救済を
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シャボンディ諸島に到着して三日経ち、ジョーは言われた通りベックマンのビブルカード頼りに船へ戻った
そこには見事にコーティングされたレッド・フォース号が鎮座しており、思わず「ほー…」と言う声が漏れた
それを先に戻って来ていたシャンクスが見ていて「驚きすぎだろ!」とケタケタと笑う
そんなシャンクスを見たジョーは「仕方ないだろう?」と言いたげな表情をしながらも肩をすくめるだけにとどめた
コーティングが終わればこの場に留まる意味もなく、彼等はすぐさま魚人島のある海底を進む
そんな中ずっと追いかけて来ているウマヘビがレッド・フォース号の横に並ぶように泳ぐ
船よりも何十倍もの大きさを持つ海王類が数多く生息するのだが、ウマヘビがいる事で近付いてくるモノはいない
それには大層感謝しているベックマンと航海士だが、ジョーは勿論ウマヘビもそんな事知ったこっちゃない
と言うよりもジョーの関心は海底を進むこの時間がとても新鮮なようでずっと外を見ていた
「そんなに珍しいか?」
『ん…? あぁシャンクスくん、そうだねこの光景を見たのは二回目だからね』
「二回? 初めてって訳じゃないんだな」
『まぁ初めての時は外を見ている余裕が殆どなかったけれどね』
「…おでんの事があった時か?」
『おでんくん? いや違うよ、ワノ国に向かったのは確かだけどね…あの時は…アレの後でね…』
「 ! そうか…でも何でワノ国に行ったんだ?」
『鎖国しているって言ってたろう? だから匿って貰おうと思ったんだけどタイミング悪くてね
その時には既にカイドウが居座ってて…安全じゃないって言われて前半の海に戻ったんだよ』
「そうだったのか…じゃあその時が初めての新世界入りか?」
『そうだよ…と言ってもあまり実感はなかったけれどね』
「そうなのか? 魚人島通るし実感ありそうなもんだけどな」
『あぁ…その時は亀助さんに送って貰ったからかな』
「カメスケさん…?」
『あれ? 話さなかったかな? 私達が住んでるあの島が亀助さんだよ』
「島がカメスケ? どう言うことだ??」
『君達が島だと思って上陸したあそこは生きた亀の上ってことだよ』
そう外を見ながらケロリと言うジョーの言葉に、シャンクスは言葉を失い開いた口が塞がらない状況
あの島だと思っていたアレがまさかの生きた亀だなんて誰が思おうか…誰も思うまい
しかしそれでログポースが反応しなかったのかと言う納得も出来た
それにしてもよくそんな島(亀助)を見つけられたなと思わなくもない
それだけジョーの運が良いのか何なのか…結果的にあそこに居れて隠れ仰せているのだから良かったのは間違いない
ジョーには何かを引き寄せる力でもあるのかとシャンクスは思わずにはいられなかった
二人並んで暗い海底を黙って眺めているとヌッと巨大なウマヘビの顔が現れる
何とも不機嫌そうな顔をしているウマヘビに二人は目を瞬かせて互いを見合う
そしてもう一度ウマヘビに目を向ければ「ブルルル」と唇を揺らし、それに伴い泡がぶくぶくと浮上していく
「どうしたんだウマヘビの奴…随分と不機嫌そうだな」
『うーん…この船乗ってからウマヘビに乗って移動してないからかな…私にもよく分からない』
「そういやさっきその亀助に乗って新世界行ったって言ってたけどよ、ココ通る時はどうしたんだ?」
『亀助さんが甲羅全体にコーティングみたいな事をして通ったんだよ、どう言う原理かは分からないけどね』
「マジかよ! スッゲェな亀助!」
『長いこと生きているみたいだから色々出来るんじゃないかな』
「アレだな! ゾウみてェな感じだ!」
『ゾウ?』
「おでんに聞いてねェか? 新世界に亀助みたいなゾウがいてよ、そこにミンク族が住んでんだ!」
『へぇ…亀助さんみたいな子が他にも居るんだね…そのミンク族と言うのは?』
「動物のなりをした戦闘部族でよ強ェんだ! そんでもってなんでも光月家と縁があるようだぜ」
『光月家と…そう言えば以前おでんくんに会いに行った時、ネコとイヌの姿をした子が居たね』
「そりゃきっとネコマムシとイヌアラシだな!」
そう言って笑うシャンクスを見てジョーは「そうなんだ」と言いたげに頷いた
おでんにそんな繋がりがあるとは知らなかった彼は「教えてくれても良かったんじゃないか?」と思わなくもない
しかし、色々あって頭からスッポリ抜け落ちている可能性が高いため、文句を言うのはやめてあげようと考え直す
ともあれシャンクスの話を聞いて元々亀助が新世界にいた事から、ミンク族と何か関係があるかも知れないと考えた
帰ったら聞いてみようかと一人考えていると、無視されていたウマヘビがまた「ブルル」と泡を作る
正直この場で不機嫌になられてもジョーには何もする事が出来ない
能力者ではなければジョーの性格上、海底に出て何かしらしそうではあるが…
そんなこんなでレッド・フォース号は魚人島を目指し潜って行くのだった
*******
無事に魚人島へと辿り着き、そこで少し休憩をして行くようだ
ジョーは魚人族を見た事はあれど人生で初めて見る人魚に目を丸める
この時「この世界には知らない事が多い」と漸くジョーは思い、少し興味を持つきっかけとなった
もう一つジョーが気になるのは魚人島に掲げられている海賊のシンボルであるジョリーロジャー
そのシンボルが誰の物なのか残念ながら分かっておらず、首を傾げながら見ている
それに気付いたベックマンがジョーに近づき「気になる事でも?」と問いかける
その言葉にチラリとベックマンを見てから顎に手を当てて疑問を口にする
『アレは君たち海賊のシンボルだろう? あの様に掲げているのは何か意味が?』
「あぁ…アレはこの魚人島が白ひげのナワバリだと言うのを示している」
『ナワバリ…そうする意味があるんだね?』
「当然だ、ここは海賊たちの通り道になってる…一時期この島が荒れた事もあったようだ
そんな時白ひげが来てここを自分のナワバリにする事で他の海賊から守ってる」
『名のある海賊だからこそ出来る事って訳だね』
「そうだ」
『ここがニューゲートくんのナワバリとなると敵船の君達がここに居ても大丈夫なのかな?』
「魚人島の連中に手を出さなければ問題ない」
『ふむ…海賊と言うのも色々とルールみたいなものがあるのだね』
「ルールと言う程のもんじゃねェがな」
『けれど彼本人がいなくても平和に居られるものなのかい?』
「もしここの連中に手を出せば白ひげに喧嘩を売ったも同然だ…白ひげからの報復はま逃れないだろう」
『なるほど…色々勉強になるよ』
疑問を聞けば簡素かつ分かりやすい説明にジョーは終始「ふむふむ」と頷きながら聞いていた
何かを説明させるにはベックマンが一番だと分かっているクルー達が二人の元へ加わる事はなかった
話に加わりそうなシャンクスでさえ「説明は頼んだ」と言うように遠巻きに見ているのだから
ジョーは新たな海賊知識を得た事に満足しており、説明してくれたベックマンに「ありがとう」と頭を下げる
そうされる事に慣れていない張本人は「いや…」と濁しながらも「また何かあれば聞いてくれ」と言って離れた
博識な子が副船長をしている船は安泰だろうなとジョーは思いながら離れて行くベックマンに再度「ありがとう」と言った
そんなに長居をするわけではないが、赤髪海賊団の面々は船を降りて一時の休息を楽しむようだ
その様子を下船せずに見ていたジョーに「降りて来いよ!」と言う様に腕を動かすシャンクス
それを見て暫し考えてからジョーはタラップを使い下船し、クルー達の輪の中へ
魚人島の者達は海賊の来訪に慣れているのか、恐れる事もなく寧ろ歓迎ムードである
その事実にジョーは意外そうな表情を見せるも「まぁシャンクスくんの船だしな」と思い直す
「ジョーさん! ここにスゲェ当たる預言を言う奴がいんだよ! やってみねェか?」
『預言? それは興味深いね、是非ともやってみたいものだ』
「ロジャー船長も昔、預言聞いてたんだ」
『ロジャーも? その時は一体どんな預言を聞いていたんだろうね』
「そこまでは分かんねェけど、百発百中らしいぜ!」
『それは凄いね、けれど良くない結果だったらそれはそれで困りものだね…』
「その良し悪しはジョーさんの捉え方次第になるだろうな」
『確かにその通りだ、結果を怖がっていたら意味もないしね』
シャンクスの誘いに乗って、ジョーは預言者であるシャーリーの元へと足を向けた
その預言できる人物は女性であり、彼女の言葉はこの島では重宝されるらしい
しかし当たり過ぎるのも困りものでよからぬ事を見てしまった時は大騒動のようだが
確かに百発百中ならばそうなるのも仕方ないだろうとジョーは思う
見てもらうにあたって「出来ればいい事であるといいな」と彼は切に願った
シャンクスのあとに着いていけば、たどり着いたのは一件の家でありなんの躊躇いもなく中へ入って行く
ジョーも続いて中に入れば、サメかシャチか…そういう類の尾鰭を持つ女性が水晶の前に座している
ジョー的には女性というにはまだまだ年若い少女という印象だが
「いらっしゃい来ると思っていたわ」
「なんだ、予言でも出てたか?」
「えぇ貴方たちがこの島に来るのも、貴方が彼を連れてくるのもね」
「だははははっ! 本当にスゲェな! ジョーさんが俺の船に乗るのも急遽決まったことなのによ!」
『本当に…これは気を引き締めて聞かなければならないね…』
「私に何か聞きたいことでも?」
『あー…特別これと言ってはないのだけれど、この先何かあるのかは聞いてみたいかな』
「いいわ…見てあげる」
そう言って彼女は自身の前に置いている水晶へと視線を落とし、何かを見ているようである
残念ながら彼らには何を見ているのかサッパリ分からないのだが、彼女には何かが見えているようだ
普通の表情から少々訝しげるような顔つきにまで変わったためジョーはただただ嫌な予感を巡らす
そう感じても彼女から何かを告げられるまではどうなるかなんて分かりはしないのだが
「……尋ね人がやって来る」
『尋ね人…? 一体誰…?』
「それはその時のお楽しみよ」
『…そうか、他には何か分かるかな?』
「…これから先…貴方は多くの人を救う事になるわ」
『なんだか…救うと言うのは私にとってとても嫌な予言だ…』
「これは誰を救うかは分からない…どう言う場面なのかも」
『十分だよ、ありがとう』
シャーリーの予言を聞いてジョーは良いのか悪いのか判断しかねているが「救う」と言うのは良いようには聞こえない
そもそもジョーにとって「救う」と言う事にいい思い出が全くないため、非常に複雑な思いである
ジョーの中では「救う」=「蘇生させる」という方程式が出来上がってしまっているのだ
それもこれもロジャー達のせいだとジョーは思っているのだが、この事を言っても何もならない為彼の中にしまわれている
思うだけはタダだし誰の迷惑にもならないため、悶々とすることはずっと胸に秘めているのである
シャンクスも黙って聞いていたのだが、どう言うことなのか分かるはずもない
ただこの先ジョーの手でまた人が救われるのだと言うことだけが唯一分かることだ
お礼を言って彼女の家を出てからも暫く沈黙が続いたが、それを破ったのはシャンクスだった
「ジョーさんはあの話しどう思うんだ?」
『本来なら信憑性がないと言いたい所だけれど…無視できる内容でもなかった』
「多くの人を救う、か…一体なんなんだろうなァ」
『その時になって見なければ分からないね』
「だよなァ…ジョーさん的には救うってどう考える?」
『……今まで救って来たのは死者を、だ…だからもしかして…と思ったりはしているよ』
「 ! ……それは、穏やかな話しじゃねェな」
『うん、だからこそ複雑な心境だよ…知れてよかったのか否か…正直分からない』
「分かっててもどうしようもねェ事だったら意味ないしな…」
『うん…まぁ先のことを今からとやかく言った所でどうにもならないのも事実だからね、その時になったら考えるよ』
そう言うジョーにシャンクスは内心「大丈夫だろうか」と思ってしまう
ジョーが言った「死者を救う」と言う言葉はとても重いものであり、自分には到底理解出来るものじゃないとシャンクスは思う
それでも少しくらい助けになればと思うのだが、今回のこの予言に関しては己ではどうしようもないだろう
そもそも救う相手が分からない以上、その時になって見なければ何も出来ないのだから
ただそれでも…
「ジョーさん、一人で抱え込むなよ」
『なんだい藪から棒に…』
「この事二人に話してもいいと思うぜ」
『…そうだね、時が来たら話すよ』
( あぁ…この人も一人で抱えて話さねェんだろうな… )
そう思うのと同時に、その分何かあった時には自分が出来るだけサポート出来ればいいと思ったシャンクス
そんな事を思われているなど考えてもいないジョーは「お腹空かないか?」と彼の気も知らずに尋ねる
その言葉に苦笑いしながらも「減ったな!」と答え、二人で何かを食べることにするのだった
( んー美味いね、特に海鮮料理は絶品だ )
( ある意味これって共食いにならねェのかな? )
( …シャンクスくん、そう言うことを言うのはやめた方がいいと思うよ )
( ん? そうか? )
( 君…ロジャーに似てるって言われたことないかい? )
( まさか! ロジャー船長に似てるとか恐れ多いぜ! )
( そんなに言うほどじゃないと思うのだけれど… )
( そりゃあジョーさんは兄貴だからそう言えるんであって、俺からしたら偉大すぎる人だ )
( そう…なんだ? うーん…あまりイメージがないなぁ… )
( だはは! だろうな! )
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