかしジョーの着ているローブの下に隠れて見えなかった剣が見えた時、表情を一変させた。「見せてくれ」と急かすように言われ驚きながらもその剣を店主に渡し首を傾げるジョー。シャンクスもまた突然の食いつき具合に驚きながらも「いい剣なのか」と結論づける。
武器屋の店主が食いつくのだから名のある剣なのだろうとシャンクスは思ったのである。剣の隅々まで拡大鏡を使ったりして真剣に見ている店主が「ふぅ…」と深く息を吐き出す。
「アンタこの剣どこで手に入れた…?」
『手に入れたも何も…父から譲り受けた物だよ』
「な…に…? おい嘘だろ…だってこれは…」
「なんだってんだ? ハッキリ言えよ」
「随分と前の話になるがこの剣を打ったのは当時名を知らぬ者などいない程有名な刀匠が打った代物。生涯で打ち上げた最高の逸品…名を「
『神巫剣…そんな話し初めて聞いたよ』
「スゲェもん持ってたんだなジョーさん」
『私も驚きだよ…』
「これはある神剣でもある。これを持てるのは限られた人間だけだ…」
『限られた人間…?』
「そう…名に「 D 」が付く者…その中でも一際強い力を持つ者だけだ」
「そりゃスゲェな! ジョーさんが持ててるって事は強さを証明したようなもんだ!」
『喜んでいいのかこれは…?』
「あんた一体何モンだ…? これを持てている時点で名にDが付くんだろうが…」
『あぁ…私の名はゴール・D・ジョーだよ』
「 !? 」
ジョーの名を聞いた店主は驚愕な表情をして固まってしまう。
その名を聞いたのはずっと昔の事であり「海賊王」に兄がいるのだと知ったのも手配書を見てだ。ずっと姿を眩ませていた人物が目の前に…しかも「
店主は背筋に冷や汗を流しながらゴクリと固唾を飲み込み、震える体に鞭打ち座っていた椅子から立ち上がる。ジョーが名を明かした事で目を光らせていたシャンクスが少々警戒するような気配を出す。
そんな中ジョーは相変わらずのほほんとしており突然立ち上がった店主に目を瞬かせている。何か言われるだろうかと思っていると店主はどこか興奮したように捲し立てたながらジョーに剣を返した。
「アンタが…海賊王ゴールド・ロジャーの兄貴…! それなら納得だ! この刀剣を持てるのもな!俺が生きている間にこんなスゲェもんを拝めるたァなんたる幸運…!! おっと嬉しくて涙が…!」
『えと…喜んで貰えたようでよかったよ…?』
「身構えた俺がバカみてェだな…」
「アンタ…いやジョーさん! カトラスを探してると言っていたな?! ちょっと待っててくれ!」
『うん?』
「嵐のような奴だなァ…。だがもしかしたら良いもん出してくるかも知れねェぞ」
『そうなの? でもなんで?』
「そりゃジョーさんがその神巫剣つったか? それを持ってるからだろ」
『たったそれだけで? そもそもこれは父のだったんだが…』
「それでも今はアンタの剣だからな。伝説の刀剣を拝めたとなりゃ武器商人としてはこれ程喜ばしい事はねェさ」
『そう言うものなのだね』
「待たせて悪い! 是非これを持ってみてほしい…!!」
店主が奥へと引っ込み取り残された二人が他愛のない会話をしているとバタバタと戻ってきた。その腕には桐箱が抱えられておりカウンターの上に置いてあったものをバサッと全て下に落とす。そんな豪快な行動に驚くジョーは「片すの大変だろうな」とトンチキなことを考えた。
ジョーがそんな事を考えている間に厳重にされている桐箱の蓋を開けて中にある一振りを見せる。そのカトラスから何かを感じ取るシャンクスは「なんだこの剣…」とつぶやいた。ジョーも同じように何かを感じ取っているのだが「嫌な感じはしないな」と思いながら眺めた。
「これは神巫剣を作った刀匠の唯一の弟子だと言われた男が怒りに任せて打ったとされる剣だ」
『怒り…? 何故彼は怒っていたのか…』
「師である刀匠が…神巫剣の噂を聞きつけた者の手によって殺されちまったからさ」
『なるほど…その怒りの念がこの剣に込められてしまっているのだね』
「そうだ」
「おいおい…そんなもんを客に売りつけようってのか?」
「いや…これは本来売りもんじゃねェ…買った奴がすぐに死んじまうからな」
「なんだそれ縁起でもねェ代物だな」
「これはある意味魔剣…しかもタチが悪くてな…握った奴の体を操ってんじゃねぇかって思える程怒り狂うんだ。ただ一人…この剣を握っても豪快に笑った男がいた…それがゴールド・ロジャーだ」
「ロジャー船長そんなことしてたのか?!」
『まぁロジャーらしいけれど』
「その時の俺はまだガキだったが…親父から話は聞いてたからド肝を抜かれたぜ…。持てる人間が現れたと喜んだ親父だったが彼は既に剣を持っていたからな…そのまま置いてった。だがその時にこうも言ってた…! 『いつか俺以外に持てる奴が必ず現れる』と…!!」
「現に…こうしてジョーさんが現れたってか」
「一度たりとも忘れた事はなかった! こうしてアンタがここに来たのも運命…! ぜひ持ってみてくれ…!!」
そう言いながら店主は剣に触れることは出来ないため桐箱をジョーの方へ寄せ懇願した。危険なのは重々承知しているが、それでも神巫剣を持ちロジャーの兄だと言うジョーに店主は持って欲しかったのだ。
シャンクス的にはこればかりは危険じゃないかと思うが決めるのはジョーのため何も言わない。ジョーも暫し考え込んでから一つ頷きシャンクスの方へ顔を向けとんでも無いことを口にする。
それは「もし私が暴走したら殺してでも止めておくれ」と言う。
そんな事出来ないとシャンクスが言うもジョーはただ笑うだけでそれ以上何も言わずに剣へ手を伸ばす。そしてグッと握り箱の中から取り出して鞘からもその剣を抜いて刀身を出してみせた。
ゴクリと固唾を飲んで様子を見ている二人に反してジョーはピクリとも動かず剣を見る。
ジョーは己の中に怒り・悲しみ・後悔といった複雑な感情のようなものが流れてくることに驚いている。本当にこの剣自身が生きているのではないかと思えるその感覚に「操られたよう」と言うのは言い当て妙だとジョーは思った。この感覚に耐えかねたものが暴走したのだろうと思い至ったジョーは目を閉じてフッと笑みを浮かべる。
それを見た店主はかつてやって来たロジャーを彷彿とさせブルリと体が震えた。そして…まるで剣に語りかけるようにジョーは口を開いた。
『辛かったのだろうね…悔しかったのだろうね…だが君のお師匠の剣は長い時を経ても語り継がれている。なんの縁か私がその剣を譲り受けているのだけれど…次この神巫剣を持てる者が現れた時は譲り渡そう。この先もずっと、この剣が生き続けられるように…ずっと語り継がれるようにね』
そう言って最後に「私と共に行こう」と言いながら剣を鞘に戻した。
その様を見ていたシャンクスは「一体この人は…」と思いながら底知れぬ何かを感じた。店主に至っては凄いものを見てしまったと大号泣しておりエグエグと嗚咽がすごい。ジョーはと言うとケロッとした顔でその剣を見てから店主の方へ目をむけて一言。
『この剣を私に譲ってくれないかな』
「も、もちろんだ!! 金もいらねぇ…!! 一緒に持って行ってやってくれ!!」
『ありがとう…大事にさせてもらうよ』
「あぁ…!」
「いやァ…ジョーさんホント分からねェ人だぜ…。さすがと言うべきなのか…」
『別に大したことをした訳じゃないよ。剣が何を伝えたいのか感じ取っただけさ』
「それがスゲェことなんだけどな…」
『ちなみにこの剣にも名はあるのかな?』
「グズっ…いや、その剣を打ってその弟子も死んじまったからなんの名もねェんだ」
『そう…ならこの剣は「
「神來剣…なんか意味はあるのか?」
『この先も神巫剣と共に居れるようにね』
そう言ってニッコリ笑うジョーにシャンクスは「いい名だな」と言い店主は「良がっだなァっ!!」と再び号泣。泣くほどかと思わなくもないが子供の頃に受けた衝撃を今また受ければそうなるのだろう。ともあれジョーは譲り受けたこの神來剣をロジャーの新たな剣として持って帰る事となる。
ロシナンテ用の銃もこの場で買う為に色々物色していたが剣以上に分からなく結局店主に目利きしてもらった物を購入した。あとはおでんの刀を二本買わねばならないのだが、いかんせんここにはあまり刀を置いていなかった。
刀も二本買いたい事を店主に言えば、ここには良いものは置いていないとハッキリと言う。どこかいい場所はないか尋ねればこの先にある島「ワシの国」と言う島があるらしい。なんでもワノ国に感銘を受けた人が無人島を一国に作りあげた島のようだ。そこに行けば良い刀があるだろうと言われジョーはそこでおでんの刀を買おうと決めた。
店主に見送られる形で店を出てジョーの腕には桐箱に入った剣。
『ありがとうシャンクスくん。いい買い物が出来たよ。と言っても譲ってもらったのだけど』
「いいって! 店主だってあんなモン見せられたら金なんか取れねェよ」
『あんなもん? なんかあったかな?』
「あー…ジョーさんはそう言う人だよな。分かってる分かってる」
『えっ…なんか色々含みのある言い方だね…』
「だはは! 気にすんな! にしても刀はワシの国か…」
『そうだけれど…何かあるのかな?』
「実はそこの島白ひげのナワバリなんだよ。だから俺たちは安易に近づけねェ」
『 ! そうか…魚人島は仕方ないにしても他の島はそうもいかないんだね』
「おう…だから連れて行けても近海までになっちまう」
『大丈夫だよ。ウマヘビもいるしね』
「悪ィな」
『悪いなんて事はないし寧ろ私は助けられっぱなしさ。何かお礼をしたいけれど…』
「礼なんていらねェよ! ただそうだな。またあの島に行った時はよろしく頼むぜ!」
『そんなの当たり前じゃないか。いつでも歓迎するよ』
「おう!」
などなど会話をし取り敢えずここでの買い物は済んだジョー。後は明日出来上がるだろうビブルカードを受け取ればこの島に用はなくなる。シャンクス達はログが貯まるまではこの場に留まる必要があるがジョーはウマヘビに乗ればどうにかなると思っている。実際の所そんな事は断じてないのだがジョーにそれを説いても聞き入れないだろう。
ジョーはあまり長居しすぎるのも良くないだろうと思い明日シャンクスの船を降りて一人で行こうと心に決めた。
ただ今はこの時間を楽しもうと考えそのことを伝えるのは明日にする事にしたのだった。
( それ持って歩くの大変か? )
( このくらい平気だよ )
( そうか? だいぶ目立ってるけどな )
( それは君がいるからじゃないかなシャンクスくん )
( 俺? なんでだ? )
( 何でって…君名の知れた海賊だろう? 注目されるのも当然だと思うけれど )
( そうかァ? 気にした事ねェから分かんねェわ )
( そう言うこと興味なさそうだものね )
( ジョーさんには言われたくねェな )
( ははははっ! そうだろうね! )
( あの赤髪と普通に話してるぞ… )
( 一体何者なんだあの男… )
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